今夏も猛暑でエアコンに頼りっぱなし。「もし明日電気が止まったら?」と想像するだけでも恐ろしいほど、“電気”は生活に欠かせない存在です。
毎日当たり前のように使っている電気ですが、どうやってわたしたちの元に届いているのでしょうか。世界的に脱炭素の動きが進み、生活だけでなく、未来を見据え日本のエネルギー供給の安定化に注目が集まる昨今、電気の大切さについて改めて考えてみませんか?
そもそも、電気ってどこからくるの?
知っておきたいエネルギーの話。
電気は、各発電所でつくられ、送電線、変電所、配電線などを経て、家庭に届けられます。石炭、石油、天然ガスを燃料とした火力、太陽光、水力、風力、そして原子力と、様々な方法でつくられており、その中で今回は発電時に二酸化炭素を排出することなく、大量に安定してエネルギーを生み出す「原子力」に注目。しかし、原子力は危険なのでは?というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
現在では東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故の教訓を踏まえ、新たな規制基準が設けられています。従来の安全対策である地震・津波などの自然災害への対策強化など、同様の事故を防ぐべく規制基準が強化されました。そんな中、北海道唯一の原子力発電所「泊発電所」の3号機が、今年(2025年)7月にその審査の一つに見事合格し、2027年の再稼働に向けて大きな節目を迎えました。なんと、津波対策として、長さ1.2km、高さ海抜19mの防潮堤を建設中だそう! そこで今回は、泊発電所の安全対策や再稼働の必要性を知るために、発電所内に潜入取材! さっそく発電所の様子を見てみましょう!
再稼働を目指して!
「泊発電所」ってどんなところ?
泊発電所は、北海道積丹半島南西部・泊村の沿岸部に位置する北海道唯一の原子力発電所です。約135万㎡の敷地面積に、1号機から3号機まで設置されています。1~3号機の発電設備容量の合計は207万kW。全基が稼働していた際は、北海道内の需要の4割を賄っていました。
東日本大震災の翌年以降、泊発電所は運転を停止していますが、2027年のできるだけ早い時期に、出力91.2万kWを誇る国内で最も新しい3号機の再稼働を目指しています。想定する最大の津波を防ぐ防潮堤など、様々な安全対策工事の真っ最中とのことで、再稼働の必要性など、泊原子力事務所広報課長の伊藤雅人さんに率直な質問をぶつけてみました。
教えて! 原子力発電ってどんなしくみなの?
原子力発電のしくみは、原子炉で燃料のウランを核分裂させ、その時に発生する熱を利用して高温・高圧の蒸気をつくり、タービン・発電機を回して電気をつくります。日本の原子力発電所は沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類あり、泊発電所ではPWRを採用しています。
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① 原子炉容器の中でウランの核分裂を行い、熱水をつくります。
② 熱水の熱を伝え、高温の蒸気をつくります。
③ 蒸気の力でタービン・発電機を回し、電気をつくります。
④ タービンを回し終えた蒸気を、海水で冷やして水にし、蒸気発生器に戻します。
原子炉の中で直接蒸気を発生させタービンを回すBWRに対して、原子炉の中で作った熱水を蒸気発生器に送り、そこで別の系統を流れている水に熱を伝えて高温・高圧の蒸気を作りタービンを回すのがPWR。どちらにもそれぞれ優れた点がありますが、PWRは放射線を管理する範囲が少なくて済むのが大きな特徴です。
教えて! なぜ再稼働は必要なの?
電力会社は、安定的に電力を供給し続けるという大きな役割を担っています。安定的に電気を供給するためには、火力や再生可能エネルギー(太陽光、水力、風力など)、そして原子力といった、様々な発電方法をバランスよく組み合わせていくことが必要不可欠です。
原子力は少量の燃料で大量の電気を生み出すことができ、出力も安定しています。発電時にCO2を排出しない脱炭素の電源であるという点も、2050年カーボンニュートラルを達成するためには欠かせません。また、泊発電所停止以降、火力発電に偏る形となった結果、北海道電力は3回にわたり電気料金の値上げを実施しました。火力発電は燃料を海外に依存しており、燃料価格の変動も大きいですが、原子力はそのような変動が小さく、結果として電気料金の安定にも役立つと考えています。さらに近年は半導体工場やデータセンターの北海道への進出計画が相次いでおり、省エネや人口減少が進んでいる北海道においても電力需要が増えると予想されています。北海道の暮らしや経済を支えていくためにも、泊発電所の再稼働の必要性や重要性が増していると考えています。
「原子力発電=危ない」イメージですが……?
福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさないという強い決意のもと、再稼働に向けて泊発電所の安全性をより一層高めていく取り組みを積み重ねています。「泊発電所安全性向上計画」に基づき、様々な事象にも対応できるような安全対策を進めています。今年7月に泊発電所3号機が原子力規制委員会の「設置変更許可」という審査に合格しました。この審査をクリアできたのは非常に大きなステップですが、今後も「設計及び工事計画認可」など、まだ審査は残っているので、1つ1つ真摯に向き合い、安全対策工事を進めながら再稼働に繋げていきたいと思っています。
「泊発電所」に潜入!
再稼働に向けた、安全対策とは?
地震や津波などの自然現象によって、電源や冷却設備などの原子力発電所の安全を守る機能が失われることのないよう、多重・多様な安全対策を進めています。主に4つを紹介します。
安全対策①:地震・津波から守る
泊発電所では、地震対策として、揺れの強さを厳しく想定し、その揺れに耐えられるよう必要な耐震補強をしています。また、津波対策として、想定される最も規模の大きいものを基準津波として設定。泊発電所では海抜15.68mの津波を想定し、長さ約1.2km、高さ海抜19mの防潮堤を約3年かけて現在建設中です。地中の強固な岩盤に直接支持させる安全性の高い構造を採用することで万全を期しています。
実際に防潮堤の工事現場を訪れると、岩盤まで土砂を掘削するための杭や板を打つ土留めを終え、掘削工事の真っ只中。今年中には大半の掘削工事を終える予定で、その後はコンクリートおよびセメント改良土工事を進めていき、2027年のできるだけ早い時期の3号機再稼働を目指しています。
工事のリアルな状況を現場担当者に直撃!
わたしが大事にしていることは、当たり前のことかもしれませんが、現場に足を運ぶことです。工事の進捗状態は日々変わっていき、机上で図面を確認したり、工事資料を見るだけでは見えてこないものが、現場には絶対あるので、自分の目でしっかり確認して、理解を深めていくことを大切にしています。
再稼働に向けて泊発電所の安全対策を進めていくことは当然ですが、建設現場における安全管理も責務です。協力会社や作業員さんと常に情報を共有し、連携を図ることで、安全かつ円滑に工事を進め、発電所を守る要となる防潮堤をつくっていきたいと思います。
安全対策②:電源・冷却水を確保
原子力発電所は、緊急停止後も燃料が熱を発し続けるため、継続した冷却が必要です。 燃料を冷やし続けるためにはポンプとそれを動かす電源が必要です。
格納容器内の冷却・減圧を行う格納容器スプレイポンプのバックアップ(代替格納容器スプレイポンプ)を新たに設置したほか、各種ポンプが使用不可能となった場合に備え、移動可能な可搬型送水ポンプ車14台を高台に分散して配備しています。
さらに、電源も多重的に確保しています。地震などの影響による送電鉄塔の倒壊などで発電所外部からの電源が喪失した場合を想定して、従来から設置していた非常用ディーゼル発電機に加え、新たに代替非常用発電機(常設)と可搬型代替電源車を高台に設置しました。
安全対策③:重大事故に備える
それでも重大事故は起こりうるとの考えに立ち、万一、燃料の冷却に失敗し重大事故が発生した場合も想定した対策をしています。原子炉格納容器が破損し、放射性物質が外部に出てしまう状況でも、その拡散抑制のために、原子炉格納容器に高圧の水を直接噴射する放水砲などを配備。さらに重大事故などに対処するために必要な指示、情報把握、通信連絡を行う設備を備えた緊急時対策所を新たに高台に設置しました。
安全対策④:多重・多様な安全対策のため、実践的な訓練を実施
また、最終的に安全を守るのは「人」との考えに立ち、重大事故発生に備えた設備を用いた継続的な訓練にも取り組んでいます。訓練は年間1,000回以上実施されています。さらに重大事故に備えた体制として、再稼働に合わせて発電所構内に待機する独自の専門チーム「SAT(シビアアクシデント対応チーム)」を新設し、24時間・365日体制で対応できるよう備えています。
「原子力発電所」は他人事ではない。
わたしたちの今の暮らしをずっと続けていくために、知ることからはじめよう!
再稼働に向けて全力を尽くして取り組んでいる泊発電所。当然ながら十分な安全対策が大前提で、これからも安全の確保を最優先にしながら2027年のできるだけ早い時期に3号機、2030年代前半に全基再稼働を目指していきます。
原子力の利用に対しては様々な意見がありますが、電力はわたしたちの生活や産業を支える大切なエネルギーであり、インフラの要です。また原子力発電所の再稼働は、二酸化炭素の排出削減にもつながり、再生可能エネルギーとともにカーボンニュートラル実現に大きく貢献します。北海道の重要な電源となる泊発電所の多重・多様な安全対策や再稼働に向けた動きを知った上で、原子力発電所の必要性について、ぜひ一度考えてみませんか?
[PR]提供:北海道電力