ツキミの映画感想ノート

月からやって来た宇宙人『兎奈月ツキミ』の映画感想ブログなのじゃ!

映画感想21『アザーズ』このお屋敷に住む者は…。

『アザーズ』

 

◇あらすじ◇

 

世界から取り残されたように佇む、広いお屋敷。

そこには母グレースと、光アレルギーを持つ2人の子どもが暮らしていた。

そんな親子3人の元に、ある日3人の使用人志望が現れ雇うことに。

光を遮るためカーテンを閉め切り、常に薄暗いお屋敷の中。

グレースの知らないところで、次々に異変が起こり始め…。

 

◇感想(ネタバレ注意)◇

 

古い洋館を舞台にしたゴシックホラー。

……なのじゃが、ただ幽霊騒ぎが起きるだけではない作品じゃ。

 

暗くじめっとした空気が伝わってくるような、温度感のある作りは、

いかにも『なにか』が出てきそうな雰囲気でドキドキするのじゃよ。

古びた屋敷、霧に包まれる敷地、閉めきったカーテン、ゴシックな装い。

目にとまるものすべてが『いかにも』な雰囲気を醸し出しておる。

 

この不気味なお屋敷に暮らしているのは、母グレースとその子ども2人。

そして、突然訪れ雇うことにした使用人が3人。

どうやら子どもたちは『光アレルギー』を患っているらしくてのう。

太陽の光を浴びることができないようなのじゃ。

なので、お屋敷内は常にカーテンが閉め切られていて、薄暗い。

さらに、子どもたちが勝手に外に出ていかないように、なのじゃろうか?

『ドアを開けたら、一度鍵を閉めて、次のドアを開ける』

という独特なルールもあったりするのじゃよ。

 

お屋敷の独自ルールに加え、

母グレースの立ち振る舞いや身に纏う空気が独特でのう。

「なにかあるのでは!?」と序盤からツキミはドキドキしておった。

とにかく空気作りがすごい作品じゃ。

これでもかというほど不気味さを押し出してきていてのう。

作品の設定がとても独特で一気に惹き込まれたのじゃ。

 

さて。この作品、ミステリーな要素も多々含まれておる。

なにかを隠していそうな雰囲気の使用人たち、

『あんなこと』『あの日のこと』といった謎のワードたち。

序盤から謎がたくさん散りばめられていて、

この後どうなるのだろう、真相はなんなのだろう、と気になってしまうのじゃ。

 

そんな中、お屋敷で起こる数々の不可解な出来事。

何者かの泣き声が聞こえてきたり、

明らかに住人ではない誰かがいる物音がしたり。

家の中から気味の悪いアルバムが出てきたり。

ミステリーに加え、ザ・ホラーな展開が待っておるのじゃ。

 

不気味に静かに進んでいた物語が、

途中急展開で、パニックホラーのようになり、

そしてやがて、家族はこのホラー現象の答えを知ることになる…。

前半、中盤、後半、で『色』の変わる作品じゃと思ったのう。

まるでジェットコースターのような。そういう雰囲気の作品じゃった。

 

終盤の展開がとてもおもしろい(といってはアレじゃが)作りとなっておって、

ツキミはかなり衝撃を受けたのじゃ。

この作品、ハッピーエンドにも取れるし、

悲しい結末のように捉えることもできるかな、と思ったのう。

とても悲しくて、だけれど優しくて。

 

でもたくさんの『愛』があったように感じたのじゃ。

それは、家族に対する愛情だったり、執着という名の愛だったり、

様々な形の『愛』が見え隠れしていたように思う。

 

この作品、お話や舞台設定もおもしろいかったのじゃが、

キャラクターもとてもよかったと思ったのじゃ。

怖がりで気弱な弟のニコラス。

勝ち気でちょっと意地悪な姉のアン。

本当は寂しがりなのに周囲に厳しくしてしまう母グレース。

いつでも穏やかで優しい使用人のミルズ。

 

特にツキミはミルズが好きなのじゃ。

お屋敷のことが大好きで、家族にも優しくて。

まさにメイド長!!って感じの人なのじゃよ。

 

『アザーズ』

別の。ほかの。ほかの人。

いろんな意味があるようじゃが…。

この映画での『アザーズ』はいったいなにを示しているのじゃろうな。

それはぜひ、人間様の目でたしかめてみてほしいのじゃ。

 

 

◇ツキミの好きなシーン◇

 

真相がわかった後、途方に暮れているグレースに対し、

「お茶でもいかがですか?」

とミルズが声を掛けるシーンがとても心に残ったのじゃ。

ミルズのお屋敷に対するあたたかい想いや、

グレースを気遣う優しさが伝わってきてのう。

 

映画感想20『ラディウス』半径15メートル以内に近づいたら…。

 

『ラディウス』

 

◇あらすじ◇

 

交通事故に遭い、記憶喪失になってしまった男性リアムは、

助けを求め近くの町に行くが、なぜか町は死体で溢れかえっていた。

そして生存者を見つけても、なぜか目の前で死なれてしまう。

リアムはあらゆる可能性を模索し、ある一点の考察に行き着く。

それは「人が死んでしまうのは、自分のせいなのではないか」ということだった。

そんな中、リアムの元にひとりの女性が訪ねてきて…。

 

 

◇感想(ネタバレ注意)◇

 

ある一定の距離以内に近づいた者を死なせてしまう。

突然そんな力を持ってしまった男性リアムと、

彼の近くにいればその力を発動させないことができる女性ジェーン。

そんな不思議な力に翻弄される2人を描いた作品となっておる。

 

1時間30分の短めの映画じゃが、

序盤。中盤。終盤と、展開が大きく変わっていくので、

とても見応えのある作品だったと感じたのう。

 

リアムの周囲でばたばたと倒れていく人や動物たち。

この世界でいったいなにが起きているのか!?

リアムとともに、見ている側の不安も煽る序盤の展開は、

パニック物のような雰囲気があったのう。

おまけにリアムは記憶を失っているので、不安感は増すばかりじゃ。

 

どうやら、リアムに近づくと周囲にいる者は死んでしまうらしい。

…と推測を立てたところに、ひとりの女性がやってくる。

彼女はジェーン。リアムが記憶を失う前にともにいた女性らしい。

そして、彼女もさっぱり記憶喪失になっておる。不思議じゃのう。

そしてさらに不思議なことに、彼女はリアムといても死なないのであった。

 

記憶喪失の謎。不思議な力。彼らは何者なのか。なにがあったのか。

序盤から気になる要素がてんこ盛りで、

続きや結末が気になって気になってしかたない作品じゃなぁ。

 

ツキミ、安易に思ってしまったことがあって。

リアムのそばにいられるのは、この不思議な女性ジェーンひとり。

謎の力の秘密を2人で追う内に、互いに惹かれ合っていくのでは、と…。

ほら、あるじゃろう?なんか、吊り橋効果的なやつ…。

……そんなラブロマンスどこにもなかったのじゃ。

ツキミ、安易じゃった。

 

リアムとジェーンは、この事態を解決しようと奔走するのじゃが、

その中で、だんだんと『自分たち』について思い出していくのじゃ。

記憶喪失モノって『記憶を失う前の元の自分』と『記憶を失った後の新しい自分』

の狭間で悩んだり、苦しんだりすることがあるじゃろう?

不思議な力を探る中で、この2人がどういう未来に進んでいくのか。

記憶を全部取り戻したとき、2人は今までの2人でいられるのか。

映画を見ながら、そういうところが気になったりしたのう。

 

とあるシーンで、ジェーンがリアムを責め立てるシーンがある。

そこのシーンの悲痛具合といったら、すごくてのう。

ツキミ、胸が苦しくなったのじゃ。

いろいろな感情が渦巻いた、ぐちゃぐちゃとした心の吐露。

ほとんど声にならない声。だけれど、それは間違いなく叫びじゃったと思う。

 

映画を見ている側からするとリアムと過ごす時間はたった1時間半かもしれない。

だけれど、ジェーンは当然もっと長い時間リアムと過ごしているわけで。

そこには、2人で困難を乗り越えてきた絆もあっただろうし、

なにより友情だったり、もしかしたらほんの少しの恋心もあったかもしれないし、

間違いなく信頼感のようなものはあったのじゃと思う。

そういうものがあったからこそ、あの責め立てるシーンは強烈なインパクトじゃったのう。

 

記憶喪失のリアム。

作品内で『元のリアムの人格』が詳しく描かれることはない。

意図せずにあらゆる者を死なせてしまう。

作品内でずっとそれに苦しみ続けていたリアム。

それは不幸なことだったかもしれない。

だけれど、事故に遭い記憶を失い、恐ろしい力を手に入れてしまったことで、

リアムは新しい人生を歩むことができたのも事実なのじゃよな。

彼にとって、どちらが幸せだったのじゃろう。

 

さて。この不思議な力。

いったいどうやってこの力から解放されるのか。

ぜひ人間様の目でたしかめてほしいのじゃ。

 

ラディウス。

謎がたくさん散りばめられていて、

続きが気になってしまう映画じゃった。

 

 

◇ツキミが好きなシーン◇

 

病院内でリアムとジェーンが離ればなれになってしまうシーン。

エレベーターに乗ったリアムと、乗り遅れてしまうジェーン。

2人の距離が離れれば、周囲の人に力が発動してしまうのじゃな。

それを阻止するべく、ジェーンが必死に階段を駆け下りて、

人々とリアムを守ろうとするシーンが好きじゃったのう。

 

かっこいい、というのもあるのじゃが、

リアムに対して必死になるジェーンを見て、

2人のあいだにはすでに絆が生まれているのじゃな、と思ったのじゃ。

 

 

映画感想19『クワイエット・プレイス』決して物音を立ててはいけない世界。

 

『クワイエット・プレイス』

 

◇あらすじ◇

 

物音に反応して襲いかかってくる怪物によって荒廃しきった世界。

とある家族は、そんな中、細心の注意を払いながら生き延びていたが、

怪物の恐怖はすぐそこまで迫っていた…。

 

 

◇感想(ネタバレ注意)◇

 

音を立てると襲ってくる怪物。

生き延びるためには静かに行動しなければいけない。

だけれど、人間が完全なる『無音』で生きることができなくて…。

という、とてもわかりやすい構図の映画じゃった。

 

人のまったくいない荒廃した町のカットから始まるこの映画。

家族は静かに静かに息を潜めて、必要な物品を店から取っていく。

『怪物』は登場しないシーンなのじゃが、

これだけでものすごく緊迫した雰囲気が伝わってきてのう。

思わずこちらまで息を潜めてしまったほどじゃ。

 

この世界を牛耳っているらしき怪物なのじゃが、とにかく音に敏感でのう。

家族がいかに細心の注意を払って生活をしていても、

ほんの少しの物音に反応して、どこからともなく

ものすごいスピードで襲ってくるのじゃ。恐ろしいのう…。

 

恐ろしい怪物が襲ってくる。

それだけで見応えがある作品じゃと思うのじゃが、

面白いな、と思ったのは、いかにして物音を立てず生活するか。

という描写じゃな。

 

靴を履くと音が立つからか、みな裸足じゃし、

カチャカチャ音が鳴るから、器は葉っぱ、フォークは素手じゃし、

なにを手にするにも、そーっとそーっと慎重じゃし、

なにより、怪物が反応しない程度のひそひそ声で会話しておるのじゃ。

 

想像しただけでそのたいへんさがわかるかと思う。

こんな生活が24時間365日続いたら…。

怪物も恐ろしいが、この生活も恐ろしい…。

 

ただ、ほんのちょこっとツッコミどころもあったりしてのう。

裸足で生活すると『なにか』踏んだとき痛みで声上げるのでは?とか、

家の壁にかかっている大量のフォトフレーム外したほうがいいのでは?とか、

ちょこちょこと思わずツッこんでしまいたくなるシーンもあったり。

まぁ、野暮なのかもしれんがのう。

 

さて。少々ネタバレになってしまうのじゃが、

この映画、途中で母親が新しい命を授かるのじゃな。

絶対に物音を立ててはいけない状況の中、まさかの妊娠なのじゃ。

ど、どうやって出産するんじゃろう!?

とツキミ、ずっとハラハラしながら見ておったのじゃが、

まさかまさかの方法で赤ちゃんが産まれてのう。

びっくりしたのじゃ。

 

この赤ちゃんに関しても、泣き声どうするんだろう問題とかがあるのじゃが…、

ここもちょこっとツッコミどころありつつも、

映画として、エンタメとして、楽しませてもらったのじゃ。

 

恐ろしい怪物によって世界が終わりに向かう中、

人間がほとんどいない世界で、

それでも新しい命を育てていく。

それってものすごい覚悟のいることだと、そう思うのう。

 

ところで、この映画。

ツキミが一番怖い!!と思ったシーンは、

階段で、飛び出た釘を裸足で踏んづけてしまう、というシーンじゃった…。

飛び出た釘のアップと、下りてくる人の足…。

怖すぎて、ツキミ、目を細めて見ていたのじゃ…。

 

映画の中の人物たちは怪物が怖いのじゃろうが、

映画の外にいるツキミ的には釘が最強に怖かったのじゃ…。

 

物音に反応する恐ろしい怪物たち。

力の弱い人間がどのように対抗していくのか。

気になった人間様は、ぜひ見てみてほしいのじゃ。

 

 

◇ツキミの好きなシーン◇

 

怖がりでいつも泣き言を言っている息子が、

お母さんを助けるために、勇気を出して行動するシーン。

かなりよかったのじゃ…。

映像的にもインパクトの強いシーンとなっていて、

とても印象に残ったのう。

結果的に母親だけではなく、赤ちゃんを助けることにも繋がったしのう。

 

映画感想18『Summer of 85』やがて大人になる少年の一夏の恋。

 

『Summer of 85』

 

◇あらすじ◇

 

1985年の夏。

16歳の少年アレックスはヨットで海に出るも、嵐に遭い転覆してしまう。

彼を助けたのは18歳の少年ダヴィド。偶然出会った2人。

彼らは急激にその仲を深めていき、恋に落ちるが、

アレックスとダヴィドには悲しい運命が待っていたのだった…。

 

 

◇感想(ネタバレ注意)◇

 

少年達の一夏の恋。

…と表現すると聞こえはいいのかもしれない。

たしかにこの映画は『一夏の恋』を描いた作品なのじゃが、

そこにはひとことでは言い表せない切なさや苦しさや葛藤が詰まっておった。

 

映画が始まるとすぐに『死』というキーワードが出てくる。

『死』に惹かれて、『死体』を怖がる少年アレックス。

そしてやがて恋に落ちる相手ダヴィドを『死体になる』と表現するのじゃ。

この冒頭だけで、これがただの恋物語じゃないことがわかるのう。

 

どうやら、この物語は、

アレックスの視点で、もう起こった『恋の過去』を追っていく、

という形で描かれていくようじゃ。

 

海で助けられたことをきっかけに親しくなるアレックスとダヴィド。

16歳のアレックスは、少し気弱で押しに弱いタイプに見える。

反対に18歳のダヴィドは自由奔放で、どこかミステリアスな雰囲気じゃ。

 

将来の進路で悩んでいたアレックスは、

たった2歳しか離れていないのに大人びていて、

それでいて子どもっぽい一面もあるダヴィドに惹かれていく。

夜遅くに2人で映画を見て、乗ったことのないバイクに乗り、

アレックスは、今まで知らなかった世界を知って、

やがて、その感情はダヴィドへの恋となり実を結ぶのじゃ。

 

楽しく愛しく、この時間が永遠に続けばいいのに。

とさえ思っていた恋じゃが、それは唐突に終わりを迎えてしまう。

とあることでダヴィドとケンカをし、その後すぐにダヴィドは死んでしまうのじゃ。

 

さて。

この作品は少し変わった作りをしておる。

ところどころに『現在』のアレックスの様子と語りが入るのじゃ。

これによって、2人の恋は現在のものではなく、過去のものであることがわかる。

そして、現在のアレックスはというと、

なんと警察に捕まっているという状況なのじゃ。

彼がなぜそんな状況になったのかが、作品で描かれていくことになる。

 

85年というと、世間ではまだ同性愛を公にできる空気じゃなかったようじゃの。

恋人のことを誰にも相談できない、というのはきっと苦しかったじゃろうなぁ。

ダヴィドがいなくなって、アレックスは悲しみ、嘆き、苦しみ、

自分を責め、そしてダヴィドに怒り、自死の道を選ぼうとするも失敗し、

そうして精神をすり減らしていく。

 

この映画は、16歳の少年が恋をして、知らない自分に出会って、

恋を失って、絶望して、そこから立ち直っていく様子が描かれておる。

たった2時間という時間の中で、ひとりの人間の人生が、

これでもかというほど濃密に描かれておった。

 

精神をすり減らしてでも、ダヴィドと誓った約束を果たそうとするアレックス。

この『物語』をなぜ現在のアレックスが語っているのか。

きっとダヴィドとの恋は終わりを迎えてしまったのだろうけれど、

ダヴィドがくれたものはずっとアレックスの中にあって、

それを抱えながら、彼は未来を目指して歩いていくのかな、と思ったのじゃ。

 

2人の恋はたった6週間という短い時間じゃった。

その中でダヴィドは『自由』を求め、アレックスは『束縛』を求めた。

お互いに、無意識だったのかもしれんがのう。

惹かれあって、すれ違って、傷つけ合う、恋の姿が、

1985年のフランスという、レトロで美しい風景とともに描かれていく。

のどかで、ゆったりと時間が流れていて…、

どこか、この夏は終わらない、と思わせてくれるような。

そんな雰囲気じゃった。

 

この作品のおもしろい(といっていいのかわからないのじゃが)ところは、

この『2人の恋の模様』があくまでアレックス視点で語られるところじゃな。

そこにダヴィドの視点はなく、ニュートラルな神視点もない。

ただ、アレックスの見たものが描かれていく。

 

だからなのじゃろうか。

ダヴィドが最後まで、結局掴み所のない人のように感じたのは…。

人の心を完全に理解するのは不可能じゃと思う。

これはあくまで、アレックスが見た世界のお話なのじゃろう。

もしかしたら、実際のダヴィドはもっと違った人なのかもしれない。

その人の印象って、見る人によって違うと思うから。

 

アレックスの描いたダヴィドは、

不思議だけれど、とても魅力的で、いつでも自分を引っ張っていってくれる存在。

のように描かれていたように感じるのう。

アレックスには、そう見えたのじゃろうなぁ。

恋は盲目。とよく言うじゃろう?

 

 

◇ツキミの好きなシーン◇

 

ダヴィドのお墓の上で狂ったように踊るシーン。

ツキミ、とても胸がぎゅっとなって苦しくなったのじゃ。

いけないことだとわかっていても、ダヴィドのためだから。

そういう純粋な恋心もあるのかもしれんが、

ツキミは同時に『執着心』のような激しい心も感じたのう。

それから『別れ』も、じゃな。

お墓で踊る=ダヴィドとの別れの儀式

のようにツキミには見えたのじゃ。

 

とても印象的で、象徴的なシーンじゃと思ったのう。

一度見たら忘れない、そんな場面じゃったと思う。

 

それから、クラブで踊るシーンも好きじゃのう。

こちらは、2人がとても幸せそうで。

 

映画感想17『イノセンツ』大人は知らない子どもたちの超能力バトル

 

『イノセンツ』

 

◇あらすじ◇

 

郊外にある団地に引っ越してきた9才の少女イーダは、

同じ団地に住む少年ベンと出会う。

ベンには不思議な力があり、次第に別の少女や、自閉症の姉にも

能力が備わっていることが判明して…。

だんだんと大きくなっていく力はイーダたちを恐怖に陥れるのだった…。

 

 

◇感想(ネタバレ注意)◇

 

『大人たちの知らないところで子どもたちは不思議な力を使っている』。

こう聞くと、なんだかファンタジーでわくわくするのじゃが…、

設定はこうでも、この映画、中身はかなり不気味なホラーなのじゃ。

 

映画のメインとなるのは9才の少女イーダ、その姉である自閉症のアナ、

自閉症の姉と心で繋がることができるアイシャ、そして少年ベンの4人。

イーダ以外『特別な力』を持つものの、最初はその力の影響力は小さい。

たとえば、ちょこっと瓶の蓋を動かすことくらいなのじゃ。

だけれど、好奇心旺盛な少年少女は、能力の実験をしていくのじゃよ。

そうして、気づいた頃には『力』は成長していたわけじゃ。

 

ツキミ、この映画には様々な『闇』が描かれていると思ったのじゃ。

なにを考えているのかわからない姉に対するイーダの鬱憤。

なにをするにも姉が優先されることへの嫉妬のような気持ち。

家の外には決して持ち出されないであろう、ベンの過酷な家庭環境。

 

ストレスが溜まっているであろう、この2人は、

ごくごく自然に残酷なことをしたりしてしまうのじゃな。

イーダにはまだ良心があるようじゃったが…。

反対にアイシャとアナは『光』のように描かれていたように感じたのう。

 

さて、この作品じゃが、

手の付けられない力を持ったベンが、

その凶暴性を他者に向けていく、というお話になっておる。

特殊な力には特殊な力で対応するしかない。

ということで、イーダたちはベンを止めようとするのじゃな。

その攻防がかなりハラハラするし、どうなってしまうのじゃろう!?

と先が気になって気になってしかたなかったのじゃ。

 

途中、ツキミ的に「嘘じゃろ!?ショックなのじゃが!?」

と思う展開もあってのう…。今でも思い出すと悲しくなるのじゃが…。

そういう『え!?』と思うシーンがたくさん盛り込まれておって、

最後まで目が離せない作品となっておる。

 

蓋を動かす程度の能力だったベンが、人を操れるようになる。

気に入らないことがあると感情が爆発してしまう。

ベンの暴走は本当にホラーじゃった。

団地の外からじーっと部屋の中を見つめていたりとかのう…。

 

ただ、ツキミ思うのじゃよな。

もし誰かが、ベンの環境に気づいて、手を差し伸べていたら…。

もしかしたらこんなに恐ろしいことにはならなかったのかも、と。

 

『力』を手に入れて、それに飲み込まれてしまったベン。

『力』をきっかけに、姉と繋がることができたイーダ。

あまりにも明暗が分かれていたのう。

 

映画の中では『特別な力』で人を傷つけておったが、

力がなくても、人を傷つけてしまうことはあると思う。

それがなにげない『言葉』だとしても、じゃな。

言葉って使い方によっては恐ろしくなるものだと思う。

何百年生きてきた中で、傷ついたこともあった。

それが、ほんの些細な言葉だったとしても、じゃ。

記憶のどこかに保存されていて、ふとしたときに思い出す。

言葉って『力』なのかもしれないのう。

誰かを傷つけてしまうことも、誰かを助けることもできる。

ツキミは、優しくありたい。そう思うのう。

 

ちょこっと語ってしまったが、

この映画、ラストシーン…、いや、ラストバトルが熱かったのじゃ。

子どもたちが不思議な能力に目覚めていることを、大人たちは誰も知らない。

そんな中、ただ静かな戦いが行われるのじゃよ。

 

こうなるしか方法はなかったのじゃろうか…。

なんとも言えない悲しみとともに、

新たな物語の始まりを彷彿とさせるような、

そんな作りになっているラストじゃった。

 

どうやら、団地にはこの4人のほかにも、

能力に目覚めている子どもたちがちらほらおるようじゃ。

ただ…、描写のされ方の影響か、

ツキミはベンの意思を継いでいる者(操られている?)が

いたらどうしよう…、と不安になってしまったのう。

 

エンドロールまで不穏な作りをしておるし、

最後まで気の抜けないホラー映画なのじゃった。

 

◇ツキミの好きなシーン◇

 

最初こそアナへ意地悪していたイーダなのじゃが、

アイシャと出会うことで、

アナへの態度が柔らかくなっていくところが好きじゃ。

母から姉の面倒を見るよう言われ、

その母は、姉を一番に優先し、9才の少女には過酷な環境じゃと思う。

実の姉の心がわからない、というのも悲しいのかもしれんのう。

イーダにとって、アナは未知の存在で怖かったのかも。

物語を通して、姉妹の距離が近づいたことが嬉しかったのう。

 

映画感想16『キャビン』仕組まれたホラーと科学と魔術。

 

『キャビン』

 

◇あらすじ◇

 

ある日古びた山小屋を訪れた、大学生の男女5人は、そこで地下室を発見する。

不気味なもので溢れた地下室で学生たちは、とある日記を読んだことをきっかけに、

バケモノに襲われてしまう。

一方、襲われている彼らを監視している謎の組織も動き出し…。

 

◇感想(ネタバレ)◇

 

バケモノに次々に襲われていくホラー映画…。

なのじゃが、作りがとてもおもしろい作品じゃった。

 

なにも知らずにただ怪物に襲われ恐怖を味わうことになった大学生一行。

彼らを監視して『シナリオ』通りに大学生たちを行動させようとする組織。

この2視点が同時進行して作品が進んでいくのじゃ。

 

大学生たちはもちろん生死がかかっているのでパニック状態。

そして、彼らがなぜそんな目に遭っているかというと、組織の『計画』なのじゃ。

この『組織』は今まで何度もターゲットを決めて、このようなことを行っておる。

だから、感覚が麻痺してしまっているのか、

大学生たちがひどい目に遭う様子をモニター越しに見て楽しんでおったり、

シナリオがうまく進行すると大騒ぎして喜んだりもする。

なんとも狂気に溢れた世界観じゃ。

 

映画の冒頭からなんとなく察せられるのじゃが、

大学生たちは『生け贄』なのじゃな。

組織は、ある大きな目的のために生け贄の儀式を行っておるようじゃ。

どうやら世界規模らしいのじゃが、

科学の世界で、魔術的なものを取り入れている世界観がおもしろかったのう。

 

大学生達がパニックに陥っている状態で、

見ているこちらも情報量の多さに軽くパニック状態じゃ。

それくらい、はちゃめちゃな作品じゃった、とツキミは感じたのう。

 

生き残った大学生が組織の内部を暴いていくシーンがあるのじゃが、

映画を見ている側からすると『舞台の裏側』を覗いているような感覚で、

そこがおもしろかったのう。

 

怪物や怪異たちも大量に出てきて大騒ぎじゃし、

突然の銃撃戦アクションバトルにもなるし、

想像以上にスケールの大きなお話じゃったし、

「oh…BAD END」じゃし、

終盤がもう怒濤の展開すぎて、ツキミ瞬きしていなかったかも、なのじゃ。

 

血がたくさん出てスプラッタな雰囲気もあるのじゃが、

ツキミ的には終盤より、序盤の大学生たちが襲われるターンのほうが怖かったのう。

 

2視点で描かれている、という点だけでも、

おもしろいな、と思えるのでの。

興味ある人間様は見てみてもよいかもしれんのう。

 

ツキミは人外が好きなのじゃが、

この映画には、様々な人ではないものたちが出てきて「よかった」のじゃ。

バレリーナの人外さんが素敵じゃった。

あと、正直一番びっくりしたのはタイトルロゴが出るシーンじゃ。

突然すぎて本当に驚いたのじゃ…。

 

キャビン。

大学生たちがいた山小屋。

そして怪物たちがいる部屋。

2つの意味があるのかな、と思ったのじゃ。

 

◇ツキミの好きなシーン◇

 

組織側に仲良しな男性2人組がおるのじゃが、

この2人のノリが軽快で見ていて心地良かったのじゃ。

(やっていることはえげつないのじゃが…)

作品に良い感じにコメディ要素を加えてくれててのう。

 

組織側はコメディ寄り。

大学生側は完全ホラー。

2つがバランス良く合わさっていてとても印象に残る映画じゃった。

 

映画感想15『かがみの孤城』こころの思春期とミステリー。

 

『かがみの孤城』

 

◇あらすじ◇

 

いじめが原因で不登校になり、フリースクールにも通えずにいた安西こころは、

ある日、自室の鏡が光っているのを発見。

吸い込まれるように鏡の中へと入ると、

そこには孤城とオオカミさまと呼ばれる狼の面をつけた少女が立っていた。

孤城にはこころと同じく集められた子どもたちがいて…。

『願い』を叶えるための部屋の鍵を探すように言われるのだった。

 

 

◇感想(ネタバレ注意)◇

 

辻村深月さまの小説が原作なのじゃが、

ツキミ、その小説がとても好きでのう。

ファンタジーな要素が入ったこの作品、アニメーションがぴったりじゃと思ったのじゃ。

 

鏡の中にある孤城。正体のわからない狼の面をつけた少女の存在。

願いを叶えるための『鍵探し』。集められた同年代の少年少女たち。

言葉を並べてみるとわくわくしそうな冒険物語の始まり…、

という感じじゃが、心がぎゅっと苦しくなるような、

そんな『心の悩み』がたくさん詰まっている作品なのじゃよ。

 

学校にもフリースクールにも通えずいた、こころ。

だけれど孤城には『自分の事情』を知らない子たちがいる。

だから打ち解けられる。

孤城にいる子たちはみんなそれぞれ『言えない事情』を抱えていて、

それでも人に対して、とても優しく振る舞える子たちばかり。

なんて強い子たちなのじゃろう。

 

こころが主人公なのでな。

基本的にはこころの物語を追っていく感じなのじゃが、

いじめの描写だったり、いじめの原因だったり、

いじめによって引き起こされる『後のこと』だったり、

誰にも言えない苦しみだったり、誰にも理解されない苦しみだったり、

そういう細かな部分の描写が本当にすごくてのう。

小説を読んだときから、迫ってくるものがあったのじゃが、

アニメになると、そこに動きや声色などのお芝居が入ってくるからのう…。

より一層、悲しくて苦しくてどうしようもない気持ちになったのじゃ。

 

さて、この快適に過ごせる孤城。

永遠にいられるわけではなく、3月末までという期間限定、

さらに、夕方17時までに帰らなければ恐ろしい狼に襲われてしまう、

というルールがついておる。

そんな中でこころや少年少女たちは交流を重ねて、

次第に、きっと友だちになっていったのじゃと思う。

 

そして物語が進んでいくと湧き上がってくる疑問。

自分たちの共通点。現実でも会えるかもしれないという期待。

そしてこころたちを取り巻く意外な関係性と、オオカミさまの正体。

終盤の怒濤の展開は、涙なしでは見られないのじゃ。

ツキミ、本当にティッシュ1箱使う勢いで泣いていたのじゃよ…。

映画館で見たかったのじゃが、見なくてよかったのかも…。

 

作品の中で、こんなようなシーンがあったのじゃ。

学校に行っても行かなくても、選択肢はたくさんある。

正確な言葉じゃなくて申し訳ないのじゃが、こういう雰囲気の言葉だったはずじゃ。

学校に限らず、きっと人生の選択肢ってたくさんあるのじゃろうなぁ。

敷かれたレールが分岐点なしの一本道だったら、

それってものすごく苦しいことじゃと思うから…。

ツキミも、その『選択肢』を大切にしたいな、と思ったのじゃ。

 

さてさて。

この『かがみの孤城』で主にスポットが当たっているのは子どもたちなのじゃが、

大人たちにも素敵なスポットライトが当てられていてのう。

こころに優しく寄り添ってくれるフリースクールの晶子先生や、

こころとともに悩みながら成長していくお母さんの存在。

大人たちの世界もしっかり描かれていて、とても良かったのじゃ。

 

ツキミ、いろいろ映画を見てきた中で、

『母親』という存在が毒親として描かれている作品が多かったのでのう。

この作品のように、親身になってくれる母に出会えて幸せな気持ちになったのじゃ。

きっとお母さんも苦しかったのじゃと思う。

こころについて、いっぱいいっぱい悩んだのじゃと思う。

それでも決してこころを責めず、抱きとめてくれて。

そういう『無償の愛』のようなものが、またツキミの胸を熱くしたのじゃ。

 

思春期の悩み。

ファンタジーとミステリー要素。

壮大な冒険物語ではないけれど、

かがみの孤城の中で、間違いなくこころは冒険をして戦ったのだと思う。

そうして成長したこころの姿を、ぜひ見届けてみてほしいのじゃ。

 

また、小説、読みたいなぁ。

 

◇ツキミの好きなシーン◇

 

まだ誰もいない早朝、

勇気を出して登校したこころが、

下駄箱でとある『お手紙』を発見するシーン。

そしてそこで出会う、いじめが原因で疎遠になってしまった友だち。

そこからの一連の流れが苦しくてやるせなくて、

学校がいかに閉鎖的空間であるかを突きつけられたのじゃ。

 

学校って、楽しいこともたくさんあると思うのじゃが、

同時に、窮屈だと感じることも、あると思うのじゃよな。

それは学校に限らずなのじゃがな。

『枠組み』というのは、きっとどこにでもあるものじゃから…。

このシーンには、そういうしがらみを感じてのう。

とても印象に残ったのじゃ。

 

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