四国東海岸の徳島県南部から高知県東部を走る第三セクター鉄道、阿佐海岸鉄道にて、線路・道路両用の乗り物「DMV(デュアル・モード・ビークル)」の世界初となる営業運転が12月25日からスタートした。
阿佐海岸鉄道は、徳島県・高知県や沿線自治体などが出資する第三セクター鉄道として1988(昭和63)年に開業。1992(平成4)年の年間利用者は18万人だったが、その後は沿線の過疎・高齢化により、近年の年間利用者は5万人前後に低迷していた。そんな窮地に立たされたローカル鉄道を維持するため、DMVの導入に注目したという。
DMVは列車が走る線路と道路の両方を走行できる車両として開発され、車両開発や線路設備などにコストをかけず走行可能。阿佐海岸鉄道のDMVは徳島県美波町の阿波海南文化村を出発し、JR牟岐線と接続する阿波海南駅から高知県東洋町の甲浦(かんのうら)駅まで鉄道として線路上を走行する。甲浦駅で車両をバスに切り替え、スロープを降りて道路上を走る。バスとなったDMVは「海の駅 東洋町」を経由するほか、土日祝日に室戸岬まで運行される。
これにより、国鉄時代に構想があった甲浦から室戸方面へ鉄道を走らせるという「夢」も、DMVという形で実現することとなった。高知県観光政策課によれば、DMVは「持続的な地域の暮らしを守る新たな乗り物」だという。
開通初日の12月25日、高知県東洋町の「海の駅 東洋町」で記念セレモニーが開催され、地元特産のぽんかんジュースの鏡開き、ぽんかんの配布などが行われた。バスになったDMVが停車する「海の駅 東洋町」では、開通を祝って登場した「DMVカレー」「DMV Bento」「DMV最中」などのDMVコラボグッズが販売されている。