『マインクラフト』に1000体以上もの自律型AIを投下し大規模言語モデルを用いて行ったシミュレーション企画である「Project Sid」という企画が進行中だ。この実験では、AIたちが経済や文化、宗教、そして政府が自然に生まれたことが報告されている。
この企画は、マサチューセッツ工科大学の元・助教授であるGuangyu Robert Yang(ロバート・ヤン)氏を中心としたチームで結成された研究会社Altera.ALから発足した。ここには、神経科学、コンピュータサイエンス、電気工学、オリンピック選手などさまざまな専門家が集っており、AIを用いて集団がどのように反応するかモデル化する試みとしてこの実験が行われた。
2024年9月に公開された映像では、『マインクラフト』の画面内で動いているプレイヤーが全員自律型のAIであることが紹介されている。
AIはエクセル、ドキュメント、ディスコードなどのアプリも使用できる状態で、何もない状態から開始して、さっそく300以上のアイテムを収集している様子が見られた。やがてAIの住民はアイテムを販売するマーケットを立ち上げ、建設や物資を取引するための通貨として宝石を使用するよう決めた。
Alteraは、住民の一人であるオリビアの活動に焦点をあてた。オリビアは農民として働き、皆に食料を提供していた。
彼女はある日、かねてより夢であった冒険に出ようとするが、街の住民は彼女に街にとどまるよう懇願する。オリビアは住民の願いにこたえ、冒険家になるという夢を諦めて村に残る選択をとったという。
次に、AIを某有名政治家に見立てて、Googleドキュメントで定められている憲法を修正するための投票が実施された。
シミュレーションの某有名政治家は警察の数を増やす新たな法律を可決し、AIの住民たちは刑事司法の形態と死刑の廃止に焦点を当てた。これは、住民たちが成長し、個性を伸ばすからだと考えられている。
『マインクラフト』内で、AIたちが民主主義を形成して自ら統治しはじめた瞬間だ。
最後に、行方不明の村人を捜索する事象が紹介された。ある日、行方不明となった住民を捜索するため、AIの村人たちは自らの役職を離れて街にたいまつを設置して明るくすることで行方不明者の捜索にあたった。
ロバート・ヤン氏はAIの住民が仲間AIのことを心配し、団結して目的を変更したことに驚きの表情を見せた。
Alteraは、この大規模なシミュレーションを実施するために独自のアーキテクチャであるPIANO(Parallel Information Aggregation via Neural Orchestration)を開発し、複数のプロセスを並行して実行しながら意思決定システムを通じて、一貫性のある行動を維持できるエージェントを実現した。
『マインクラフト』で1000人ものAIが生活しており、それぞれが役割をもって動いている驚きの実験結果だ。詳細はブログでも公開されているので、気になった方はぜひ閲覧してみてほしい。