トム・クルーズがスタントを使わない理由だってある『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』

『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』を見た。(物語のクライマックスにも、触れているのでネタバレ嫌う人は見ないほうがいいかも)

世の中には、起きている出来事が全て定められたこと「運命論」を信じる人や、いやいや、全ては偶然の積み重ねなんだよと語る人もいる。僕は正直どちらでもいいし、起きたら起きたまでだと、適当な態度を決めている。それは現実の話だし、映画にはそれぞれ理由や意図が存在する。誰かが、ご飯と卵と醤油を机に置いていたら、きっと卵かけ御飯を食べたいからだし、『ローグ・ネイション』でトム・クルーズが命がけのアクションをスタント無しにするのだって、彼なりの理由がある。(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150805/k10010178771000.html)今回はそれがどんなに無茶で、スタント無しで挑むことが正しいか、正しくないかではなく、物事には理由があるってことを取り上げる。
「映画」では出演者たちの一つ一つの発言や行動が意図的に演出されている。『ローグ・ネイション』の終盤で、レベッカ・ファーガソンが、USBを新聞紙の上に置く行動をとっても、後々に続く演出の一つなのである。

今回の『ローグ・ネイション』では、トムクルーズが「先回り」される・することが物語の軸である。彼のスタント無しの注目アクションシーンが終わり、IMFの指令を聞くお馴染みのあのシーンから事件が始まる。そこで彼はシンジケートに「先回り」をされることで物語が始まる。IMFがシンジケートはトムクルーズの狂言であり、トムクルーズが全て仕組んでいるんだといい彼が容疑者として追われる身となる。こういった「先回り」は、トムクルーズだけでなく、シンジゲートに潜入捜査しているレベッカ・ファーガソンにも訪れる。彼女が上司にUSBを渡そうとして新聞紙の上に置くのでさえも、行動設計されており、実はシンジケート計画に関わっていた上司が証拠隠滅を図り、新聞紙の下にUSBのデータを削除するような装置を仕掛けていた。こういう後々に明るみになるグッとくる演出がとても上手いなと思う。クライマックスのトムとショーンハリスの追っかけシーンも、今まで「先回り」し続けられたトムが、ショーンハリスに「先回り」することに成功するシークエンスは、思わずガッツポーズしてしまう快感がある。最後までスリリングな駆け引きをする「先回り」映画だったと感じる。

また、演出を細かく見ていくと、クライマックスのロンドンでの追っかけシーンで、路面が濡れているのは、街灯の光が反射して美しいシーンを演出するため。影が綺麗にフレーミングされているのも、アクションに緊張感を持たせるため、そして、スパイ物だから。(スパイは影の顔)オペラ会場でのレベッカ・ファーガソンを捉えるショットが美しいのは、構図が見事なのもあるけど、彼女の脚が綺麗なため。(いや、マジでグッときましたね。)
ブラッド・バードが監督した、前作の『ゴースト・プロトコル』に比べれば、幾分か派手さは抑えられているが、飛行機でのシーン、カーチェイス、バイク、夜のロンドンでの追っかけと、緊張感のあるシーンの連続で全く飽きることがなかった。一作目のあの頃のような雰囲気を一番感じられたし、シリーズ最高傑作と謳ってもいいんじゃないだろうか。

◼最後に
映画で起こることには意図や理由が存在すると書いてみたが、もちろん、映画の中で起こる”全て”のことに、理由があるとは思ってはいない。特にアニメではあるまいし、実写には偶然が起こることがある。結局のところ、トム・クルーズがスタントを使わない理由だって、演出以上の人の生の演技、自分から発せられるエモーションを、観客にできるだけ直接伝えたいからなんだろうと思う。さて、次はトムは何をしてくれるのかな。過度に期待するとトムが死ぬのでほどほどに。

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映画狂人シネマ事典

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