ねぎ畑

気が向いたときに書きます

「口に関するアンケート」を読んだ

 

本屋で見かけた瞬間目を奪われた一冊。
表紙の何ともいえない不気味さも特徴的なのだが、この本、小さいのだ。

HUNTER×HUNTER38巻と比較
本屋で他の本と並んでいると写真以上に小さく感じる

 

作者は「近畿地方のある場所について」の著者でもある背筋氏。
30分程度でサクッと読めてしまうのだがしっかりと怖く、張り巡らされた伏線が終盤にかけてしっかりと回収されるので読後感は不思議と気持ちいい。 

 

※以降ネタバレ注意

 

 

この本には、全体を通してじめっとした居心地の悪さみたいなものが漂っている。
ページをめくるたびにずぶずぶと底なし沼に沈んでいくようだった。

章ごとに音声ファイルを思わせるタイトル(yyyymmddHHMMSS.m4a形式)がつけられており、ある出来事について関係者が1人ずつ語っていく、という形式で本編は進んでいく。
各人物が語る内容はあくまで主観的なものであり、真実であるとは限らない。
本当に当人が事情を知らない場合もあるし、都合の悪い事実をごまかすために情報の取捨選択が行われている場合もある。
これにより、同じ場面について話しているはずなのに、内容に少しずつズレや矛盾が生じている。

また、度々現れる文字色のグラデーションにはとても驚かされると同時に、一気に物語へ引き込まれた。
恐怖を駆り立てるギミックとしても機能しているし、最後まで読んだ時に「そういう意味だったのか…」と気付かされる伏線としての面白さもある。

最後のページもすごい。アンケートという一風変わった形式で、本のタイトルを含め、伏線が一気に回収される。
興奮冷めやらぬままに1ページ目に戻り、2週目を読み始めてしまった。

内容もデザインも非常に洗練された1冊だったと思う。
同作者の「近畿地方の~」も面白かったので、残る「穢れた聖地巡礼について」もぜひ読んでみたい。