東北大学は8月23日、6億5000万年前から6億3000万年前の地球が赤道直下の熱帯地域まで氷河で覆われた「全球凍結」時代からその解氷時に形成された地層の岩石資料を分析し、全球凍結中にも光合成生物(藻類)が存在した証拠および解氷後に生物量極小を経て真正細菌が増殖し、その後に真核生物が繁栄した証拠を得たと発表した。
同成果は、東北大大学院 理学研究科 地学専攻の静谷あてな大学院生(現・福井県立恐竜博物館研究職員)、同・海保邦夫教授(現・東北大名誉教授)、中国地質大学のJinnan Tong教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、環境から生態学まで地球を題材とした学術誌「Global and Planetary Change」に掲載されるに先立ち、オンライン版に先行して掲載された。
地球の環境は誕生後、決して平坦だったわけではないことがさまざまな研究から分かってきている。例えば気温だけを見ても、約46億年の間に激しく上下動を繰り返してきたことがわかっている。寒冷化して氷床が存在する「氷室期」や、氷床の存在しない「温室期」となることもあり、氷室期においては、希に寒冷化がひときわ激しくなり、地球全体が氷に覆われる「全球凍結」(スノーボールアースとも呼ばれる)が起きたこともわかっている。現在のところ確認されている全球凍結は3回とされ、24億年前に1回、7億年前から6億年前の間に2回起きたとされている。
こうした背景のもと、海保教授は2011年当時、Tong教授と共に中国・三峡ダム付近の6億5000万年前から5億4000万年前の地層を調査し、岩石試料を採取。2015年以降は、静谷大学院生と共に、6億5000万年前から6億3000万年前の岩石試料中の堆積有機分子の分析を実施し、光合成生物・真正細菌・真核生物に特徴的な堆積有機分子の量比を算出したという。
地層表面近くは、植物土壌や排気ガスにより有機分子的に汚染される可能性があるため、地層を掘って採取された岩石試料に対して堆積有機分子の分析を行ったところ、全球凍結中にも光合成生物(藻類)が存在した証拠および解氷後に生物量極小を経て真正細菌が増え、その後に真核生物が栄えたという結論が導かれたとする。
今回の成果に対して海保教授は、「地球の生物は真正細菌から古細菌、そして真核生物へと進化してきました。8億年前から7億年前に真核生物の中から多細胞動物が現れ、それは海綿動物から刺胞動物(イソギンチャク、クラゲなど)へ、そして左右相称動物(節足動物、軟体動物、脊椎動物など)へと進化しました。今回の研究で扱った時代(原生代新原生代クリオジェニアン紀から同エディアカラ紀初期)は、左右相称動物の大進化時代(カンブリア爆発)の1つ前の時代で、まさに動物の進化の時代です。その進化と全球凍結の関係は未解明ですが、本成果が全球凍結と動物の進化の関係を解明する重要な鍵になるかもしれません」とコメントしている。
今後、海保教授らは、同じ時代の別の国で採取した試料の分析結果を公表する計画としている。動物進化には酸素量が関係していると考えられており、大気酸素-海中酸素-動物の進化を考察した研究成果を公表する予定としている。