空中の杜

旧名「空気を読まない中杜カズサ」。

高齢者狙いの詐欺や悪徳商法はネットで増加する可能性が高い

IT革命以来の急速なモバイル端末の普及は、前世紀と比較してネットに触れる人を大幅に増加させました。現在では20代~50代の働き盛り世代はもちろん、10代、場合によってはそれ以下の年代までネットに触れられるようになっています。
そして逆に、今では60代、70代といった高齢者層においてもネットの利用は確実に増えています。

しかし、それによってネットではそういった高齢者狙いの「詐欺」や「悪徳商法」がこれから出てくる、もしくはすでに存在していて今後ますます増えてゆく可能性も非常に高いのではないでしょうか。

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すでに多数の高齢者がネットに触れられる環境にある

現在の高齢者層のネット利用率ですが、以下のようなデータがありました。

■2017年シニアのスマートフォン利用に関する調査

こちらによると、60~79歳のモバイル端末所有率はすでに90%以上、スマホ(高齢者向け含む)だけでも、50%弱に達しています。70代でも35%はスマホ所有という現状。
でも、少し考えれば不思議なことではありません。携帯電話が急速に普及したIT革命は今からもう20年近く前で、その時に40代だった人もすでに60代になっている人も多いくらいですから。
また、その時に携帯を持っていなかったような人でも、GPSや文字拡大などの高齢者向けの機能により、スマホやタブレットを持つことも増えているでしょう。
もし、今でも「高齢者はネットに触れない」と思い込んでいる人がいるなら、大きな間違いとなるでしょう。

ただ、そのことは、高齢者を狙う詐欺や悪徳商法が、ネットにも表れ、そして増加するということに繋がっていると言えます。

 

詐欺や悪徳商法のメイン進入口の固定電話に対する規制

今まで、高齢者向けの詐欺の侵入口になるところといえば、固定電話がかなりの割合を占めていたと思います。すなわち振り込め詐欺や悪徳セールスなど。
しかし、そういった電話での詐欺や悪徳商法は警察などが積極的対策に乗り出すようになっています。また、固定電話におけるナンバーディスプレイ表示や着信拒否、または通話内容記録など、技術面でのセキュリティも高まっています。それ故昔に比べると格段に困難になっていると思われます。

しかし、詐欺や悪徳商法といったものは、穴があり、対象者(引っかかる可能性が高い人)の多いところを狙ってくるのはもう大昔から常套。となると、これだけネットに触れることの出来る高齢者が増えたということは、詐欺や悪徳商法を行う者がそこに手を伸ばしたとしても全く不思議ではありません。

 

「初心者」は詐欺や悪徳商法にとっての絶好の狙い目

現実での地位・立場や年齢は、ネットにおいてのリテラシーの高さと必ずしも繋がるわけではありません。現実で年齢が高い人、また社会的な地位を得ているような人が、ネットでは妙な言動をするということは非常に数多くありましたし。ネットでは初心者という人も非常に多いでしょう(ちなみにこの「初心者」も、経験年数に比例するとも限らず)。
となると、初心者であるが故にネットでのそのようなリテラシーがない、しかし金は持っているという層がいるというネットは、詐欺や悪徳商法を仕掛ける側にとっては絶好の場となり得ます。
そもそも詐欺や悪徳商法自体も、その引っかかりやすさは地位や年齢とは関係がなく、今までも金を持っているあらゆる人や組織を引っかけるものですし(むしろその地位や年齢の意識を狙った詐欺や悪徳商法も数多く存在するわけで)。

 

同じネット初心者でも子どもと違って大人は金と決済手段を持つ

これはもちろん、同じようにネット初心者が多い若年層、子どもにも言えます。しかしながら子どものネット使用の場合は、その保護者がフィルタリングなどで使用を監視している場合も多いですし、何より金を持っていませんし、決済手段も大幅に限られています。故に引っかける側にとっては、リスクのわりにリターンが少ないと言えます(それとは別に、カルトなど思想的に妙な方向に誘導するようなものは増えてくる可能性は高いですし、その対策は必要になりそうですが)。

しかし高齢者の場合、クレジットカードなどの決済手段や金を持っている可能性ははるかに上がります。故に、同じ初心者であるとするなら、高齢者が狙われる可能性は格段に上がります。これは、振り込め詐欺で高齢者が狙われる理屈と同じですね。

この危険性は高齢者だけではなく、ネットに疎そうな社会人層ならば誰でも同じように狙われる可能性があります。ネットのヘビーユーザーから見れば誰が引っかかるんだと思うような詐欺スパムメールも、万に一つのそういう人に届く可能性でスパムが行われているのでしょう。
ですので、あまりネット経験や知識が無さそうな人が集まりそうなサイトでの、その手のものの誘導口が仕掛けられる可能性は高いでしょう(思い当たりそうな書き込みを行う形式のサイトはいくつもありますな)。

 

どんなところに詐欺が仕掛けられるか

では、どのような詐欺や悪徳商法がそうなるか、これはもうすでにいろいろあります。
既存の詐欺や悪徳商法と同じように、儲け話を持ちかけて実は詐欺や悪徳商法なんてことはよくありそうですし、固定電話の時と同じような振り込め詐欺もあります(架空請求メールとか、サポート詐欺なんかもそうですね)。

参考

nakamorikzs.net

また、アダルト系のものもあります。それはエロコンテンツ&それの利用料詐欺のみならず、ED治療薬みたいなものも。
今までにあるものをネットで高齢者が引っかかりやすい環境に置くことは、十分可能性があるでしょう。

これらの罠を仕掛ける場所としても、前述の架空メールでの請求やサポート詐欺のほか、サイトでの広告も導入口となり得ます。特に最近のまとめサイトの場合、Googleアドセンスと契約がしにくいことから怪しげな広告を出すアフィリエイトプロバイダを使っていることもありますし。とりわけ普通?のまとめサイトからリンクされているところでも、前述のようなED治療薬のようなアダルト広告がバンバン出るサイトに繋がってしまうこともありますし(このまとめサイトから実質アダルトなサイトのまとめに繋がりやすい問題は、むしろ若年層に対しての問題でもありますが、その話はまた別の機会に)。
とりわけアダルトサイトの場合、そこで架空請求などの詐欺に引っかかったとしても、年齢もあり他の人に相談しにくいということもあり、かなり狙われる確率が高いでしょう。

 

そして、これらの仕掛けてあるサイトは、今では検索語句次第でたどり着かせることはが可能になってしまっています。特に引っかけたいorそういう広告に誘導してアフィなどの利益を得たい側は、SEO対策をしっかりしてくるので、余計目立つわけで。

関連

itpro.nikkeibp.co.jp

 

新たな対策も必要になる

このように、高齢者がネットの詐欺や悪徳商法に引っかかる可能性は十分あり、ネット端末の普及や固定電話の対策強化が強くなるにつれ、よりこちらにシフトする可能性は非常に高いと予想します。もしかしたらすでに実際の被害件数も増えているのかもしれません。
もしかしたら、自分の親や祖父母がPCのみならず携帯電話やスマホ、タブレットなどに触れていた場合、いつのまにか引っかかっていたという可能性だってあり得ます。今だったら、ちょっと連絡取ってなかったらいつのまにかFXや仮想通貨投資を始めていたりなども。
しかし、仮に損失を出しても、振り込め詐欺などの場合と同じように、それを恥として隠している場合だってあり得ます(ただ、仮にそうなっていたとしても、被害に遭ったことを愚かなどと決して責めないでください。それが被害者にとって被害よりもかなり甚大なショックとなるので)。

 

ではそれに対する予防対策をどうするのかというと、一番重要且つ確実なのは、それらに対する個々の意識や知識を高めることと思いますが、現在のネット利用世代全般でそうであるように、それが行き届くとも限りません。なので、個別にもセキュリティソフトなどによる悪徳広告へのフィルタや、送金防止、もしくは上限処置なども有用となるでしょう。

しかし、やはりネット全体においてそのような危険性のあるサイトへのアクセスを検索や相互リンクなどで容易にしないことや、広告がそれを介しているとすれば、それを出稿している側への対策も必要になるでしょう。
詐欺や悪徳商法というのは、ネット以前からいたちごっこなわけで、新しい手段は次々出てくるでしょう。しかし、やらないよりは引っかかる可能性は大幅に低下するわけで、やったほうがよいです。

しかしやはり被害を少しでも少なくするためには、個々のリテラシーを高めるための教育が、全年代に必要となるでしょう。

老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書)

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