壊れるほど愛しても1/3も伝わらない

最近、毎週プロダクトの改善施策を出すというのをやってるんだけど、どうにも難しい。何が難しいって事業部とのすり合わせが難しい。 先日こういうことがあった。

事業部「売上も大事だけど最近利用者数が減ってきている。一旦売上には目をつぶってファンを増やす改善をやりたい」
ぼく「ユーザが離脱するのはこういう原因が考えられるのでこうするのはどうでしょう?わずかながら売上が下がるリスクはありますが」
事業部「売上が下がるのは困るからやらない」

僕の中では多少リスクを取っても利用者が増えれば長期的に見て売上は改善するはず(リスクも最小限にしたつもり)なので、売上には目をつぶってもファンを増やす改善に該当すると思ってたんだけど、事業部からすると売上は現状維持でユーザ数を増やしたいということだったというオチ。今から考えると先に期待値の確認をしてなかった僕のミスではあるんだけど、まぁ結構しんどい。
どうしたもんかなーと考えてた矢先に見つけた「言葉のズレと共感幻想」という本を今週読んだというまえがき。

第1章の最初に出てくるダブリングっていうテクニックは言葉のギャップを知るうえですごく使えそう。2つの言葉の関係性を2つの円で表現する。理系の人にはベン図っぽい感じといえば伝わるかも。
例えば「仕事」と「遊び」という2つの言葉。人によっては仕事のほうが大きい円になるだろうし、逆になる人もいる。距離についても完全に分離している人もいればある程度重なりのある人もいるだろう。という風に同じ言葉でも人それぞれ描くイメージが違うのでそらギャップもありますわなというお話。
まえがきの話でいうと「自分たちのため」と「ユーザのため」がしっくりきそうかなと思う。僕の中ではユーザのための方が大きい円になっていて、今回の例でいうと円は離れている。事業部もおそらく円が離れているのは同様だけど、2つの円の大きさは贔屓目に見ても同じ、内心では自分たちのための方が大きいような印象すらある。まぁ色々思うことはあるけど今はズレの原因がわかってスッキリしたということでこの話は終わろう。

だいたい知りたかったことはもう出揃ったんだけど、まだ1章。この本は全部で16章。もったいないにも程があるのでいくつか刺さったところを紹介したい。

いい会話というのは、どこかにたどり着こうとしている会話なんですよ。

すごく刺さる。出てて意味があると思える会議と出なくても良かったのでは…ってなる会議の一番の違いがまさしくこれだと思う。

「頭が悪い」というのは、自分の状態を雑にラベリングして、思考が停止しているから。

頭が悪いに限らず、「もう年だから」とか「自分には向いてないから」とか言ってしまいがち思考停止しないように気をつけたい。

新人作家と打ち合わせをするとき、僕は十年後、二十年後のことを考えて、ベストと思うアイディアを話す。新人作家は、そもそも作家になれるのか不安だから、すぐに役立つことを教えてほしがる。

これ僕がマネジメントやり始めたとき思ったやつだ!ってなった。当時は本当に辛かったし多分あの状態でこの文章を読んだとて「今苦しいの!十年後とか知らんの!」ってなってそうだけど、今読むとすごい沁みる。もし今マネージャーなりたてで辛い人がこれを読んでるのなら騙されたと思って1年後くらいにもう一度見て欲しい。多分全然違う世界が見えると思う。

所感

最初に書かなかったけどこの本は『具体と抽象』の細谷さんと『ドラゴン桜』などの担当編集だった佐渡島さんの対談形式で書かれている。 僕からするとレジェンドの二人の対談で、二人の考え方が読めるのはすごい貴重で面白かった。ただじっくり読みすぎていつもよりかなり読み終えるのに時間がかかってしまったw
二人のファンならそれだけで読む価値あると思うけど、『具体と抽象』についてある程度理解した上でこの本を読むと更に理解が深められると思う。

おすすめ度:10 / 10