女限エリアからこんにちは

「瀬田さくら」というアイドル


f:id:mn37s:20241210072918j:image
わたしが見た「瀬田さくら」には、隊員たちが注いだ「愛」と彼女がそれに答える「愛」が色濃く映し出されていたように思う。

卒業が発表され、卒業の日が近づくたび瀬田さくらは繰り返しこう語っていた。

「最初はアイドルがよくわからなかった、みんなアイドルらしく振る舞えるのに私は全然わからなかった。でも隊員さんが笑わせてくれて、だんだんわかるようになった。」

私は最近になってばってん少女隊のライブを観るようになった。それ以前の彼女たちについては詳しく知らない。

私が見ていた「瀬田さくら」は常に完璧なアイドルだった。

薄い唇の端がきゅっと上がり、ぱっちり開いた目はキラキラと輝き、その縁を長い睫毛が彩っていた。メンバーが感極まって泣くような場面でもほとんど、美しい笑顔を常にたたえている。

客席に目線をふりまき、この目線は私へかな?と首を傾げるとあなただよ!とリアクションを返してくれる。何度も、どこへでもそれを配る。

彼女の口が一文字になるときは「そういう曲」のとき。世界観に没入し、瞬きすらコントロールして曲と一体化する。さながら感情を持たない美しい機械人形のように。その冷たい美しさに心が奪われた。

直接相対するときも、私の身につけているもの、私の話したこと、すべてからあの短い時間で最大のコミュニケーションをとってくれる。いつまでも見送ってくれる。

彼女は完璧なアイドルだった。だからこそ、「一番アイドルらしくなかった」と語る姿から、彼女が積み上げてきた途方もない努力を知ったのだ。そしてその裏には、彼女を支え続けた大きな愛があったことも。

アイドルがわからないと語った彼女がこうなるまで、隊員たちは彼女を大切に大切に支え育ててきて、彼女はそれに応えた。だから彼女は、美しく完璧なアイドル「瀬田さくら」になり、最も美しく咲き誇った姿で「瀬田さくら」を終わらせる事が出来たのだろう。

この結果を、瀬田さくらと隊員の愛と呼ばずになんと呼べばよいのだろう。ふたつのあいだにあった愛と信頼が、きっと瀬田さくらの輪郭を作ったのだ。

福岡 UNITEDLABで、毎週のように会っていたみんなともう会えない、と語る彼女の頬を涙が輝きながら伝うのを見て、私はそんなことを思っていた。

彼女のこれからの人生が、このうえない幸せに包まれていてほしい。

そして瀬田さくらを作った隊員に最大の賛辞を贈りたい。

あなたたちが作った瀬田さくらというアイドルは、この上なく美しかった。