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兄の死、酒と夜遊び、行方不明……栄光と挫折を繰り返した「元Jリーグ得点王」のジェットコースターのような人生とは
posted2022/01/14 06:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
昨年末から今年初めにかけて、ブラジルのフットボール界で話題を集めた出来事があった。
元ブラジル代表FWジョーが12月9日のリーグ最終節に出場した後、友人が主催したパーティーへ出かけたきり、3日間消息を絶った。一時は「行方不明か」と騒がれたが、4日後、自身のインスタグラムに投稿。「これまでいつも僕を助けてくれた妻を失望させてしまった。僕は大馬鹿者だ。今後は一人で生きていく」とコメントし、自身の不倫と妻クラウジアさんとの離婚を匂わせた。
ところが1月2日、今度は妻に寄り添って笑顔を浮かべた写真を掲載。「愛する人よ、僕と一緒にいてくれてありがとう。これからも、家族みんなで共に歩んでいこう」と記したのである。
平均身長185cmの巨人一家
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ジョアン・アウベス・デ・アシス・シウバ。「ジョー」は子供の頃からのニックネームだ。
身長191cm、体重80kgと大柄だが敏捷で、足元の技術があり、相手守備陣の裏へ抜けるのも巧み。空中戦で圧倒的な強さを誇り、左利きだが両足から強烈なシュートを放つ。心身のコンディションさえ万全なら、天下無双のストライカーだ。
サンパウロの貧しい地区で、4人兄弟の末っ子として生まれた。父親も元プロ選手だが大きな成功を収めることはできず、結婚を機にタクシー運転手になった。母親は家政婦や掃除婦として働いた。
父親に会ったことがあるが、身長187cmの偉丈夫。妻も183cmあるそうで、「平均身長は185cmくらいかな」という巨人一家なのだった。
父親は息子2人に自分が果たせなかった夢を託したいと考え、コリンチャンスのアカデミーへ入れた。長男はCBで、20歳にして念願のプロ契約を結んだ。ところが、初めて買った車でドライブをしていて、電柱に激突して即死。一家は悲嘆に暮れた。
当時15歳でコリンチャンスのU-15でプレーしていたジョーも、大変なショックを受けた。しかし、「兄貴の分まで自分が頑張ろう」と覚悟を決め、以前にも増して練習に励んだ。
この年、ジョーはU-15のサンパウロ州選手権で得点王。マンチェスター・ユナイテッドのスカウトから声をかけられたが、コリンチャンスに残ってU-17でプレーする道を選んだ。
18歳で4歳上の元サンバダンサーと結婚
トップチームのCFのレギュラーと控えが同時期に故障したことから、U-20を飛び越えてトップチームへ昇格。2003年7月、クラブ最年少出場記録を更新する16歳4カ月でデビューした。翌月、ブラジルリーグの試合で初得点をあげ、クラブの最年少得点記録も塗り変えた。