社会保険庁の無軌道ぶり

という民主党の参議院議員・蓮舫さんの指摘。

【藤原直哉のインターネット放送局】対談 「新しい日本を創ろう!その3」 2009年2月2日 参議院議員 蓮舫先生 vs NPO法人日本再生プログラム推進フォーラム理事 経済アナリスト 藤原直哉


藤原「それにいたしましても、年金の問題も医療の問題も介護福祉もそうですが、あまりにも制度がお粗末と申しますか、お金の辻褄合わない、人がいない、いったい誰がこれ作ったんだと言いたくなるくらい…、まあ、旧厚生省ですよね。」


蓮舫「年金と医療においては、少なくとも年金制度、公的医療制度が日本で完成したときには、世界に誇れる国民皆保険制度でした。誰もが保険制度に加入して、病気、怪我のときには安い料金で公的補助を得ながら病院で診てもらうことができましたし、あるいは掛け金をしっかり払っておけば60、65歳になってから年金をもらうことができるようになった。これは世界に誇れる素晴らしい社会保障制度でした。ただ残念ながら結局は、国の負担が大きくなりすぎると――その後できた介護保険制度もそうですが――公的資金をどんどん削減する方向に変わってきて、どちらかというとご自身で払ってほしい、あるいは――地方分権とは名ばかりで――こういうときにだけ自治体が自己負担をしてほしいという、いわば国の責任放棄を繰りかえしてきたのが、大ざっぱに言ったらこれまでの歴史の流れです。そこに追い打ちをかけたのが、医師不足。これも政治が作った結果で、医学部の定員をどんどん削減してきたり、あるいは国立の病院を独立行政法人化して国からの補助金を削減してきて、研究したくてもできないようにしたり、あるいは医師の働く環境、本当に劣悪なのに手を差し伸べなくて、医師がバーンアウトしていくのを座視してきた。あるいは年金でいうと、信じていたはずの自分の記録が宙に浮いていた、消えていた、消されていた、満額もらえていなかった。そのあまりにも手抜きな、いわゆる国としての責任を放棄した、本来の崇高な制度の目標がどんどん削ぎおとされてきているのが、"いま"だと思います。」


藤原「わたくしも年金特別便、来なかったですね。で、家内(の記録)が思いっきり間違ってましてね。来ないし間違ってるしね、これどうしてやろうかと思ってるんですけどもね。」


蓮舫「年金はですね、ちょっとびっくりしたのは、社会保険庁は年金特別便をお送りするときに、住所が分からなくて返ってきた方たちをどうやって把握するかというと、104の番号案内にかけて調べてるんです。これが国の仕事なんですよ。わたしたちはね、長妻衆議院議員や多くの仲間たちと消えた年金を早くお戻ししましょうと、これは税金をかけても仕方ない、国民に謝って、その代わり情報を全部公開してロードマップを作って安心を取りもどそうという提案をしてきてるんですけど、残念ながら政府は飲んでくださっていないんですが、わたしたちが急いだのはなぜかというと、宙に浮いた記録のために無年金になってる方が絶対いると、わたしたちは何度も言ってきた。ときの安倍さん、福田総理はそういう方たちはほとんどいないと言ってきたんですが、実はもう4ヶ月だけで62人出ていて、ひどいのは86歳の女性は無年金だった、33年間無年金だったので76歳まで働き続けた。そうしたらその翌年に脳の病気で倒れられて寝たきりになって、もういま意識ありません。でもまだ植物状態で生きておられる。そしたら弟さんが年金はどうなんだろうかと調べに行ったら、実は記録があって、このひと無年金じゃなくて年金受給者でした。今までもらえるはずだった年金総額いくらか――3600万円。人生が違うんじゃないですか? 月々たとえば6万円でも今までずっともらっていたら、彼女はおそらく働かないで済んだかもしれないし、ちょっとした贅沢で温泉に行ったりおいしいものを食べたり、お孫さんには何か買ってあげたり、あるいは年金から介護保険料って天引きされてますから――年金がない方は介護保険料を自分で納めないと介護サービス受けられませんから――受けられたんじゃないか。だから、国家の犯罪だと、わたしたちは思ってます。今でもこの人には年金の未払い分はまだ一部しか払われてません。全額まだ払われてない。」


藤原「でも、そういうのはなんで放置されるんでしょうかね。ただちに払わなきゃいけないもんだと思うんですけど。」


蓮舫「国民の関心が高いとき、それは選挙が近いときにはやります。」


藤原「なるほどね。」


蓮舫「一番分かりやすいのは、いまこの年金記録、5000万件の年金記録が元に戻ったのが910万件あるんですが、依然4090万件の記録が宙に浮きっぱなしなんですね。藤原先生のように、もしかしたらオレの年金は大丈夫かと思ってる方も、まだ多くおられて…。この910万件の年金記録を元に戻すために、政府は700億を使いました。」


藤原「700億。いったい何にそんなお金が…。どうやって使うんです?」


蓮舫「この700億も相当ムダな使い方があって、特別便が来て、見方が分からない人は電話相談してください、というテレフォンオペレーターの時給が5500円とか。」


藤原「そんなに高いんですか?」


蓮舫「めちゃめちゃな使い方は、確かにしてます。」


藤原「よほどすごいオペレーターなんですね。」


蓮舫「なんかもう信じられないお金の使い方を社会保険庁はするんですが、この700億というのは、本来はこの記録を管理してこなかった人が払うべきなんですよ。国民は悪くないんですから。実は今まで安倍総理が1回だけ夏のボーナスを返上しました。安倍総理と、当時の柳沢厚生労働大臣と、坂野社会保険庁長官*1と、社会保険庁職員全員がボーナス一部返上しただけで10億円できたんです。まず自分で汗をかくなら分かるじゃないですか、税金を使うのは。でもその後の安倍さんの冬のボーナス、総理が替わって福田さんの夏のボーナスと福田さんの冬のボーナス、総理が替わって麻生さんの冬のボーナスはまだ返上されてません。なんでかっていうと、安倍さんが夏のボーナスを返上したのは、2年前の参議院議員選挙の直前です。」


藤原「なるほどね。ひどいですねえ。」


蓮舫「こういうのを、わたしたちは小手先の欺瞞だと思ってます。やっぱり継続して信頼を取りもどすために政治も内閣も努力をしないと、税金を使う理由を国民は聞いてくださらないと思います。」


藤原「でもこんなの政治判断でね、払うって決めてしまえばですね、いろいろやりようがあると思うんですが。」


蓮舫「いや、予算を付ければいいんです。定額給付金に振りわける――もし1兆円があれば、情報公開はどこまでするかは分かりませんけれどもロードマップを作って、1年でどこまでできるという絵は描けます。」


藤原「どうしてそういうことやらないんでしょうね。年金もらえなくてね、死にかけるような人が出てるわけですからね。その辺が、なんかあまりにもちょっと普通の感覚では分からない。」


蓮舫「全く。わたしも全く分からないです。どうしてなんだろう。だって、少子化対策だって――藤原先生は経済のアナリストでおられるから――これから先、人口が減っていく日本にどんな夢を描けというのか、労働人口も減っていくし、高齢化率も高くなっていく、社会保障がどんどん、国の出費も痛くなってきたときに税収が減るということは、これはやはり相当きつい。たとえば、いま1年間に100万人赤ちゃんが生まれていた。30年前は200万人生まれてたんですよ。仮に1年間に10万人赤ちゃんが多く増えて、この10万人の赤ちゃんが1年間に100万円使ってくれたら1年間に1000億の市場ができて、その人たちが20歳になったら単純計算でも2兆の消費市場ができるわけですから、だから子どもが増えるというのは国の成長にもなるし、消費市場を作ることに。塾はいま1兆円産業で右肩上がりですけれども子どもが減ってきたら塾もなくなっていく。家も買わない。車も買わない。おもちゃ市場も買わない。ゲームも…。いま任天堂がほとんどの経済がダウンするなかで景気が上がってるというのは、そこには消費刺激があるからなんですけれども、アメリカがここが強いのは毎年1%――3万人――人口が増えてるっていうのが相当大きい。」


藤原「アメリカはまだ人口増えているんですね。」


蓮舫「あ、ごめんなさい。300万人増えてる。」


藤原「まあ、でも、本当に、なんか、どうして政府がそこまでお粗末なのかと思うんですが、とにかく年金についてはですね。基本的に全部分かるんですか。どうなんですか、本当のところはデータどうなってるんですか?」


蓮舫「本当のところはですね、はっきり申しあげて……分かりません。なぜ分からないかというと、社会保険庁の杉並に業務センターという大きな外郭団体――内部の機関なんですけども――があって、ここが全てのみなさま方の年金の情報をコンピュータでデータ化して一元管理してるんですが、このコンピュータが40年前の汎用といいますか、レガシーシステムという、もうこのコンピュータのシステムを見るエンジニアがいないぐらい昔の代物なんです。こんなのを使ってるのに毎年1000億から1500億のコンピュータ予算を計上して、毎年たった1社――NTTデータに随意契約で丸投げしてるんです。」


藤原「1000億から1500億もお金かけてるんですか。」


蓮舫「このコンピュータのレガシーシステムを、いまの時代に合わせるって、5年から10年かけて合わせてソフトを変えてくって言うんですけども、ご覧のようにいまのコンピュータの日進月歩の世界で5年かけてコンピュータソフトを変えたら、もうそれは使えない古いものになっていく。まず、ここを、わたしたちは与党になって見せていただかないと、どんなデータ管理をしてどんな情報をどのようにフラグを立ててすぐさま呼びだせるようなシステムを使ってるのかを、まず見させていただきたいというのはずっと言わせていただいてます。国会議員も視察させてもらえないんです。」


藤原「でも、そんなの国政調査権を発動してですね、ただちに調べなきゃいけないことなんじゃないですか?」


蓮舫「いや、本当にそれぐらいに値すると思ってますが、かたくなに社会保険庁は拒否してます。」


藤原「はあ。でも本当になんか信じられない話ですけども、逆にいうと、国税庁のコンピュータは相当いいのが入ってるという噂を…。」


蓮舫「国税庁のコンピュータはこの10分の1で管理されてます。だから、わたしたちは社会保障に対しては――とくに年金――これ記録が宙に浮いたり、なくなったり、消えたり、改竄されたら困るんです。それと、全員にやっぱりお支払いをしていただく。お支払いもれがないようにお支払いをしていただいて平等性を担保して、記録はとうぜん適正に管理をして消えない、消されない。その代わり、お払いミスがない。全員にお支払いをする。税金と同じなんです。取りもれがない、そして還元をする。だから税と年金、まあゆくゆくは医療制度というのも考えてますけれども、まずは年金と税金は同じ"歳入庁"という官僚組織を作って機械で一元管理をして、税金と年金、保険料は主体的に納めていただく。その代わり、将来の安心はみなさま方にお示しをする。そのときにわたしたちが言っているのは、いまの政府が取ってる国民年金と厚生年金は2分の1が国庫負担なんですね。基礎年金といわれている1階部分、これもともとは3分の1だったのを今度は2分の1にする。2兆3000億。本来、税制改革で手当てすると言ったのが、税制改革できなかったから埋蔵金が使われるんですけれども、この埋蔵金も将来、国の借金の未払いを返さなきゃいけないのだから使っちゃいけないんですけれども、麻生さんはそれを使おうとしてるんですが、ここでわたしたちは考えてるのは、基礎年金というのは本当に税でみていいんだろうか、と。なぜならば税を使うということは再分配機能が働かなければいけない。でもこの年金の1階建ての基礎年金部分はこの再分配機能が働いてないんです。豊かな方もそうじゃない方も一律税金で補填をされてるんですね。だから経団連の御手洗会長も、あるいは本当に生活にいま困窮をされている方たちの基礎年金部分も同じように税が入っている。ここをわたしたちは再分配機能を働かせたほうがいいと。1階部分というのは最低保障年金にして、自分たちの年金保険料をかけた掛け金方式にして、返ってきたもので最低限――たとえばいまの6万6000円。この値段をいくらにするのか、もう1回、国民と選挙するときに声を聞かせていただきたいと思いますが――7万でも8万でもいいんですが、足りない部分は――どんなに自分が現役時代40年かけて掛けられなくて、もらえる手取りが少ない人には――社会制度として、福祉として、国が税金で補填をする。このやり方のほうが社会保障式――つまり保険と税の適正なあり方だと思ってます。」


藤原「なるほどね。そういうご提案いろいろあったとき、厚生労働省ってどういう反応をするんですか?毎年毎年いろんな改正をするんですがね、医療もそうなんですが、よく分からない。意味の分からないことをよくするんですよね。」


蓮舫「社会保険庁も厚生労働省も、とくに年金をやってる方たちは100年単位の計算をしていますから、どうしてもいまの人口再計算ですとか、あるいは税収ですとか、経済成長率とか、いろいろなものを加味して100年後にいまの年金制度が持続可能性があるかどうかを検証してるんですね。そのあいだにわたしたちからまったく違う提案をされると、いまの100年計算が対応できなくなってくることに対して、ものすごい抵抗を示します。」


藤原「でも100年計算でこの少子高齢化、入ってるんですか?」


蓮舫「入ってるのが、いまの2004年に年金制度っていうのは100年安心だって言って改正をしたんですね。ときの大臣は坂口厚生労働大臣だったんですが、実はこの法律が改正された翌日にこの法改正で使われた出生率がウソだったことが判明しまして。」


藤原「そういうことが許されていいんでしょうかね。」


蓮舫「坂口厚生労働大臣は次の日にこの情報をスクープした新聞記者から聞かされて、ご存じでしたかって言われたときに、知りませんでしたって言ってます。」


藤原「そんなデタラメ値じゃ、それやりなおして法律を作りなおさないといけないんじゃないですかね、普通はね。」


蓮舫「でも、そうすると政権担当能力が疑われるから、ときの与党は見直しをしないんです。だから、いまその2004年の改正のときに、もうすでに出生率を過大に見積もって100年後の人口計算してるものですから、もうすでにここで制度設計的にはアウトです。でも、さらに言うと、あのときの約束は賃金の半分は年金――厚生年金ですね――として保障すると言ったんですけど、その後に経済成長率が落ちてて失業率は増えてますから、実はここがもう2分の1が維持できなくなってきた。そうすると、そこが維持できなくなったと言えないので、ほかの数字でうまく補填をするんです。いわゆる、つぎはぎです。まったく合理的じゃない。制度設計をなんとなくバンドエイドでつぎはぎをしながら持たせてきているところに消えた年金の記録が出たものですから、いま社会保険庁が考えてるのは、来年には日本年金機構という民営化されるんですが――これも小泉さんのときに決められたんですけども――早く逃げきってしまおうと考えてると思います。」


藤原「逃げきってしまう。すごいですね。でも、これ誰かが勘ぐりをやりなおさないといけませんね。」


蓮舫「そこは、民主党は新しい年金制度を、制度設計100年後まで試算しました。とくにいま国家公務員共済年金、ここは本当に恵まれてます。公務員だけは本当に年金制度も医療制度も。年金の記録も1件も消えてませんから。」


藤原「消えてないんですか、公務員は。」


蓮舫「はい。まったく消えてません。」


藤原「すごいですね。」


蓮舫「しかも、運用損が出てません。」


藤原「運用損が出ていない。」


蓮舫「国民の年金は、去年のサブプライムの関係が起きる前の半年間で5兆円の運用損失が出てます。でも国家公務員の年金は運用損を出してません。だから国家公務員だけ恵まれた就職先、再就職先、天下り、ワタリの問題もあるんですけども、だからこの年金と国民年金と厚生年金、やっぱり一元化をして自分の収入にあって、まず積み立てていこうと。で、年金をいただける年齢になったときに最低補償額に満たない場合には税金で保障していこうと。40年かけていまの年金制度からゆるやかに新しい制度に変えていこうというマニフェストをもって戦います。」


藤原「いやー、でも本当に聞きしにまさる状態ですね。ひどいですね。こういうことが、なんかね、いまだ許されていたってこと自身がね、やっぱりすごい政治の責任ですよね。」

あー、ちかれた。「医療費が高い理由」に続きます。

*1:坂野泰治氏。たぶん村瀬清司氏の誤り。