鹿児島県に位置する屋久島は、日本で最初に世界自然遺産に登録された森と水に恵まれた島です。年間の約3分の2は雨が降り、その豊富な水を利用した水力発電が、島の暮らしを大きく支えています。また、エネルギーの多くを再生可能資源でまかなう、全国的にも珍しい“自然とエネルギーが循環する島”といえる場所です。そんな屋久島で育った高校生たちが、フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)豊橋本社を訪れ、校外学習に参加しました。大自然とともに暮らしてきた彼らにとって、島を飛び出して外の世界を体験することは驚きの連続! 今回は、企画を担当したアウディ ジャパン広報の池井 沙織氏へのインタビューとともに、校外学習の様子を紹介します。

脱炭素に一番近い島・屋久島と、持続可能な未来の実現に向けて

まずは、アウディ ジャパンの広報を担当する池井氏に、今回の校外学習の背景や目的について伺いました。

―今回、数ある地域の中から屋久島の高校生をお呼びして校外学習を実施されていますが、なぜ屋久島だったのでしょうか?

池井:アウディは持続可能なプレミアムモビリティを提供する企業として、さまざまな取り組みを行っていますが、その中にアウディが2022年から取り組んでいる「Audi Sustainable Future Tour」が背景にあります。この活動は、電気自動車の普及を通じて持続可能な社会の実現を目指す私たちアウディが行っているコミュニケーション活動で、再生可能エネルギーの活用を進めている地域をアウディの電気自動車e-tronで訪れ、脱炭素社会の実現について考えるきっかけをつくることを目的としています。バイオマス発電から始まり、地熱発電、太陽光発電の最先端の地域を訪問し、活用状況やこれからの挑戦について学んできて、4回目は2023年7月に「脱炭素に一番近い島」として世界的にも評価されている「屋久島」に注目しました。屋久島は、60年以上前から島で使われる電力の99%が水力で発電されている、再生可能エネルギーの活用が進んでいる地域です。その背景を知るために、14台のe-tronとともに島を訪れたのがきっかけです。

―屋久島とはどんな活動をしているのでしょうか?

池井:2023年の「Audi Sustainable Future Tour Yakushima」の開催にあたり、アウディと屋久島町は、屋久島の持続可能性に関する連携協定を締結しました。協定の内容は、アウディの電気自動車「e-tron」を活用したレンタカー事業の支援、公用車への導入、BEV用普通充電器(8kW)7基の寄贈、高校生への学習機会の提供など、多岐にわたります。その一環として、まず屋久島高校で出張授業を行い、ここから生徒との交流がスタート。さらに同年11月には、生徒5名を弊社の豊橋本社に招き、未来を考えるきっかけとなるような校外学習の機会を提供しました。今回のプログラムは、その取り組みを継続・発展させた第2回目の試みとなります。加えて、屋久島高校の修学旅行では、アウディ販売店の見学ツアーを行程の一部に組み込んでいただきました。

  • ▲アウディ ジャパン 広報 池井 沙織氏

    ▲アウディ ジャパン 広報 池井 沙織氏

屋久島高校の生徒と考える、持続可能な未来 ― アウディ校外学習レポート

そのように屋久島と連携を続けるアウディ。8月に実施した2回目の校外学習にお邪魔しました。

ドイツの老舗自動車ブランドであるアウディは、日本ではフォルクスワーゲングループジャパン株式会社(VGJ)に属する4つのブランドの一つとして、愛知県・豊橋市に本社拠点をおいて活動しています。2025年8月、屋久島高校の生徒6名と先生2名は、天候の心配をしながらも飛行機と電車を乗り継ぎ、半日以上かけて豊橋に到着しました。

午前中は、まず池井氏によるお話から始まりました。池井氏は、アウディのビジネスやクルマづくりの歴史や、そしてアウディが屋久島での取り組みに至った背景や意義について丁寧に説明。自然環境に恵まれた屋久島にアウディが注目し、持続可能な社会の実現に貢献しようとしていることを紹介すると、生徒たちは熱心に耳を傾けていました。続いて、アウディブランドが大切にしている「持続可能性」といった価値観や、それを体現する具体的な活動についても語られました。さらに視野を広げ、フォルクスワーゲングループ全体として取り組みも紹介され、グローバルに展開する企業のスケールを改めて実感できる内容でした。

その後、VGJグループ アフターセールス本部ディレクターのハイコ・ラツニ氏が登壇し、今回の校外学習に向けた歓迎の言葉を述べました。グループを代表して、生徒たちがこの学習を通じて得る学びや気づき、自動車業界がこれからの社会で果たす責任と可能性を強調するとともに、生徒たちへ温かい激励のメッセージを送りました。

最後に、再び池井氏から当日のスケジュールについて詳細な案内がありました。午前から午後にかけての見学や体験内容が紹介されると、生徒たちは自然と笑顔になり、「どんなことが待っているんだろう」とワクワクした表情に。会場には少しドキドキしながらも、楽しみにしている雰囲気が広がっていました。

  • ▲広報の池井沙織氏によるアウディのビジネスやブランドの歴史を紹介

    ▲広報の池井沙織氏によるアウディのビジネスやブランドの歴史を紹介

  • ▲VGJグループアフターセールス本部ディレクターのハイコ・ラツニ氏が生徒たちを歓迎

    ▲VGJグループアフターセールス本部ディレクターのハイコ・ラツニ氏が生徒たちを歓迎

まずは、生徒たちがAudi Q4 e-tronや、グループブランドであるフォルクスワーゲンのID. Buzzといった最新の電気自動車に試乗。構内の移動を電気自動車で行い、最先端の走りを実際に体感する大きな機会となりました。生徒たちからは「フォルムがカッコいい」「乗っていてとても静かだった」といった声が上がり、電気自動車の魅力を肌で感じる体験になったようです。

  • ▲電気自動車「Audi Q4 e-tron」「Volkswagen ID.Buzz」

さらに見学では、専用ふ頭、中央部品倉庫、テクニカルサービスセンター、トレーニングセンターを訪問。ちょうど専用ふ頭には車を運ぶ運搬船が到着しており、間近で見るという貴重な体験まで……! 物流や品質管理の現場を直接見学することで、普段は知ることのできない仕事の裏側に触れることができました。

今回の構内見学を通じて、生徒たちは電気自動車の静かで快適な走行を実感すると同時に、アウディが推進する電動化が持続可能な未来につながっていることを、具体的にイメージできる時間となりました。

  • ▲テクニカルサービスセンター見学中の様子。たくさんのVGJブランド車にびっくり

テクニカルサービスセンターでは、新車のチェックが行われており、整然と並ぶ最新設備と無駄のない作業の流れには、生徒たちも興味津々!

  • ▲中央部品倉庫にならぶ部品の棚が圧巻

中央部品倉庫では膨大な部品が綺麗にシステマティックに管理されており、効率的かつ迅速な管理の様子に生徒からも質問が続々と上がっていました。

  • ▲トレーニングセンターでは自動車の仕組みを学ぶ

トレーニングセンター足を運び、自動車の仕組みや技術の進歩、整備方法などを間近で体感しました。トレーニング室で実際にトレーニングが行われている様子も垣間見ることができました。

貴重な経験となった構内見学の後はランチタイム。そこではVGJの現役インターンや元インターンと同じテーブルを囲んで交流する機会も。

  • ▲ランチは社員がいつも食べているメニューで

メニューは豊橋本社のキャンティーンで週に一度だけ登場するドイツ発祥の屋台料理「カリーブルスト」。焼きたてのソーセージに、手作りのケチャップをベースにした特製カリーソースをたっぷりとかけ、サクサクのポテトを添えて提供されます。ソースは本場ドイツのレシピをもとに一から手作りしており、濃厚で香り豊かな味わいが楽しめるとのこと。ドイツの会社ならではの本格的な味わいで、豊橋本社のスタッフにも大人気のメニューです。 生徒たちも自己紹介をしながら積極的に質問を投げかけて、少しずつ緊張がほぐれてきた様子でした。社会で実際に活躍している先輩世代の仕事内容や海外での経験談を聞き、自分たちの将来を考えるヒントも得られたようです。

インターン&元インターンによる仕事紹介

ランチの後からは、VGJの現役インターンやかつてインターンを経験した社員が参加。日本、フランス、チリ出身といった多彩なバックグラウンドを持つ4名が普段行っている仕事や、インターンを始めるきっかけを紹介しました。異なる文化に触れてきた体験談に、生徒たちも真剣な表情で耳を傾け、自分の将来と重ね合わせながら聞いている姿が印象的でした。インターナショナルな環境で学び成長してきた経験は、生徒たちにとって大きな刺激となったようです。

  • ▲VGJでは数か月間働く長期インターンシップを長年導入。ドイツでは卒業前に長期インターンをするのが一般的だそう

    ▲VGJでは数か月間働く長期インターンシップを長年導入。ドイツでは卒業前に長期インターンをするのが一般的だそう

インターンの仕事紹介の後は、屋久島高校の生徒たちによる自己紹介&屋久島クイズが行われました。 地元の自然や文化にまつわる問題を通じて、自分たちの暮らす地域を改めて紹介する場となり、会場全体が和やかな雰囲気に包まれました。

  • ▲屋久島クイズの様子

    ▲屋久島クイズの様子

「屋久島博士」になれそうなクイズで大盛り上がり! ここでは、10問あった屋久島クイズから一部をお届けします!

屋久島クイズ

Q. 樹齢何年以上の杉を『屋久杉』と呼べるでしょうか?

  • ① 500年
  • ② 700年
  • ③ 1000年

答え:③ 1000年

Q. 屋久島の年間降水量は平均どのくらいでしょうか?

  • ① 約1,000mm
  • ② 約3,000mm
  • ③ 約8,000mm

答え:③ 約8,000mm

Q. 日本にあるコケ約1,600種以上のうち、屋久島ではおよそ何種見られるでしょうか?

  • ① 約300種
  • ② 約600種
  • ③ 約900種

答え:② 約600種以上

次々と出されるクイズに「知ってる!」「え〜そんなに!?」と、会場全体が一体となって楽しい空気感に。
大盛り上がりの屋久島クイズの後には、メインプログラムである、HI合同会社代表の平原依文さんによる特別講義とワークショップへ。


平原さんは「世界中の境界線を溶かす」という理念を掲げ、国内外で幅広く活動する社会起業家。今回の特別講義では自身の体験を交えながら、環境問題やダイバーシティをテーマに講義を行いました。平原さんによるお話は生徒たちにとって、日常の学びとはまた違う角度から世界を考える貴重な機会となったようです。

  • ▲「出会いを大切に」という平原依文氏のメッセージは、自身の幅広い活動の原点でもあるそう

    ▲「出会いを大切に」という平原依文氏のメッセージは、自身の幅広い活動の原点でもあるそう

その後のワークショップでは、『ペルソナワークショップ』。「ペルソナ(具体的な人物像)」のそれぞれの日常を理解したうえで、その人の立場になり切って潜在的な課題について想像し、自分たちならどんなふうに解決できるかを考えるセッションです。思い思いにアイデアを考えました。

  • ▲立場の異なる人の視点に沿って考える、ペルソナワークショップ

生徒とインターンの混合3チームに分かれ、それぞれが自由な発想を持ち寄って難しいテーマに挑みながらも、活気にあふれアイデアを出し合いました。最後にはそれぞれのチームから「アウディ×屋久島高校」ならではの未来のモビリティを発表。

多様な視点が交わることで、新しい可能性が生まれること、また、互いの意見を尊重しあって理解することの大切さを学びました。生徒たちにとってもインターンにとっても一層意義深い、学びの多いワークショップとなりました。

同じくワークショップに参加した元インターンの高崎さんは、こう振り返ります。

  • ▲アウディ ジャパン マーケティング 高崎 月樹子氏

    ▲アウディ ジャパン マーケティング 高崎 月樹子氏

「最初は屋久島高校の生徒たちに自分の考えが伝えられるか不安もありましたが、対話を重ねる中で少しずつ打ち解けていく感覚を得られました。また、生徒たちの前向きな姿勢から刺激を受け、自分自身も新たな発見のある時間になりました」高崎さんの言葉からも、互いに学び合う場となったことが伝わってきました。

「忘れられない体験になった」― 屋久島高校生の感想

参加した高校生からは、多彩な感想が寄せられました。
「念願のe-tronに試乗できて最高だった」「普段は見られない施設を見学できて新鮮だった」という声に加えて、インターンとの交流を通じて「将来を考えるきっかけになった」と語る生徒もいました。

その中で、ひとりの生徒はこんな言葉を聞かせてくれました。

  • ▲屋久島高校2年 藤原希依子(ふじはらきえこ)さん

    ▲屋久島高校2年 藤原希依子(ふじはらきえこ)さん

「屋久島とアウディが協力しているのは知っていましたが、実際に本社を訪れて初めて具体的な内容を知ることができました。ペルソナワークショップでは、屋久島高校生ならではの視点を活かしてSDGsの観点から考えるのがとても楽しかったです。ここで学んだことを町や観光客の方との新しい挑戦につなげ、屋久島をさらに発展させられる人材になりたいと思います」

さらに、「外国企業と日本の連携を学んだことで、将来は留学して多様性を身につけ、社会に貢献したい」という夢を語る姿も。今回の校外学習が、生徒一人ひとりにとって進路やキャリアを考える大切なきっかけになったことが伝わってきました。

当日の様子を動画でチェック!

教育を通じて未来を育む、アウディのビジョン

―屋久島という自然豊かな環境で育った高校生にとって、この学びの場は大きな刺激になったと思います。

池井:初めての土地への移動自体、大きな出来事だったと思います。2023年に私たちが屋久島を訪れた際にはまだ高校生になっていなかった皆さんにとって、アウディははじめましてに近い存在だったにもかかわらず、校外学習に興味を持って自発的に参加してくれたことがまずはうれしいことでした。今回の校外学習で、インポーターというビジネスを知り、さまざまな役割を担う社員が働く場面を見て、ワークショップで一緒に多様性をテーマに考え話したことが、今後の将来を考えるときの何らかのヒントになっていたらうれしく思います。私たちも、素直で好奇心旺盛な屋久島高校の生徒の皆さんから、屋久島の魅力や島での生活について教えてもらったり、真剣なまなざしで校外学習に取り組み楽しんでいる様子をみて元気をもらいました。お互いにファンになっています。

―屋久島との協働は今後も継続されるのでしょうか?

池井:はい。持続可能な未来という大きなテーマをいろいろな視点からともに考える大切な機会と捉えて、今後も継続していきたいと考えています。屋久島では当たり前である再生可能エネルギーの活用がさらに広まり、ゼロエミッションの自動車での移動が当たり前になって、豊かな自然環境が受け継がれていく未来への一歩になればと願っています。

屋久島の高校生と手を取り合い、ともに考える持続可能な社会へ

  • ▲屋久島高校の参加者の皆さん

    ▲屋久島高校の参加者の皆さん

屋久島の豊かな自然に育まれた高校生たちが、最先端技術や多様な価値観に触れる校外学習を通じて得た気づきや学びは、きっと彼ら自身や社会の未来を考える新たな力になるはずです。再生可能エネルギーで支えられた島の暮らしと、アウディが取り組む持続可能な社会づくりをつなぐこの体験は、次世代が主体となって社会を形づくる一歩でもあります。小さな学びや行動が、やがて大きな未来の可能性へとつながっていく――そんな希望を、今回の校外学習は私たちに示してくれました。

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