「音楽と美術のあいだ」 22日オープンです!

otomojamjam2014-11-20

 気づいた方もいるかもしれません。実は今回の「音楽と美術のあいだ」というタイトル、昨年の暮に突然この世を去ってしまったギャラリー「梅香堂」のオーナーでキュレーターの後々田寿徳さんの恐らくは最後の文章となった「美術(展示)と音楽(公演)のあいだ」(芸術批評誌REAR 29号所収)を受けたものなんです。


 ここでは梅田哲也、Sachiko M、そしてわたしを例にだして、普段僕ら音楽家や音楽と美術の境界で活動する作家が、美術の世界へ抱く違和感がどこからきているのかが丁寧に綴られていて、かつそれは批判的な視点ではなく、むしろ、そこから先への展望を模索するようなものとして読める文章で、僕は本当に大好きなテクストでした。


 これを受けてなにか書こう、そしてこの先のことをなにか一緒にやれないか、そう思っていた矢先の2013年12月29日、後々田さんの訃報が飛び込んで来ました。51歳でした。




 後々田さんのキャリアはICCの学芸員から始まっています。 だからというわけではないけど、後々田さんの文章へのアンサーを、文章ではなく、ICCの展示でやることにしました。それが今回の展示です。
 この展示は、すっと再演の機会をさぐっていた作品「quartets」と、新作の「guitar solos 1」、そして、様々な人に書いてもらった「音楽と美術のあいだ」というタイトルのテクストの展示で構成されています。後々田さんのテクスト「美術(展示)と音楽(公演)のあいだ」も会場で読むことが出来ます。


 「quartets」は今から6年前の2008年、わたしにとっては本当に大きな転機となったYCAM(山口芸術情報センター)での展示「ENSMBLES」の中の作品で、8人の即興演奏家のシルエットが会場中央のキューブに投影されランダムに組合わさって行く音楽作品です。アイディアそのものは10年以上前からあったもので、音楽とも美術ともつかないような領域の作品という意味では「without records」とともにわたしの原点とも言えるものです。
 完全な形での再演は今回が最初になりますが、ただの再演ではなく、ICCの場所にあわせて、テクニシャンでアーティストの平川紀道、YCAMのテクニシャンの濱哲史、伊藤隆之、そしてSachiko M等とともに、映像、音ともにかなりの調整を加え作り込みなおした作品になっています。


 出来ることなら、この作品、ちょこっと見るのではなく、コンサートのように、じっくりと聴いてやってください。3ヶ月間の会期中、一度として同じ瞬間はありません。通常の音楽であれば、始まりと終わりがありますが、この作品の始まり、そして終わりは、見に来た人が自由に決めることができます。それ以上のことは、あまり事前に言うと野暮になってしまうので、あとはどうか会場で楽しんでいただければ。



 今回は「quartets」に加え、ICCの階段部分に16本のスピーカーを設置した「guitar solos 1」という、音だけの作品も展示しています。こちらは100近いわたしのギターソロの断片の録音ファイルをある方向性を持たせてランダムに組み合わせるもので、テクニシャンで作曲家でもある松本昭彦にシステムを作ってもらいました。録音はGOK SOUND。使ったギターは、わたしが心から敬愛するあるギタリストが、生前実際に使っていたGibson ES-175です。ギャラリーではなく、階段という半分公共のスペースというか、通路に設置した作品なので、こちらはじっくり鑑賞するというよりは、もう少しアンビエントな性格をもった作品になっていると同時に、わたしにとっては、この先つくっていく展示作品の習作的な意味ももっています。こちらも会期中同じ瞬間はありません。常に変化し続けます。


 
ということで「音楽と美術のあいだ」展は今週土曜11月22日オープンです。
お見逃しなく!


でもって年内にICCでやる関連イベント情報です!

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オープニング・トーク1
11月22日午後2時より
出演:大友良英×畠中実(ICC)


オープニング・トーク2
11月23日午後2時より
出演:大友良英,Sachiko M,毛利悠子,藪前知子(東京都現代美術館学芸員)
司会:畠中実(ICC)


「大友良英 音楽と美術のあいだ」展のオープンに際し,この展覧会のテーマである,「音楽」と「美術」という,ふたつの異なる芸術表現における相違,関係,関連などについて考えるトーク・イヴェントを二日間にわたり開催します.


一日目は,大友良英氏とICC主任学芸員 畠中実との対談を行ないます.ここでは,展覧会の企画意図や展示作品の成り立ちなどを通して,「音楽と美術のあいだ」について,また,それらふたつの表現,制度のあいだにある問題点などについてじっくり話しあいたいと思います.


二日目は,大友氏,音楽家 Sachiko M氏,美術家 毛利悠子氏,東京都現代美術館学芸員 藪前知子氏をお迎えしてシンポジウムを行ないます.異なる立場から大友氏を大いに触発する方々とともに,それぞれの状況から照らし出される「音楽と美術のあいだ」について議論をしたいと思います.


会場:ICC 4階 特設会場
定員:250名(当日先着順) 入場無料

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Filament live
12月23日(火・祝)午後7時より
出演:Filament(大友良英、Sachiko M)
会場:ICC 4階 特設会場
定員:300名
入場料:1500円

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大友良英ギター・ソロ
2015年1月24日(土)午後7時より
出演:大友良英
会場:ICC 4階 特設会場
定員:300名
入場料:1500円

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2月11日、2月20日にもライブを予定。詳細は後日発表!


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大友良英 音楽と美術のあいだ
OTOMO Yoshihide: Between Music and Art

会期:2014年11月22日(土)─2015年2月22日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA
開館時間:午前11時─午後6時(入館は閉館の30分前まで)休館日:月曜日
(月曜が祝日の場合翌火曜),年末年始(12/29─1/5),保守点検日(2/8)
入場料:一般・大学生500円/高校生以下無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
協力:山口情報芸術センター [YCAM]
FOSTEX
制作協力:Sachiko M&
住所:〒163-1404 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
フリーダイヤル 0120-144199
E-mail:[email protected]
http://www.ntticc.or.jp/




展示作品


《quartets》2008年(YCAM委嘱作品)
大友良英+木村友紀+ベネディクト・ドリュー+平川紀道+石川高+一楽儀光+ジム・オルーク+カヒミ・カリィ+Sachiko M+アクセル・ドゥナー+マーティン・ブランドルマイヤー
共同開発:YCAM InterLab


展示室中央に設置された白いキューブの各側面にミュージシャンのシルエットが投影され,キューブの内部からはミュージシャンたちによる演奏音が聞こえてきます.このシルエットと演奏音は,8名のミュージシャンが個別に即興演奏を行なった様子を事前に記録したものです.各シークエンスの時間的な配置がコンピュータ・プログラムによって制御されることで,相互に干渉し,にじみあうようなアンサンブルが絶えず生み出されます.
キューブの各側面と正対する展示室の壁面にはスクリーンが設置され,木,鉄,液体などで作られたオブジェのディテールが映し出されます.これらの物質の映像は,キューブに投影されたミュージシャンの演奏に合わせて振動/流動していきます.
観客は,キューブの4面,さらにそれを取り囲む壁面を同時にすべて見ることはできないため,すべての演奏者の音を同時に聴くことはできても,全貌を見渡すことはできないしくみとなっています.


ディレクション/サウンド・コンポジション:大友良英
アート・ディレクション(キューブ・スクリーン):木村友紀
ヴィデオ/オブジェクツ(アウター・スクリーン):ベネディクト・ドリュー
アルゴリズム・デザイン/プログラミング/システム:平川紀道
録音/音響調整:伊藤隆之(YCAM)
撮影:大脇理智(YCAM)
撮影アシスタント(キューブ・スクリーン):村田宗一郎
テクニカル・サポート:濱哲史
ギター/ターンテーブル:大友良英
ヴォイス:カヒミ・カリィ
シンセサイザー/ギター:ジム・オルーク
笙:石川 高
パーカッション:一楽儀光
トランペット:アクセル・ドゥナー
ドラムス/パーカッション:マーティン・ブランドルマイヤー
サインウェイヴス:Sachiko M



《guitar solos 1》2014年 ※本展のための新作
ギャラリーAに通じる階段で展開されるサウンド・インスタレーション.8―10対のスピーカーが階段の両側に設置されます.
それぞれのスピーカーからは,事前に録音された大友演奏によるギターの音がランダムに再生されますが,全体を一度に聴くことはできません.
通りすぎたり,立ち止まったり,または階段を上り下りしながら作品を鑑賞します.
プログラミング/システム:松本昭彦
機材協力:FOSTEX


「音楽と美術のあいだ」についてコメント集
音楽家,美術家,批評家,キュレーターなど,音楽と美術のそれぞれの領域で活動する人々のコメントを集めて展示します.あわせて「音楽と美術のあいだ」に関する論考なども掲載する予定です.