先日読んだ上巻に引き続き、下巻も読み終わりました。
下巻ではローマへの旅路においての物語が書かれています。
宗達とマルティノたちが海外でどのようなものに触れ、どのように感じたか。本当にフィクションと思えないほどにリアルに書かれています。
京都国立博物館の館長を務めておられた佐々木丞平氏(現在はなんとお呼びすればよいのだろう…名誉教授?名誉館長…?)が本の最後に解説をされているのですが、本当に佐々木氏の仰る通りだと首を赤べこのように振らずにはいられませんでした。
この小説の中で描かれる情景、人物の様子やその心理描写の一つ一つが驚くほど細やかで、この作家の筆の冴えのようなものを感じるが、そればかりではなく、画家や絵に対する並々ならぬ知識と関心の深さ、そして歴史の長大な時の流れを経てなお、目の前に存在し続けている絵に対する慈しみと、限りない愛情が言葉の端々に感じられるのも、この小説のもう一つの魅力であろう。
——「風神雷神 下」佐々木丞平氏による解説
作中で、宗達とマルティノがミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチの絵を見て、まるでその情景を実際に目の前で体験しているかのように感じ涙するシーンがあったけれど、わたしにとってはこの小説が正にそれでした。宗達と共にローマへの旅路を歩んでいるような、そんな感覚を感じさせてくれる原田マハさんの筆致に、ただただ深く感心するばかりです。
あの国宝《風神雷神図屛風》がこういった経験を経て生まれたのかもしれない…そう考えるだけでも何だかワクワクして来るのです。それが例え謎多き絵師についての『夢物語』だったとしても、それだって立派な『物語』に違いないのだとわたしは思いました。
いやー本当に原田マハさんはすごい。