山田祥平のRe:config.sys

コミュニケーション専用機で使うMicrosoft Teams

 パンデミックはコミュニケーションにおける会議のスタイルに大きな影響を与えた。スタイルが変わればそのスタイルに応じたデバイスも生まれる。コロナ禍が一段落している今はそのことを実感する。

ハイブリッドな会議環境に対応する専用機器

 ITによる会議のDXを追求するナイスモバイルが、ハイブリッドな会議環境構築のための専用機器としてMAXHUB「XBar」3機種を発売する。Microsoft Teams Roomsの専用機器群であるMTRシリーズに、新たな選択肢として加わることになる。

 この製品は、モニターを接続するだけでMicrosoft Teams Roomsが活用できる専用ビデオバーだ。カメラ、マイク、スピーカー、CPUとOSが一体化されたオールインワンデバイスで、会議にあたっての設置や運用の手間を最小限に抑えることができる。ナイスモバイルではこれからの会議のスタンダードとなるデバイスだとしている。Android用、Windows用などが提供されるビデオバーで、Teams Rooms認証を取得したWindows搭載製品は世界初だという。

 コロナ禍以降、TeamsやZoomなどのオンラインコミュニケーションアプリは、ビジネスの現場に欠かせないソリューションとなった。中でも、Microsoft Teams Roomsは、ユニークな会議室環境を提供するソリューションだ。このソリューションは、現在、市場ポテンシャルとして数万会議室を有しているという。ナイスモバイルとしては、そのトレンドを見極めた商品展開として、ビデオバーをラインアップに加え、タイムリーに投入していく。

 同社では今後、大会議室の需要が高まると見ていて、ハイブリッドワークでリモートの社員が参加する需要が増加するなかで、販売台数は右肩上がりだともいう。さらには、MTRで理想の会議室をという意気込みだ。

アカウントとしての会議室リソース

 Microsoft Teamsは知っていてもMicrosoft Teams Rooms(以下MTR)って何だという方もいると思う。これはMicrosoftによるTeams利用のソリューションで、MTR認定デバイスがあれば無料で使えるBasicと、部屋ごとのサブスクプランであるPro、2種類のライセンスが提供されている。会議の時間になったら専用端末をタッチするだけで会議をスタートでき、複数人で行なうハイブリッド会議の煩わしい準備が不要になる。

 その根底にあるのは、物理的な会議室にリソースとしてのアカウントを与えるという考え方だ。以前から、Microsoft Exchangeなどのコラボレーション環境では、会議というイベントに対して、人間と同様に会議室にもリソースアカウントを与え、人間全員と場所がそろうスロットを見つけてイベントを設定するという考え方があった。会議室が空いていなければ全員の空きスケジュールが合致しても会議ができない。また、会議室が空いていても、プロジェクタやホワイトボードといった設備が必要かもしれない。

 このようにリソースにアカウントを与え、会議に参加させるという考え方が、ずっと以前からあったわけだ。今では、AIを会議に参加させ、ディスカッション内容の要約をさせたり、アクションプランを提案させたり、また、都合で遅刻してしまう場合も、先に参加していたAIに、そこまでのあらましをたずねるような使い方も当たり前になりつつある。

 国土交通省の調査では、テレワークと出社を併用するハイブリッドワークが定着しつつあるともいう。なんとなくの空気感ではハイブリッドワークもなし崩しに縮小し、原則として出社という形態をよくきくようになったが、なくなりはしない。拠点の物理的会議室に複数のメンバーが集まると同時に、リモート勤務するメンバーがそこに加わるような形態だ。

 ハイブリッド会議では、「コミュニケーションがとりづらい」「情報の量や質に差が生まれやすい」などの課題が生じていて、会議室とリモート参加者をシームレスにつなぐ環境整備が急務だとされていた。物理会議室でのコミュニケーションが盛り上がれば盛り上がるほど、リモート参加者が疎外感を感じるようなこともあるようだ。

 こうした弊害を抑制するためには、リモート参加者のプレゼンスを増幅し、あたかもその場にいるかのようなコミュニケーションができるだけの環境が必要だ。そのための品位の高いハードウェアが求められる。そして、それをかなえるのが、MTR専用のデバイスだ。今回ナイスモバイルが発表したビデオバーはそんなデバイスだ。

 たとえば、製品の1つ、Windows 11 OSプリインストールのPCを内蔵した「XBarW70 Kit for Microsoft Teams Rooms」は、中規模から大規模の会議室向けに設計されたビデオバーのフラグシップモデルで、業界初の5,000万画素×4個のレンズを搭載し、精細な映像を相手に届けることができる。汎用PCで使うTeamsのようにフルHD制限もない。

オールインワン機器とAIでシームレスなコミュニケーション

 広い画角で会議室全体の様子を映し出せるのは当然として、人物の表情や手元のしぐさまでも鮮明に映し出す。まるで専属のビデオスタッフが会議を中継しているようだ。AIが発言者や参加者の動きをリアルタイムで検知し、自動的に画角を調整してズームインすることができるので、誰が話しているのかも容易に分かる。すべてが自動で行なわれ、煩わしい設定はいらない。

 また、発言者を認識し、動きに合わせて自動追跡する「スピーカートラッキング」、参加者を個別に表示する「インテリジェントフォーカス」、会議室全体を映しながら、参加者を個別に表示する「スマートギャザリング」などの表示方法を選択でき、ハイブリッド開催でも議論が活性化し、一体感のある会議が実現できるという。

 さらに、高性能マイクやデュアルスピーカーはモノラルではあっても会場全体にクリアな音声を広げ、互いの発言の聞き返しもない。それがストレスを軽減し、会議の集中力と生産性を高める。

 また、AIによる音声最適化技術により、集音範囲を設定したり声の大きさを自動調整したりできるほか、空調などの環境音も除去する。

 オンラインコミュニケーションにおけるクリアな音声環境は「あったらいい」機能ではなく、業務効率に直結する「必須インフラ」だとナイスモバイルでは考えているそうだ。

 異なるベンダーの複数のデバイスの組み合わせでも、個々に揃えてうまく連携させれば、同様のことができるかもしれない。だが、求められているのはオールインワンでワンストップのソリューションだ。瞬時に手間なくハイブリッドな会議を始めたい。そしてMTR専用デバイスならそれができる。

 冒頭の写真は、ナイスモバイルが再現した従来環境における会議設備だ。各機器がバラバラになった状態から、各機器をPCに接続してセッティングを完了し、実際に会議をスタートできるまでには相応の時間がかかる。実際に試させてもらったところ3分間かかった。これは速いほうなのだそうで、実際にはもっとかかるし、多かれ少なかれ、接続トラブルも発生する可能性がある。いざ会議を始めようとしたらプロジェクタに映像が映らないといった経験は、誰にでもありそうだ。

 PCのような汎用機をあらゆることに対応させるのもITの醍醐味だし、その便利さを凝縮したオールインワン専用機は汎用PCにかぶさるシェルによって実現されている。ハイブリッドな働き方はそんなデバイス群に支えられている。それによる時間と手間の節約分をコミュニケーションに回し、それでもカバーできない部分をAIに頼る。そのリレーこそがDXをまた一歩前に進める。