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「“なでしこ級才能”があっさり引退」「食べていけない職業と考える層も」“最高年俸約1000万円”の女子サッカー界…心理的な壁の内実

posted2024/12/13 11:04

 
「“なでしこ級才能”があっさり引退」「食べていけない職業と考える層も」“最高年俸約1000万円”の女子サッカー界…心理的な壁の内実<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

若き才能が花開きつつある、なでしこジャパン。ただし国内女子サッカーを取り巻く待遇については、決して恵まれているわけではない

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阿部博一/小野ヒデコ

阿部博一/小野ヒデコHirokazu Abe/Hideko Ono

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 Jリーグのシーズンが終わり、移籍や契約満了のニュースが多く流れる。その中で選手視点で現状と“ネクストキャリア”をどう考えていくべきか。元プロ選手と、アスリートのキャリアを追うライターの2人が契約・収入事情など幅広くリサーチした著書『サッカーで、生きていけるか。プロへの道筋と現実、ネクストキャリアの考え方』(英治出版)から一部転載でご紹介します。
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プロキャリアへの不安は女性のほうが大きい?

 女子選手がプロになるパスウェイは、基本は第2章で紹介したものと同じです。WEリーグ下部組織のユースチームからトップチームに昇格していくステップが軸になりますが、女子の場合は高校サッカーが盛り上がりを見せています。

 全国高等学校体育連盟の統計によると、2008年には女子サッカー部がある学校は394校、部員は7164人だったのが、2023年には681校、9751人に増えていることがわかります。2023年には10年ぶりに競技人数1万人を下回りましたが、学校数は前年比マイナス6校にとどまっています。

 ただ、男子と比較すると差は歴然です。

 2023年の男子サッカー部のある学校は3884校、競技人数は14万7086人で、競技人口は女子の約15倍にのぼります。

 高校女子サッカー人口は増えているものの、「競技志向の人はひと握りというのが肌感覚です」と前出の手塚大介さん(※10年以上女子サッカーの指導にあたっている)は言います。

 数値だけ見ると、男性のほうがプロになる競争率が高く厳しいように見えますが、現状はそう単純ではないと思います。

 大前提として、最初から「サッカーを職業にして食べてはいけない」と考える層は一定数います。それは男性でも当てはまることですが、取材を通して、高校卒業や大学卒業時をひとつの区切りとしてサッカーを離れる選手は女性に多い印象を受けます。

結婚、出産、育児…不安を抱く女性アスリート

 10代のサッカー競技者に長年関わっている手塚さんも、同様の見解でした。

 WEリーグができ、これから女子選手の地位を向上させていく機運が高まってくる過渡期です。そのなかで、「プロになるなんて」と潜在的に自分に制限をかけてしまっている人は競技志向にはならないため、そもそもプロへのスタートラインに立っていないのではないでしょうか。

 それは男子選手も同様ではないかと思うかもしれませんが、学生/社会人アスリートのキャリアを支援するNPO法人Shape the Dreamが興味深いアンケートをとっています。

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