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アジアカップ・グループステージの感想

本日もサッカーの話。ちょっと時期を逸したかもしれないけれど、日本代表のアジアカップグループステージの感想である。実は、一試合ごとにやろうかと思ったけれど、サボっていてやらんかったので、一度に全部まとめて。

アジアの守備ブロック蟻地獄と日本

とりあえず、最初の試合についてはヨルダンの守備が良かった。アジアのレベルが上がってきてるなーと思った試合だった。どういう守備してたかというと、フォーメーションは4141。最近の流行のフォメで、日本代表がW杯でもやったアレである。


ちょっと寄り道するが、4141が流行りだした背景には、

 2ライン間で攻撃的プレーヤーが動きやすい4−2−3−1の有効性が認識されてくると、それを阻止するための策が本格的に検討されるようになる。すなわち、2センターハーフと2CBの間のバイタルエリアをいかにカバーするか。「ストップ・ザ・ファンタジスタ」の成否は、まさしくそこにかかっていた。

4−4−2から4−2−3−1へ。2センターから3センターへ

というattacking phaseさんの所の記事に詳しい。自陣で44の八枚で守備ブロックを作る守備方法は、現在、実力差があると厳しくなってきている。ぶっちゃけ、ダブルボランチだと中央を割られる可能性が高い。こいつは、2ライン間(センターバックとボランチの間のスペース)を使って相手を崩す戦術が高度化したのと、サッカー選手の質の変化によるもの。つまり、狭いスペースでパスを引き出して反転して前を向いてボールをさばける選手が増えてきたんである。こういう選手がトップ下として、44の守備ブロックを混乱に陥れた。中央のボランチ二人は、相手のボランチ二人を見ると同時に、トップ下のケアをするというのは結構難しい課題なんである。トップ下の選手がマークを外すのが上手い選手であったらなおさら困難になる。


こういったトップ下の戦術的有効性が明らかになるにつれて、メタゲームも進んだ。トップ下潰しの戦術である。この戦術は、2ライン間をコンパクトに保とうとするケースと、2ライン間にアンカーと呼ばれるプレーヤーを置いて、2ライン間のスペースそのものを潰させるケースが多い。4141とは、後者であり、アンカーを置くことで、2ライン間のスペースを消すことを狙っている。日本代表もW杯で、それを阿部にやらせたんだが。


で、ヨルダン戦の話にもどるけど、今回は、それを相手にやられた格好である。ヨルダンの守備方法について、ちょっと詳細に述べるけれど、まず中央にはボランチ三枚がいて、アンカーがトップ下のゾーンを消していた。



図にも書き込んだけれど、ヨルダン戦序盤、長谷部と遠藤は、中央で数的不利に陥っていた。相手はアンカー入りのボランチ三人に対して、日本は遠藤と長谷部の二人。本来は、中央には本田もいるので、数的同数のはずなんだが、なぜか本田は妙に高い位置を取っていて、長谷部や遠藤と上手く絡めていなかった。というわけで、数的不利に陥り、中央で起点が全く作れない前半最初の日本であった。じゃあ、サイドはどうよ?って話になるんだけど、これも上手くいってなかった。



これは日本のサイドの状況なんだけど、ヨルダンは、日本が左サイドにボールを入れると、即座に中央のボランチ一枚がサイドにスライドしてくる守備方法だったので、左サイドも数的不利な状況に陥っていた。



こっちは右サイドの状況。とにかく、ヨルダンは、サイドにボールが入ると、ボランチが即スライドしてきて、サイドで数的優位を作っていた。このあたりは、非常によく組織されていた。ヨルダンは、「ボールは日本に持たせてやるけれど、守備の局面ではどこのゾーンでも数的優位を確保させてもらうよ」という守備だった。序盤は、ヨルダンのそういう守備に苦しめられて、日本はなかなか前で起点を作れなかった。4141でがっつり守ってくる相手は、そう簡単には崩せないので、これはしょうがない。


ちなみに、ヨルダンと日本との力量の違いは明白である。なんでかっていうと、ヨルダンは数的優位を確保しないと、守りきれないんである。前田がサイドに流れたり、本田が下がってきたりして、中央やサイドで数的同数を作られてしまうと、大概、日本が突破してしまう流れだった。数的同数だと絶対負けちゃうから、ポゼッションを放棄して数的優位を確保して戦うという戦術は、合理性があるのである。特に相手との力量の違いがはっきりしているケースでは。


そんなわけで、アジアでは、飛び抜けた実力をもっている日本に対して、日本がW杯でやったようなガチ守備戦術をやられるという展開にイライラがつのる初戦であった。

前線の並びの謎

とまあ、そういう流れで、前田がサイドに流れてサイドを助けたり、本田が下がってきて中盤を助けたりしながら攻撃のリズムを作り始める日本であったが、前四人がまるで機能していなかった。ここはザックを激しく問い詰めたい部分である。FWとトップ下の組み合わせがまずおかしい。というか、韓国戦で前田と本田の組み合わせは機能しなかったのにアジアカップでも固執する必要あるんだろうか。


4231で重要なのは、センターフォワードとトップ下の関係であり、FWがDFを背負ってプレー出来、ポストプレーに優れ、動き回ってスペースを作れるタイプならば、トップ下はスピードのあるシャドーストライカーとしての能力を求められる(ドルトムントの香川とバリオスの関係が典型)。トップ下が、ジダンやエジルのようにキープ力に優れ、チャンスメイク能力の高いタイプであれば、センターフォワードはスピードのある裏取りストライカー(アンリやロナウド、イグアインのような)が好ましい。


前田と本田を並べる事に疑問があるのは、基本的に二人とも裏への飛び出しが下手くそだからである。前線に近い二人が裏を取れないようだと、2ライン間にスペースがつくれず、中央で大渋滞が起こるのは目に見えているのだ。ザックは、守備の人選はオーソドックスだけど、攻撃の人選は謎のままである。というより、本田と前田の並びはマジやめてほしい。森本か岡崎なら本田のトップ下でおkだが、前田をCFで使うなら、香川か柏木のほうが良い。CFとトップ下が足を踏み合って、お互いの良さを殺しかねない。原監督代行の時は、FWに岡崎と森本で本田にあったオーソドックスなチョイスだったんだけど・・・・どうしてこうなった。


こういうお互いの足を踏み合ってしまうコンビとしては、イングランドのジェラードとランパードがあって、二人とも世界最高のセンターハーフで攻撃も守備も一級品なんだが中央に並べるとまるで機能しないんである。イングランドの監督にとって、ジェラードとランパードをどう共存させるか、それは頭の痛い問題で、解決策はみえたとは言えないまま、二人の時代は終わろうとしている。悲しいモンである。(本田と香川がそういう関係にならんと良いのだが・・・・)


ザックは、守備に関しては文句をつけたいとは思わないのだけれど、攻撃のほうは、相当に文句を言いたい部分がある。つーか、森本が手術なのがねぇ。まぁ、あれか。ザックとしては、4年後のW杯には、森本のワントップに本田のトップ下で行くつもりなのかね。だったら、ある意味しょうがないが。でも、本田のトップ下なら、ワントップは岡崎にしてお願いだから。中央に鈍足二人裏取り下手とかありえナス。

引いた相手から点を取る方法について

そこいらでネタにされている事ではあるが、この話題もここで。4141でガチ引きの相手から効率よく点を取る方法、それは簡単に言えば一つしかない。


セットプレーである。


はい、そこ、つまんねとかいわないように。でも、セットプレーが一番期待値高いんである。俊輔がアジアカップのたびに輝いた理由がここに。スペシャルなプレースキッカー+ヘディンガー+セットプレーの組み合わせが一番引いた相手から点を取るのに有効なんだから。


引いた相手は、ゴールに近い位置で激しい守備をしてくる。当然、ゴールに近い位置でFKもらえることは多くなるし、コーナーも取りやすい。そこで、精度の高いキックとヘディンガーがモノを言うんである。はっきりいって、4141で引いてきっちり守ってくる相手に流れの中から点を取るのは難しい。理想は、セットプレーから得点して、相手を穴から引きずり出した後に、カウンターで追加点を奪う方法である。

シリア戦、監督力の差

で、シリア戦の話にうつるけど、この試合は、相手の監督の力量の差が出たなという試合だった。選手の能力的には、シリアとヨルダンには、そんな差がないという感じだったけど、監督の力には明快な差があった。それは、シリアの守備方法がおかしかった事による。


具体的には、守備ブロックにおいて、ボランチの位置が低すぎるんである。中央に三枚置いてるのはヨルダンと同じだが、シリアのそれは、△でなく、フラットに並べていた。で、ボランチの3枚と最終ラインの間をおっそろしく狭くしていた。で、最終ラインの位置は低め。つまり狙いは、裏へのスペースと2ライン間のスペースを無くす事。その結果、何が起こったか?


ボランチが下がりすぎている為に遠藤にプレスをかけられず、遠藤がドフリーでボールをさばける状況が出現したんである。


ちなみに、こいつで前田と香川は窒息死。2ライン間にスペースがないので、このスペースを上手く使いたい二人はしんでた。ただ、本田はサイドに流れたり、遠藤長谷部の位置まで下がって来る事で自由を謳歌していた。本田と遠藤、長谷部が目立つわけである。で、この三人に良いようにやられてシリアの前半は終了。相手の監督は遠藤舐めすぎである。あのポジションじゃ、遠藤はアジア最高の選手で、遠藤に自由にボールをさばかせたら、守備ブロック固めててもずったずったにされてしまう。そのくらいのゲームメイク能力がある選手である。長谷部のゴールでリードして前半を折り返す。


で、相手の監督も馬鹿じゃないから、後半から遠藤のケアを開始。新しく入った10番が遠藤に激しくプレッシャーをかけるように。遠藤が自由にパスを回せないと、守備ブロックを上手く崩せない日本。で、gdgdになってたら、意味不明のPKで追いつかれた上に川島退場で、最悪の状態に。


だったんだが、ここで、相手の監督が再び采配ミス。MFを一枚減らしてFWを増やしてきたんである。アホだ。おかげで、中盤で遠藤と長谷部が数的不利に陥ることなくプレー可能に。シリアの監督は数的同数なら中盤は問題ないとでも思ったんだろうか。日本の中盤力を舐めすぎである。悪いが、日本の中盤とシリアの中盤の差は明らかだ。案の定、遠藤と長谷部がむしろボールをさばきやすい状況になり、前線で良い動きをする本田と岡崎にボールがポンポン通ってしまう。本田と岡崎は、こういう状況で体張らせるとストロングポイントでまくりである。W杯思い出した。で、帳尻的に岡崎がPKをもらい、本田が決めてシリアを突き放した。この試合は、ヨルダンの監督とシリアの監督の能力の差がでた試合だと思う。ヨルダンの監督がシリアの指揮をとっていたら、日本は勝てなかったかもしれない。采配の差がでた。そんな試合だった。ちなみにザックの采配はフツー。本当にフツー。まぁ、自力で上回っているから、あんま特殊なことする必要もないんだけどね。

どうしてこうなったサウジアラビア

そして、最後に日本が大勝したサウジ戦。5−0という夢のスコアである。あまりの弱さにびっくりした。カウンター主体のチームの癖に、開始20分で3失点とかどうかしてる。日本は三点とった時点でペースダウン。怪我してもバカバカしいしね。


つーか、本当にサウジの守備は酷い。何が酷いって、形だけ44のブロックを作ってはいるんだが、二列目が飛び込んでいくと、誰もついていかない事があるという初期岡田Japanみたいな病状。ようするに、守備するフリだけしている。岡崎は確かに良かったが、あまりにサウジの守備が酷すぎて喜び半減という感じ。ボランチもサイドえぐらているのにサイド助けにいかない事があったし、どうなってるのアレ。酷い。ホントに酷い。


良かった点は、この試合、松井と本田という、足下ボールホルダーがいなかったので、パスがポンポン回った事。なんだやればできるじゃないかという感じである。柏木は、ブロックの中で受けてさばいて走り出すを繰り返してたが、こいつが良いリズムを生んでいた。本田も、もうちょいああいうプレー増やしてくれると助かるんだけどな。あんな感じでパス回されたら、サウジはプレスやる気も無くす罠。最初からやる気なかったのかもしれないけれど。


ただ、攻撃面では、序盤の二点がどっちも左サイド経由で、左サイドで組み立てて、中央や逆サイドに展開というパターンばっか。左サイドは香川がいるので、香川でタメを作って岡崎を裏に走らせたり、クロスあげたりばっかだったが、ああいう使い方されると、香川は点とれんだろうな。つか、岡崎は組み立てに参加するってタイプじゃないんで、右サイド起点がほとんどなくなっちまった。このあたりは、トップ下の選手が今後、ヘルプしていかないと駄目っぽい。ってか、中央と右サイドに起点をどうやって作るのか、現在、非常に心細い。左サイドは香川で作ってる状態だけど、右は松井がいなくなったしね・・・松井は得点能力はないが、サイドで起点にはなれる選手である。


日本の守備について

で、なんだが、サウジ、シリア、ヨルダンとやってきたわけだけど、最後まで、よくわかんなかったのは守備の出来である。なんせ、相手にボール持たせる事がなく、ほとんど日本がボール持ってる試合ばっかだったし。



日本の守備の問題点としては、

  • 4231の恒常的弱点であるボランチとCBの間に生じやすいスペースをどうするか
  • サイドバックの内田と長友に高さがないのでサイドにロングボールを入れられて起点を作られた場合にはどうするか
  • 左サイドを中心に流動化が進んでいるが、代償として守備力が低下している
  • CBに絶対的に高さがない。吉田は背は高いが空中戦の強さでは、中の上くらいである。


という感じなんだけど、さて、決勝トーナメントでどうなるかという感じ。カタールは引いて守ってくるだろうから、問題ないだろうが、韓国かオーストラリアとやるとこの欠点が大問題になる。まあ、楽しみにしてまってましょう。