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月影繚乱、新しき刃の継承 "Blade of the Future, Legacy of the Moon"

「ねえ、これってどう見てもコスプレじゃないよね?」
目の前に転がる鎧兜を見つめながら、思わずつぶやく。真紅の布と金の装飾が眩しいその兜は、父の遺品を整理していたときに見つかったものだ。触れてみれば、冷たさの中に奇妙な温もりを感じる。

「父さん、こんなの持ってたんだ……」
亡くなった父は武術の師範で、厳しい人だったけど、こんな派手な趣味があったとは知らなかった。私はピンクの光沢ドレスを整え、鏡に映る自分と兜を見比べた。思わず笑ってしまう。これ、着けたら私、戦国時代から来た未来侍に見えない?

でも、その兜はただの遺品ではなかった。軽く撫でた瞬間、金色の装飾部分が光り出し、まるで私を選んだかのように、声が聞こえた。

「お初にお目にかかる。鳳翔(ほうしょう)と申す――そなたが新しき主であるか?」

驚きのあまり、思わず後ろに飛びのいた。目の前で兜がしゃべる?いや、しゃべるだけじゃない。兜の内側に青白いホログラムの顔が浮かび上がっている。整った男性の顔――いや、武士らしい髭を持つその顔は、どことなく古臭いけど、目はAI特有の無機質な輝きを放っていた。

「は、鳳翔?兜がしゃべるなんて……いや、これ、父さんの冗談か何か?」
「無礼者、これは真剣なる使命を担う神器でござる。汝、己の血筋を忘れたか!」

突然の説教モードに、私はただ口をポカンと開けるしかなかった。でも、次の瞬間、兜の内部ホログラムに父の映像が再生され、彼が語りかけてきた。

「真咲、お前がこれを見ているということは、私の命はすでに尽きているのだろう。だが、この兜はお前に託す。お前が成長し、真の武士として立つ時を信じている――」

父の声に涙がこみ上げた。だが、話はそれだけでは終わらなかった。兜の裏には、父が私に託した技術の秘密と、なぜこれが重要なのかが詰め込まれていた。それと同時に、鳳翔が私を細かくスキャンして分析を始めた。

「主殿、体力不足、筋力不足、さらに精神的耐性もやや欠如しておるな。これでは武士として失格でござる。」
「はあっ!? 初対面でいきなりそれ!?」

鳳翔の冷徹な指摘に、怒りを覚えつつも、私はこの奇妙な状況に飲み込まれていった。そして、手元の兜にそっと触れながら、父の遺志を背負う覚悟が少しずつ芽生え始めたのだ。


翌日、白銀京(しろがねきょう)の朝は、いつも通り月面の青白い光で満ちていた。窓から見える都市は、伝統的な和風建築とハイテクなドームシールドが融合した景観で、見慣れているはずなのに、どこか違う。あの兜――いや、鳳翔の存在が私の視点を変えてしまったのかもしれない。

鳳翔と共に朝食をとる、という新しい日課が始まったのは意外にも平和だった。私が大好きな「月見うどん」に対して鳳翔が分析を始めるたび、彼の古風な言い回しとAI特有の論理的な説明が噛み合わず、思わず笑いがこぼれる。

「卵黄の配置がまことに見事でござる。これぞ、侍の朝食にふさわしい!」
「いやいや、ただのうどんだから!」

その平穏も束の間、コロニー採掘地で襲撃事件が発生したというニュースが飛び込んできた。通信端末を見つめる私に、鳳翔が真剣な声で問いかける。

「主殿、この事態、どうされるおつもりか?」
「どうするって……私はただの高校生だよ!」

そう答えながらも、心の中に奇妙な感覚が生まれていた。もしかしたら、この兜を使えば――。そう思った瞬間、鳳翔が鋭く私を見つめたような気がした。

「そなたの血が騒ぐのではないか?月影の武士として。」

その言葉に、私は背筋が凍る思いだった。

果たして、私は父が願った「月影の武姫」になれるのだろうか?それともただの未熟者で終わるのか?答えを探す時間は、もう残されていなかった。次々と迫り来る運命が、私を無理やり巻き込もうとしていたのだから――。

 


 

「真咲さん、聞いてる?」

幼馴染の玲奈(れいな)の声で、私は現実に引き戻された。学校帰りの彼女が、手を腰に当てて私を見上げている。私の背後には、例の兜を隠したバッグが不自然に膨らんでいた。

「あ、うん、聞いてる聞いてる!」
「嘘だね。顔に『今、月面より遠い場所にいます』って書いてあるよ。」

玲奈の突っ込みに、私は曖昧に笑うしかなかった。彼女には、まだ鳳翔のことを話していない。いや、話せるわけがない。

「まあいいけどさ、今日の『#宇宙侍チャレンジ』、見た?完全にバズってたよ!」
「ああ、あれね。SNS、今朝ちょっと見た。」

玲奈が夢中になって話す横で、私は心の中で考えを巡らせた。「宇宙侍チャレンジ」というハッシュタグが最近流行していて、白銀京の若者たちが侍っぽい動きや剣技を無重力空間で披露するという動画が大量に投稿されている。正直、最初はただのバカげた遊びだと思っていた。でも、今朝の襲撃事件のニュースに出てきた映像には、どう見てもその「宇宙侍」たちが映り込んでいたのだ。

彼らが襲撃者なのか、それともただの巻き添えなのか――それはわからない。ただ、何か大きな出来事が迫っている気がした。

 


 

その夜、自室に戻った私は、鳳翔に向かって問いかけた。

「ねえ、鳳翔。今日のニュースに映ってた侍みたいな人たち、何か知ってる?」
「ふむ、見た限り、あれは正規の訓練を受けた者ではない。素人集団が遊び半分で危険な領域に足を踏み入れておるように見受けられる。」

彼の言葉に、胸の奥がチクリと痛んだ。自分もどこかで彼らと同じだと思ったからだ。何も知らないくせに、侍の真似事をして――いや、違う。私は真似事なんかじゃない。父の遺志を受け継いだ、本物の月影の武士になるんだ、と自分に言い聞かせた。

「じゃあ、もしまた何か起きたら、私はどうすればいい?」
「決まっておろう。武士の道を歩む者ならば、弱きを助け、正義を貫くべし。」

その答えに、思わず笑ってしまった。「それが簡単なら苦労しないよ。」

 


 

数日後、鳳翔の言葉通り「簡単ではない」事態が起こった。

採掘地での事件をきっかけに、白銀京の治安が一気に悪化し始めたのだ。さらに、謎の武装集団がSNSで挑発的な投稿を始め、彼らの存在が白銀京の住民を不安にさせていた。

そしてその夜。窓の外に浮かぶ月面の街並みを眺めていた私は、ふと不穏な光を目にした。白銀京の中心部にある「御身備え堂」から立ち上る煙――それは火災か、あるいは襲撃の兆しだった。

「主殿、これはただ事ではござらぬ!」
「わかってる!」

バッグから兜を取り出し、急いで頭に被る。鳳翔が起動し、彼の声が私の中に響き渡る。

「参るぞ、真咲殿。これがそなたの初陣でござる!」

初めて兜を身につけた私の視界に、ホログラムの操作画面が次々と浮かび上がった。体は驚くほど軽く、力が湧き上がるのを感じた。

「未来侍、発進!」

そう叫んで部屋を飛び出す私を見て、鳳翔が皮肉っぽく言った。

「その掛け声、やや時代錯誤にござるな。」

「うるさい!」

月面の街に夜風が吹き抜ける中、私たちの冒険がついに始まった。正義も勝利もまだ見えないけれど、父が残したものを無駄にはできない。私は私の道を行く――侍として、未来を切り開くために。

 


 

「信念だけで剣を振るう者は、脆弱な盾にも等しい。」

重厚な鎧兜をまとった男――蒼牙(そうが)の声が、月面に薄く響いた。

私の肩口に走る痛みがじわじわと広がる。見ると、鎧の肩部分が鋭い剣筋でえぐられていた。鳳翔が緊急アラートを発しながら、冷静に分析を続ける。

「主殿、この者の攻撃力は標準値を著しく超えておる。現状では勝機薄し、撤退を推奨する。」
「待って、まだ――!」

私は剣を構え直し、蒼牙に向き直った。だがその直後、彼の剣が一閃し、視界が揺れる。

重力に逆らえず倒れ込む私。蒼牙はゆっくりと私に近づき、視線だけで圧倒的な力の差を見せつけるようだった。

「お前は弱い。それでも、その兜を被る理由は何だ?」

その言葉に返答する余裕などなかった。ただ息を切らしながら、地面に手をつく私を見下ろし、蒼牙は冷笑を浮かべた。そして、月面を切り裂くように巨大な剣を振りかざし――その瞬間、鳳翔の警告音が響き渡る。

「通信障害発生!主殿、退避せよ!」

突然、蒼牙の兜が放つ赤いライトが消えた。それを機に、私は鳳翔の指示通り背を向け、全力で逃げ出した。

「まだ始まったばかりだ、未来侍。」

蒼牙の声が、微かに耳に残った。

 


 

「――で、結局逃げてきたのか。」

目の前で作業台に肘をつきながら、星羅(せいら)はあっけらかんと言い放った。小柄で白髪混じりの短髪に、まるで昔の機械職人のようなオーバーオール姿。そのギラついたゴーグル越しに見える目には、興味とわずかな軽蔑が宿っている。

「逃げるしかなかったんだってば!相手は本気で私を斬る気だったし。」
「ふーん。でもさ、鳳翔があるんだから、勝てるでしょ?…いや、勝てると思ってたんだけど。」

私はため息をついた。鳳翔だって万能じゃない。私だって、ただの17歳の女子高生で、完璧な侍なんかじゃない。

星羅の工房は、町工場のような雰囲気だった。壁一面には3Dプリンターで生成された部品が散らばり、工具箱からは怪しげな液体が漏れ出している。そんな無秩序な環境の中、星羅は器用にドローンを操りながら、私の鎧を観察していた。

「こいつ、かなり古いけど最新技術も混ざってるね。うちの3Dプリンターじゃ再現できないやつだ。」
「それ、作ったのは私の父なんだ。月影流の…」
「月影流?」

星羅の目がキラリと光った。彼女はその言葉に思わぬ興味を示した様子で、作業を止めた。

「ちょっと待って。それ、もしかしてデータベースに残ってるやつ?」
「え、データベース?」

星羅は古びたタブレットを操作し、月影流というキーワードで検索をかけた。すると、そこに映し出されたのは数十年前に活動していたとされる古流剣術のデータだった。しかし、その情報のほとんどが削除されているか、改ざんされた痕跡があった。

「おかしいな。これ、本当はもっと詳細な記録があったはずなんだけど。」

星羅の言葉を聞きながら、私は直感的に感じた。蒼牙たちの目的は、単なる戦闘や破壊ではない。月影流の記録、あるいは父の研究――その全てが、何か重大な謎に繋がっているのだ。

 


 

「星羅、次の戦いで必要なもの、わかる?」
「当然!」

そう言って、彼女はニヤリと笑いながら、工具を片手に私の鎧に手をかけた。

「未来侍ってのは、もっと派手で、もっと強烈じゃなきゃダメでしょ!」

改造が暴走するかどうかは別として――私は再び蒼牙に立ち向かうため、覚悟を決めた。

 


 

「…もう一度聞くけど、ほんとにこれで大丈夫なの?」

私は星羅の工房の片隅に立ちながら、目の前の信じられない光景に絶句していた。星羅が「改造」と称して手を加えた私の鎧兜――いや、もはや「何か別のもの」になっていた。

兜の角部分には意味不明な光る装飾が追加され、背中には使いどころ不明な推進装置らしきもの。胸部装甲にはなぜか「星羅オリジナル」のロゴマークが光り輝いている。

「ねぇ、これ必要なの?」
「必要かどうかじゃないの!未来侍は見た目も勝負!SNS映えだよ!」

星羅は悪びれる様子もなく、工具を振り回しながら大声で答える。横で鳳翔が冷静にコメントを挟んだ。

「主殿、この改造は機能面で多くの疑問点を残しておるが…少なくとも、敵を困惑させる効果はあるやもしれぬ。」
「困惑って…それ、全然褒めてないじゃん!」

私は大きくため息をつきながら、視線を鎧兜に戻した。だが、その裏側で星羅が仕込んだ新たな技術の数々には、確かな手応えを感じる部分もあった。特に、鳳翔のデータ分析速度を飛躍的に向上させるモジュールや、重力制御の微調整機能は、確実に次の戦いで役立つはずだ。

「これで準備は整ったよ。あとは、あんたが負けるか勝つかってだけ。」
「…やるしかないか。」

私は意を決して、再び鎧兜を身につけた。星羅の軽口が耳に残る中、兜が頭を覆うと同時に、鳳翔の冷静な声が耳元で響く。

「主殿、通信網をスキャン中。蒼牙とその一派の活動拠点を特定しました。」
「…よし、行くよ。」

 


 

蒼牙たちの拠点は、白銀京から少し外れた採掘エリアの地下に広がる巨大な洞窟だった。星羅の提供したデータを頼りに進むと、薄暗い空間の中で無数の光が点滅し、不穏な機械音が響いている。

「この感じ…ただの採掘場じゃない。」

私は直感で何かが隠されていると感じた。鳳翔が洞窟内の構造を即座に解析し、私の目の前に地図を投影する。

「主殿、この先に大規模なエネルギー反応あり。敵の主力兵器と推測。」
「そんなもの、どうしてここに…?」

その瞬間、背後から不意に声がかかった。

「よく来たな、未来侍。」

振り返ると、そこには蒼牙が立っていた。前回と変わらぬ威圧感、そしてあの冷たい微笑み――いや、前よりもさらに力を感じさせる。

「今度は逃げられると思うな。だが、その前に一つ、答えを聞かせろ。」
「…何を?」

私は剣を構えながら応じた。蒼牙は剣を下ろしたまま、低く問いかける。

「月影流の真髄、お前は知っているのか?」

その問いに、思わず息を呑んだ。父が遺した月影流の剣術。それが何を意味するのか、私はまだ分からない。

だが、この問いの背後には、単なる剣術の技術を超えた何かが隠されているのは間違いない。

「知らない。でも、これから知るつもりだ!」

私は迷いを振り払うように叫び、蒼牙に向かって突進した。

 


 

激しい剣のぶつかり合いが洞窟内に響き渡る。重力制御装置を駆使した宙返り、星羅の改造による一撃必殺の「月影斬」――私は全ての技術を使い切る覚悟で戦った。

だが、蒼牙の動きには隙がない。それどころか、彼の剣筋には、どこか月影流と共通する流派の痕跡を感じる。

「お前の剣はまだ浅い。だが、可能性はある。」

蒼牙はそう言いながら、最後の一撃を振り下ろそうとした――その瞬間、鳳翔が叫ぶ。

「主殿、エネルギー反応が臨界値に達しました!ここを早急に離脱せよ!」

周囲が激しい光に包まれる中、私は鳳翔の指示に従い、何とか洞窟を脱出する。

だが、蒼牙はその場に留まり、最後の言葉を残した。

「次に会う時、お前が答えを見つけていることを願う。」

洞窟が崩れ落ちる中、蒼牙の姿は光の中に消えていった。

 


 

外に出た私は、遠く崩壊する採掘場を見つめながら、胸の奥に大きな決意が生まれているのを感じた。

「月影流の真髄、必ず見つけてみせる。」

その背後で、星羅がポツリとつぶやく。

「まあ、蒼牙は死んでないだろうね。次が楽しみだな。」

私は振り返り、星羅とともに笑った。次の戦いに備え、もっと強くなるために。

 


 

「…この動きじゃまだ足りない!」

無重力訓練場で私は叫びながら剣を振り下ろした。宙に漂う体を軸に、星羅が改造した推進装置を駆使して剣を旋回させる。だが、その軌道は想像していたような滑らかさを欠き、宙に浮かぶターゲットをかすりもしない。

「主殿、分析によれば、推進装置の動作と剣の振りが同期しておりませぬ。それどころか、剣の軌道が推進ベクトルに干渉しておる。」

鳳翔の冷静な声が兜越しに響く。分析なんかされなくても分かってる、と心の中で舌打ちしつつも、私は呼吸を整えた。

「じゃあどうすればいいの?鳳翔、あんたのご自慢の頭脳で答えを出してよ!」
「主殿、問題は頭脳ではなく感覚にあり。無重力剣術は、理論だけでなく身体の感覚が鍵。修練が肝要です。」

鳳翔の指摘に、私は内心ぐうの音も出なかった。そうだ、今の私は「型」に囚われている。父の教えや月影流の伝統――それに縛られ、自由な発想を忘れていたのだ。

「だったら…やってみるしかないか。」

深呼吸をして剣を構え直す。剣先を見据えると、ふと父の言葉がよみがえった。

「剣は形ではなく心で振るものだ。」

そうだ、心だ。私は力を抜き、推進装置の動きを剣と一体化させることを意識した。そして、剣を振り下ろす。

「…いいじゃん!」

ターゲットを正確に斬り裂いた手応えに、私は思わず声を上げた。その瞬間、鳳翔が淡々とした声で補足する。

「主殿、誤差0.02秒。今までの動きで最も洗練されております。」
「よし、この調子で行くよ!」

星羅が遠くから大声を上げる。

「ちょっと待ってよ!その推進装置、まだ完全には安定してないんだから!」

彼女が手にしているモニターには、赤い警告ランプが点滅しているのが見えた。でも、私は今の手応えを信じることにした。

 


 

夜、白銀京の街並みを見下ろせる高台に腰を下ろしながら、私は父の遺した記録を読み返していた。月影流の起源、技術、そして理念――その全てがこのデータパッドに詰まっている。だが、それでも核心には触れられていない。

「主殿、考え事ですかな?」

鳳翔が問いかけてくる。その声はどこか柔らかい響きを帯びていた。私はため息をつきながら、夜空を見上げる。

「月影流ってさ、ただの剣術じゃないんだよね。父さんはそれを知ってたのに、私には何も教えてくれなかった。」
「父君はきっと、主殿自身の答えを見つけることを望んだのでしょう。」

鳳翔の言葉に、私は静かにうなずいた。自分の答えか…。その時、ふと遠くに見える月の光が妙に眩しく感じられた。

その月の光の中に、何かがぼんやりと浮かび上がる。私は思わず立ち上がり、その方向を凝視した。

「主殿、あれは…蒼牙か?」

鳳翔が映像を拡大する。そこには確かに、蒼牙の姿があった。白銀京を見下ろす月の光の中で、蒼牙は再び私に挑戦を突きつけているように見えた。

「…行くよ、鳳翔。」

その場を飛び出した私の胸の中には、恐れも迷いもなく、新たな決意だけが宿っていた。

 


 

白銀京の中央広場。そこは、普段なら観光客や住民で賑わう場所だ。だが、今夜は様子が違った。街のあちこちに無人機が配置され、遠くからは戦闘の予兆を思わせる低い音が響いている。

そして、その中央に立つのは蒼牙だった。彼は前回よりもさらに重厚な鎧兜を纏い、剣を構えて私を待ち受けている。

「真咲、待っていたぞ。」

その言葉に私は剣を構え、静かに息を整えた。

「…今度は負けない。」

蒼牙は無言でうなずき、剣を掲げる。その瞬間、周囲の無人機が一斉に起動し、広場全体が戦場と化した――。

 


 

無人機が一斉に蒼牙の指示で動き出す。宙を舞う小型ドローンの群れが、私に向けてビームを放った。

「主殿、接近は危険です!無人機の動きにはパターンがありますが、突貫は――」

「分かってる!けど、あいつと決着をつけるには前に出るしかない!」

鳳翔の制止を振り切り、私は推進装置を最大出力にして前方へ飛び込む。蒼牙の剣が光を反射して煌めくのが見えた。彼は既に構えを取っている。

私の動きに反応した無人機の群れが包囲網を形成しようとするが、私はそれを読んでいた。月影流の教え――「環の読み解き」だ。敵の動きを先読みし、流れの中で隙を生み出す技術。無重力環境と相性が良いはずのこの技を、私は実戦で試す時が来た。

剣を横に払う。周囲の無人機が破壊され、爆発の閃光が視界を埋めた。

「よし、次は蒼牙!」

私は推進装置を使い、広場の中央へ突撃する。蒼牙も私に向けて突進し、剣が激突した。その衝撃で二人とも弾き飛ばされ、互いに宙を舞う。

「お前の剣術…面白いな。」

蒼牙が剣を振り直しながら言う。

「だけど、それでこの俺に勝てると思うな!」

蒼牙の鎧兜が光を放つ。彼のAIシステムが起動し、鎧全体にエネルギーシールドが展開された。私はその威圧感に息を飲みながらも、剣を握り直す。

「鳳翔、あのシールドを突破する方法はない?」

「理論上はございます。ただし、その方法は非常に危険です。」

「理論上できるなら、それで十分!」

鳳翔がため息混じりに応える。

「主殿の剣術に、推進装置を最大限組み合わせる必要があります。即ち、『心』と『技術』の完全な融合が求められます。」

私は頷き、推進装置の出力を調整しながら集中を高めた。頭の中には父の言葉が浮かぶ。

「剣は心で振るもの。そして、未来を切り開くのはその心だ。」

私は剣を握る手に力を込め、蒼牙に向かって再び突撃した。

 


 

蒼牙の剣が私の剣を受け止める。激しい衝撃波が広場中に響き渡り、二人を取り巻く無人機が一瞬動きを止める。その瞬間を見逃さず、私は体勢を低くし、推進装置の力を使って一気に蒼牙の懐に潜り込んだ。

「これで終わりだ!」

私の剣が蒼牙のエネルギーシールドを突き破り、その胸部装甲を直撃する。蒼牙の体が後ろに吹き飛ばされ、地面に激突した。

「やった…!」

勝利の実感が私を包み込む。しかし、その瞬間、蒼牙は苦しそうな声で笑いながら立ち上がった。

「さすがだな、真咲。でも…まだ終わりじゃない。」

蒼牙が手元の装置を操作すると、広場全体に響くような巨大な機械音がした。私は驚きながら周囲を見渡す。白銀京の上空に浮かぶ巨大な人工衛星がゆっくりと動き出していた。

「お前は勝った。だが、俺たちの計画はここからが本番だ。」

私は蒼牙を睨みながら、鳳翔に問いかける。

「鳳翔、あれは何?」

「人工衛星『月影衛』です。ですが、機能が乗っ取られています。これ以上放置すれば、白銀京全体が危険に晒されます!」

「くそっ…!」

私は蒼牙に近づき、彼を捕らえながら叫んだ。

「何が目的だ、蒼牙!何のためにこんなことを!?」

蒼牙は静かに目を閉じ、言葉を紡いだ。

「俺たちの目的は、白銀京を守ることだ。この街が未来を見失わないために。」

その言葉に、私は動揺を隠せなかった。蒼牙の目には敵意ではなく、強い信念が宿っていた。

「…だったら、なんで戦う必要があったの?」

蒼牙は小さく笑い、こう答えた。

「お前に、それを問う資格があるかを試したんだよ。」

その言葉の意味を理解する間もなく、蒼牙は気絶した。

 


 

私は急いで鳳翔と共に人工衛星の制御システムを解除し、白銀京への危機を回避した。戦いが終わった後、私は蒼牙の言葉を反芻していた。

月影流は、ただの剣術ではない。伝統と革新を受け継ぎ、未来を切り開くための「信念」だ。それを理解した今、私は父が遺した本当の教えをようやく掴むことができた気がした。

蒼牙は目を覚まし、静かにこう言った。

「真咲、お前は強い。そして、その強さで新たな時代を切り開け。」

私は微笑みながら答えた。

「分かったよ、蒼牙。」

白銀京の空に、新しい月が輝き始めていた――。

 

 

<完>

 

 

 

※作品は完全なフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係がありません。

 

今回の創作に使用したテクノロジー

AI画像生成

  • ツール:Stable Diffusion WebUI Forge
  • 使用モデル:flux1-schnell
  • 画像加工:Adobe Photoshop Express、PhotoScape X

AI小説作成

  • ツール:Claude、ChatGPT

これらの最先端のAIツールを通じて、新しい形の創作表現に挑戦しています。

 

作品への感想・リクエスト窓口

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mochimermaid.hateblo.jp

 

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