「暦の上ではディセンバー」制作秘話の追記

三陸久慈市でこれを書いてます。


情報公開になったようなので、6月28日のブログ「暦の上ではディセンバー」制作秘話の追記、書かせてもらいます。
前回制作秘話の中で歌ってるのは「アメ横女学園芸能コース」と書きましたが、もちろんこれは劇中のみの架空のグループです。実際に歌っているのはアイドルグループのベイビーレイズの5人と、アメ横女学園芸能コースの成田りな役で出ている水瀬いのり、さらにはコーラス部分にあと4名ほど加わってもらいました。


作曲当初は、ドラマがはじまる前で、このあたりの台本もまだ未完成の状態でした。参加メンバーだけでなく、多くのスタッフが、ドラマの中でどんな風に使われるのか把握する前、正確には、この曲がどういう意味をもつのか把握しようとみながもがいている時期でした。
この先は、あくまでもわたし個人の感想ですが、当初はそこまで出る予定がなかった「暦の上ではディセンバー」が、曲の完成後は、台本の上でも、演出上でも、使用頻度が増えていったような気がしています。宮藤さんや、演出陣、音響チームが、この曲を気にいってくれたからかもしれません。なんか、そのことが、音楽チームはとっても嬉しかったのです。
ドラマの中でこの曲は、奈落とステージ、シャドーと光の当たる人の間を見せて行く象徴的な曲になっていきました。そんなわけでサントラCDにも入っている劇伴の「奈落」(ほかにもいくつものバージョンがありますが)は、「暦の上ではディセンバー」と対になる形で生まれた曲でもあるのです。


わたしの書き方のせいか、わずか一晩でこの曲をつくったと、誤解されてしまったかもなので、付け加えさせてもらえれば、前回も書いた通り、あくまでも一晩で完成したのはデモ音源のみです。それも撮影の進行や振り付けをつける関係で、その日のうちにデモ音源を間に合わせなければならない・・・というドラマならではの厳しい事情あっての話です。いずれにしろ、作曲そのものは、いつも、出来るときは即興演奏のように早いことも多いのです。でも音楽は作曲だけで出来てるわけではありません。問題はそれをどう音にしていくかです。
実際にこの手の曲を完成させるには、沢山のプロセスを経ます。まずはドラマの中でどう生かしていくかを総合的に考えつつ音楽的なディレクションをたてねばならず、その上でアレンジを練り、コンピューターの中での打ち込みと呼ばれる作業もあり、さらに実際に録音があり、その先にミックスダウンという録音した音にある方向性をつける非常に重要な時間のかかる作業があるわけで、デモから完成までには2ヶ月を要してます。そのくらい徹底的にやらなければ、現実のヒット曲に負けてしまいます。


それと、これも、前回書きましたが、どうも私の名まえばかり出がちなので、もう一回書かせてもらうと作曲は、Sachiko M、江藤直子、高井康生、そしてわたしの4人です。潮騒のメモリーも書いたメロディーメイカーのSachiko M、劇伴でもピアノ演奏や編曲を手がける江藤直子のソングライティングの能力、そしてこの曲の方向を決定づけた高井康生のリズムやアレンジ能力の上に、シャドーとして参加してくれたベイビーレイズや水瀬いのり、コーラス参加のみなさん、かわいしのぶのベース、音響、録音スタッフが全力で作ったからこそ出来た楽曲だということも改めて付け加えておきます。