町山智浩『ベルファスト』を語る

町山智浩『ベルファスト』を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年2月22日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でケネス・ブラナー監督の映画『ベルファスト』を紹介していました。

(赤江珠緒)町山智浩さん、先週は久々のスタジオご登場でしたが、今日はご自宅のあるカリフォルニア州バークレーからのご出演でございます。町山さん?

(町山智浩)はい、町山です。よろしくお願いします。

(山里亮太)お願いします。

(赤江珠緒)あの後、無事にスムーズに帰られましたか?

(町山智浩)ああ、はいはい。おかげで感染せずに帰れました。アメリカに帰ったらね、コロナが一山越えて、今はマスクの義務付けとかなくなってますね。

(山里亮太)だって町山さん、スーパーボウルとか見たら、客席びっしりの人、ほとんどマスクつけてなかったですよ。

(町山智浩)まあ、それは問題だなと思いますけど。ただ日々の感染者数が2万ぐらいに下がってるんで。日本よりも感染者数、はるかに少ないですよね。ただね、一難去ってまた一難でね、ウクライナですよ。

(赤江珠緒)そうですね。本当にどんどん緊迫してますよね。状況が。

(町山智浩)もしね、戦争をロシアが仕掛けたりすると……アメリカもこれ、戦争するわけにいかないしね。これ、ロシアって世界で第3位の石油の輸出国なんですよ。で、その供給量が減ると、また石油の価格が上がって、大インフレが……インフレにインフレを重ねることになるんで。これ、ヤバいし。かといって、戦争しないでアメリカがロシアのやりたい放題させちゃうと、この間、アフガニスタンから撤退したばっかりじゃないですか。で、ウクライナでもロシアにやられ放題ってなるとこれ、アメリカは信頼を失っちゃいますよね。すると、ヨーロッパだけじゃなくて、台湾とか韓国とか日本も心配になりますよね。「アメリカは守ってくれねえじゃん?」って話になってね。結構今、アメリカはヤバい、どうしようもない状態ですよね。これに関しては。

(休日明けの)火曜日にね、株式市場が開くんですけど。恐ろしいことになりそうですけども。で、今日紹介する映画もちょっと、それと似たような状況なんですけど。今ね、ロシアはウクライナに攻め込むための口実として、ウクライナの東部。つまりロシアに近い方にロシア人がいっぱい住んでいて。彼らがウクライナから独立しようとしている。それを守るんだっていう風なことを言っているんですよね。まあ、ウクライナっていうのはずっとロシア帝国時代からソ連時代も含めて、ずっとロシアの属国みたいにされてたんで。その地域にもロシア系の人がいっぱい入植して住んでるんで。それがウクライナから独立するっていうのはまあ、一種ロシアの傀儡国家ですよね。

だからロシア領にそれを取り込んじゃうっていう形でね、昔の日本軍がやった満州国みたいなもんですけど。そういうことをやろうとしてるんですが、これからお話しする映画もですね、北アイルランドというところが舞台なんですけど、ちょっと似たような感じなんですね。複雑さが。今日紹介する映画は『ベルファスト』という映画です。それで今、かかってるのはヴァン・モリソンという歌手の曲なんですけど。この人もベルファスト出身の人なんですね。で、この『ベルファスト』は今、今年のアカデミー賞の7部門。作品賞、監督賞とか7部門にノミネートされている有力候補のひとつです。

で、ベルファストっていうのは北アイルランドの首都っていうか……北アイルランドっていうのは非常に特殊なところで。国じゃないんですけど。でも、アイルランドでもないんですよ。イギリスの領土なんです。北アイルランドっていうのは。だからさっき言った、そのクリミアにおけるロシアの人がいっぱい住んでるところと同じような感じなんですよ。で、イギリスという国の正式名称ってグレートブリテン及び北アイルランド連合王国っていうんですね。で、北アイルランドは非常に特殊なものとしてあって。このベルファストという北アイルランドの街で、この映画の監督のケネス・ブラナーさんが生まれて、9歳まで育ったんですけど。彼が9歳だった時、1969年ですね。その思い出を集めた映画なんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)だから『ちびまる子ちゃん』みたいな感じなんですよね。『ちびまる子ちゃん』っていうのはあれ、さくらももこさんの子供の頃の思い出ですよね? 静岡ですよね、たしか。で、そういう感じなんですけど。

(赤江珠緒)じゃあ、『おもひでぽろぽろ』で間違ってない?

複雑な北アイルランドの事情

(町山智浩)そうなんです。ただね、この北アイルランドっていうのは非常に複雑なところで、ちょっと説明しないといけないと思うんで説明します。このケネス・ブラナーが9歳の頃に彼、アパートの前の道端で遊んでるんですけど。そうすると、鉄パイプとかを持った大人たちをワーッと押し寄せてきて。レンガを投げたり火炎瓶を投げたりして、そのアパートとか商店をめちゃめちゃに破壊しながらね、「カトリックは出ていけ!」って言うんですよ。で、どうしてそんな状態になったか?って言うと、その頃北アイルランドではアイルランド系のカトリック教徒と、スコットランド系のプロテスタント教徒が激しく争っていて。その60年代終わりから90年代にかけてですね、ものすごい死傷者を出してるんですね。

これはなんでか?っていうのはややこしくて、すごく大変になっちゃうんですけども。まず、アイルランドっていう国とスコットランドっていう国があったんですよ。別々の国です。独立した国で。どっちも民族的には同じです。ケルト系という民族で。どっちも宗教的にはカトリックの国だったんですね。ただ、16世紀ぐらいからスコットランドもアイルランドもイギリスに占領されちゃうんですよ。大英帝国に飲み込まれちゃうんですね。で、その間にスコットランドはイギリスと同じようにプロテスタントに変わるんですけども。それで、アイルランドの北アイルランドにスコットランドの人たちが同じ国だから。両方とも、イギリスの一部だから。

(赤江珠緒)言葉も一緒ですし。

(町山智浩)言葉も……まあ、言葉は当時は英語じゃなかったんですけど。ゲール語っていうのをしゃべってたんですよ、当時は。アイルランド人もスコットランド人もケルト系の人々は。ただ、イギリスに教育されて英語化していくんですけども。で、その後100年ぐらいしてから……もっとあるんですけど。1920年頃にやっとアイルランドが独立戦争を起こしてで、イギリスからアイルランドっていう島が独立するんですけど。その時に北アイルランドはスコットランドからの移民の方が多いから、アイルランドになることを拒否してイギリスに残ったんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)これもまた、すごくやややこしいんですけど。スコットランドはその後、さらに独立するんですよ。まあ、それはまた別の話なんですけど。で、北アイルランドは政府があって、北アイルランド政府は全部スコットランド系の方が人口が多いから、北アイルランド政府はスコットランド系がリードをして、主導権を握ってるんですけども。でも、少数派のアイルランド系の人たちは、その南の方のアイルランド共和国と一体化したいんですよね。

だから北アイルランドのスコットランド系を追い出して、アイランドになりたい。で、スコットランド系の人たちは北アイルランドからアイルランド系の人たちを追い出したいんですよ。で、互いのスコットランド系、アイルランド系のそれぞれが民兵を組織して互いに殺し合いを続けるという状況になったんですね。そう聞くと、なんかこの『ベルファスト』っていう映画は恐ろしい映画なんじゃないかと。

(赤江珠緒)そうですねお互いが奪い合おうとしている場所みたいな感じですもんね。

(町山智浩)そう。だから怖い映画かと思うんですけど、この『ベルファスト』っていう映画はかわいい映画なんですよ。ほのぼのとね、ほっこりと心温まる映画なんですよね。それは、その監督のケネス・ブラナーの9歳の頃の視点からだけしか見てないか。子供の目から見てるんで、カメラの位置がものすごく低いんですよ。子供だから。

(赤江珠緒)ああ、すごい。カメラ目線も子供の位置にして?

(町山智浩)子供の位置にしてるんですよ。だから大人とか全部、見上げて話すんですよ。で、このケネス・ブラナーの家はね、プロテスタントなんですけど、貧乏なんで。お父さんはあんまり稼ぎがないので……カトリック系の人の方が貧乏なんですね。北アイルランドでは。で、カトリック系の人がいっぱい住んでる長屋に住んでるんですよ。だからカトリック系と一緒にテロにあったりしてるんですけど。これね、トイレが外にあるんですよ。これね、アメリカとかイギリスの貧乏な家っていうのは、トイレが外にあるんです。くみ取り式なんですよ。掘っ立て小屋みたいのがアパートの外にあって。だからそれ見るだけで貧乏ってわかるんですけど。僕は、ビートルズのリンゴ・スターが育った家っていうのを実際に見たんですけど、やっぱりトイレは外にありましたね。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(町山智浩)貧乏で水洗トイレをつけられないですよ。でね、このケネス・ブラナーっていう人は……彼が監督して、名探偵エルキュール・ポアロを演じる映画の『ナイル殺人事件』がもうすぐ日本公開ですよね。

(赤江珠緒)そうですね。コマーシャルしてるのとか見ますね。

(町山智浩)で、このケネス・ブラナーっていう人はイギリスの王立演劇学校を出て。王立シェイクスピア劇団から出てきた人なんですよ。

(赤江珠緒)すごい王道な……。

(町山智浩)そう。だから僕、ずっとね、何も知らなかったから。なんかお金持ちのエリート、お坊ちゃんなのかなって思ってたんですよ。ところが、この映画を見て実はその北アイルランドからイギリスに移民した、もう本当に貧乏な労働者の家庭で。本当に苦学してここまで出世した人なんだってことがわかったんですね。だからね、ちょっといけ好かないやつかなと思っていたらね、苦労人だったことが分かったんですけど。

(赤江珠緒)そうですか。ケネス・ブラナーさん。

(町山智浩)そう。とにかく9歳だから、ケネス・ブラナーはプロテスタントとかカトリックってなんだかわかんないんですよ。全然わかんないですよ。ただ大人がね、「カトリックは敵だ!」とか言ってるから「そうなのかな」とか思うだけなんですよ・でも、いろいろ曲解してて。たとえば「カトリック信者っていうのは悪いことをしても、教会で懺悔すれば許されるらしいよ。だからあいつら、どんな悪いことでも平気でするんだ。怖い!」とか言ってるんですけど。そういう話じゃないのに……とかね。子供だから勘違いしてるんですよ。で、大人たちが実際になんで殺し合いをしてるか、全然わかんないですけど。でもそれは、実際意味ないんですよ。子供の方が正しいんですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。なんで殺し合いをしてるんだ?っていう。そもそも同じキリスト教なのに。

どうしてお互いに争ってるのか?

(町山智浩)そう。同じキリスト教なだけじゃなくて、アイルランド系とスコットランド系は民族的にも同じなんですよ。ケルト系で。どっちもイギリスに占領させていて、被害者なんだけども、どうしてお互いに争ってるのか?っていう。大人に聞いてもたぶんよくわからない問題なんですけど。子供だからもっと素直にね、なんだかわからないわけですよ。でも彼にとって一番大事なのは、クラスにキャサリンっていうかわいい女の子がいて。その子に片思いしてるんですね。で、彼女が勉強ができるから、勉強できる子は前の方の席に座れるんですよ。その小学校では。

で、彼も一生懸命勉強するんですよ。彼女の隣に座れるようにって。ところがね、彼女はカトリックなんですよ。で、彼はすごく悩んで。お父さんに「父ちゃん……カトリックの子が好きなんだけど、カトリックの子と結婚してもいい?」って聞くんですよ。するとね、この父ちゃんは笑ってこう言ってくれるんですよ。「彼女はヒンズー教徒だろうと、無神論者だろうと、何でもいいよ。お前たちが愛し合ってるならな」って言うんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そこはそういう風に言ってくるんですね。

(町山智浩)このお父さん、いい人なんですよ。で、しょっちゅうプロテスタントの民兵から「お前もプロテスタントなんだから、俺たちは仲間に入って一緒にテロをやれ!」とか言われるんですよ。「いやいや、俺は別にそういうことで争うのはバカバカしいと思うから、やらない」って言うんですけど。そうすると「お前たちが俺たちの仲間に入らないんだったら、お前は裏切り者だ!」って言って。今度は彼はプロテスタントなのにプロテスタントのテロリストが命を狙われ始めるんですよ。

(赤江珠緒)もう、どんどんおかしなことになってる……。

(町山智浩)そう。これはいわゆる「分断」っていうやつで。「どっちかにつけ! どっちにもつかないなら、お前は敵だ!」みたいなね。だんだんもう、居づらくなってくるんですね。で、お父ちゃんは「こんなところじゃ子供を育てられない。大きくなったらそれこそ、テロリストになっちゃう。だからどこかに移民しよう」って言うんですね。でも、お母さんはベルファストで生まれ育って、他を知らないから。「私はそんなことできない。移民なんかできない!」って泣くんですよ。で、この9歳のケネス・ブラナーも泣くんですよ。「外国なんか怖い怖い! 知らない!」って言って泣くんですね。で、「外国に行ったら言葉が通じない!」って言うんですけど。

(赤江珠緒)そうね。キャサリンにも会えなくなるしね。

(町山智浩)キャサリンにも会えなくなるしね。するとね、おじいちゃんがいて。おじいちゃんがいいんですよ。この人が。「言葉通じない? 大丈夫だよ」って言うんですね。孫に。「ワシはもう何十年もおばあちゃんと一緒にいて、同じ言葉しゃべってるけど、いまだにおばあちゃんが何を言ってるかよく分からん」って言うんですよ(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!

(町山智浩)でもね、おじいちゃんはこう言うんですよ。「わかろうとすることが大事なんだよ。お前なら外国に行っても、一生懸命なにかを伝えようとすれば伝わるよね。それでも伝わらないなら、相手が悪い」って言うんですよ。「相手がわかろうとしてくれないだけだ」って言うんですよ。これはね、外国に住むと本当に実感しますよ。やっぱりね、「言葉ができないとダメなんだ」って日本の人で思い込む人は多いですけど。でも、一生懸命話せばみんな理解してくれますし。一生懸命話しても理解しようとしない人は心根のいい人じゃないから、そこから立ち去った方がいいですよ。はい。こういうことをおじいちゃんが言ってくれて。そういう結構いい話がたくさん詰まった、やっぱりベルファスト版『ちびまる子ちゃん』的なところがあるんですよね。

(赤江珠緒)本当ですね。へー!

モノクロの中のカラー

(町山智浩)でね、あとこの『ベルファスト』っていう映画はモノクロなんですよ。9歳のそのケネスくんの周りは色がないんですね。これはね、色がない方がいいんだと思ったんですけど。バイオレンスがすごいんで、やっぱりカラーだと生々しくなっちゃうっていうのもあるんですね。ただね、彼がテレビを見たり、映画を見たり、舞台でお芝居を見たりすると、そこがものすごく色鮮やかなカラーになってるんですよ。

(赤江珠緒)じゃあ、彼の心がときめいて見たものはカラーなんですね。

(町山智浩)まさにその通りなんですよ! もう現実が殺伐としてるわけですよ。そこら中、廃墟なんでね。火をつけられたりして。ただ、見るハリウッドの映画であるとか、ミュージカルとか、お芝居だけはもう本当に色鮮やかに見えて。「ああ、これでケネス・ブラナー少年は将来、お芝居とか映画の道に進むことになったんだな」っていうのがすごいよくわかるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そのへんもうまいなと思ったんですけど。あとね、これ1969年の話なんで。69年っていうと、だからお母さんがミニスカートですね。当時は本当にお母さんもミニスカートを履いていた時代なんで。いい時代でしたよ、本当に(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!

(町山智浩)あとね、アポロ11号がロケットで月に着陸するんですよ。でね、その頃はもう空前の宇宙ブームだったんですよ。僕も覚えてますけど。とにかくおもちゃとか、テレビも何もかも宇宙のことばっかりなんですね。すごかったですよ。だってその頃はみんな宇宙に行けると本当に思ってたからね。「いくらで行けるんだ」とか、そういう話になってましたよ。まあ、今も大金持ちは行けるみたいですけども。で、このケネス少年も宇宙SFのテレビの『スター・トレック』とか『サンダーバード』とかそういうのを見て憧れて、まねっことかしてるんですけど。でも、そういう宇宙SFって『スター・トレック』なんかは特にそうですけど。

未来に地球がひとつになって、国境とかそういうものはなくなった世界の話なんですよ。テレビを見るとそうなのに、自分の身の回りを見ると同じ顔した人同士が宗教が違うっていうことで争い続けてるという。子供心に「なんだ、こりゃ?」って思うわけですよね。そういうところもうまいっていうか、まあ実感なんでしょうけどね。このね、「どっちにつくんだ?」っていうのはね、僕も子供の頃に体験してるんですよ。実は。うちの親父はまだ朝鮮がひとつの国だった頃に日本に来た人だったので。その後、「北朝鮮と韓国、どっちにつくんだ?」って言ってくる人が家によく来てましたよ。

(赤江珠緒)ああ、そうですか!

(町山智浩)はい。日本にいる在日の人って、ほとんどが南側、韓国出身の人なんですよ。でもその後、政治的な選択をして北朝鮮籍を選んでるんですよ。だから「政治的にどっちを選ぶんだ?」っていうことでね、問い詰められたりしてて。うちの親父はそういうのは全然興味ないから。「わかんねえ」みたいなことを言ってて、おかしかったことがありますけど。そういうのは結構どこにでもあるんだなと思いましたね。

(赤江珠緒)そして宗教ってなんなんだろう?って思っちゃいますね。こうなるとね。「平和のために」って始まっていることがなぜ、こんなに争いを起こすんだ?っていうね。

(町山智浩)そう。同じキリスト教でね。で、結局ずっと爆弾テロとか延々と続くんですけど。僕が80年代にロンドンに行った時はロンドン市内でアイルランド側の爆弾テロがありましたね。ただ、ずっとそれがもう30年ぐらい続いていて、1990年代の終わりにやっと和平合意がなされて。

(赤江珠緒)最近ですよね。

(町山智浩)最近なんですよ。それから今まで20年ぐらいはあんまり激しい戦闘がないんですけど。でもね、その30年ぐらいの間はほとんど内戦だったんで。3500人から4000人ぐらいが死んでるんですよ。だからこの映画は「その間に亡くなった人たちに捧ぐ」っていう字幕が最後に出るんですけど。でもね、EUからイギリスが独立したでしょう? BrexitってやつでEUから出たじゃないですか。それで、どうなったかっていうと北アイルランドだけはEUから出てないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうでしたね!

(町山智浩)そう。だから北アイルランドとアイルランドの間の国境は自由に行き来できるようになったんですよ。同じEUの中に入ってるからね。あれだけ戦争してたのに、今は全然ないんですよ。それが。ところが、北アイルランドはEUに残ったから、北アイルランドからイギリスに行く時は普通に外国に行くように税関があって、そこを通らなきゃなんないんですよ。北アイルランドとイギリスの間には国境ができちゃったんですよ。それで。

(赤江珠緒)そうか。EUから離れたしね。

(町山智浩)離れたからね。でも今度はスコットランドの方が「独立してEUに入ろう」って言ってるんですよね。

(赤江珠緒)もうなんか、わけがわからないことになってますね。このあたりも。

(町山智浩)でしょう? だから国境とかって一体なんだろう?って思うんですよね。そういうのね、本当に子供の目から見ると逆に「それってばかばかしいじゃない?」っていうことを教えてくれる映画が『ベルファスト』ですね。これ、アカデミー賞を取りそうなんでね、ぜひご覧なっていただきたいんですが。3月25日から劇場公開ですね。

(赤江珠緒)はい。今日、ご紹介いただいたのは『ベルファスト』でございます。3月25日から日本でも劇場公開。見ることができます。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

『ベルファスト』予告編

<書き起こしおわり>

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