NATROMのブログ

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北斗の拳で教える思いやり

■道徳テキストに「特定宗教広める内容」 茨城県高教組(朝日)によると、茨城県の県立高校の道徳で使われているテキストに、特定の宗教を広めようとする内容が含まれているかどうかが問題となっているとのこと。テキストでは村上和雄の著書「生命のバカ力」から「サムシング・グレート」について引用されていたが、村上氏の別の著書では「サムシング・グレート」とは天理教の「親神様」などを指しているそうである。

特定の宗教がどうとかいう以前に村上和雄のようなトンデモを引用するのはどうなのよ、と思うが、この辺のことは既に■道徳教育から浸食する疑似科学(Apes! Not Monkeys!)でも言及されているのでここでは繰り返さない。今回は、茨城県の高校における道徳の授業に関して調べていて発見した以下の記事から、道徳教育について考察する。


■「道徳」の力(1) 高校でも必修化 チーム組み模索 : 教育ルネサンス(読売)


 今年2月、横山教諭が当時の2年生約200人に小中学校で道徳の授業を受けた経験があるかを尋ねたところ、半数以上が「ない」と答えた。難しい年齢の高校生に、教師が一方通行の授業を続けたら、そっぽを向かれかねないだけに、各チームとも知恵を絞る。
 生物の教師は遺伝子を題材に命の尊さを伝え、漫画に詳しい数学教師は「北斗の拳」を使って思いやりの心を、美術教師は茨城県出身の陶芸家、板谷波山(いたやはざん)の生涯を描いたテレビ番組で夢や誇りを考えさせる――。「なんだか苦手」と言う生徒もいるが、「テーマがいろいろで面白い」と好意的な生徒も増えてきた。 (強調は引用者による)

「遺伝子を題材に命の尊さを伝え」ってのが、「サムシング・グレート」なのかな。そんなことより、「北斗の拳」を使って思いやりの心をというのがすごく気になるんですけど。思いやりを教えるのなら、「北斗の拳」以外にも適切な漫画がいくらでもありそうに思うが。どんな授業なんだろう?たとえば、こういうのかな。



指先一つでボランティア



あるいは、こういうのも考えられる。


199X年、世界は核の炎につつまれました。あなたは弟とその婚約者との3人で死の灰から逃れようと核シェルターへ走ってきました。しかし、*1。



思いやりのある行動とは以下の3つのうちどれでしょうか?みんなで考えてみましょう。

1)弟を突き飛ばして、自分と弟の婚約者がシェルターに入る

2)弟とその婚約者をシェルターに入れて、自分は外に残る

3)子供たちを肩車するか、抱きかかえてスペースをつくり、3人とも入る


茨城県高校教職員組合と茨城県教育委員会は意見が対立しているようだが、どちらが正しいのか検証するためにも、ぜひ、道徳テキストを公開していただきたい。とても興味がある。

*1:画像はジャンプコミックス「北斗の拳」第6巻より引用