個人的インターネット（というかWWW）前史

この記事は「インターネット老人会 Advent Calendar 2023」9日目の記事です。

adventar.org

はじめに

こんにちは。初めましての人もいるかも知れません。今更自己紹介めいたことはしませんが、歴だけは長い弱小ブロガーです。飲み会のついでに誘われたアドベンドカレンダーなるものに初参加であります。
今日は極めて個人的な、昔の思い出を記録として綴ってみたいと思います。とりとめのない文章で学びはおそらくありませんが、お付き合いいただければ幸い。

初めてのパソコン通信

「ひーとびとの、ひっとびっと」でおなじみ？のSONYのMSX2を所有していた私、親に馬券を買えるとそそのかし、モデムを入手。1200bpsというやつです。今からすると気が遠くなるような通信速度ですね。わからない人だらけだと思うのでちょっと計算してみると1秒間に1200bitというのはbyteに換算すると150byte、大体回線損失を考えるとせいぜい6割と考えて90byte、これは1GByteのデータを通信するのにおよそ10年くらいかかる計算になりますね！速い！
この超速のモデムでパソコン通信に乗り出そうと思った少年、しかし、商用のパソコン通信（Nifty-Serveとか）にお金は出せない。そこで、MSXの雑誌で見かけた「コンパイルの東京支社がやっていた草の根BBS」に登録してみることにしました。東京在住なので電話代も安心！（パソコン通信というのは通信先と無限にFAXをしているようなものなので、電話回線をずっと繋いでおく必要がありましたから、市外に電話をかけるというのは大変なお金がかかります。（ちなみに当時ソフトメーカー系で有名だったのはアリスソフトですが大阪06だったので怖くてかけれない）

そこではいろんな方と知り合いになり、会話をしました。もう当時どんな人がいたのかさっぱり覚えておりませんが…
端末の向こうの見知らぬ人とコミュニケーションが取れるのがそれだけでも楽しい。アマチュア無線をしていた人もこんな気分だったんでしょうか。

草の根BBSの日々

高校生になってPC-9801を手にした少年、モデムもちょっとグレードアップして、テレホーダイ（23時以降、市内の電話にかけ放題というパソコン通信向けのNTTのサービス）にも加入し、親が寝てる間にパソコン通信に励む日々が始まりました。当時出入りしてたのは一部で流行っていた「絵理香」というホストを使った草の根BBSでした。草の根BBSのホストをやるというのはかなり大変なことで、まず、参加する人がいつでも接続できるように専用の電話回線を用意しなければならない。回線1本引くのに7万円かかる時代です。で、快適にしようと思ったら回線を複数用意して、モデムも複数用意しなければならないし、沢山モデムをつなげるようにパソコン側も拡張しなければならない。大変です。当時は気にしてなかったけど、今思うと本当に個人でホストをやっていた人たちには頭が下がります。そんな個人勢のやっていた草の根BBSはとても楽しかった。絵理香はメニューの数字を入力することで、今のBBSでいうところの「板」にショートカットで移動できるんですが、トップメニューに記載のない裏の板なんてのも作れたから、そういうのを探して楽しむというのが面白かったんですが、これはホストの方がそういう風に僕らを楽しませてくれていた、ということでもあります。僕は未だにブロガーをやっていることでもわかるとおり、雑多な文章を書くことが好きだったので、随分入り浸りました。そして、なんとオフ会にも参加。僕は当時はかなりのものぐさかつ人見知りだったので、そんなことを自分がするとも思っていませんでした。
ホストのYさんの家でのオフ会だったんですが。彼は車椅子の方で、自分が自由に出かけられないことの代わりにBBSの世界を作ったような方でした。オフ会という体験は自分にとってはとても新しい世界でした。
なお、当時BBS内交流していた人はその後リアルで思わぬ関係があったことが判明したり、インターネット時代になって池袋で一緒に音ゲーしてた仲間だったりしました。

当時、絵理香を使っていて有名で大手だったホストに「東京～（あえて伏せておく）」というのがありまして（東京BBSじゃないよ）、おそらく当時東京圏で草の根BBSやっている人はだいたい知っているんじゃないかと思われますが、まあちょっと運営が…それっぽい感じで…今足跡をたどると関係者のその後がまあちょっとそれっぽい感じで当時の自分の勘は間違ってなかったんだなと思いましたが、そこで「安い28800bpsのモデム」というのを売り出しまして、だいぶ稼いでたんじゃないかと思いますが、それが売れた理由の一つに、隠しページにイケナイアレがおいてあったというのがありました。うん。アングラへの入り口でしたね。そんなこんなで今思うと２ちゃんねるの源流みたいな感じもしますが、そこではノリが合わない感じであまり活動していなかったかな。ただ、そこをハブにいろんな草の根BBSに行ったりはしていた気がします。ただ、自分の居場所はYさんのBBSだ、とずっと思っていました。それもインターネットに軸足を移すまででフェードアウトしてしまったのが今となっては心残りです。

WWWとの邂逅

大学に入ってついに本格的にインターネットなるものに触れる機会ができました。1995年のことです。東京BBSのメールがインターネットに繋がった、ということでe-mailアドレス自体は持ってたんですが、別に送る相手もいないわけで、やっぱりWWWなるものを見たいわけですよ。ホームページ。幸い、入った大学には一般教養のレベルで履修できる情報系の授業があり、Unixのアカウントをもらうことができ、インターネットに接続されていると噂のSolarisが、確かにマシンルームに鎮座していました。当時はパソコンですらWindowシステムを触っている人はごく少数（もうすぐでるWindows95が一般人としてWindowシステムを触る最初の機会だった人は多いでしょう。Windows3.1に触れたことがある人はそんなにはいない。Macの人は例外だけど当時のMacというのは一般的には超高級品です）という時期にMosaicを起動してホームページにアクセスしたときに感動ってわかります？ガラケーがスマホになったよりもすごい変化に感じました。

Windows95の時代になっても個人がインターネットに繋ぐ敷居は高いものでした。当時大手だったプロバイダーはIIJ（金持ちが繋ぐもの）とBekkoame（これもまあお高い）で、回線が太く快適と聞きましたが、当然そんなお金を出せない。そんなときにさっそうと現れたのが我らが？Hot Cafeです。これは接続中にデスクトップにバナー広告が出るというだけで、無料で使えるという、今のインターネットビジネスの言及のような仕組みでサービスを提供していたプロバイダーです。結局すぐ潰れちゃったけど。23時になると同時に、Hot Cafeのそこまで多くないダイアルアップ先（草の根BBSと一緒で当時のインターネットは電話回線で繋いでいたので、向こう側が持っている回線数によってはいつまでたっても話し中で繋がらないのです。大手のプロバイダーは回線数が多くて繋がりやすい一方で、こういうサービスは回線争奪戦）に一斉に仕掛けるわけですね。テレホーダイを活用することで遅い回線速度を補っていたわけです。

大学に入ってしばらくして音ゲーブームがやってきますが、そのときに池袋で活動していたので仲間内のHPを作ったり、昔の草の根BBSの知り合いとリアルで邂逅したりといろんな出来事がありました。

多分、僕より一回り上（先）の世代の人はnetnewsを中心としたWWW前史を持っている人が多いと思うし、商用BBSを使っていた人も多いと思うんですが、その時代を中高生として過ごした僕はお金があまりかからない世界で楽しんできた、いや、楽しませてもらってきたんだなあと改めて思います。パソコン通信「当時の話」なんてのも、おそらくこの生息していた世界の違いで随分違う景色が見えてるんじゃないかなあと思ったりしますが、まさにこれからインターネットが広がる、というその時代に若者として居合わせたことはとても良い経験だったと今になって実感しますね。

おわり。