【大人の常識】お通夜の服装で女性が気をつけるべきポイントを解説
女性がお通夜の服装で気をつけるべきポイントについて解説します。
不幸の報(しら)せは突然やって来ます。悲しみや驚きで動揺してしまうこともありますが、お通夜では、故人を偲(しの)ぶ気持ちを表し、遺族を慰めるために、ふさわしい服装で駆けつけたいものです。
女性がお通夜の服装で気をつけたいポイントや、もしもの時に必要な常識について、年間250本以上の講義やビジネスマナーの連載・執筆などをこなし、著書「入社1年目 ビジネスマナーの教科書」(プレジデント社)がベストセラーとなった、マナー講師の金森たかこさんに聞きました。
お通夜は取り急ぎ駆けつけるもの
「取るものもとりあえず駆けつける」というのが、通夜の弔問であると昔から考えられています。従って、突然の訃報にもかかわらず喪服で行くと、「用意が良すぎる」という印象を与えてしまうと捉える方も、いまだにいます。
取り急ぎ駆けつけるといっても、故人や遺族に対する配慮は必要なため、華美な服装は避け、その場に合った服装を心がけることが重要です。男性は地味な色合いのスーツならば、会社帰りにそのままビジネススーツで向かってもよいでしょう。
一方、女性の場合はどのような点に気を配ればよいのでしょうか。例えば「白色のブラウス」「上下グレーのスカートとジャケット」を着ていた時に訃報が入った際は、下記を参考にしてください。
【インナーを黒に変える】
インナーのブラウスは、できれば黒色にしましょう。黒色でも、光沢のない素材を選ぶことも忘れずに。どうしても黒が用意できない場合は、白でも可能です。デザインはシンプルなもので、装飾が施されていないものにしましょう。
【ジャケットを黒のカーディガンに】
グレーのジャケットでも問題はありませんが、できれば、弔問には黒を取り入れたいところ。グレーのジャケットの代わりに、黒のカーディガンやジャケットを着用するとふさわしい格好になります。夏であっても、肘が隠れる程度の袖丈のものを選ぶようにしてください。ボタンはツヤ消しで光らないものを。
【黒手袋を持つ】
服装をなかなか変えられないという場合は、一部に黒を取り入れると印象が変わります。服装がグレーの上下でも、黒い手袋やハンカチを持つだけで故人や遺族に対する気持ちを表すことができるでしょう。ただし、焼香の際は手袋を外します。
【バッグは金具のない黒布製に】
服装とともに、バッグにも配慮が必要です。キラキラとした装飾があるものや、金具がついているものは避けましょう。シンプルな黒い布製のバッグが理想的です。ビジネスパーソンは、緊急時のために黒のバッグを会社に用意しておくとよいかもしれません。
【ストッキングは黒ストッキングに】
ベージュのストッキングやタイツなどは、お通夜の場にふさわしくありません。弔事の際は薄手の黒ストッキングが基本です。日頃から用意しておきたいアイテムですが、どうしても手持ちにない場合は、コンビニエンスストアなどで購入し、履き替えて向かいましょう。
お通夜に出席できない? こんな時の対処法
普段の服装によっては、替えようがないものなどもあります。そのような時も「お通夜に出席できない」と諦めるのではなく、最善の策を採って故人と遺族の元へ向かいましょう。
【パンツスーツを着ていて、スカートの用意ができない】
→急いで駆けつけたことを伝えれば許容
基本的には黒系のワンピースやスカートがよいのですが、お通夜の場合は急いで駆けつけたということで、パンツスーツでも許されるでしょう。ただし、色は黒か落ち着いた色合いのものに限ります。
気になる場合は、遺族に一言、「取るものもとりあえず伺ったので、このような格好で申し訳ありません」と伝えるとよいでしょう。
【革製のバッグしかない】
→地味な色の紙袋に入れる
革製のバッグや金具が付いたものしかなく、黒の布製バッグが用意できない時は、紙袋を活用しましょう。訪問前に、地味な色の紙袋にバッグを入れて、遺族や参列者などの人目に触れないようにしておきます。バッグ以外にも、時計や貴金属類、金具が目立つジャケットなども入れておくとよいでしょう。
【派手なネイルをしている】
→ネイルはオフするか手袋で隠す
マニキュアは透明なものや、目立たないマットなベージュ系なら気にする必要はありません。ただし、それ以外の色味のものは、基本的には落としてから向かうようにしましょう。中には、ネイルサロンで人工爪などをつけ、自分ではオフできない人もいるかもしれません。その場合は、光沢のない黒の手袋で覆い隠して行くようにしましょう。
【金ボタンが目立ってしまう】
→できれば黒のボタンカバーを
金ボタンはお通夜の場にはふさわしくないため、可能なら黒のボタンカバーで隠したいものです。ボタンカバーは礼服を扱っている店や手芸店で入手できます。それが難しいなら、遺族におわびの言葉を添えましょう。ジャケットに金ボタンが付いている場合は、脱いでしまっておくのがベストです。
【暖色系、派手な服装のまま】
→おわびの言葉を添えて出席
どうしても時間がなかったり、準備ができなかったりして、お通夜の場にふさわしくない格好で向かわなければならなくなった時は、遺族におわびの言葉を伝えて出席することになります。「こんな格好で申し訳ありませんが、お参りさせてください」と言葉を添えれば、故人のために駆けつけたかった気持ちが伝わるはずです。
ブラックフォーマルのマナー
「お通夜は急いで駆けつけるもので、喪服は逆に印象が悪い」という意見がある一方、最近は、お通夜からブラックフォーマルで出席する人が増えているのも事実です。また、地域によっては、お通夜であっても喪服が常識なところもあります。
状況によって、お通夜も喪服で出席しますが、ブラックフォーマルのマナーを改めて確認しておきましょう。
【女性は黒のワンピースやアンサンブル】
一般弔問客は、お通夜・葬儀の場の雰囲気を壊さない配慮が必要であるため、黒の礼服で臨むのが基本です。女性の場合は、黒のワンピースやアンサンブル、スーツがよいでしょう。肌をあまり見せないような、襟元の開きが少ないものを選びます。たとえ夏場であっても、半袖ではなく、肘が隠れる五分袖などにしてください。
【スカートは膝下丈に】
スカートの丈は必ず膝下のものにしてください。動いた時や座った時に膝が見えることのないよう、注意が必要です。一般弔問客や近親者は「準礼装」と呼ばれる膝下が基本です。喪主や葬儀委員長、亡くなった人の家族などは「正礼装」が正式となりますが、最近では、遺族や親族でも準礼装を着用する方が増えています。
【アクセサリー、小物も黒で統一】
黒一色の装いに、柄のものが入ると非常に目立ってしまいます。アクセサリーは、ジェット(黒琥珀)、パール、ブラックパール、オニキス、黒曜石などを選びます。ネックレスは「悲しみを重ねない」という意味で、1連のものにしましょう。ハンカチは黒か白の無地が基本です。傘も黒のものがよいでしょう。
【靴・バッグはツヤのないもの】
靴やバッグはツヤのない黒のものがよいでしょう。革製品は殺生を連想させるため、基本的にNGです。靴、バッグともに布製のものが理想的です。しかし、現代では、黒の革靴、黒革のバッグで参列される方も多くいらっしゃいます。その場合は、革製品でもツヤ消しで金具がないものなどにしましょう。
靴は、つま先とかかとが隠れ、ヒールは高くないローヒールパンプスにします。ミュールやバックストラップ、ブーツなどはNGです。
【凝ったデザインの黒い服は避ける】
黒い色で統一すればよいというわけではありません。黒だからといって、派手なデザインのものや、華美な装飾があるものはふさわしくありません。また、光沢のある生地を避けるなど、素材も気をつけて選びたいものです。
【黒い腕章(喪章)だけをするのは避ける】
「喪章」は、葬家の人や葬儀社の人が着けるものです。一般弔問客が喪章を巻いたからといって、平服が喪服扱いになることはありません。
危篤の報せを受けた時は
身近な人の場合、危篤の報せを受けることもあるでしょう。危篤の報せというのは、どうしても会ってほしいという家族からの要望であり、何をおいても駆けつけたいものですが、どのように行動すべきでしょうか。
【まずは場所だけを確認】
危篤という状況の中で連絡をくれた家族のためにも、話は長引かせず、最低限必要な場所だけを確認するようにして「すぐに向かう」という意思を伝えます。
【遠方の場合は喪服や香典の準備を】
たとえ危篤の報せであっても、遠方の場合は喪服や香典を用意していきます。その際には、報せをくれた家族にわからないようにする配慮が必要です。下記の方法を採るなどして、あらかじめ準備しておきましょう。
・最寄りの駅のロッカーに入れておく
・家族などに頼み、宅配便で後から送ってもらう
・後から来る人に持ってくるよう依頼する
・宿泊施設宛に送り、預かってもらう
正しいマナーで故人を偲ぶ
「不幸の報せはないに越したことはありません。しかしそうもいかず、そのような知らせは大人になるにつれて増えてくるものです。日頃から通夜、葬儀用の喪服など、いざという時にすぐに駆けつけられる準備をしておきましょう。ビジネスパーソンであれば、会社に1着、黒いスーツを置いておくのも手です。
慌てず正しいマナーでお通夜に出席することは、何よりも故人を偲ぶことにつながります。一番ショックを受けているのは遺族です。遺族を慰め、配慮する余裕が持てる大人でありたいものです」(金森さん)
(オトナンサー編集部)
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