ホメオパシー的チョコレート
来るバレンタインデーに向けて当ブログのチョーイケテル男性読者の諸君は、今頃チョコレート輸送用トラックの手配に奔走しておられることだろう。しかし、心配すべきは輸送だけではない。チョコレートには、「白い魔薬」とも言われ化学式(C6H12O5)2で表される砂糖が大量に含まれているのだ。
はびこる極端な砂糖有害論
言うまでもないことだが、砂糖を含む食品は甘くて美味しいのでついつい摂り過ぎてしまうのは事実だ。そして、砂糖の取り過ぎは体によくないこともよく知られた事実である。しかし、食養関係者・マクロビオティック関係者の砂糖有害論は度を越している。そうした砂糖有害論は荻上式BLOGの記事『ちょwwww食育冊子wwwww』や当ブログの記事『謎の化学物質(C6H12O5)2の恐怖』に詳しいのだが、理屈はどうあれ彼(女)ら(の一部)は砂糖を「魔薬」と呼んでしまうほど砂糖を敵視しているので、当然砂糖を摂取することを避けようとする。彼らの砂糖に対する態度は明らかにアレなわけだが、有害だと信じるものを食べないようにするというのは後述の斜め上を行くホメオパシー的砂糖対策と比べれば、合理的にすら見えてくる。
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ホメオパシー的砂糖有害論
ご存知の通りホメオパシーとは、レメディという砂糖玉を薬代わりに用いるニセ医療である。正確に言うと、レメディは何かしらの物質を極端に薄めてできる液を砂糖玉に染みこませて作るのだが、薄め方が尋常ではない*1ので事実上染みこませているのはただの水であり、出来上がったレメディはその物質が何であれ砂糖玉そのものとなる。砂糖玉を使った「治療法」と砂糖有害論は真っ向から衝突しそうに思えるが、実際そうでもない。例えば、ホメオパシージャパンのサイトにはこんな記述がある。
さらに甘味料についても、農薬を使って栽培され、漂白され精製されてできた砂糖の害を知ることが大事だと私たちは考えています。さとう大根を原料にした粗糖や黒糖、麦芽糖などからも糖分をとることはできるのです。「ほめあめ」は白砂糖でなく麦芽糖を使い、昔ながらの製法にこだわった一品です。
(引用元: http://www.homoeopathy.co.jp/company/respect_quality_05.html)
どうやら同じ砂糖でも精製された砂糖(白砂糖)は駄目でそうでないのはいいという考えが背後にあるようだ*2。テンサイ糖から作られているというレメディもそれなりに白く見えるが、彼らがいう白砂糖ほどは精製がされていないのかもしれない。精製されていようがいまいが砂糖は砂糖であり、白砂糖の成分は精製が粗い砂糖にも含まれているわけで、白砂糖だけを有害とする考えに分があるとは思えないわけだが、この際、そのことは不問に付そう。問題はホメオパシーが(白)砂糖の害にどう対処するかということだ。
ホメオパシー的チョコレートの笑撃の砂糖対策
昨年のバレンタインデーの直前に行われたホメオパシー医学協会会長の由井寅子氏による『愛じゃ! 人生をかけて人を愛するのじゃ!』という強烈なタイトルを付けられた講演会に面白い体験談がある。興味深いことに、この講演会では砂糖たっぷりの「特別販売のチョコレート」に関する案内があったらしいのだ。
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2/13(土)「愛じゃ! 人生をかけて人を愛するのじゃ!」が行われました。
(中略)
●本日はとても深い話をありがとうございました。とらこ先生の包み隠さず自分の事を話してくださる姿にとてもとても愛を感じました。今日は誕生日でして本当に素敵なことばのプレゼントをいただきました。あたたかいエネルギーをいただきました。特別販売のチョコレートも食べるのがとても楽しみです。「お砂糖は入ってるけどサッカライナムのレメディー入りだから大丈夫」とのことでなんて素敵なチョコレート何だろうと感動しました。ありがとうございました。
(中略)
●いつもパワフルで強い人だと思っていた由井先生も普通に子育てに悩む母親なんだと思ったら肩の力が抜けました。レメディーをとるだけで行動が伴わなければ意味が無い事も実感いたしました。レメディーに依存する事、レメディーを便利に利用する事(子育てをレメディーに任せること)に気を付けて、自分が変わる事が大切だと思いました。最近甘いものが好きな人が増えているのも、愛情不足の世の中を象徴しているなぁと思いました。周りにも砂糖のとり過ぎか、だるそうな人が増えている気がします。
(引用元: http://www.homoeopathy.ac/10seminars_about/others/20100213_aijya.php 強調は引用者による)
砂糖対策のレメディ入りのチョコレートで安心です。本当にありがとうございました。
しかも、驚くべきことに、このサッカライナムというレメディは、"お砂糖のレメディ"らしい。
以前から、甘い物のとりすぎの傾向があったのでやめようと思って、お砂糖のレメディ(サッカライナム)をとってみました。以前、キャンディセットをとって、あまり効果がなかったので期待はしてなかったのですが、今回は大成功でした。甘いお菓子を見ても、ほとんど心をかき乱されることがなくなり、おまけに早食いの大食いだったのが、たくさん食べれなくなりました。
(引用元: http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?mode=allread&no=2994 強調は引用者による)
,. -‐'''''""¨¨¨ヽ (.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! |i i| }! }} //| |l、{ j} /,,ィ//| 『砂糖は有害だと言われたのに i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ 砂糖のレメディ入りのチョコを勧められた』 |リ u' } ,ノ _,!V,ハ | /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが /' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ おれも何をされたのかわからなかった… ,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉 |/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ 頭がどうにかなりそうだった… // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐ \ 食養だとかマクロビオティックだとか / // 广¨´ /' /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ ノ ' / ノ:::::`ー-、___/:::::// ヽ } _/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::... イ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ… ※AAはイメージです。実際の体験談とは関係ありません。
ホメオパシーでは、"毒をもって毒を制す"に似た原理、類似の法則*3が存在すると信じられている。この場合には、"砂糖対策には砂糖を"ということだ。
類似の法則から行くとお砂糖たっぷりのチョコレートに「サッカライナム」は、まさにホメオパシーの理論通り、正攻法のレメディということになる。しかし、砂糖水を薄めまくって砂糖玉に染みこませる不毛な作業に従事しているレメディ職人のことを考えると、私にはこのチョコレートを口から吹き出さずに完食する自信がない。
*1:通常、10倍に薄める作業を30回繰り返して作られるので、海に目薬を一滴垂らして完全にかき混ぜたのよりも薄い。計算上、そこに含まれる物質の量は平均一分子以下となるので、文字通りの"ただの水"になる。
*2:これは食養・マクロビオティックにも見られる思想である。食物はまるごとの状態で陰と陽のバランスが保たれた状態にあり、精製したものはパランスが崩れているとする「一物全体」と呼ばれる考えがあるようだ。http://d.hatena.ne.jp/Mochimasa/20110810/p1
*3:正確に言うと、ホメオパシーでは病気と類似の症状を引き起こす物質がその病気に効くとするのが出発点だ。例えば、マラリアにはマラリアの病原体ではなくマラリアと似た症状を引き起こす薬が有効だとされた。類似ではなく全く同種のものが治療に用いられるときにはホメオパシーと区別してアイソパシーという用語が用いられる場合もある。