エンジニア組織を強くする 開発生産性の教科書 ~事例から学ぶ、生産性向上への取り組み方~ を読んだ感想を書いておく。
本書を読もうと思ったのは、現在のチームが開発プロセスを改善する余地があるのではないかと思い、参考に出来ることがあれば見つけたいと考えて手に取った。
結果として今まで実行してきたことの再認識、言語化が出来たり、様々な知見と気づきを与えてくれた。 気になった章をメモしておく。
- 第1章 開発生産性とは何か
- 第2章 開発生産性向上のためのステップを知る
- 第3章 生産性向上の取り組みを阻害する要因とその対策
- 第4章 パフォーマンスを測るための指標
- 第5章 事例から学ぶ開発生産性向上の取り組み①株式会社BuySell Technologies
- 第8章 事例から学ぶ開発生産性向上の取り組み④株式会社ワンキャリア
- 第9章 事例から学ぶ開発生産性向上の取り組み⑤ファインディ株式会社
第1章 開発生産性とは何か
1.2 開発生産性の定義
この節では、開発生産性レベルへの言及がある。
- 「1.2.3 開発生産性のレベル」:エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリングを参考に開発生産性の3つのレベルの説明がある。
- 「1.3 開発生産性レベルごとの分類とタスク例」:開発生産性レベルの分類・タスク例がある。
その中でも「1.3.2 レベル2の分類と取り組みの例」で紹介さているRICEスコアを初めて知ったので、興味深かった。 施策の優先度を決める際の参考にしたいと思った。
観点 | 概要 |
---|---|
Reach:リーチ | 市場の広さ、どれだけ多くの人に届くのか |
Impact:インパクト | どれだけの影響を与えられるのか |
Confidence:成功確度 | 期待通りの影響を与えられるかどうか |
Effort:労力 | どれだけの時間、コストがかかるのか |
1.4 なぜ開発生産性の向上が必要か
「1.4.4 開発生産性向上を推進する上での注意点」では、
開発生産性を追求しすぎないように注意
とあり、自分もやってしまいがちなので共感した。
指標を決めて意識をするあまり、その指標を向上することに固執してしまいがち。 手段が目的化しないようにこれからも心がけたい。
「1.4.5 作るべきものを間違えてはいけない」では、
「本当に作るべきものを見極める」ことが大切
とある。これも自分が常日頃意識している点である。言われたものをただ作るのではなく、その背景をしっかりと認識して代替案がないかを考えて、提案したりしている。
第2章 開発生産性向上のためのステップを知る
「2.1.2 開発生産性の現状を可視化する」にある以下の「課題認識を揃える上で行うこと」が、これから課題を整理する際の観点として取り入れることができそうだと思った。
特に「定性的な観点での現状認識」にある以下の例は参考にしていきたい。
課題認識を揃える上で行うこと
- 各々が何に課題を持っているのかのすり合わせ
- 定性的な観点での現状認識
- 定量的な観点での現状認識
定性的な観点での現状認識
- 開発生産性についての共通認識
- 現状の課題感
- 開発生産性が高い状態についての共通認識
- 取り組みのアイデア
第3章 生産性向上の取り組みを阻害する要因とその対策
「3.1.2 考えられる要因とその対策」にある、「開発生産性向上の主なメリット」が普段自分が意識している点が挙げられていた。 漠然と考えていたことなので、言語化されているとメンバーに共有する際の参考に出来る。
開発生産性向上の主なメリット - 無駄な工数のカット - 顧客にすぐに価値を届けらる - バグや問題の早期発見/修正 - 将来にわたって使えるスキル
第4章 パフォーマンスを測るための指標
「4.4.2 バリューストリーム指標」で、バリューストリームとバリューストリームマップ(VSM)を知った。 (DORA | Capabilities: Visibility of work in the value stream を参考に筆者が日本語した図はわかりやすかった。)
開発チーム以外も含めた全体での意思決定や認識共有に非常に有効だと思った。 自分のチームでもVSMを一度作って、課題発見と改善に繋げたい。
第5章 事例から学ぶ開発生産性向上の取り組み①株式会社BuySell Technologies
「開発生産性向上を目指す組織文化作り」にて、成功事例の共有と知見の共有の2つの軸で進める、という点は参考になると思った。
「Bチームの取り組み」での「リファインメントとプランニングの改善」は、メンバー間でタスクの認識を揃える方法として有効だと思った。同様のことを自分のチームでもしているが更に徹底して行なっている感じがした。
第8章 事例から学ぶ開発生産性向上の取り組み④株式会社ワンキャリア
「SPACEフレームワークを導入しエンジニアを多角的に評価」という点が興味深かった。 特に「SPACEフレームワークの各項目に対する指標の設定」は指標の評価方法として参考に出来ると思った。
第9章 事例から学ぶ開発生産性向上の取り組み⑤ファインディ株式会社
「タスクの分解」について共感することが多かった。 自分たちのチームでも出来る限り意味のある単位で小さくタスクを分割するようにしている。 ただメリットや分解方法を明示的にしてなかったので、ここでまとめられていた「タスクを分解するメリット」と「タスク分解のコツ」がうまく説明されていて良かった。
まとめ
開発生産性向上について個人として認識していても、それをチームに展開・共有するにはどうすべきか?という点について本書は一助になると思った。