医学部入試女子学生差別の問題はさらに波及している。過日は大学トップの方が
「女子の方がコミュニケーション能力が高いため補正した」(NHKニュース記事より引用)という釈明により批判を浴びている。しかも、
根拠として引用されたという論文(Cohn, 1991)の結論は「egocentricity (自己中心性) の性差」であり、コミュニケーション能力の差ではないという点で、さらに燃料が投下されたようだ。
このような性差・ジェンダー差に関して、実は最近、気づいたことがある。石井裕先生@MITメディアラボ副所長をオフィスにお迎えしたとき、AXIS表紙になっている別刷りにサインをして下さったのだが、「3つの力(出杭力、道程力、造山力)のうち、どれを書きましょうか?」と言われて、「(えっ? えっ? えっと…)出る杭でお願いします」と申し上げた。
こういうとき、自分の気持ちに一番正直な選択肢を人間は選ぶのだと思う。
石井先生は総長他の先生方との夕食会でも同様に別刷りサインを下さったのだが、「何力って書きましょうか?」という問いに対して、その場の男性の先生は皆さん「造山力」と答えていらした。
それでもって、私は自分の人生のポリシーやストラテジーや拠り所、とリーダーとなる男性の先生方のそれの違いを認識した。
東北大学の執行部役員や部局長になられる方々は、皆、一国一城の主になる、大きな山を築く、ということを人生の目標として来られたのだろう。
かたや、私はひたすら「ユニークであること」を選択の基準にしてきたのだと思う。それは研究における創造性という観点でもある。みんながやっていない研究、狭いニッチな分野を選ぶことをポリシーとしてきた。
その結果として、常に「出る杭」として打たれても折れない「しなやかさ」や「スルー力(するーりょく)」を培いつつ人生を生きて来たので、思わず「出杭力」という言葉が自分にぴったりだと思ったのだろう。
私より若い方々に言いたいことは、石井先生の言葉を借りるなら「出すぎた杭は打たれない」ということでもあるし、金子みすゞの詩を引用するなら「みんなちがって、みんないい」。そして、女性の中で「造山力」をポリシーとする方がもっと目立ってくれても良い。
こちらはオフィスのガラス黒板に石井先生が残して下さったサイン。