真昼の三日月(23)

(twenty-three)

 

遠くから聞こえるパトカーの音が近づいてきている。視覚にも入ってきた。

どうやら近隣住民が通報したと思われる。

 

男「誰だよクソっ」

 

男は悠華を突き飛ばし、逃走した。

 

警官A「おい待て!!」

 

男を追いかけるチームと悠華に話を聞こうとするチームに分かれる。

 

警官B「大丈夫ですか!?」

 

呆然とし、答えられない悠華に少し戸惑う警官。

 

警官B「立てますか?」

 

警官Bが悠華の腕を支えようとした瞬間。

 

悠華「いや!!触らないでー!!いやーーーーー!!!やめてーー!!!」

 

暴れる悠華をどうにも出来ず救急車にヘルプ要請した。

真昼の三日月(22)

(twenty-two)

 

悠華「寒っ」

 

なるべく足早に。自販機まで行ってホットの紅茶を購入。

帰ろうとした時。

 

男「おねーさんまた会ったねえ」

 

恐怖で足がすくむ。

あの時と同じ人物。

 

男「今日は邪魔は入らなさそうかなー(笑)寒いからさーあっためてよ」

 

助けて....

 

誰か.....お願い....

 

力を振り絞って走ろうとするも捕らえられ、抱きつかれてしまう。

突き飛ばそうにもその力がない。

 

嫌.........嫌……………………

 

悠華「いやーーーーーーー!!!!!」

 

叫んだ瞬間、頬にヒリつくような痛みが走った。

 

男「おとなしくしろよ殺すぞ」

真昼の三日月(21)

(twenty-one)

 

悠華「え、もう夜なの」

 

寝るしかなかったんだから、時間の経過など分かるはずもない。

 

悠華「喉乾いたなぁ」

 

ゆっくり起き上がり、冷蔵庫を見る。

 

悠華「ウソ....なかったっけ....あー...自販機のやつでいいや」

 

飲み物のストックがなかったことに軽い絶望を覚え、コートとマフラーをして、財布をポーチに入れ、目と鼻の先にある自販機に向かった。

 

その先にさらなる絶望があるとも知らずに。

真昼の三日月⑳

(twenty)

翌日。

会社から言われた通り、休み。

 

悠華「寒っ....痛いなぁ..」

 

また床で寝落ちしてしまった為、体のあちこちが痛い。ゆっくり起き上がり、スマホを持ってベッドに移動する。

布団に入り、毛布を被った瞬間に鳴るLINE。

 

【橋本......体調どう?】

【悠華....ありがとう。ちょっとダルさはあるけど。今日1日

しっかり寝れば大丈夫】

【橋本.....そっか。無理すんなよ】

【悠華……うん、ありがとうね】

 

悠華「無理しないでって.......何.......わかんない........」

 

橋本の気遣いはありがたい。きっと本当に心配してくれている。

 

ただ。

 

今の悠華の心には届くはずもなく。

 

気を使わせてしまったことの罪悪感が体をさらに重くさせた。

真昼の三日月⑲

(nineteen)

 

帰宅。

 

【保健師「せめてこれだけは食べてから寝て」】

 

保健師から栄養失調を指摘され、持たされたカップの豚汁。

実際問題、お湯を沸かすのも面倒な状態だけど、今の悠華にはそんなこと言ってられない状態だった。

お湯が沸くのをボーッと見てると涙が滲んできた。

 

悠華「えっ....……なんで........」

 

何も考えてないはずだったのに流れた涙にびっくりして慌てて顔を拭った。

 

カチッ。

 

お湯を入れて、豚汁の完成。

 

悠華「いただきます」

 

ゆっくりゆっくり、身体に染み込ませる。

 

悠華「味しないけど.......温かい.....…」

 

無意識に出来た傷に何かが染みて、声をあげて泣いた。

真昼の三日月⑱

(eighteen)

 

悠華「お疲れ様です。ご迷惑をおかけしました」

 

同僚達、上司が口々に労いの言葉をかける。

 

悠華「ホントに申し訳ありません、今日は早退させていただきます」

上司「保健師からの指示でもあるけど、明日もお休みにしといたから、ゆっくり休んで」

悠華「ありがとうございます、申し訳ありません」

橋本「送るよ」

悠華「いや、ホントに大丈夫、タクシー呼んだし。いろいろゴメンね」

橋本「.......そ、そっか。気をつけてな」

 

タクシーが来た頃合だったようで、同僚達に一礼して会社を出た。

 

悠華の力になりたい橋本は、複雑な思いで悠華を見送った。

真昼の三日月⑰

(seventeen)

 

けたたましいアラーム。

 

悠華「ん....……えっ?」

 

7時40分。ヤバい。

顔も洗えてない。なんなら昨日帰ってきてそのまま寝落ちした。

そんなのどうでもいい。遅刻する。

 

こんなの初めてだ。

 

会社まで徒歩10分だけど走ると結構距離あるんだ。

 

息苦しいけど。頭クラクラするけど。

遅れるわけにいかない。

 

何とか間に合った。

 

その後

 

あれ?仕事は?