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映画「くすぶりの狂騒曲」演出推しポイント語り

突然ですが、大宮セブンそしてタモンズをモデルにした映画「くすぶりの狂騒曲」見てきました!

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バルト9の先行上映と地元の映画館で2回見まして、ストーリーの感想とか、俳優さんたちの実在する人物を演じる凄さとか語りたい箇所はたくさんあるのですが、特に演出面でここが好き!となったところ2点紹介します。
なぜならTwitterだと文字数が全然足りないしネタバレへの配慮が難しいから!

※鬼のネタバレなので、未見の人は読まないことをお勧めします。見てから読んでいただいて、ご意見ご感想お待ちしております。
※芸人でも映画の専門家でもない、ただのお笑いファンの個人的な感想です!「解釈ちげーよ」「そんなことねーよ」と思ったら優しく教えてください。
※2回見たとはいえ、台詞や演出の記憶に曖昧な部分もあります。ご容赦ください。できることならもう1回見に行きたいし、円盤出たら絶対買うし!セブンメンバーの副音声解説欲しいし!(強欲)

①第三の主人公、諸積

この映画はタモンズが主人公なんですけど、第三の主人公がいるとすれば、ベリーハックの諸積翔真さん。架空のコンビの架空の芸人さんなのに一番リアル。
諸積さんの個人的爪痕残しポイント3つをご紹介します。

1.諸積さん越しのタモンズ

私の記憶では、諸積さん越しにタモンズ2人が映るシーンが3回あります。3か所ともタモンズや諸積さんが次のステージに進む鍵となるシーンです。

1回目:タモンズの二人が東京の徳田さんに「尖ったままだと売れないし、東京に戻れないぞ」と言われるシーン。歯磨きをしている諸積さんが見る鏡の中に映るしょんぼりタモンズ。この時のベリーハックはポップなショートリズムネタでファンがついていて「客商売」は成立している。立場の異なる二者。
このシーンがきっかけで、タモンズが少しずつお客さんに合わせた漫才をしていくか~と変化していきます。

2回目:詳細を忘れてしまったのですが、ここも諸積さんの肩越しのタモンズ。3人とも現状に納得いってなくて、でもどうにかする方法も分からず、イライラしている。(ここの記憶が曖昧です。ニュアンス違うかも……)
このシーンのあと、ベリーハックは解散し、トリオを提案します。

3回目:ラストシーンの大宮セブンライブ。M-1ラストイヤー3回戦敗退のタモンズをいじった後のコーナーライブには、諸積さんが客席に座っています。盛り上がる客席と大宮セブンを背に、歩き出す諸積さん。

※余談:ここでまた例の赤根建さんと青SJさんがいるんですよね。客席が満員なので、時系列的にはタモンズラストイヤー敗退後でいいと思うんだけど、また塗ったの?それともコーナーライブ自体は過去のもので「やってることは変わらないけど、お客さん増えたよ」の演出なのかな?

3回目はタモンズだけでなく、大宮セブンメンバー揃ってるけど、構図はほぼ一緒なのでまとめました。
1,2回目のシーンは諸積さんを挟まなくても成立しています。でも、わざわざ諸積さん越しのタモンズを映すことで、3人の互いに抱く微妙な感情やお笑いについての考え方・方向性の違いはありつつも、飛躍のきっかけが掴めずにくすぶっているという共通点が自然と浮かび上がってくるように見えました。
そして3回目は、もう、もう、感涙。タモンズは自分たちのお笑いを取り戻し、諸積さんは自分の限界と大宮セブンの本質を理解して、別の道を歩む覚悟ができたシーンです。1,2回目の構図と同じだけれども、今回浮かび上がってくるのは、3人とも自分の生き方にひとまず納得ができてそれぞれが前に進めている、というおじさんの青春成長物語の象徴のような場面です。思い出しながらこの文章書くだけで泣けてきます。大好きなシーン。

2.舞台袖を一瞬見る諸積さん

ネタ中に横目で誰も居ない舞台袖をチラ見する箇所があるんです。ネタ終わりに袖に捌けてからは相方に指摘されるくらいがっつり見てるんですけど。
お客さんにはウケてるけど、仲間の芸人が見に来るネタじゃないことを、ネタをしながら痛感して、一瞬だけ見てしまう。「客商売」だから何も間違ってない筈なのに、本当にそのままでいいのか揺らいでいる。あの一瞬に「諸積翔真」の矛盾が全て詰まっているすごいシーンだと思います。この映画で一番好きなシーンかもしれない。

3.合わせ鏡

大波さんの台詞と諸積さんの台詞って呼応してるよね、という話です。

大波さんの部屋で、ベリーハックの解散とトリオの提案をする時に語った諸積さんの
「本来の目的を忘れてるんじゃない?」
「現実を誤魔化してるだけ」
「笑いを盾に逃げてるだけ」
という言葉は、半分は自分に言い聞かせていたのかな。
売れるために芸人になったけど、前提としてまず目の前のお客さんを笑わせることが必要というのはどのコンビよりもよく分かっていて、それはとりあえずクリアしていて、でもその小手先だけではどうしようもないことも誰より分かっているからこその、「このままでいけると思ってる?」という自問自答であり、「これでダメなら、芸人やめようと思ってる」という覚悟の言葉につながっていると思うんですよ。

そして、大波さんの
「自分らの念をそのまま貫き通した芸人が売れていくんはやっぱ悔しいわ」
「ブレずにやってたら同じようにできたんちゃうか」 
というラストイヤー敗退後の台詞ですが、これを言いたいのは諸積さんでもあると思うんです。
タモンズは、回り道はしたけれど、自分たちのやりたい二人の漫才を取り戻した上で、挑んで負けて、漫才を続けていく(=くすぶり続ける)覚悟を決めた。(もちろんそれはセブンメンバーのアフターフォローのお陰もあるけれど)
諸積さんは、もともとやりたい漫才があったけど芽が出ず(←ここは描かれていない部分なのであくまでも想像)、お客さんを楽しませるためにリズムネタを取り入れたり、タモンズとトリオになることで活路を見出そうとしたりしたけど、それも結局タモンズの絆を強くするための当て馬で終わって、芸人を辞めた。

回り道の方向性が異なっていただけで、誰もがくすぶっていて、この二人を分けたものってなんなんだろうって。架空の存在なのに諸積さんのことばかり考えてしまう。。。
タモンズ(特に大波さん)の合わせ鏡のような存在として描かれていた諸積さんが居たからこそ、より「タモンズがタモンズで居てくれることの奇跡に感謝」が深まります。本当にありがとう。
先行上映で見た時の一番最初の感想もそれでした。

街の人のインタビューで本編を挟む方式も良かったですよね。諸積さんの「腹が立ちました」で始まり、「でもそれ(トリオを結成しかけたこと)が二人の絆を強くした」で終わる。タモンズがタモンズであるためには、諸積さんの存在が必要だったんです!

ということで【第三の主人公、諸積】でした。

②歩道橋と橋/ブレないけど落ち込む

歩道橋(ペデストリアンデッキ)と橋(川のそば)が印象的な使われ方をしているな〜という発見です。

歩道橋&ペデストリアンデッキ
  • ライブ終わりに村上さん・諸積さん・大波さん・安部さんの4人で歩いていて、歩道橋の手前で安部さんだけ別の道へ。歩道橋を渡る3人は「ブレず」にお笑いをすることについて話す。諸積さんだけは納得のいかない顔。
  • 上京してすぐストリート漫才を披露した品川駅のペデストリアンデッキ
  • タモンズファンの子と再会した品川駅のペデストリアンデッキ
  • つき騒動の帰り道、文田さんと登る歩道橋の階段。文田さんの「誰を笑わせてぇの?」という問いかけ。
  • 「二人で漫才がしたいんだ」となった安部さんが、大波さんと道を挟んで大声で漫才をして、最終的に歩道橋の真ん中で合流。(この漫才のテーマが「売れたら何したい?」で、上京した時のストリート漫才と同じネタというのが、完全に脚本が泣かせにきています)
橋&川のそば
  • M-1の敗退結果を見るのも橋の上(2回とも)
  • うまくいかない安部さんが落ち込むのも橋の上
  • おでんクラシックの練習をするのも川そばのフェンス
  • おでんクラシックはやらないという連絡を受ける諸積さんがいるのも川そばのフェンス

歩道橋やペデストリアンデッキは迷いつつも「ブレずにお笑いをやる」ことを再確認する場所になってるのに対し、橋や川のそばは自分ではどうしようもできないけど悔しかったり落ち込んだりすることがあった時の場所としてるな~というただの発見でした。
歩道橋やペデストリアンデッキは人同士が共存するための構造物で、橋は人と自然が共存するためのそれだから、前者では「人と人の考えのぶつかりあい」「発展のためのコミュニケーション」が、後者には「やるせなさ」「どうしようもなさ」が投影されてるのかなぁ。何かしら意図はあると思うんですけど。監督に聞いてみたいです。

映画見てから歩道橋を見かける度にウルッとする体質になってしまいました。

あと、一瞬だけうつる屋外でタモンズがネタ合わせをするシーン、あれは歩道橋?橋?分からなかった(´・ω・`)

他にもラクーンの外階段とか高校生時代の屋上とか、楽屋以外はだいたい高いところで話してますね!?芸人は地に足ついてないってこと?笑
地に足ついているのは、野良飲み(村上さん、福井さん、大波さん)の時ですね。一番大事な飲み会。大宮セブン、ありがとう。

話が少し逸れましたが、<構造物に投影される心情>の演出が大好物という話でした。

おわりに

以上、映画「くすぶりの狂騒曲」の演出の個人的推しポイントでした。漫才が上達する演技とか、謎の駐輪場のシーンとか、野田さんの首と肩の角度とか、まだ語りたいことがある気がするけど、なんとかまとまったのがここまでです。

書きながら「また見たい!」「あのシーンじっくり見たい!」と何度も思っています。でも最寄りの劇場のスケジュールには19日終了予定って書いてある……明日?公開13日からですよね?短すぎない??円盤に期待するしかないんでしょうか。映画館で見る良さもあるからできるなら延長してほしい。。。

とにかく、2024年の最後に良い映画に出会えて本当によかったです!

(追伸)
バックスのまとめブログ全然更新できてなくてすみません。持続的に更新できる方法を探っていきます……。

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