ファンタスティック映画主婦

雑食つまみ食い系映画感想ブログ

2024年新作映画ベストテンとご挨拶

開店休業状態の当ブログですが、皆さんいかがお過ごしですか。

 

まず、最初にお知らせさせていただきますと、今回のエントリーで当ブログの更新は最後となります。

ええっ!?まじ!!?

(自分で驚くな)

 

2015年に開設してからなんとなくぼやぼやと続けてきましたが、もう最近はなかなか記事をあげることもままならず、そろそろ潮時カナーと思い。これまでお読みくださった方、検索などでここまでたどり着いてくださった方、さらにブログ経由で繋がることのできた皆さまには、この場を借りて感謝の意を述べさせていただきたいと思います。

ほんとうにありがとうございました。

ブログじたいは多分残すと思いますが、そのうち閉鎖するかもしれません。いろいろと書いてきて思い入れもありますが、まあ若干黒歴史になりつつある面もあるからね……(おい)。

とは言え楽しく書き続けて来られたのも、読んでくださる方、コメントやスターなどで反応くださった方々のおかげです。

重ね重ね、お礼申し上げます。

 

……と、まぁ前置きはこのくらいにして、最後となる今回は!わー!っとぱー!っと!毎年恒例、新作映画のベストテンの発表!やっちゃうよ~~!!(なんだこのヤケクソ感)

 

ちなみに2024年の新作映画鑑賞数(レンタル・配信含む)は188本。なんの参考にもならないと思いますがよろしかったら見てってやってくださいな。

 

 

  • 【選定基準】
  • 2024年に日本で一般公開(ビデオスルー・動画配信含む)された映画を対象としています。
  • 邦画洋画アニメ実写ジャンル等は不問です。

 

早速、10位からどうぞ~(っ´ω`)っ




 

 

 

10位 便乗邦題と侮るなかれ!

ツイスター スーパー・ストーム

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今年のレンタルスルー界は二大巨頭『エイリアン:ロムルス』と『ツイスターズ』のおかげで大いに賑わいました。

竜巻映画も例年にない盛り上がりを見せ、便乗邦題&ジャケもザクザク。こちらもそんな中で夏ごろにレンタルがはじまった作品なんですが、なんとびっくり、

面白かったんですねー!(笑)

竜巻のCGもしっかりしてて、『ツイスターズ』に家族愛と青春要素を付加したようなストーリーもなかなか◎便乗邦題でスルーするにはもったいない作品。今年の掘り出し物枠です。

 

 

9位 わからなくても寄り添える

夜明けのすべて

夜明けのすべて

いい映画でしたな……(しみじみ)。

見た目からはわからないしんどさって、なかなかまわりには理解してもらえなくて、それで余計にしんどくなっちゃうんだよね。医療機関にかかっていたとしても、そのつらさがなくなることはなくて。でも、それを「そっか、つらいんだね」って頷いてくれる人がいるだけでも違うんだなぁなんて思った。

この苦しみがいつまで続くんだろう、とか、いつか普通に戻れるんだろうか、とか、そういう悶々とした袋小路にいたわたしも前向きになれるような作品でした。

 

 

8位 怒りの拳を受けてみよ

モンキーマン

モンキーマン

デヴ・パテル監督&主演の復讐アクション。

めっちゃくちゃ面白かった~!

パテルさんてあんまりこういう暗い役とかアクションのイメージ全然なかったんだけど、いやぁ、すごく良かった。

やられ演技もちゃんと痛そうだし、身体作りも並々ならぬものを感じました。底辺の人間が権力に挑むストーリーもアツかったし、虐げられた者たちの物語としてしっかりしていた。

今年はジェシー・アイゼンバーグの『僕らの世界が交わるまで』とか、アナ・ケンドリックの『アイズ・オン・ユー』とかもすごく良かったし、俳優監督の当たり年だったのかもしれん!

パテル監督の次回作にも期待しましょう~。

 

僕らの世界が交わるまで [Blu-ray]

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7位 ベスト配信作品賞

キャドー湖の失踪

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U-NEXTで配信されたmaxオリジナルの作品。こちらを観るだけで加入してもお釣りが来るんではないかというくらい、最高に面白かった!!

一人の女の子が湖で行方不明になってそれを義理の姉が探す、という話と、同じ湖に暮らす男が母親の死の原因を探るうちに湖の不思議な現象を目の当たりにする、という二つの話が時にすれ違い、交差しながら進んでいきます。

あー、でも出来ればネタバレとか何も見ないで観て欲しい~!

点と点が繋がって全貌が明らかになった時、ぶわりと感動の涙が押し寄せますよ……。

ヒントとして(?)、なんとなく似てると感じたこちらの映画を置いておきます。

 

 

 

6位 新味溢れる青春邦画

HAPPYEND

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毎年邦画はあんまり観ないんですけど、今年は例年以上に日本の作品(ドラマ含め)を観たような気がします。

その中でも本作は新人監督、演技未経験の役者さん、というフレッシュさも相まってすごく新しいものを観たという感じがしました。

世界が変わっていくのに、友情だってずっと同じではいられない。でも変わらないものは確かにあって、そこに青春の価値があるんではないか。……なんかそんな話なのかな、と。

どんなに仲良しでも立っている場所が違うと見えているものが違う、という意味では『ブラインドスポッティング』のような話でもあったのかなとも思ったり。

 

 

とにかくいろんな要素が複雑に絡み合ってるのに、決して内向きではなくて、ちゃんと社会に目が向いてるところが好きでしたね。

 

 

5位 ベタで王道、そこがいい!!

野生の島のロズ(2月公開)

The Wild Robot

こちら公開は2025年なんですけど、東京国際とかいろんなところで公開されてたみたいなのでこっちのランキングに入れちゃいます。

原作はピーター・ブラウンの「野生のロボット」。人のいない無人島に流れ着いたお手伝いロボットが、渡り鳥の雛を育てていくうちに森の動物たちに仲間として迎えられていく……というお話。

いやー泣いた泣いた。4回は泣いた。

しかも手がぐっちょぐちょになるくらいにベっタベタなところで(笑)。いやロボットと動物の交流云々でこういう風になるやろな、と想像していた通りのことをやってるだけなのに、なんだろ、それを美麗なアニメーションでやられると感情がぐわ~っと昂っちゃうんでしょうな。

「Wild Robot」っていうタイトルを回収するシーンがあるんですけどね、もうそこがめちゃめちゃエモくて最高だったっす。

 

 

4位 ただ、愛が欲しくて

システムクラッシャー

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この映画のことを思い出すだけでもう胸が痛くなる……。

虐待のトラウマによって感情のコントロールが出来ない少女。母親と暮らしたいけど、それも難しい。施設や里親に預けられてもそこでも問題を起こして追い出されてしまい……。

いわゆるセーフティーネットとされる「システム」からあぶれてしまう子どもをどう救うのか。そもそも救うことなどできるのか?という難題に向き合った映画です。

とにかく主演の少女を演じたヘレナ・ツェンゲルが素晴らしいです。

 

 

3位 君となら、

地獄でも大丈夫

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今年も面白い韓国映画がいくつもあったんだけど、その中でも特にぶっ刺さったのがこちら。

いじめられっ子だった二人がいじめの首謀者に復讐しようと会いに行くが、そいつは新興宗教に心酔して真人間になっていて……!?というあらすじ。

友情の話と信仰の話、そして人は変われるのかという話が複雑に描かれ、カオスになりそうな一歩手前で踏みとどまっていて、すごく揺さぶられた一作でした。

あとはもう、とにもかくにもラストシーンね。大好き。OKiOKi!

 

 

2位 わたしの欲望があなたを殺す

ラストマイル

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おそらく今年を代表する一作だったんじゃないかしら。

まあみんな観てるだろうから詳細は割愛。

今年の3月に、ほんと偶然の成り行きで「アンナチュラル」を一気観して、「MIU404」も見て、そのままの勢いでビッグウェーブに乗れたことも個人的にラッキーだったな。

わたしはあまりネット通販は利用しないから「ブラックフライデー」の熱狂とかはイマイチ理解できなかったりしたんだけど、それにしたって便利さは生活を豊かにする反面、どこかにしわ寄せが行っているのだということを改めて考えさせられましたね。

取って付けたようではない、かつファンサービスのなんたるかがわかっている、クロスオーバーの仕方もクレバーでした。

 

アンナチュラル

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1位 きみとぼくの「September」

ロボット・ドリームズ

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こちらも今年を代表する一作でしょう!ほんと大好き。

実はわたしこれ、海外配信がはじまってすぐに観たんですけど、どうやら評判がいいことと絵柄が好みだったことだけで見始めてたので、まさかこんな話だとはまっったく思わなくてですね。

ラスト、もうね、

引くぐらい泣きました。

……ていうか、超くそどうでもいい自分語りさせてもらうと、わたし過去にお付き合いしてた人の着メロ(着メロ!)を「September」にしてたことがあって、まず曲に思い入れがありすぎた(爆笑)。あと、キャンペーンに応募したらポスターが当たっちゃったりもして、なんか勝手に縁を感じちゃったんですよね~。

日本公開がはじまって評価が固まってくる前に新鮮な気持ちで観られたのもよかったなと思います(結局初日に映画館にも観に行っちゃったけど)。

台詞がないからこそ伝わってくる情感と、アニメーションだからこその豊かな表現が見事にエモーショナルに繋がってる作品でしたね。

もうね、ドッグがしっぽフリフリするのがほんといちいちかわいいんだ……!

 

Robot Dreams (English Edition)

 

 

 

そのほかお気に入り10作

ありふれた教室

教師の方が観たら胃が痛くなりそうな映画でしたね……。

 

セーヌ川の水面の下に

こんなサメ映画出てきたらもう勝てんよ。

……え、続編作るとか正気ですか?!(笑)

 

ユニコーン・ウォーズ

これも絵柄と話のギャップがすごいアニメだった。終わりかたも興味深くて、すごい映画観たなって思っちゃった。

 

ぼくが生きてる、ふたつの世界

私事ですが、今年から手話を習いはじめまして。なので手話を題材にした漫画やドラマをよく見るようにしてました。これもすごくよかったなぁ。こんなん泣いちゃうよ。

 

アイズ・オン・ユー

アナケンさん初監督でこれはすごいよ。ずっとドキドキハラハラしてたし、めっちゃ面白かった。

 

イベリン 彼が生きた証

これで泣かない人とかいんの!?ってくらいぼろっぼろ泣いたドキュメンタリー。監督は『画家と泥棒』のベンジャミン・リー。

 

いつか笑いあえるなら

Netflix配信のスウェーデンの家族ドラマ。いまのわたしには必要な映画でした。

 

動物界

ほーんと、いい映画だったなー。動物人間の造形もとても良かった。

 

テリファー 聖夜の悪夢

血みどろはストレス解消になるんだよなぁ。

 

ヒート・オブ・シティ 現金強奪

レンタルスルー枠。アクション映画としてほんと面白い。

 

 

未公開映画ベストテン

未公開映画は今年は93本観ました。去年は53本だったのでだいぶ増えたな。面白い映画にたくさん出会えたと思います。

 

1位 The Substance(来年5月公開)

絶頂期を過ぎた女優(デミ・ムーア)が若返りの薬品を手に入れて若く美しい自分(マーガレット・クアリー)を生み出す。だが若い自分が暴走し……。

いわゆるボディホラーの部類に入るんだろうけど、テーマ性がしっかりしているし、ジャンル映画としての嗜みも忘れてない感じがたまらない。もうラストにあんなの見せられたら優勝でしょ!ほんとに大っ好き。

 

2位 Tuseday

難病に侵された少女の前に死を司る鳥が現れる。だが娘の死を受け入れられない少女の母親が思わぬ行動に出て……。

「家族の喪失と向き合う」って映画はいくらでもあると思うんだけど、こんなユニークな切り口ははじめて観ました。どんな映画にも似ていない感じ。

A24はアリ・アスターとかアレックス・ガーランドなんかはもういいから、こういう新鋭タイプの映画を積極的に推してよ。

 

3位 FEMME

男たちに襲撃され心身に傷を負ったドラァグクイーン。だが加害者の一人がクローゼットのゲイだと知り、これ以上ない復讐を思い付いて、男と深い仲になるが……。

もう最初から最後までヒリヒリが止まらない、秀逸クィアスリラー。どうやらクロックワークスさんの配給で近々公開されるらしいです!痛々しくて苦しくてつらいけど、先の読めなさでいうと今年随一の面白さでした。ぜひ。

 

4位 Cuckoo

母を亡くし傷心の少女が父親と義母、義理の妹とともにドイツの山奥のリゾート地にやって来る。だがリゾートのオーナーはどこか不自然で、夜には謎の女が現れ、異様な雰囲気が漂う。やがてこの場所でよからぬ何かが行われていると気付くのだが……。

『Luz』のティルマン・シンガー監督の長編第二作。タイトルの「カッコウ」からわかる通りの映画ではあるんだけど……ものすごく変!

この奇妙さをわたしの語彙力ではうまく伝えられないのがほんともどかしいんだけど。とにかく真相がわかっても意味がわからない感じが最高で、ホラーでもあるけどいろんな要素がごった煮されてる感じ。

主演は「ユーフォリア」のハンター・シェイファー。

 

5位 V/H/S/Beyond

人気POVオムニバス「V/H/S」シリーズの新生第4弾。今回はSFに特化していて、どのエピソードも面白かった!シリーズでいちばん好きかもしんない。

まさかこのシリーズでインドダンスが見られるとは思わなかった「Dream Girl」が特にお気に入り!

 

6位 ODDITY

妹が不審死を遂げ、盲目の姉が真相を探ろうと曰く付きのマネキン(?変な人形)をつれて妹の元夫と後妻が暮らす家にやって来る。やがて怪異が起こりはじめ……。

いや雰囲気が最高。ずっとひたひたと不気味さが漂っているんだけど、独特のユーモアがあるんだよね。思わずふふっと笑ってしまうオチが粋すぎる。

 

7位 KNEECAP

アイルランド語を母語とするドラッグディーラーの青年二人がアイルランド語教師とラップグループを結成!?実在のラップグループ「KNEECAP」の結成を描く虚実ないまぜの劇映画。

アイルランド語の事情に詳しい訳じゃないので解説はプロにお任せするとして、言語とアイデンティティの密接な関係について改めて考えたくなる一作。映画はほんとはちゃめちゃなんだけど(笑)。

 

8位 MONOLITH

再起をはかろうとするジャーナリストが、突如目の前に現れるという奇妙な黒い物体の噂を聞き、自身のポッドキャストで取材をすすめていく。謎を探る中、やがてその物体と自身の繋がりに気付き、主人公は疑心暗鬼に駆られていく……。

オーストラリアのSFスリラー。ほぼ一部屋内で起きる一人芝居なんだけど、こういうミニマムなSFが個人的に好きなのよね~。

次第に憔悴していく主人公を『死霊のはらわたライジング』のリリー・サリバンがいい感じに演じてます。

 

9位 The Contestant

90年代後半、日本のバラエティ番組で「懸賞生活」の企画に出演し一躍時の人となったコメディアン、なすび。孤独に苛まれ死も意識したという彼はいま何を思うのか……。日本のテレビ業界の暗部にも切り込んだ、イギリスのドキュメンタリー。

当時見てましたよ、電波少年。その裏側がこんな過酷なものだったとは知らなくて、愕然としました。プロデューサーとか当時の番組関係者にも話を聞いてるんだけど、あの頃のテレビはやっぱり正気の沙汰じゃなかったんだなと改めて思った(まったく悪びれる様子もないのがその根深さを物語ってるよね)。

何らかの形で日本でも観られるようになるといいな。

 

10位 How to Kill Monsters

ハロウィンの夜。誤って召喚してしまったモンスターが友人たちを殺害。なんとか退治したファイナルガールの女性だったが、手違いで殺人の容疑者として警察に捕まってしまう。しかも署内にモンスターが現れて……。

『ブック・オブ・モンスターズ』の製作陣によるクリーチャーホラーコメディ!プラクティカルなエフェクト満載でほんと楽しい。ストーリーにも捻りがあって、この展開は読めなかった!

いやーほんとこういうのわくわくしちゃう。超好き。

 

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特別枠 Sasquatch Sunset(サスカッチ・サンセット/来年5月公開)

あるビッグフットの一家の一年を追ったネイチャードキュメンタリー(という体)。

こんなんね、実質1位ですよ(爆笑)。

フィルマ開いたら★2.9で、いや多分それが妥当な数字だと自分でも思うんだけど、わたしは4.5付けたの。つまり、そういう映画です。がはは!

 

そのほかに、詐欺野郎を捕まえるため盗んだバイクで走り出すおばあちゃんの映画『Thelma』、どんくさ男の変則的雪山サバイバル『White Out』、ヒルビリーホラー?と思いきやまさかのホームインベンションもの『LOWLIFE』、いかれた教義のせいで散々な目に合う修道女をシドニー・スウィーニーが体当たりで演じる『Immaculate』、不気味な雰囲気もニコケイの顔芸に持っていかれる話題のオカルトスリラー『LONGLEGS』、ドラァグクイーンvsヴァンパイアのファビュラス系「フロムダスクティルドーン」『SLAY』などなど好きな作品もたくさんありました。

 

 

2024年新作ドラマベストテン

実は今年はドラマも結構観れた一年で(言っても単発含めて30本くらいだけど)、せっかくなんでベスト10を出してみようかと!最後だっつーのに急に新しいことやり出してからに……。

 

1位 虎に翼

最終週「虎に翼」 (130)

わたし朝ドラってほとんど観たことなくて、多分最初から最後まで欠かさず観たのこれがはじめてだったかも。ほんと面白かった。

ていうか朝ドラって、毎日平日の15分で緩急を付けつつ、一週間で一つのエピソードを終えないといけない。改めてすごい技術が必要な枠だよなと思った。製作陣に敬服。

よねさんと轟が大好きだった~!二人が弁護士として活躍するスピンオフとか、いつかやってほすぃ。

 

2位 SHUT UP

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今年地上波のドラマを積極的に見るきっかけになった一作。

日々の生活にも事欠く女子大学生4人組が、友人の望まない妊娠をきっかけに理不尽な現実に立ち向かう。いわゆる「性的同意」についても盛り込み、期せずしてタイムリーな作品ともなりました。

こういう作品が作られる日本のドラマ界にはまだ良心があるのかも、なんて希望も持てるドラマでした。

 

3位 ハートストッパーS3

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もう説明不要ですよね。今回はチャーリーの精神的な部分にスポットが当たっていて全体的なトーンが重苦しいシーズンでもあったんだけど、ニックをはじめ、キャラクターのさらなる深堀りがなされてますます愛おしくなっちゃった。

このドラマは俳優さんたちが若いこともあって、その成長とともにキャラクターが形作られているような感じがあるんですよね。そういう意味でも、稀有なドラマだと思います。

 

4位 作りたい女と食べたい女S2

作りたい女と食べたい女 シーズン2 [DVD]

S1同様、安定の安心感。

春日さんと野本さんの距離がぐっと近付いて、きゅんとしたり、ソワソワしたり、ほっこりしたり。食べ物もほんと美味しそうで、毎回癒しをもらえるドラマでした。

いつかまた二人に会えるといいなぁ……。

 

5位 パーセント

(2)「まなざし」

学園ラブコメドラマの企画が通った新人プロデューサーが、上層部から出された条件。それは「主人公を障害のある人にすること」……。魅力的な俳優との出会いによって、手探りのドラマ制作が始まる。

全4回なのがもったいないくらい、ほんとに良いドラマだったー!

当事者表象とポジティブアクションについて「制作者側」から自己批判も交えながら発信する、意義のあるドラマだったと思う。こういうドラマが作れるのは、やはりNHKの強みだよな。

 

6位 アンメット ある脳外科医の日記

忘れられた婚約

医療ドラマではあるんだけれど、ほかと違うのは「病気を治す」ことが主眼ではないこと。一部の脳機能を失ったり、障害やリスクを背負うことも込みで「その人である」と肯定するのがテーマだったように思う。

俳優を信頼したような撮影も印象的で、それは視聴者を信頼しているからできることでもあるんだなと思った。地上波のドラマを毎週楽しみに待つ、という感覚を久々に味あわせてもらいました。

あと、このドラマのおかげですっかり杉咲花ちゃんの虜。もぐもぐがかわいすぎるんよ。

 

7位 三体(Netflix)

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原作未読、中国のドラマ版も未視聴でしたが、めちゃめちゃ面白くて一気見。濃厚なSFドラマでしたね。シーズン2も楽しみです。

 

8位 百年の孤独

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こちらはウン十年前に原作既読。細部は忘れてたけど、ガルシアマルケスの独特の世界観がしっかり再現されていた映像化だったと思います。パート2が来る前にもう一回原作読み返したい。

 

9位 イシナガキクエをさがしています

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「家族のようだった」というイシナガさんを長年探し続ける男性に捜索を依頼された撮影スタッフ。番組内で情報提供を呼びかけ、行方不明の女性の消息をたどるが……。

かつてよくあった「公開捜索番組」のフォーマットを用いて、ものすごく不穏なホラー作品に仕上げたモキュメンタリー。写真や映像、何もかもが不気味。なのにスタジオのアナウンサーもゲストもしれっとしてるのが余計に怖い(笑)。一方、最終話では悲しい物語も垣間見えて、構成がほんとに巧いと思った。

最近、同製作陣による「飯沼一家に謝罪します」も見たのですが、怖さという点では圧倒的にイシナガキクエに軍配。

 

10位 アガサ・オール・アロング

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ジョー・ロックさん目当てで、なぁんにも知らずに見始めたんだけど(そもそもおれはマーベル作品に疎い)、いやあ、ハマりましまね!中年~高齢の女たちが活躍するのも嬉しいし、何より魔女ものはやっぱり楽しい。テーマ曲となる「魔女の道のバラッド」がしばらく頭から離れなかった。

特に7話が神回。

 

そのほか、サムにも春がやって来た!?「サムバディサムウェアS3」、原田泰造演じる昭和気質な父親がゲイの青年と友だちになってアップデートを試みる「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」、詐欺宗教から信仰の本質を探る「仮想儀礼」、中盤でガラリと趣きが変わるオカルトミステリー「全領域異常解決室」なんかも楽しかったです。

 

 

というわけで……

前述の通り、今回で本ブログの更新は最後となります。改めて、お読みくださった皆さまに感謝申し上げます。

 

もちろん映画は好きなので、ブログは書かなくても、今後も映画鑑賞は続けます。読者登録させていただいているブログさんのエントリも読みに行きます。痕跡が残っていたら、ああ、あいつ生きてるんだなと思ってもらえたら、嬉しいです。

 

来年も、再来年も、ずっとずっと、素敵な映画と出会えますように。皆さんの心身の健康と、楽しい映画ライフを祈ります。

ではでは!

関心領域【映画・感想】無力と傲慢のあいだ★★★☆(3.9)


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あらすじ

天気の良い日は近くの川へピクニックへ行き、父親の誕生日には大きなケーキでお祝い、母親はご近所さんと世間話をしながら楽しくお茶会、子どもたちは元気に学校へ。管理の行き届いたお庭には、色とりどりの花が咲く。そんなごくごく普通の幸せな一家の穏やかな生活。

ただ一点、壁を一枚隔てた向こうがユダヤ人収容所であるということを除けば。

 

 

『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・クレイザー監督の最新作。

 

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アンダーザスキン、正直謎な映画でよくわからんところもあるけど、わたしは何気に結構好きな映画だったりします。

 

さて本作。パンフや監督のインタビュー読むと、ものすごくこだわりのある人みたいで、リアルさが大事だからという理由でほんとうにアウシュヴィッツ収容所の隣で撮影したとか、実在する人(リンゴ運ぶ女の子)のエピソードだけでなく衣装までその本人のものを使ったりしたとか、いろいろ舞台裏も面白いです。

 

 

わたしは平日に家の近く(都内だけど都心じゃない)のシネコンで観たんだけど、たいていこういう映画(邦画でもハリウッド大作でもない映画)って普段ならガラガラなのに、今回はかなり満席に近くて、驚きました。みんなめっちゃ関心あるじゃん、みたいな。

 

というわけでまぁ、ここから下は映画の感想になっていくんだけど。例によって例のごとくうざい自分語りも込みなので、ちゃんとしたレビューや考察みたいなのが読みたい人は他の方のブログさんへ行ってくださいまし。

 

 

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

無関心ではいられない

本作のメインキャラクターとなるのはヘス一家。収容所所長の夫、その妻、そして子どもたち。収容所のすぐ隣の敷地にあるそこそこ立派な家に住んでいる。

時々荷車を押して収容者とおぼしき人が荷物を運んできたり、ポーランド人の女性を使用人としていたりと、彼らが支配階級の人物であることがしっかりと示される。

 

夫の誕生日、部下が訪れお祝いの挨拶する。なかなかの人数で、彼が上級高官であることがうかがえる。出勤後は看守たちの「働きぶり」を見守り、設計士から収容所の改修についてーいかに"荷"を効率よく焼却するかについてー詳しい説明を受ける。

妻はユダヤ人たちから強奪した衣服や装飾品を身に纏い、同じ階級の妻たちとそれを話のネタにしてお茶を楽しむ。

 

彼らは「立派に」、ホロコーストに荷担している。

荷担、なんて言い方では生ぬるいかもしれない。

むしろホロコーストが生活の基盤になっているといえる。なぜなら収容所が無くなれば、彼らの生活はとたんに立ち行かなくなるだろうから。

 

映画では家族は壁の向こうを一切無視し「関心がない」かのように描かれる。だが実際は逆だ。壁の向こうが一家の生活の中心であり、常にそこに意識を向けている。

でも自分は支配する側なので、この生活が脅かされるなどとはつゆほどにも思っていない。だから妻は夫の転勤についていかないし、ここでの生活を守ろうとする。

この映画は、そういう一家の話なのだ。

 

ただ、わたしが強く疑問に思ったのは、なぜそこまでして、彼らがこの生活にこだわるのかということだった。

 

途中、妻の母親がやってきてしばらく滞在するんだけど、ある日何も言わずに家を出ていく。おそらく、毎日隣の収容所から聞こえてくる音や煙突からの煙(もちろんそれは、ユダヤ人たちを焼く火の煙だ)、その惨状に耐えられなくなったからだろうとわたしは思った。

母親が残した置き手紙になんとあったのかは映されないけれど、それを読んだ妻の憤りから察するに、きっと「こんなところによく住めるわね」みたいなことが書かれてあったんじゃないかと思う。

 

妻はそのあと、母親の食事を用意していた使用人にこう言う。「あんたなんて夫が燃やして灰にすることだってできるんだから」

そう、彼女は壁の向こうで何が行われているかを知っているし、ちゃんと理解している。その上で「女王」でいることを選んだのだ。

 

 

無関係ではいられない

映画は、左遷させられた夫が再び家族のもとに帰ることができる、と判明したところで終わる。妻に電話で「毒ガス」について言及し、天井が高いから云々と話す。

華やかなパーティー会場も天井が高く、その下ではナチス高官とその家族とおぼしき人たちが談笑したりダンスしたりしている。ユダヤ人を殺す決断をした彼らは、そう遠くない未来、死ぬか糾弾される運命にある。

 

当然そんな歴史を知るよしもない夫は、意気揚々と会場を後にする。だが、階段を下りながら夫は何度か嘔吐しかける。

すると場面は突如現代に切り替わり、アウシュヴィッツ博物館で開館準備のために清掃するスタッフの姿が映し出される。おびただしい数の靴や衣類、遺物の数々から、夫が何をしたのか、この後何をしようとしているのかが示される。

 

それはヘス氏への未来からの警告のようにも見える。

えづき終えた夫は、暗い階段を降りていく。まるで地獄に突き進むかのように。止まるでも引き返すでもなく。彼もまた、進むことを選んだのだ。わたしには、そう見えた。

 

調べていないので、彼ら一家がどうなったのか、わたしは知らない。でもだいたいの想像はつく。それは、ただの結果だ。

 

 

リンゴを作り続ける

映画を現実に引き寄せて考えることは簡単だ。

戦争は今も起きていて、虐殺も現在進行形の話だ。

 

映画を観ながら、わたしはただ、あの家には絶対に住めないと思った。妻の母親と同じように、逃げ出すかもしれない。でもそれって見て見ぬふりしていることと大差ないのでは、とも思う。

でも、殺された/る人の所持品だとわかっている毛皮のコートに、何の気なしに袖を通すなんて、わたしにはできない。絶対にできない。誰かのものだったドレスを広げてどれにするか選んだり、ダイヤがどこにあったのかなんて話を笑ってするだなんて(あれはまごうことなき「戦利品」だ。ただの買い物で手に入れたものではなく、ああやって何者かから略奪したものをそう呼ぶのだ)、なんでそんなことができるのか、わたしにはわからない。それはわたしが現在に生きていて、歴史を知っているからかもしれない。

そうかもしれないけど、でもわたしにはあそこでの暮らしが幸せそうにはどうしても思えなかった。

子どもが隣から聞こえてくる看守の真似をして暴言を口にしてるなんて、耐えられない。

 

じゃあ、レジスタンスの少女のようにリンゴを置きに行けるか?と言えば、多分それもできそうにない。わたしにはそんな勇気はない。

それに、あのリンゴをもとに収容者同士が争いを起こしてしまっていた(おそらくその収容者は殺されてしまったのではないかと思う)。

彼女はそのことを知っていたのだろうか。それでもリンゴを置き続けたのだろうか。

 

戦争は終わらない。人は死に続ける。

何をやっても、無駄なのかもしれない。

 

彼女はそんなことを、一瞬でも考えたりしなかったのだろうか。いやきっと、考えたはずだ。それでも諦めずにリンゴを置き続けたのだろう。それはとても、力強いことだとわたしは思う。

 

わたしは、あそこにも住めないし、とてもじゃないけどリンゴを置きにも行けない。でも、彼女が置きに行くリンゴを、作ることはできるんじゃないか、と思う。誰かに届くことを願って、リンゴを作ることくらいなら……って、これは卑怯なことだろうか。

そうかもしれない。わからない。

 

時々、ほんとうに自分は無力だと思う。子どもが殺されるニュースを見るたび、たくさんの人が住む場所を奪われていく姿を見るたび、わたしには何もできないと思う。

 

でも一方で、そんなことはないとも強く思う。だから少しでも行動してみようとして、寄付したり署名したり不買活動してみたり支援の意思を表明したりする。

この世界には無関心でいられることも、無関係なことも、おそらく何一つないと思うから。

家族と自分の幸せはそこに繋がっているとも思うから。

こんな考えは傲慢だろうか。

 

それでも、わたしは自分の無力さと傲慢さを引き受けながら、リンゴを作り続けたいと思う。それを選べる立場にわたしはいるから。

 

そもそも「領域」を隔てるものなんて、ほんとうはどこにもない。そのことを、映画の未来を生きるわたしたちは知っている。

 

 

 

作品情報
  • 監督・脚本 ジョナサン・グレイザー
  • 原作 マーティン・エイミス
  • 原題 The Zone of Interest
  • 上映時間 105分
  • 製作年 2023å¹´
  • 製作国 アメリカ合衆国、英国、ポーランド
  • 出演 クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー

映画主婦的2023年新作映画ベストテンとご報告

今年は上半期のベスト記事書くのを忘れてて、とりあえずツイッタに載せた上半期ベストを先に上げておきます。

 

 

2023年の新作映画(配信・レンタル含む)は207本鑑賞しました。見逃してる映画の方が多いので何の参考にもならないと思いますけど!

それを踏まえて早速、誰が読んでも得しない、最弱小ブロガーの2023年映画ベストテン、やっちゃうよ~!


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(今年観た主な映画)

 

  • 【選定基準】
  • 2023年に日本で一般公開(ビデオスルー・動画配信含む)された映画を対象としています。
  • 邦画洋画アニメ実写ジャンル等は不問です。
  • ブログ記事における★評価は絶対評価、ランキングは相対評価です。★3の映画が★4の映画より上にランクしていることもあります。要はわたしの★なんて気にしてくれるなよ、ってことです。

 

というわけで、よろしかったったら見てってチョーダイっ!!

 

 

10位 その執念に、完敗です 

メカバース 少年とロボット

【映画パンフレット】メカバース 少年とロボット 監督 リッチ・ホー

シンガポールの映像クリエイター、リッチ・ホーが監督、脚本、出演、だけでなく、資金調達からVFXまで全7役をこなし11年の歳月をかけ執念で作り上げたロボットSF!

火星との戦いで父親を失った少年が、ロボットパイロットとして成長する姿を描く。

 

毎年10位は「偏愛枠」のような扱いになってるんですけど、これもね、全然そんな出来は良くない映画なんですよ(おい)。だけど作り手の思いがみちみちに詰まった作品になってて、なんか勢いに飲まれちゃったまさに偏愛の一作。

そりゃ大作に比べたらCGも粗いかもしれないし、お話も軍国主義的に見えちゃうところもあって危ういんだけど(ロボ映画の宿命)、あっけらかんとしたコミカルさと、何よりロボットへの愛に溢れててなんかぐっと来ちゃったんですよね。

 

公開規模も小さくて、あっという間に公開終了してしまったので誰にも知られずに終わった感あったんだけど(わたしも滑り込みでギリギリ観れた)、今年一番「映画館で観れてよかった!」と思えた映画でした。(家で観たら良さが半減しそう……)

 

 

9位 年の瀬に現れた思わぬダークホース!

ありがとう、ごめんね

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臨月を迎えた妊婦が夫から別れを切り出される。呆気に取られたのもつかの間、夫はその翌日、心臓発作で帰らぬ人に……。夫の両親ともわかり合えず、一人息子を抱えよるべない彼女を支えてくれたのは、実の両親の離婚により疎遠になっていた姉だった。

 

今月26日にひっそりとNetflixで配信が始まったスウェーデンのヒューマンコメディ。

去年の『三姉妹』といい、今年はオークワフィナとサンドラ・オーが共演した『クイズレディー』といい、わたしは基本姉妹ものに弱い傾向があるんですよね。だからこれもねー、めちゃめちゃ良かった。

人嫌いで頑なな妹と、突飛に見えてその実おおらかで人を拒めない姉。離れていた長い年月を埋めるように、衝突しながら仲を深めていく姉妹を見ていて「家族」ってほんと不思議だなぁ、と思いましたね。

 

クスッと笑えてホロリと泣ける「ちょうど良い」映画でした。映画納め、映画始めにぴったりな作品だと思いますよ。

 

 

8位 吹きすさぶ風もやがて優し

枯れ葉

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大好きなアキ・カウリスマキ監督の最新作。

酒に溺れた男と、職を失った女。孤独な2人は惹かれ合うもののなかなかどうしてすれ違う。女は野良犬を引き取り、男は酒をやめようとする。2人は再び会うことができるのか……。

 

映画そのものとしては多分、過去作の方が全然いいとは思うんだけど。でも、パンフレットで監督が「愛を、もう一度勝たせてやろう。主役のふたりはとにかくいい人たちだ。」と言っていて、引退を宣言したアキ・カウリスマキ監督が前言撤回してまで描こうとしたのはきっと、そういうことなんだろうなと思って、ちょっと泣けた。

 

 

7位 永遠にわかり合えなくても

世界は僕らに気づかない

世界は僕らに気づかない

フィリピンパブで働くフィリピン人の母を持つゲイの高校生。反抗期+価値観の違いから母親とも衝突しがち、自身の生い立ちが引け目となりパートナーとの仲も今一歩踏み込めない。ある日父の手がかりを見つけ、実の父親探しを始めるが……

 

上半期のベストにも入れた作品なんですけど、最近「ヒューマンライツムービーフェスティバルinぐんま」というイベントでオンライン視聴できる機会がありまして。再鑑賞して、あらためてほんといい映画だなぁ、と思いました。

マイノリティ性が重なったことで周縁化されてしまう=タイトルの通り「気づかない」人の話なのだけれど、だからこそ「気づき」のある映画だと思います。

 

家族の難しさ、有り難さ。わかり合えなさ、それでもという歩み寄り。

家族を持つということそのものが正解でもゴールでもないということは重々理解した上で、それでも「幸せの形」として見せることはあってもいいよね、とわたしは思っています。

 

主演の堀家一希さんはじめ配役も素晴らしくて、何事も(喧嘩も)全力でパワフルな母親を演じたガウさんが最高にはまり役。あと、母親の再婚相手の森下さん役の森下さん(役名とお名前がおんなじだ!)が癒し過ぎた(笑)。

 

監督はトランスジェンダー男性であることを公表している飯塚花笑監督。怒りの積み重ね、すれ違いの積み重ね、その果ての緊張がある瞬間にふっとほどけていく演出が巧みで、演者と観客を信頼している人の撮り方だなぁと感じました。今後も注目していきたい監督さんの一人です。

 

 

6位 未来のために、今語ろう

ぼくたちの哲学教室

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北アイルランド、ベルファストの小学校。暗い過去を持つこの町で校長はじめ教員たちは子どもたちに寄り添い語り合い、「他者との対話」の重要性を伝えていく。

 

去年の『カモンカモン』のように「子どもとどう向き合うか」というテーマでもあって、つらい歴史を大人たちが知っているからこそ、それを繰り返せんと奮闘している姿に胸を打たれました。

日本の小学校でも哲学授業やればいいのになぁ。保護者の大人たちもきっと学ぶことが多いと思うよ。

 

 

5位 新作スマホの操作音、諸行無常の響きあり

ブラックベリー

ブラックベリー

一世を風靡した携帯端末「ブラックベリー」。その栄光と転落を描くドキュメンタリータッチの実録ドラマ。

 

とにかくキャラクターが最高で、コメディとして秀逸!開始5分で爆笑ものでした。手持ちカメラを用いた独特のカメラワークもまるで「その場」に立ち会っているかのような臨場感。

であるがゆえに、親友でもあり互いのよき理解者だった2人の共同経営者が、利益と効率化を求められて離れ離れになっていく様子があまりに切なくて……つらい。

今年の最優秀「切なエンディング賞」です(涙)。

 

オバマさんもお気に入り映画に入れてたみたい。さすがやな(おれが)。

 

 

4位 わたしの南極はどこ?

バーナデット ママは行方不明

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かつて女性建築家として名声を得たもののトラブルから挫折し一線を退いたバーナデット。寄宿学校へ進学する娘の提案で南極へと家族旅行に行くことに。だが極度のストレスによりバーナデットは奇妙な行動を繰り返していく。やがてのっぴきならない状況に追い込まれた彼女は、自宅のトイレの窓から逃げ出してしまう……。

 

「ママは行方不明」なんてサブタイ&グラサンケイト・ブランシェットなポスターで、トラブルに巻き込まれてママが大変!みたいなドタバタコメディかなぁと勝手に思ってたら(観る前にあんまり調べないもので……)、深刻なメンタルクライシスの話だった。本人も「大丈夫」だと思ってるタイプの。

 

見ていてほんと居たたまれなくて……ものすごく共感してしまった。唯一の理解者が家族なわけだけれど、そこに寄りかかりすぎてもうまくいかなくて。そのキリキリとした部分と後半の和解の部分に持っていかれました。

 

わたしの南極もどこかにあるのかなぁ……。あるといいなぁ。

 

 

3位 年齢なんて関係ない 

ナイアド その決意は海を越える

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フロリダ海峡横断を64歳にして成し遂げた、ダイアナ・ナイアドの挑戦を描く。主演はアネット・ベニング、ナイアドをサポートし続けた親友のボニ-・ストールをジョディ・フォスターが演じた。監督は『フリーソロ』の夫婦コンビ。

 

めっちゃ良かったーー!

何をするにも遅すぎることはない。めちゃくちゃ勇気をもらえる映画でした。見終わったあといつもより長めにランニングしちゃったもんね(←すぐ影響される)。

わたしも今年4○歳になるんでね、諦めずにやっていきたいものです。今年は4位の『バーナデット』『ロストキング 500年越しの運命』『波紋』と、年齢的に励まされる映画にたくさん出会えた気がします。まだまだ頑張らなくちゃね。

 

 

2位 宇宙人を探して

宇宙探索編集部

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宇宙への憧れと夢を抱く変人奇人常識人が、西への旅を経て見つけたものとは?

 

わたしの感想はこちら。

minmin70.hatenablog.com

 

 

1位 「自分の人生は、自分で決める」 

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

映画館で5回観て、グッズ集めたり、アートブック買ったりと、今年一番ハマった映画なので納得の1位です。サントラもめっちゃ聞いたから脳内再生もお手のものよ(笑)。

 

前作を上回る映像表現の豊かさと音楽の融合性はもちろん、「ヒーローに必要なものは何か」に踏み込んでいくテーマも興味深く、ほんとうに大好きな作品です。3作目でどんな答えを見せてくれるのか。期待が高すぎるので不安もありますが、この製作陣ならやってくれるでしょうと思っています。続編めっちゃ楽しみ!!

 

それから、いろんな人がすでに語っているので今さら言うこともないと思うんだけど、本作はこれまでのヒーロー映画の中でも特にクィアリーディングしやすい作品でもあったと思うんですよね。何より、10代の若者と家族の関係という繊細な部分を描いているという点でもわたしの琴線に触れました。あと「コミュニティ」からあぶれる(あぶれざるを得ない)というナラティブも見事にぶっ刺さりましたね。

トランスフラッグが大々的映し出されるシーンがフォーカスされたりもしましたが、個人的には「誰も取りこぼさない」という戦いが作品の随所に見えて希望を感じられる映画だったと思います。

 

というわけでベストテンは以上です!

 

今年は最寄りのGEO屋さんのレンタルコーナーが縮小されたり、そもそもあんまりレンタル店にも行けなかったりもして、当たりなビデオスルーに出会えなかったのが残念でしたね。来年はもうちょっと頑張ります……。

 

 

10作に入れたい、ていうか入ってますよくらいお気に入り20作

ウーマントーキング 上半期2位。ほんと良い映画だった……。


ボトムス 最底で最強?な私たち くっっそ笑った!ふざけすぎて最高!


見えざる手のある風景 配信スルーなのほんとがほんともったいない!刺さる人には絶対刺さる、注目されるべき一作ですよ。ブラピのプランBも製作に名を連ねてます。



ロスト・キング 500年越しの運命 サリー・ホーキンス大好き。


ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい ほんと良い映画……その2。大好き。


クイズレディー このコンビで面白くないわけないじゃんていうね!!姉妹映画好きな人は絶対観た方がいいよ。


ファーストカウ ほんと良い映画……その3。


ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック! これとアクロスザ~、D&Dが好きな人はみんな友だち(^^)/\(^^)今年はほかにもトランスフォーマービースト覚醒、スーパーマリオと、子どもと一緒に楽しめるエンタメがたくさんありましたね。


いつかの君にもわかること 多分今年一番泣いた映画。

 


ワース 命の値段 ほんと良い映画……その4。


ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り いやぁほんと、心の底から楽しかった。ゲームのことはほとんど知らないんだけど、実はマニアも唸るくらい考え抜かれていたみたい。「ジャスティス・スミスのジャスティスとは?ジャンル」の新たな傑作です(なんやそれ)。


シアターキャンプ クィアなギャグが楽しい過ぎた。ラストのミュージカルで泣かされた~!

 

赤と白とロイヤルブルー 今まででありそうでなかった組み合わせ。主役のお2人もとっても素敵でした。年末年始に原作読む予定です!


あしたの少女 社会構造への怒りをしっかりと、真正面から描いた作品。韓国映画のそういうところがほんとうに好きです。

 

ニモーナ ニモーナかわいいかっこいい!!テーマもしっかり。わたしの好きなタイプの「怪獣映画」でもありました。

 

老ナルキソス 今年のベスト乱交シーン賞とベスト裸踊り賞です(ニッチすぎる笑)。『世界は僕らに気づかない』とはまた別のベクトルで同性愛者と「家族」について描いた作品です。

 

波紋 めっちゃ面白かった。ベストらっきょう映画です。

 

ダークハーヴェスト ナイス配信賞。さらっと観られるのにテーマ性もしっかりあるモンスターホラー。

 

死霊のはらわたライジング ベストタイトルイン賞!ちょうかっこよ。これでもかってくらいの血みどろを浴びれます。

 

怪物の木こり いや、面白かったよ……面白かったよね!?(キョロキョロ)

 

 

未公開映画ベストテン

未公開映画は53本鑑賞。今年はちょっと調子にのって(?)ホラー/SF以外の作品にも手を伸ばしてみました。

 

1位 Huesera:The Bone Woman

待望の妊娠に喜ぶのもつかの間、母親に襲いかかる暗い影……その正体は?

ただのマタニティーホラーにあらず!

もちろん怖いところは怖いんだけど、個人的にはこのテーマでこの落としどころにしたことがほんと素晴らしいと思ってて、作り手の覚悟が見えた点で高評価。映像表現はもちろん、音響が不穏すぎるので映画館で観たらバキボキしちゃいそう。(骨の音がすごく嫌なのー!)

 

2位 Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe

今年観た映画の中で一番好きな作品は?って聞かれたら多分これ。メキシコ系少年2人の青春と友情、セクシュアリティと自身のルーツをめぐる物語。

実は8月に原作の翻訳が出てて、それを先に読んでから観たんだけど、一つ一つのシーンが繊細に再現されていて脚色としても良くできてたんじゃないかと思います。

オープニングとラストシーンがキラッキラできゅーんと来ちゃった!日本でも公開されるといいな。『君の見つめる先に』みたいな爽やかな青春映画ですよ。

 

3位 When Evil Lurks

『テリファイド』のデミアン・ラグナ監督による悪魔憑きオカルトホラー。ここまで何もいいことが起こらない映画もなかなかないよ、ってくらいの絶望が味わえました……。

日本でも来年公開予定だそうです。震えて待て!(何か違う)

 

4位 Birth/Rebirth

マッドサイエンティストが娘を亡くした母親と手を組み、禁断の実験に足を踏み入れる。それは歪んだ母性の暴走か、女同士の負の連帯か……。

今年はやたらと「フランケンシュタイン」モチーフの映画が多かった気がして、死んだ兄を蘇らせようとする『The Angry Black Girl and Her Monster』とか、サンタを蘇らせるクリスマスホラコメ『Santastein』とかもありましたね。これも死んだ娘を生き返らせるためにいろんなもの(もちろん人も)を犠牲にしようとする女たちの話です。

「あんたたちどーすんのよこれ……」って終始スリリングさが途切れないのがよかったし、ラストのキレのよさには鳥肌立ちましたね。手術シーンも生々しくて、めちゃくちゃ痛そうでした。秀作と思います。

 

5位 How to Blow Up a Pipeline

理不尽に苛まれ怒りを募らせる若者たちは、すべての元凶である石油パイプラインを爆破させる計画を実行する。気候変動への過激な対抗手段を扇動する、挑発的な"環境活動"スリラー。

めっちゃ面白かった。

どう観るか、何を観るかで感想が変わりそうなタイプの映画ではあるんだけど、わたしは乾いたクライムスリラーとして観た。青春映画としての側面もあると思ってて、彼らをそこまで駆り立てる焦燥感が実際に現実にも「ある」んだよね。

彼らを嘲笑って揶揄するのは簡単。でもそれは大人の振る舞いではないとわたしは思う。

 

6位 It Lives Inside

インド系アメリカ人の少女が消えた親友を追って悪魔的な存在と対峙することになる。

よくある青春ホラーでも、移民ルーツの要素が加わることでまたひと味違った味わいに。自身のルーツと折り合いをつけること、でもそれで終わるわけではないんだよね、という。そのさじ加減が絶妙でした。

最後にちゃんと悪魔的存在(ピシャーチャ(पिशाच)という名前で、ヒンズー教や仏教の神話にも登場する食人鬼)が姿を現してクリーチャーホラーみが出るところも好き!

 

7位 LANDLOCKED

取り壊される予定の実家で過去を撮ることができるビデオカメラを発見。早速家族の記録を撮影することにするが、謎の影がちらついて……。

これはホラー?ファンタジー?

実際に監督自身の過去のホームビデオが使われていたり、家族も出演しているなど文字通り「アットホーム」な自主制作映画。粗削りなところはあるんだけど、なんだろう、家族の記録をしっかり形で残したいという作り手の思いを感じました。

こういうミニマムな映画は来年も推していきたい所存。

 

8位 Little Bone Lodge

嵐の夜、介護が必要な父親、母親、その娘が暮らすスコットランドの人里離れた農家に二人組の男がやって来る。一方は大ケガを負っており、助けを求められ母親は男に応急処置をしてあげるが、男たちにはある秘密が……から始まる一筋縄では行かないホームインベンション系スリラー。

二転三転、全然先が読めなくてほんと面白かった!いやーなムードの終わり方含めてこれ絶対みんな好きでしょ。

 

9位 Sommoning Sylvia

結婚を控えた親友のためバチュラーパーティーを開こうといわく付きの呪われた邸宅にやってきたゲイ仲間4人組。早速霊を呼び出しちゃお!と降霊術を行っていると、婚約者の弟(ノンケの軍人、お酒飲むと豹変する)がやって来る。ついでに息子を惨殺したという邸宅のかつての主「シルビア」の霊も現れちゃった?

 

「ゲイのためのホラーコメディ」との評価もある通り、4人組がきゃーきゃーやってるのを観てるだけでも超楽しいんだよね。でもストレートの人が入ることでちょっとピリッとした緊張感が漂うとか、視点やギャグはしっかりしてるので安心して観られる。

いわくの真相と現在が交錯する演出もすごく巧くて、ほぼほぼ一軒家の中でしか展開しない低予算映画ではあるんだけど不思議と間延びも飽きもなく、見終わったあとにしっかり充足感がありました。

1時間ちょいのランタイムもホラコメとして程よいと思います。ラストはファビュラス!

 

10位 The Royal Hotel

旅費が底をつき砂漠の真ん中にある辺鄙なバーで住み込みアルバイトをすることになった女性バックパッカー2人組。でもバーに来る客はセクハラじみた行いに終始する迷惑客ばかり。次第にその振る舞いはエスカレートしていき……。

 

『アシスタント』のキティ・グリーン監督とジュリア・ガーナーが再タッグを組んだスリラー。接客経験ある人にはきっつい描写が満載でぐったりよ……。こういう場所ってどこにでもあるんだろうなぁ、と思ってさらにぐったり。

 

 

未公開映画だとほかには、5歳の女の子(ちょうかわいい)が主人公の、アナログ特撮で魅せる臨死体験ファンタジー『Moon Garden』、予告編からひたすら怖かった「永遠の」ステイホーム映画『Skinamarink』、70年代風へのこだわりが強すぎて脳がバグるフォーク系ホラー『Enys men』、パキスタン系イギリス人の姉妹が上流階級相手に大暴れ?アクションコメディ『Polite Society』、社会の周縁にいる者たちへの優しさに溢れた味わい深いミニマムSF『Unidentified Objects』、などなどいろいろなタイプの作品に出会えました。

 

 

2023年の振り返り

というわけでざっとこんな感じ。

ドラマだと、大好きな「ハートストッパー」のシーズン2が来て大はしゃぎしました(ほとんど稼働してないブログのくせして前後編分書いたというね)。

 

ほかには「ザ・ボーイズ」のスピンオフ「ジェンV」も楽しみましたし、地上波ドラマだとトリンドル怜奈と蓮佛美沙子の「今夜すきやきだよ」もちょう良かった。

あと、全くノーマークだった「サムバディ・サムウェア」というHBOのドラマがものすごくよくて(U-NEXTで配信中)、こういうじんわり系に癒される時が来たんだなと思ったり。

 

それから……、今年はちょっと夏頃に体調を崩してしまいまして、そこからなかなか調子が戻らず下半期は映画の鑑賞本数もガタンと落ちてしまったんですよね。まだ本調子ではないので、しばらくこんな感じで低空飛行を続けるかなぁ、と思っています。

そんなわけで、今後のブログはちょっとどうなるかわかりません。今年よりもさらに更新頻度は落ちる気がします……。ただ映画鑑賞じたいは続けたいとは思っているので、また年間ベストは書けたらいいな。

 

皆さんも心身ともにどうぞ健康で。来年も素敵な映画に出会えますように!

 

宇宙探索編集部【映画・感想】わたしは宇宙★★★★☆(4.8)

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あらすじ

90年代には多くの発行部数を誇った雑誌「宇宙探索」。だが今ではすっかり落ちぶれ廃刊寸前。かつてテレビでインタビュー取材を受け宇宙への熱い思いを語っていた若き編集者タンも、冴えない一人暮らしの中年になっていた。だが彼は宇宙人探索を諦めたわけではない。今でも宇宙からの信号を受信できると信じて、テレビの砂嵐を見つめる日々を送っているのだ。

ある日、宇宙での異変とある村での奇妙な現象に関連を見出だしたタンは、ついに宇宙人捜索の旅へ出ることに。編集部員のチンさん、UFO仲間のナリス、雑誌のファンだというシャオシャオとともに、天竺を目指した三蔵法師一行よろしく、西へと向かうのだった……!

 

 

これはね、傑作です。みんな観てね!以上。

 

 

 

やや!ちょっと!空き缶を投げないで!

いやほんと、これで終わりにしたいんだけどさ、それだとわざわざ読みに来てくれた人に申し訳ないんでね、ちゃんと書きますよ。……って言ってもまともなことは書いてないからまぁ、いつもの通り誰も読まなくていいです。

 

 

新人監督の卒業制作が異例の大ヒット

まず映画そのものの紹介をしておくと、本作の監督を務めたのは、90年生まれの若き俊英コン・ダーシャン。短編映画で注目を集め本作が初長編、北京電影学院の大学院の卒業制作として作られた作品なのだそうです。大学の副教授だったワン・ホンウェイ(『こんにちは、私のお母さん』のプロデューサー)が脚本指導に関わっていた縁で、『流転の地球』のグオ・ファン監督がプロデューサーとなり、大きなサポートを受けたそう(ちなみに本作では『流転の"球"』の監督、としてファン監督がカメオ出演している)。コロナ禍での撮影延期や苦難を乗り越え完成した映画は批評家/観客ともに賞賛を持って迎えられ、本国で異例の大ヒットに……というようなことがね、パンフレットに書いてありましたので映画を観た人はぜひ読んでみてね!(丸投げ)。

 

なので本作は、若い監督の瑞々しい感性の詰まった作品、とも言えると思うんですが(実際、登場する若い世代のキャラクターの社会を見る目線は現代の若者らしいと感じた)、ただ一方で、監督にとっては親世代に当たるであろう主人公のタンの凝り固まった眼差しにも共感を持って描かれているんですよね。

 

 

観客も旅の仲間に

主人公は、かつての人気UFO雑誌、今は落ちぶれた廃刊寸前雑誌「宇宙探索」の編集長タンさん。うらぶれたアパートで「物欲は資本主義の罠」なんて嘯きながら粗末なメシを食っている、完全ないわゆる「負け組」です。ドキュメンタリー調のカメラは彼のどうしようもなさ、可笑しさ、哀れさを撮しながら、同時に愛しさも捉えていく。

 

それが端的に示されていのが最初のシークエンス。成り行きで後生大切にしまっていた宇宙服を着てみたらヘルメットの接続部が壊れ、中に閉じ込められる形になってしまったタンを、みんなが何とかして救いだそうとするんですね。鍵屋を呼んで、救急車を呼んで、果てはクレーンに宙吊りにされる事態に……(何かに閉じ込められるとか何かにはまって出てこれないみたいな中国のニュースって実際よくテレビでも見かけるよな)。

このターンでもう、わたしはすっかりタン編集長のことも、この映画のことも大好きになってしまいました。

 

ほんとにねー、タンさん、ほとほとどうしようもない(笑)。でも、編集部にいる誰もが彼を放っておけないんですよ。事務員なのか宣伝部長なのかはたまた世話係的な存在なのかわからない(笑)、古参の編集部員のチンさんなんて「暖房が冷たい」だの「無駄金ばかり使って」だの文句垂れ垂れしながらも、結局はタンさんに付いていく。

人気雑誌として全盛期だった当時の編集部は、きっと多くの人で賑わっていたはず。でも今は数人の部員のみ。おそらくUFO人気が下火になると同時に、みんなタンさんから、そして宇宙という夢から、離れていった……のでしょう。

でも、チンさんが今もあそこに留まっているということは、彼女は未だに、タンさんに夢を託しているのではないかとも思うんですよね。ぶーぶー言いながらも、彼に夢を叶えて欲しいと思ってる。一番現実的な場所に軸足を置いている(ように見える)彼女が、タンさんの唯一の理解者なのも、なんとなく納得できるような気がしました。

 

ちなみに本作の英題は「西遊記」と同じ"Journey to the West"なんですけど、タンさん=三蔵法師という位置付けなんだそうです(ちなみに鍋少年のスンイートンが孫悟空、UFO乗りおじさんは仙人的な扱いらしい)。三蔵さまも確かに、経典探しに行くぜ!って遠いところまで旅に出た人だから、当時の人からしたら危ういと言えば危うい人だったのかもな……?

 

なんだろ、信念を持つ人ってのは、どんな難所でも突破しようとするでしょう。例えその道が、踏み外せば奈落の底へまっ逆さまな崖の端でも。そんなん、周りで見てる人からしたら、ほんと気が気じゃないよね。だから「まったくもう!」と言いながらロープで自分とその人を繋いで、一緒に進むしかない。それこそ運命共同体みたいに。

タンさんに対して、チンさんや他の旅の仲間たちもそんな気持ちがあったんじゃないのかな。

 

それは多分、観ている観客も同じ。

わたしは子どもの頃からUFOとかUMAとかが大好きで、そういう特番は欠かさず観ていたんですね(いつのまにかテレビではそういうムー的な番組はやらなくやってしまいましたね……大半がやらせだったので仕方ないけれど)。

だからね、タンさんが先へ先へと進む度、このあと何が待っているんだろう?というわくわくと、「何もなかったらどうしよう……」という不安と、いやそんなこともうどうでもいいから行けるところまで行って欲しい!というぐちゃぐちゃな感情のまま観てて、なんかね、なんでもないシーンでもずっと涙目でした。

 

気づいたら我々観客も、タンさんと一緒に旅をしている気持ちになっちゃうんですよね。

いやほんと、変な映画だったわ……。(褒めてる)

 

 

馬鹿と損をしに行く

っていう中国の諺?言い回し?があるんだそうです。これは夫さんに座右の銘を聞いたときに言ってた言葉で(辞書などで確かめたわけじゃないから意味とかは不明です。すみません笑)、その話をした時に夫さんが、馬鹿について行ったら当然ひどい目に遭うと思うんだけど、でも自分はそっちの方が楽しそうだから馬鹿について行きたい、みたいなことを言ってたのね。

わたしはね、その時にこの人と一緒にいられたらいいなと思ったわけ。

 

……いきなりノロケかい!!って感じなんだが(めんごめんご)、そうじゃなくて、わたしはこれまでいろんな人に迷惑をかけてひどい目に遭わせてきた「馬鹿」の方で(まぁ詳しくは書かないけど、実際親や先生から「どうかしてる」と言われ続けてきたので)、言うなればずっと誰かしらに「損」をさせて生きてきたと思ってるのね。だから、「損するのが楽しい」、って言った夫さんが、わたしにとって崖の端で自分とロープを繋いでくれる人なんじゃないかって……あ、ごめんやっぱノロケだったわーてへぺろ。わぁ痛い痛い!空き缶を投げないで!! 

 

いや、なんで急にこんな話をし出したかというと、この映画はまさに「馬鹿と損をしに行く」映画だから。「宇宙人を探しに行くぞ!」なんて、普通に考えたらどうかしてるし、きっと誰も本気にしない。でもね、こういう、誰も成し遂げられないことができるのは、きっとタンさんや旅の仲間たちのような、「その場所」を目指し続ける人たちだけだと思うんですよ。

 

 

誰も見たことのない場所へ

多分、この映画の登場人物のように、「他の人とは何かが違う」と感じながらもどこにも身の置き場のない人、生きづらさを抱えていたり、うまく「普通」ができない人たちは、世の中にたくさんいると思います。わたし自身、服薬や通院を続けないと通常の生活がままならないので、そういう意味でもタンさんや「旅の仲間」たちの姿に何度も胸がいっぱいになりました。

彼らが連れていってくれた場所は、わたしが目指したい場所でもあったから。

 

多分これは万人受けするような映画では全然なくて、「なんじゃこりゃ?」で終わる人もいると思います。

ジャンルもSF?コメディ?ロードムービー?

モキュメンタリー風だけど、そうとも言えないし、そもそも登場人物たちが言っていることほとんど意味わかんないし(笑)。

 

それでもわたしは、この映画は傑作だと思います。なぜなら、わたしみたいな人間でも、最後まで諦めなければ、誰も見たことのないような景色にたどり着くことができる。そういうことを、描いている映画だと思うからです。

もし、ほんとうにそうだとしたら……わたしが生きている意味もあるんじゃないか?

そんな風に思える映画でした。ほんとうに大好きです。

 

 

わたしたちはどこから来て

「ビッグバン」(グループじゃないよ)が宇宙の始まりだ、という話は皆さんご存じだと思います。そこで生じた塵が集まって星が作られ、やがてその星も超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こし、宇宙の塵となる……子ども向けの図鑑でもよく見かける説明です。

なのでもちろん、地球も宇宙の塵から出来ています。そして地球そのものだけでなく、地球に存在するものすべてーー自転車もキリンも公園の砂もスカイツリーも、そして我々人類も、元を辿れば宇宙に散った塵からできていると言えます。

つまり、わたしたちは宇宙から来て、宇宙に還る存在と考えてもいいかもしれません。

 

わたしが考える「SF」とは、そういった思考の営みを深く探索していく過程そのものを意味するものです。

「わたしたちはどこから来てどこへ行くのか」。これが「SF」における永遠の問いです。

本作では、それがごくごく私的な「問い」として登場するんですね。

 

タンさんはうつ病で苦しんでいた娘からの最後の言葉である「人類はなんのために存在するのか」という問いにとらわれている。宇宙人と接触することができれば、その答えがわかるのではと考えているんですね。

でも旅の終着地で、その答えがまさに自分の中にあったことに気づく。

 

先ほどのSF的問い的に答えるならば、「わたしたちはどこへでも行ける」し、それと同時に「わたしたちはどこにも行けない」。なぜなら「わたしたち一人一人が宇宙であり、宇宙はわたしたち一人一人である」から。なんだか禅問答のように聞こえますが、これこそが真理でもあります。

わたしが生きているのは、わたしが宇宙だから。わたしの存在そのものが宇宙だからなんです。

うーん、付いてきてくれてるかな???

 

この映画はそういうSF的思索をすごく壮大に、かつとても個人的に、それゆえ温かく描いています。わたしはそういうSFがとても好きなのです。

 

とはいえ、多少危ういところがある映画であるのも事実ではあって。例えば精神疾患への誤解を生じさせるような演出や発言があったり、タンさんの発言に異性愛を前提とするような発言があったりもするんですよね。

ただわたしはどちらも彼が最終的に到達する人類愛、というか生命愛に帰結するための布石だったようにも感じられたので、あまり咎める気にはならないかな。

 

終盤、結婚式といういかにも家父長制異性愛規範ガチガチのセレモニーの場で、それにカウンターするような話を語るということからも、タンさんが旅を通してそれよりも大きな何かを受け取ったと捉えるのが自然な気がします(なのでパンフの最後にあった配給会社さんの「タンさんとチンさんは結ばれたのでは」という解釈には明確に否定したい派です。すみません)。

 

ラスト、彼が言わんとした言葉をあえて語らせないのも(というかそれを映像で見せてくれたんだろうなと思う)、とても好きな終わり方でした。彼が読もうとした詩は、わたしたちの中にすでにあるものなのかもしれません。きっと。

 

 

以下はなんとなく連想した映画。もし本作が好きなら観てみて~。

 

メランコリア

メランコリア

  • キルスティン・ダンスト
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↑はブログも書いてます。

ちょう面白いよ~!!

 

作品情報
  • 監督 コン・ダーシャン
  • 脚本 コン・ダーシャン、ワン・イートン
  • 製作 ゴン・ゴーアル
  • 製作総指揮 ワン・ホンウェイ
  • 原題 宇宙探索編輯部 Journey to the West
  • 上映時間 118分
  • 製作年 2021å¹´
  • 製作国 中国
  • 出演 ヤン・ハオユー、アイ・リーヤー、ワン・イートン

 

ハートストッパー シーズン2【ドラマ】各話感想&お気に入り楽曲ピックアップ【後編】

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というわけで、ネトフリドラマ「ハートストッパー」の感想記事【後編】です。エピソード1~5までの感想【前編】はこちら。

 

 

ではさっそく、パリ編も佳境となる6話から~!

 

 

エピソード6 真実か挑戦か それとも?

ニックの父親と初対面したチャーリー。しばし雑談を交わすが、ニックの父は仕事を理由にあっという間に退席してしまう。父親にチャーリーを彼氏として紹介するつもりだったニックは自分に興味を向けてくれない父親に落胆する。

パリ最後の夜、ホテルではタラの誕生日パーティーが行われ、大いに盛り上がる。そこで「真実か挑戦か」ゲームに参加したニックとチャーリーは、思いもよらない形で2人の仲を公表することになる。

 

漫画のコマ割りのように表現される散策シーン、ますます仲が深まるパリギャングたちがほんとかわいい。

 

ちなみに古本屋さんでチャーリーが手に取っていたのはアラン・ホリングハーストの「スイミングプール・ライブラリー」。25歳と83歳の貴族の二人を通して、20世紀英国ゲイ社会の歴史が描かれるベストセラー。翻訳も出ています。

 

本屋さんのシーンでは他にも、原作者さんの本がさりげなく置かれていたり、注意深く見るといろいろと発見があるかもしれません。

それから、コミックでも人気の「Recharging(充電中)」のシーンね!実写になるとこれまた……!(悶絶)ニックとチャーリーが2人だけの時にふざけ合う様子はほんとうに微笑ましいです。

 

そんな6話で印象深い曲はやはりHolly Humberstoneの「Deep End」ですね。これはメンタルの問題を抱えていた姉妹へ向けた曲で、

I’ll be your medicine if you let me
Give you reasons to get out of bed
Sister, I’m trying to hold off the lightning 
And help you escape from your head

「わたしはあなたの薬になる」

「頭の中から逃げ出す手伝いをしてあげる」

という歌詞。

ニックとチャーリーがお互いに向けて投げかける言葉のようであり……そして「わたしたちには同じ血が流れてる」という歌詞では、パリにはいないけれど、1話で見せたトリ姉さんの顔も浮かびます……。

トリもチャーリーがいじめられていたのは知っているし、何か大きな問題を抱えていることにもずっと気づいてはいたんだよね。でもそれに対処する方法がずっと見いだせずにいる。もちろんそれはニックも同じなんだけど、ただトリは「家族であるからこそ」踏み込めない部分があるんだと思うんです。S3でスプリング姉弟の絆がどう描かれるのか……。トリちゃんも心に不安を抱えているからね。(涙目)

 

あと、曲調でめっちゃ好きだったのはタオエルがバスルームでキスしている時に流れるDayglowの「then it all goes away」。ノリノリのエルトン・ジョンみたいな雰囲気もあって、ちょっと7、80年代のエレクトロポップみも感じます。PVもめっちゃいいね!

 

アジャイ先生とファルーク先生のエピソードも削られなくてよかった!ファルーク先生はS3でチャーリーたちの味方になってくれそうですね。

 

 

エピソード7 ごめん 許せないことは、許さなくていい

パリ旅行を終えた仲間たち。エルはアートスクールへの転入が認められ、作品が展覧会に展示されることに。

アイザックは自分の思いをジェームスに伝え、友だちにも「恋愛はぼくの人生には重要じゃない」と告げる。さらに自身が「アセクシュアル」であることを確信していく。

そしてチャーリーは謝罪してきたベンに毅然とした態度で決別宣言。ニックはスプリング家を招いた夕食会で、父親と兄に思いの丈をぶつけるのだった。

 

youtu.be

7話のハイライトはニックの父親へのカミングアウトでしょう。そしてもう一つがベンにまつわるエピソードじゃないかと思います。

ドラマ版のベンは、ニックやチャーリーにとって"antagonist"(敵対者)に当たるとは思うのですが、決して「悪役」というわけではないと思うのですよね。やっていることは確かに「悪」いのですけど。

 

チャーリーの口から、ベンに「同意のない性的な接触」を受けた旨が語られていましたが、特に若者がそういう不均衡な関係を迫られることは、残念ながらそう珍しいことではないのかもしれません。

周囲にまだカミングアウトしていない場合「バラすぞ」と脅されて関係を持たされたり、あるいは長い間ホモフォビアにさらされて自己肯定感が低下し、どんなに酷い相手でも「この人以外に自分を好きになってくれる人はいないかも」と言いなりになってしまったり……。特に相手が年長者だった場合は、そういう支配的な関係から抜け出すのは難しい。

でもそんな関係は健全じゃないし、心を蝕むこともある。それを「許す」ことではなく、「否定し、認めない」とすることは、若者に向けた作品として、何よりも重要であったと思います。許せないことをされたのなら、言葉での謝罪くらいで許したりする必要はない。

 

そのような自身の「加害性」をチャーリーから突き付けられたベンですが、かといってそれで、内面化してしまっているホモフォビアと簡単に向き合えるわけじゃない。

セクシュアリティに悩む若者の中には、自分を否定し多数派に迎合することでしか自我を保てない人も決して少なくないと思います。その反動が結果的に誰かに向けられてしまうこともある。だからといってベンがチャーリーにしたことは擁護できることではないし、猛省して欲しいなと思うけれど。

 

でも、いつか彼にも救われるときがあって欲しいと思う。彼にとっての「安心できる場所(SAFE PLACE)」も、どこかにあるはずだと思いたい。「善良なものが欲しかった」「いつか2人みたいになりたい」と、そこまで気付けたならきっと立ち直れるはず。まだまだ10代だもんね。

もちろんそれをチャーリーが見届ける必要はないですが(S3にベンが登場しないことはすでに決定しています)。

 

ただ、少なくとも、ベンのような若い人が自分を拒絶しなくても生きていけるよう、現実を変える義務が大人にはあると思っています。

ドラマ版のベンは、視聴者にそう思索させる役目もあったし、もちろん悩めるクィアの若者の一人として描かれており、コミックや小説「ソリティア」からいちばん深掘り&発展のあったキャラクターでしたね。

 

てか「悪役」とするならば今シーズンだと間違いなくニックの兄デヴィッドだよねー!トリ姉さんがガツンと言うシーン(コミックだと4巻にある)はスカッとしたな(笑)。あれくらいでデヴィッドが変わるとは思えないけれど……。Such a dick!!

 

さてep7のお気に入り楽曲、特にアイコニックだったのは、ランバート美術学校の展覧会でアイザックが「アセクシュアル/アロマンティック」にまつわるアートを眺めるシーンでかかっていたコナン・グレイの「Crush Culture」。

コナン・グレイさんは日本人の母とアイルランド人の父を持つ23歳。レトロなファッションやその愛らしいキャラクターが多くの若者に支持されている、Z世代の人気シンガーです。

Crush culture makes me wanna spill my guts out

タイトルはコナンさんの造語で、恋愛にまつわるゴシップやいわゆる「色恋沙汰」のごたごたを意味しているそう。そういう「カルチャー」に「うんざりだ」と語りかける。「人は恋愛をするもの」という風潮そのものにも異を唱える歌詞が新鮮で、ACEの人たちからも共感の声が上がった楽曲なのだそうです。

 

あと、みんなでプロムの衣装を買いに行ったときにお店で流れていた「People Watching」もコナン・グレイの曲。

But I wanna feel all that love and emotion

Be that attached to the person I'm holdin'

Someday I'll be falling, without caution

But for now, I'm only people watching 

「ぼくも愛を感じたい愛する誰かと一緒にいたい」「いつかは恋に落ちるだろうけど」「今は人間観察してるだけ」いや前向きなんだか切ないんだか!

 

このお店のシーン、チャーをプロムに誘うニックさんのまごまごした感じが、S1ep6のミルクシェイクのときのチャーリーさんと立場が逆転してるみたいで面白いし、「お揃いのスーツはいやだから」って真顔で冗談を言うチャーリーさんもかわいかったですね。

てかね、ニックの家へ向かうときの「mate. bro. pal. supportive straight friends?」のやり取りといい、今シーズンは陽気なチャーリーがたくさん見られたのがほんと嬉しかった。本来はこういう楽しい子なんだよ。

 

あと、スーツを買うのにお金が足りないや、ていうダーシーに、仲間たちがなんのためらいもなくカンパするのもいい。それを集めてダーシーに渡すタラも、「みんなありがとう!」って受け取って笑顔で買いに行くダーシーもかわいい。みんなかわいい。てかタオのメガネはなんだったのあれ(爆笑)。

 

そして、ラストでかかるウルフ・アリスの「Blush」。

チャーリーの体調が心配なニック。理解のない母と口論になり家を飛び出したダーシー。さまざまな不安要素が渦巻く中、

Curse the things that made me sad for so long

Yeah, It hurts to think that they can still go on

I'm happy now

Are you happy now?

「長い間わたしを苦しめたものを呪って」「まだ続くと思うとつらい」「今幸せ?」

うわぁん情緒をどうするつもりよ!!(号泣)

 

 

エピソード8 完璧 じゃなくても、安心できる場所

ニックがついに、インスタでチャーリーと付き合っていること、自身がバイセクシュアルであることをカミングアウト。チャーリーはこれ以上ないくらい完璧だ、と喜ぶ。でもニックはチャーリーの体調と心の問題が心配でたまらない。

一方のタオとエルは正式に彼氏彼女に。

あわただしくプロムの準備が進められるが、いつまでもダーシーと連絡がつかないことにタラは不安を覚える。

着飾った若者たちが集い、プロムナイトは始まるが……。

 

とにもかくにも、ダーーーシーーーー!!(号泣)

いやそんな気はしてた。いつでも陽気でおちゃらけてるのは心の奥底にある不安や悲しみの裏返しなんだろうって。(涙目)

そんなダーシーを「もう半分も知った」「それでも愛してる」と受け止めるタラ……なんかもう、ほんとうにいい子だし、素敵なカップルだよね。

ちなみにタラとダーシーが語り合うシーンでテイラー・スウィフトの「seven」が流れるんだけど、どうやらテイラーもハートストッパーが好きらしくて、破格の使用料で使わせてもらったんだそう。『ハートストッパー』制作陣が最終話でテイラー・スウィフトの楽曲が使えた経緯を明かす - FRONTROW

 

I think you should come live with me

We can be pirates

Then you won't have to cry

Or hide in the closet

And just like a folk song

Our love will be passed on 

「一緒に暮らそう」「海賊になろう」「泣かなくてすむよう」「それかクローゼットに隠れよう」……

なんだか「小さな恋のメロディ」みたいな、あわあわとした初恋のお話のような曲です。ちなみに(その2)、タラの部屋にはこの曲が収録されているアルバム「folklore」のポスターが貼ってあります。

 

"カミングアウト"を経て、大事なのは周りではなく自分たちだと気付いたニックとチャーリー。2人はプロム会場ではなくニックの家で仲間たちと過ごすことに。仲間たちと彼らの穏やかな時間はほんとうに愛おしいです。ここはきっと、みんなにとって安心できる場所(SAFE PLACE)で、完璧じゃなくても、うまくいかなくても、心落ち着ける場所なんだろうな。

 

てか、遅れてきたタラを迎え入れて、7人が抱き合うところは今シーズンで特に心打たれたシーンの一つでしたね。ほんと、いい友だちだよ。(号泣)

アイザックが思わず口から出ちゃちゃった、みたいに「みんな大好き」って言ってるのも泣ける(あれはアドリブですか?)。それに対してチャーリーが「Love you lots」て返してるのもいい。(大号泣)

 

そして、2人きりになったとき、チャーリーがニックに打ち明けたのは、つらいつらいいじめの記憶と自傷行為の過去……。10代が背負うにはあまりに過酷な経験です。

チャーリーはニックのことが大好きなので、心配させるようなことは言いたくない。その気持ちもとてもよくわかる。でもニックはチャーリーを失いたくないからこそ、良いことも悪いことも全部受け止めたいんだよね。

この会話によって、2人はお互いへの思いをさらに強めます。

 

ラストで流れるのは、タオを演じているウィル・ガオさんが妹と組んでいるユニットWasia Projectの「ur so pretty」。

S1の舞台裏でウィルさんがピアノ弾いてる動画があったから、本編でも弾いて欲しい~とは思ってたけど、まさかこんな公式的(?)にやってくれるとは!

「あなたはとてもかわいい」というタイトルの通り、大好きな人への狂おしいほどの思いを歌ったラブソング。

You're the only person left, so hold me
Don't leave me
I'm so scared that the moments we shared
Won't happen again

「あなたはそばにいてくれるただ一人の人」「分かち合った瞬間がもう二度と訪れないことが とてもこわい」

チャーリーが自分にしてくれたように、その手を握りそばにいたいと願うニック。彼を苦しませているもの、内側から彼を蝕むものから守りたいと強く思うけれど、まだその方法がわからない……。そんな気持ちを代弁しているようにも聞こえる歌詞なんですよね。

「I don't want this to end(これで終わりにしたくない)」の歌詞のところで、チャーリーを送り出したニックの思い詰めた表情が映し出されるのが心苦しいです。

見てるこっちだって「I don't want this to end」の気持ちよ!!

 

原作通りならば、S3ではチャーリーのメンタルヘルスにまつわる物語が中心になるかと思われます。そもそも原作者さんは多くの作品で若者のメンタルヘルスについて言及していて、描きたいことはそちらなのかなぁという気もします。

すでにS3の脚本の執筆に取りかかっており、ep1のタイトルが「LOVE」であることが発表されました。

 
 
 
 
 
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S3では、それぞれの愛と友情、お互いを思い合う気持ちがさらに深く描かれるシーズンになるんじゃないかと思います。楽しみに待ちます!

 

 

 

 

 

 

 

 

作品情報
  • 原作 アリス・オズマン
  • 脚本 アリス・オズマン
  • 監督 ユーロス・リン
  • 作曲 アディスカー・チェイス
  • 制作国・地域 イギリス
  • 制作年 2023å¹´
  • 出演者 キット・コナー、ジョー・ロック、ウィリアム・ガオ、ヤスミン・フィニー、コリーナ・ブラウン、キジー・エッジェル、トビー・ドナヴァン、オリヴィア・コールマン

 

 

 

ハートストッパー シーズン2【ドラマ】各話感想&お気に入り楽曲ピックアップ【前編】

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去年ドはまりしたドラマシリーズ、「ハートストッパー」のシーズン2が先月からNetflixで配信開始されました!!(パチパチパチドンドンドンパフパフ~)

 

 

 

何度も何度も繰り返し見て、ほんとうに大切な作品になったシリーズで、新シーズンもとっても楽しみにしていました。アリス・オズマンさん(本シリーズで脚本も担当)による原作のコミックや作品世界を共有するYA小説(「ソリティア」「ディス・ウィンター」)も読んで、準備万端でのぞみましたが、、、そんな高みに高まった期待をはるかに越える素晴らしい出来ばえでした……。

 

 

さらに深まる&広がる物語とキャラクターたち

原作の良さを損なわずに組み立てたストーリー構成の巧さはもちろんのこと、そこにキャラクターそれぞれの内面がさらに深掘りされ加わってて、なんかもう、みんなのことがますます好きになったよね。(涙目)

さらに深まったニックとチャーリーの関係はもちろん、仲間たちとの友情もほんとあつくて、おばちゃんは毎話ぼろ泣きでしたわ。誰かのために変わろうとしたり、大切な人のためにできることをしようとする若者たちに、なんだかわたしまで背中を押してもらえたような気がします。

 

家族との話がたくさん描かれてたのも良かったですね。連載中のコミックでは、実はチャーリーの母親の葛藤が少し描かれてたりするんですよが……。シーズン3の制作がすでに決定しているので、今後さらに家族との関係についても語られると思います。サラ(ニックの母:オリビア・コールマン)の菩薩感がますます高まると予想。(涙目)

 

エピソード1のタイトルにもあるように、今シーズンは全体を通して特に、ニックの「カミングアウト」に焦点が当たっています。とはいえそれ事態が目的ではない、という着地になるのがこの作品らしいなと思いましたね。

「カミングアウト(=come out of the closet)」とはなんなのか、なぜするのか。それによって何がもたらされるのか。その必要性を感じることなく生きている人たちにも、改めて考えて欲しいなと思いました。

少なくとも、企業が宣伝に用いたり性的マイノリティではない個人が揶揄や冗談を目的として使うような言葉ではないということは、理解して欲しいです。

 

また、「カミングアウトは義務ではない」「言いたくないなら言わなくていい」ということが繰り返し語られていたのも象徴的です。これはコミックでもそのように描かれてはいたのですが、昨年、ニック役のキット・コナーさんが有害なファンや作品のアンチから執拗なコメントにさらされた出来事とも無縁ではないと感じました(詳細はここでは省きます)。

改めて視聴者に「カミングアウトは義務ではない」ことを伝えるという意図もあったのかもしれません。

 

世界中から注目を集める本シリーズですが、海外では特にこういった有害なファンダムの問題が指摘されていて(人気作はたいていそうだけどハトスパの加熱ぶりはちょっと常軌を逸していた)、チャーリー役のジョー・ロックさんはじめ、本作でスターとなったキャストがネットストーキング的に交遊関係を詮索されたり、根も葉もないゴシップが飛び交ったり、心無い言葉を投げつけられるなどしてSNSのアカウントを閉鎖する事態になったりと、あまりに過酷な状況が続いたりもしました。

人気俳優とはいえ、まだ10代20代の若者なわけで……。「有名税」なんて言葉があったりもするけど、そんなのバカげてるし、本作を観た人ならば、どうかこのドラマが描いたメッセージを真摯に受け取って、良識ある行動を取ってもらいたいものです。まぁ、それはどの作品/俳優に対しても言えることなのですけどね。

 

とはいえ本シリーズがもたらした功績も大きく、特に若い世代に向けたLGBTQレプリゼンテーションの面で高く評価され、第一回チルドレン&ファミリー・エミー賞初め数々の賞を受賞しました。キャストたちがプライドパレードに参加するなど積極的にメッセージを発したり、作品の外でもLGBTQコミュニティのために精力的に活動していることも大きな支持を集めています。

 

今シーズンではチャーリーの親友の一人、アイザックが「アセクシュアル/アロマンティック」としてのアイデンティティを確立していく過程が丁寧に描かれています。また、ベンというキャラクターを通して、同意を得ない性的な接触や不均衡な関係性をしっかりと否定しつつ、クローゼットのクィアの若者が抱える複雑な心情にも寄り添う姿勢を見せました。

そして、ニックがさらされるバイセクシュアルへの誤解(コミュニティ内外に関わらず「本当はへテロ/ゲイなのでは」という"疑い"を向けられるというのはよくあること)とその葛藤も描写され、前シーズンよりもさらに踏み込んでそのアイデンティティにフォーカスしています。彼が「バイ」として自信を持っていく様子が細かい描写で積み重ねられていて、おそらくこれまであまりなかったバイセクシュアルのキャラクターの描かれ方をしているのではと思いました。

 

今回も若い人たちが勇気づけられたり、自分を考えるきっかけになったり、世界が広がる作品になっているのではないでしょうか(ただ、先の物語へ向けてS1よりトーンが重たくなっているのは事実です)。

今後無事、何事もなくシーズン3が完成し、できればシーズン4が更新され「ニックとチャーリー」の物語が美しいかたちで完結されることを願っています。(そしてあわよくばほかのアリスさん作品の映像化も……!「ソリティア」の映画化を……!)

 

というわけで、さっそく、以下より各話感想(ネタバレ全開)を書いていくよ!今回もサントラが超よかったので、お気に入り楽曲もピックアップしちゃうぜ!

毎度のことながら自己満エントリーだから別に誰も読まなくていいぜ!!!

 

 

エピソード1 カミングアウト チャーリーの成長に涙

互いの思いを確かめ合い、晴れて恋人同士となったニックとチャーリー。母親にチャーリーとの関係と自身がバイセクシュアルであることを打ち明け、さらに友人たちにも"カミングアウト"を試みる。だが思いようにいかない……。

チャーリーはそんなニックを支えようと、彼を守ると誓う。

 

 

きゃーーーーー!!!もう最初から楽しいね!とにかくもうラブラブ全開のチャーリーとニックがかわいくてかわいくて。微笑み合う2人を見てるだけでもう胸がいっぱい!

2ヶ月記念とかどんだけかわいいのよほんと。ニックが好きなキャドバリーのチョコレート、同じやつ探したけど本体より送料の方が高くて(空輸)諦めたわ!がはは!!

 

お泊まり会シーンも最高だった。タラ&ダーシーが当たり前のようにチャーリーたちと一緒にいるのもなんだか嬉しい。これまでアイザックとほぼ接点ないはずなのに仲良しになってるし(オフショ見てると中の人も仲良しなので違和感ないけど、劇中では数回も会ってないんだよな)、S1のep1でタオが「三人じゃトリオだ」なんて言ってたけど、もう立派な「ファミリー」になってるじゃないの!(嬉し泣)

 

そんな仲間にイモジンが加わり、さらににぎやかになるかと思いきや、まさかの告白(笑)。ニックの感動的なカミングアウトの後の「ベンだよ」に、思わず涙も引っ込んで変な笑いが出ちゃったよ。「いやなんでだよ!」ってみんな思ったと思います。わたしもです。いやなんでベンなんだよっ!!ニックさんの「ぅへ?」みたいな顔もウケます。

(でもその後、チャーリーにイモジンの相手がベンだと言わないニックさん……。イモジンを立てたってのもあるだろうけど、それよりもチャーリーにベンの話をしたくなかったんだろうなー)

 

さて、一話で一番好きな曲は、ラストにかかるウルフ・アリスの「The Beach」。姉のトリからニックとの関係を公表することに不安はないのかと問われ「彼を守れる」とチャーリーが独白するシーンで流れます。

Let me off, let me in
Let others battle
We don’t need to battle and we both shall win

「私たちが争う必要はない」という歌詞は、へテロセクシュアルとそれ以外のセクシュアリティが対立しているように見えるこの社会に、そうではないよと呼びかけているようにも聞こえます。

 

どこか物悲しいメロディーもあって、チャーリーの「Everything gonna be perfect.」というセリフが胸に迫ります。もうさ、このシーンは見ててトリ姉さんとおんなじ顔になっちゃうよね。

それはチャーリーが強くなっていることに感動しているのもあるんだけど、彼が「完璧」と言えば言うほど、実はそうではないこともわかっているからで……。(涙目)

 

ちなみにウルフアリスさんはS1のep1でもラストの曲(「Don't Delete the Kisses」)でしたね。

 

あと、ほんとどうでもいいですが、お泊まり会の別れ際、毛布纏ってるチャーリーさんがほんともうあざとい!かわいい!!加点5あげちゃう!!(なんの?)

 

 

エピソード2 家族 ネリーが今回もかわいいです!

先生との面談で成績の落ち込みを指摘されたチャーリーは母親から外出禁止を言い渡され、ニックはGCSE(試験)のプレッシャーと帰省してきた兄の小言にうんざり。

2人はささやかなひとときを過ごすものの、ニックが兄から差別的な言葉を投げつけられたことで、2人は"カミングアウト"の難しさを改めて思い知る。

一方、エルはアートスクールへの転校を考え新しい一歩を踏み出す。そんなエルを見て、タオは彼女への気持ちが友情ではないことを自覚する。

 

タオーーーー!!ってラストでぜんぶ持っていかれたエピソードだよね(笑)。

家族ってタイトルにあるように、ニックとチャーリー、それぞれの家族との軋轢が描かれます。

まぁ、チャーママが言いたいことはわかる。でもさ、やっぱりちょっと厳しいのよねぇ……。チャーパパはママに頭が上がらない感じなのかな。

そしてデヴィッドはくそ。でも、うちの兄もあんな感じだったわ!くそ!!

 

2話で好きなのは、やっぱり2人が公園で過ごすシーン。あそこはS1のep6でニックが人目を気にしてキス出来なかった場所なんだよねー……。そんなニックさんが、あんな、あんなねぇ……!!感慨深ぇや。(涙目)

ちなみにこの公園のシーンがジョー・ロックさんとキット・コナーさん2人が揃ったS2の最初の撮影シーンだったそうですよ。久しぶりでも息ぴったりだったのね。

 

そんなシーンで流れるのはCarmodyの「Paradis」。

公園、そこはニックとチャーリー、そしてネリーのパラダイス!!(そんなテンションの曲ではない)

 

 

エピソード3 約束 「カミングアウトは義務じゃない」

長かったニックの試験が終わり、チャーリーも課題を無事終わらせ、今学期が終了。森の中で試験終了の野外パーティーが行われる。ニックはそこでラグビー部の仲間にチャーリーとのことを話そうとするが……。

アイザックは図書委員の活動でジェームスと仲良くなって、なんだかいい雰囲気。だけど……?

ついにエルをデートに誘ったタオ。でも慣れないシチュエーションで空回り。2人はギクシャクしてしまう。

 

ふふふふ……なタオエル回。最初から面白すぎる。「(500)日のサマーみたいにIKEAデートは?」じゃないんだよ(笑)。

だからね、映画デートで持論を展開したら嫌がられるに決まってるでしょ!!これだからオタクってほんと……!(そういうことではない)

 

あと、カミングアウトがうまくいかなかったニックに、チャーリーが言う「ストレートじゃないとわかったら、カミングアウトしなきゃって義務みたいに思う空気があるけど、それは違う」というセリフはコミックでアレッドがチャーリーに語るセリフなんだよね(チャーリーはその言葉に感銘を受ける)。チャーリーの中にアレッドもいるのかなぁ、なんて思って個人的にちょっと感激しちゃったシーンでもありました。

 

ハリーに「あっち行け!(Piss off.)」言うチャーリーもほんと良かったな……。S1では影に隠れるようにしていたチャーリーがこんなに大きくなって(涙目)。チャーリーの成長と言えば「i'm  sorry」→「i'm so ANGRY」もグッときた。そう、怒っていいんだよ。

 

お気に入りシーン&楽曲は、ニックチャーが勉強する横で、タオがパソコンで「親友をデートに誘う」調べものを、アイザックがジェームスとプライド本のコーナー作りしてる、図書館のシーン。

勉強やだやだするニックさんもかわいいし、チャーリーさんの史上最強にかわいい「Ionic compounds(イオン化合物)」には加点10あげちゃう!!(だからなんのだよ)

曲はVistasの「Retrospect」。ダンサブルでノリノリなナンバー。これから夏休みだー!って浮かれる学生たちの高揚感と重なります。

 

あと、部室でニックチャーがキスする一連のシーンもかわいいし(「Best bro.」っておどけるチャーリーさんほんと好き)、そこをシン先生にがっつり見つかっちゃった時の2人の顔も良すぎましたな……加点20!!

 

 

エピソード4 挑発 温かな3人のハグ

楽しみにしていたパリへの修学旅行がはじまった!

なるべく目立たないように過ごそうと決めたニックとチャーリー。タラダーシーは「愛してる」の一件以来どこか気まずい。タオエルはアップルジュースと美術館巡りで本来の仲を取り戻す。

イモジンはベンの身勝手さに嫌気がさし、別れを告げる。そんなイモジンにチャーリーとニックは寄り添う。

 

ついにinパリ編~!

はしゃいでるみんな(ファルーク先生もだよ!)がまじかわいいし、いつになくワクワクしてるアイザックもかわいい。

ダーシーかわいいシーンもたくさんあって、「なんで魚が見えないの?」「いつから?」もそうだし、コミックでも大好きだった「お楽しみ中ね。よきよき続けて」が見られたのも嬉しい。ダーシーほんと好きーー!!

 

あと、イモジン&ニック&チャーのハグにはぐっと来たよね……。S2ではチャーリーとイモジンが仲良くなってくれたらいいなー、とは思ってたけど、まさか同じ野郎(ベンだよ)から傷つけられた者同士の絆が二人を繋ぐとは思わなんだ!(てかトリ姉さんとイモジンも何気に仲良くなれそう)

てかね、イモジンが洗面所に行ったあとニックがチャーリーに目配せして促すのと、「ハグしてくれる?」ってイモジンが言ったあとにチャーリーがニックに目配せするの良き。ベンに話しかけられたチャーリーを見て、席を立ちかけるニックさんも良き(原作者さんいわく、あそこでイモジンが何も言わなかったらチャーリーと席を代わっていただろう、とのことです。その行動、あまりにニック過ぎる!)。

 

ちなみに4話のお気に入り楽曲は、ラストでかかるMiya FoIickの「Freak Out」。

ニック&チャーリーのアツアツぶりが加速する終盤(えーと、low keyとは?)、そして朝、鏡の前でチャーリーさんの「oh f...(uck)」からの鮮やかな切れ味!タイトルの意味はびっくりするとかパニックになるとかなんだろうけど、まんまじゃねぇか!(爆笑)

初見時、思わず「ここで終わるんかーい!(笑)」って声出ちゃった。

 

あといつも思うけど、ニックさんて褒めの語彙力高すぎない?「おれには理解できないインディーズ映画もたくさん知ってるし」ってところで、わたしまでなんかいい気分になっちゃったわよ(なるな)。あのシーン、褒められるのに慣れてないタオタオも、黙って聞いてるアイザックもかわいかったな。

 

 

エピソード5 熱 友情も「熱」かった回!

パリ旅行はチャーリーのキスマークの話題で朝から持ちきり。予期せぬ注目を浴びて萎縮してしまったチャーリーは、体調を崩して倒れてしまう。ニックはチャーリーから食事にまつわる困難について聞き、彼を理解しようとする。

タオとエルは初めてのキスで距離が縮まる。

 

ついに、ニックがチャーリーに感じていた違和感の正体が明らかに。

わたしも原作を読む前にS1を見て、やたら「お腹すいてない」「あとで食べる」を繰り返すチャーリーさんにすごく不安感があったのよね……。

いわゆる「摂食障害」って、ある種の依存症とかと同じで本人も隠す傾向があって、そもそも本人がそれを特に問題としていない場合もあるから発覚が遅れる可能性が極めて高い。若い人が悩まされることもほんと多いので、特に親とか、周りの大人が気にかける必要があるんだよね(表に出ているのもの以外に、別のメンタルの問題が隠されていることが多いので)。

なのでチャーリーにニックがいてくれてほんとうに良かったなと思った。

 

それはニックも同じで、チャーリーに父親に対する失望を打ち明けて、2人は「何かあったらお互いに話そう」と約束する。こうやって少しずつでもちゃんと言葉にして、「関係を諦めない」ところがこの2人の良いところだよな。

 

またエッフェル塔では、意外な2人の組み合わせが見られました。キスマークの件でチャーリーとジェームズをいじり続けるハリーに対し、アイザックが「もっと人の気持ちを考えなよ」と正面からの一言。

その後、塔の上でハリーがニックとチャーリーをかばうような発言をするのだけれど、原作だと急すぎて唐突感が否めなかったんですが、そこの部分を補完するようなシーンにもなっていましたね。てかアイザックに言われて反省したんだとしたら、ハリーめちゃくちゃ単純なやつだな!?(笑)

とはいえ個人的に好きな展開:通称「実は友だちが自分の知らないところで動いてくれてた」(長い)になってるのもいいよね。これまで引っ込み思案に見えていたアイザックだけど、友だちのためにしっかり思いを言葉にできる子だとわかる良いシーンでした。

 

チャーリーとタオの友情にもぐっと来たね。レディヘの話で友だちになるリトルタオチャーほんとまじキュートすぎる。チャーリーが言う「失敗しても君は愛されるに値するいいやつだ」というセリフは、3話で「誰からも好かれない人間なんだ」と悲観するようなタオにとって、いちばん欲しかった言葉だったんだろうなと思う。ほんといい友だちだね。

 

ep5のお気に入り楽曲は、ニックチャーがニックの父親に会うためパリの街を駆け抜けていくシーンで流れる、Gabrielle Aplinの「Never be the same」。

個人的にはS1のep4の雨のシーンで流れるShuraの「What's It Gonna Be」に匹敵するくらい大好きな曲です。

I'll never be the same
Don't recognise myself, my face, my name no more

「もう隠れてはいられない」「気がつくまでは、変わるまでは、ただ楽しかった」「自分の何もかもが 全然同じじゃない」「あなたがいないと自分がわからない」という歌詞も、"カミングアウト"をテーマとする今シーズンと重なるようだと思いました。

実はこの曲はパンデミック下に作られた曲で、本来の自分を再発見することについて語っている歌なのだそうです。Gabrielle Aplin's 'Never Be The Same' Is About Rediscovery | News | Clash Magazine Music News, Reviews & Interviews

今シーズンで描かれる、大切な誰かのために変わろうとしたり、自分を奮い立たせる若者たちに、ピッタリの楽曲だと思います。疾走感のある曲調も相まって、前向きになれるような曲ですね。最近のわたしの元気出すぞソングです。

 

それからもう一つ好きなのは、タオエルの初キスのシーン!なんかもう、初々しいすぎて、もう!!(悶絶)

蝶々柄のタオのシャツと花柄のエルのワンピースの組み合わせもセンスよすぎる(蝶はトランスジェンダーのシンボル的なモチーフでもあり、度々イラストの蝶がエルの周りを飛んでいたりしています)。中の人が二人ともモデル並みにスタイルが良いので、並んでるだけで絵になるんよ……(ため息)。

 

ここで流れるCavetownとbeabadoobeeのコラボ曲「Fall In Love With A Girl」も最高にロマンチック。歌詞の内容から、女の子が女の子に恋をすることについての歌のようでもありますね。AVYSS magazine » Cavetownがbeabadoobeeとのコラボ曲「Fall In Love With A Girl」をリリース

世間が求める「当たり前」ではなく、自分の心に従って、というような曲なのかな。

(beabadoobeeはS1ep2の雪の日のシーン(きゃ!)で流れる「Dance With Me」、S2でもep5のラストで「Lovesong」という曲が使われていて、もはやハトスパファミリーなミュージシャンですね)

 

あとこれは余談ですが、S1のep5のゲームセンターのシーンでマチルダ・マンの「Paper Mache World」という曲が流れるのですが、そのサビ前の「they said to just sit still Apparently, I'm just a girl」って歌詞の"just a girl"ってところでエルが映るシーンがあるんです。

S2のこのタオエルの初キスのシーンでも"if you fall in love with the girl"って歌詞のところで、タオエルが3回目のキスをしています。タオは女の子のエルに恋をしてる。ただそれだけなんだよね。

そして多分、それだけでいいんです。

 

長くなってしまったので、【後編】へ続く!

 

 

 

 

怪物【映画・感想】この国は、今日もどしゃ降り (★判定なし)

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あらすじ

シングルマザーの早織(安藤サクラ)は小学5年生になったばかりの息子・湊(黒川想矢)の様子が最近おかしいことに気付く。靴が片方なくなり、水筒には泥水が……。いじめ?体罰?問い詰めると息子は重い口を開き、担任教師の保利(永山瑛太)から心ない扱いを受けていると語る。学校との交渉の末に保利は退職し、すべては丸く収まったかに思えたが……台風の朝、湊は忽然と姿を消す。

 

 

6/6大幅に加筆修正しました。

 

今年のカンヌでクィア・パルムを受賞した本作ですが、その前の会見での模様についての記事が出ていました。

はっきり言うと、映画を観終わってこのことを思い出して(実際には観てる最中も)、なんで、監督はこんなことを言ったんだろうと、ものすごく悲しくなりました。

この映画を作った人には言って欲しくない言葉でした。

 

 

以下、映画の話はあまりしていませんが、ラストについて少し言及しています。あまり褒めていませんが、映画そのものついては肯定的に受け止めています。もし本作が日本社会に良い影響をもたらしてくれるのだとしたら、それはとても喜ばしいことだと思います。

 

 

 

 

映画の出来は素晴らしい、かもしれないが…

この映画は、クィアであるとされる子どもたちが登場する明白にクィアな映画です。それは、はっきりと言えると思います。なぜなら、それがむしろ物語の根幹をなすとも言えるものだからです。

既存の社会規範やことなかれ主義といった、大人たちが作り上げた不均衡な構造(そこには当然、同性愛嫌悪的なものが含まれます)の中で、ひたすら追いやられていく子どもたちの話なのですから。

 

2人の間にある感情はもしこれが「男の子」と「女の子」であれば、容易に「初恋」だの「小さな恋」だのと言われるものだろうと推察されます。

でも、2人が(世間的に)「男の子」(と見なされている子ども)だから、その明言を避けているに過ぎません。少なくとも2人はお互いを「好き」だと認識しています。それが「友情」と括られるものではないことは、映画を観ていれば明らかです。

その2人の関係の上に物語が立脚しているという構造なので、これを「普遍的な~」といったよくある、紋切り型のコメントで濁して終わりにするようなものではないのではないでしょうか。

 

まず作り手側はそれを明確に認めた上で、本作について語るべきだったと思います。少なくとも、2人の間にあるものが「恋心であること(その可能性があること)」を否定するようなコメントは、すべきではなかったでしょう。それはまさに、保身のために嘘をついたり規範から外れることを許さなかったり何の気なしに偏見を助長し続けたりするような、この映画に出てくる大人たちと同じ行為にほかならないからです。

この映画は、そういう大人たちのことを批判しているお話しなのですから。

 

作中で2人が自身をどうアイデンティファイしているのか定かではないように描かれていますが(セクシュアリティもゲイなのかバイなのかパンなのか、あるいは別のものなのか。ジェンダーアイデンティティについても曖昧にされていたように思います)、そうであるならばなおさら、それを「内的葛藤」という言葉で誤魔化すのは不誠実であるように思えます。

なぜならそういった葛藤や揺らぎが「ある」とするのが、性別二元論によらない「クィア」の考え方だと思うからです。

 

映画を観ながらわたしが懸念を抱いたのは、特に若いクィアな人たちが、予期せず本作に触れることになるかもしれない、ということです。劇中、明らかにホモフォビックな描写があり、それも一度や二度ではなく、過去(いや現在進行形で)そういった経験にさらされたことがある人にとっては、トラウマを抉られるような演出になっています。なかなかにしんどいいじめの描写もあります。

 

わたしは、自分の友人や子どもにこの映画を「前情報なしに」観せられないと思います。もしあの場で作り手側が、「LGBTQについて描かれた映画です」とはっきり言ってくれていたら。

 

その上で、クィアな子どもたちの生きづらさについて描いたものであること、そしてそれを作り出している大人たちについての映画であること、とか。

そういう社会を生み出しているこの国の残酷な構造、であるとか。

差別や偏見なんてない、なんて言ってる人がいますがそんなことはないです、そういう社会を変えるために作りました、とか。

あの場で、そう、言ってくれていたら。

作品に対する印象もかなり違ったのではないかと思います。

 

 

セクシュアリティを「ネタ」バレにするということ

本作について「ネタバレを踏む前に観てください!」「前情報を入れずに!」などというレビューが散見されていますが、それはこの映画を観てもなんら傷つくことはない人たちに向けての言葉ですよね。

 

そもそも「ネタバレ」が成り立つためには、その「ネタ」が隠されていなければなりません。では、本作で隠されていることについて、考えてみてください。

セクシュアリティは、「隠すべきネタ」なのでしょうか?

そもそもこの映画では、そう見なされる社会に生きていることで苦しむ子どもたちを描いているように思いましたが、それはわたしの見当違いでしょうか?

 

「ネタバレ」扱いにできるのは、誰もが「シスヘテロ」であるという前提の上にのっているからなのではないか?

それは「マイノリティ」とされる人たちの物語を簒奪して踏み台にすることではないか?

物語の構成によって、暗に「隠すべきこと」というメッセージを送ることになるのではないか?

 

作り手の人たちは(そしてできれば受け手の観客にも)、これまで「当たり前」とされてきたものを疑って、いろんなことに意識を向けて欲しいと思います。そもそもこれら(映画の内容や作劇方法だけでなく、宣伝広報などに至る全てのことです)のことは、今に始まったことではなく、ずっと、幾度となく繰り返され批判されてきたことなのですから。

 

少なくとも製作陣には、これだけテーマに組み込んでるのだから、同性婚の法制化について(校長先生と湊の会話の、「一握りの人しか掴めない幸せ」としているものは、法律婚含め、シスヘテロ社会のシステムそのものを暗示しているようにも考えられます)くらいは、明確なスタンスを表明してくれてもいいような気がします。

なんかそういうところも、日本の映画界全般が残念に思えてしまうところなんですけどね。

 

あと、これはこの映画に限りませんが、「マイノリティ」とされる人たちの物語を自分事としてとらえるために普遍性が必要になることは確かにあります。「自分もこういうところあるな」「この気持ちわかるな」と引き寄せて考えるのにそれは有効に働きます。

ただそれによって「だからみんな同じなんだ!」と物事を相対化することは、現実を無視したあまりに乱暴なやり方ではないかと思います。だって、現実に差別があったり、個別の苦しみが確かに存在しているのですから。

 

本作の2人が悩み葛藤し苦しんでいたのは、自身のセクシュアリティ含めアイデンティティが周囲から認められない/認められることはないと考えていることから来ているものです。それは本当に「みんなと同じ」「誰にでもよくあること」ですか?

そう見なして語りだしたら、本来あるはずの問題を覆い隠すことにはならないでしょうか。

普遍的に捉えることと相違を認めることは、どちらか一方ではなく両立し得るものです。「わかる同じだね」「違うんだね知らなかった」それは相互理解のみならず、それぞれの生き方を認め合い豊かにするために必要な営みであると考えます。

 

「マイノリティもマジョリティもない」と言う人もいるかもしれません。そういった耳障りのよい言葉は、もっともらしく聞こえます。けれどもわたしはそういった物言いは、「差別を指摘する人が差別してる」論法の性質と似ているなと思います。

 

こうした物言いは、マイノリティを標的にしたヘイトクライムが起きた時に「差別ではなくその人がそこにいたから攻撃されただけ」という論法がなされることにも繋がるとも思っていて、わたしは特に警戒しています。なぜならそう見なしてしまったら、本質的なところではなんの解決にもならないからです。ヘイトクライムはヘイトクライムとして認識しなければ、先へは進めません。

 

 

 

「幸せになって」なんて簡単に言わないで

前述の通り、本作はかなりトラウマを抉る演出をしています。

 

「星川くん」(←劇中そう呼ばれているので、便宜上"くん"付けします)の父親は、我が子のSOGIをすでに把握しているようで、おそらくそれを矯正しようとさえしている。つまり、虐待です。家族から自身の存在を認めてもらえず、孤立して居場所を失っているLGBTQ(かもしれない含む)子どもたちは未だにたくさんいます。それがどんな結果をもたらすかは、すでに多くの作品で語られています。

本作でも「生まれ変わり」という言葉が何度も登場します。それはうっすらとした希死念慮であり絶望感と言えるものだと思います。……なんかもう、胸が潰れそう。

 

また湊も、教師や母親の日常的な言動から自身が理解されることはないと、ある意味で諦めている……そういう子もほんとに多いでしょう。誰に、何を相談すればいいのか、その方法さえわからないのに、それを「隠さなきゃいけない」ということだけはわかっているという……。こんな悲しいこと、なくないですか?

 

テレビをつければ同性愛や異性装を揶揄したり、他者のアイデンティティを茶化したりしている。

ネットを開けば、正しい情報や知識の前に偏見の壁が高く高く立ちはだかって、差別的な言葉が溢れたりしている。

法的な後ろ楯もないばかりか、「理解」にさえも二の足を踏む大人たちがいる。

世界中でヘイトクライムが横行し、多くの性的マイノリティが現実に、攻撃にさらされている。

そんな社会を目の当たりにしながら、子どもたちは成長していくんですよ。大人たちが他人事みたいに「幸せになって欲しい~」なんて言ってる間に、多くの子どもたちが絶望の縁に立たされてるんですよ。

 

映画の大人たちは、誰も2人を幸せにできませんでした。気付いたときには何もかもが遅かったからです。

だから後悔する前に、子どもたちが苦しむ前に、その元となるものを断ち切らなきゃならない。

そのことを、どれだけの大人たちが認識していますか?

 

シングルマザーへの偏見、学校という狭い社会における権力勾配、女性の管理職が背負うものなどといった、「大人たちの事情」があるのももちろんわかります。

でもそれは、子どもたちの苦しみとイコールで結べるものなのでしょうか?相対化することで、見えなくなるものはないでしょうか?

 

最初にこれはクィアな映画だと言いましたが、でもこの映画を観てエンパワメントされるクィアな子どもはおそらくいないでしょうし、大人でも打ちのめされる人がいることでしょう。なのでそれについての注意喚起は妥当だと思います。

 

そういう意味ではこれは「LGBTQに特化した映画ではない」でしょうし、「クィア映画ではない」のかもしれません。言うなれば、クィアな子どもたちなど存在しないと思い込んでいる、ガチガチの性別二元論にどっぷり浸かっている「大人たち」に向けて作られたものである、とは言えるでしょう。それも、丁寧すぎるくらいお膳立てされています。2回も3回も、やれ結婚だの、男らしくだの、わかりやすく「何が引き金になったのか」を説明してくれてるんですから。

 

でも、正直なことを言えば

今さら?また?まだそれ?

と感じている当事者やその関係者がいることにも思いを馳せてください。だって、ここ最近のことじゃないでしょ?何年もずっと言われてることだよ。それを「映画」に携わってる人たちが知らないはずないし、「題材」に扱うんならそれくらい知っておくべきでしょ。

さすがにもう、それくらい、わかってよ。

 

映画は、「星川くん」と湊が晴れやかな青空の下を元気よく駆けて行って終わります。その先がどこへ繋がっているのか、明示されてはいません。

 

今日も日本列島は雨が降り続いています。

空に虹がかかるのは、まだまだ先のようです。

 

 

 

作品情報
  • 監督 是枝裕和
  • 脚本 坂元裕二
  • 音楽 坂本龍一
  • 英題 MONSTER
  • 上映時間 125分
  • 製作国 日本
  • 製作年 2023å¹´
  • 出演 安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス【映画・感想】わたしとあなたと、わたし「たち」の宇宙(5.0)

Everything Everywhere All At Once [4K UHD]

あらすじ

コインランドリーを営むごく普通の主婦エヴリンは慌ただしい朝を迎えていた。国税庁へ行って確定申告を終えなければならないし、旧正月を祝うパーティーの準備もしなくてはならない。父親の世話も必要だし、だのに夫は頼りない。しかも娘は断りもなくパートナーを連れてくる……。

何もかもうまく行かないそんな日、突如宇宙を破壊しようとするヴィランがマルチバースからやってくる。わけのわからぬまま宇宙の命運を託されたエヴリンは、他のバースの自分と繋がり、その能力を生かして刺客たちと戦うことになるが……!

 

 

去年の年間ベストにも入れた作品で、めちゃめちゃ大好きな映画です。でも、ブログにするかどうかは迷っていて、まぁ詳しい人がちゃんと書いてくれるだろうし、別にいっか~と下書きに適当に書いて眠らせておいたんですよね。

 

ただ、最近また鑑賞して、そして最近の日本の酷い有り様も鑑みて、これはちゃんと文字に起こしておかないといけないのでは?と半ば使命感にかられてこのエントリーを書いています。

 

 

この国で生きる若者たちへ

まず、言っておきたいのは、この映画がとっても「クィアな」映画である、ということ。

 

ミシェル・ヨー演じる主人公の娘ジョイ(ステファニー・スー)はレズビアンで、女性のパートナーがいるんですね。実はそのキャラ設定がこの映画の構造に大きく関わってきます。

 

ジョイは母親から自身のセクシュアリティ、そして自身の見た目について(真意はそうではないのだけれど、そうとしか受け取れない)やんわりと否定されているような言葉を投げ続けられてる。その「やんわり」は決して強いパンチではないけど、長いことさらされたことでジョイは完全にすり減り、失望しています(前半のこれらのシーンは自分のことを重ねちゃってまじつらかった)。

 

そんなジョイにできることは、自分を暗に傷付ける母親と距離を取り、自分の「宇宙」を守ることだけ。

だけど、もし、すべての「宇宙」を作り替えるような力を手に入れることができたら……。ジョイ目線で見れば実は本作はそんな話でもあるんです。

 

わたしはこの映画を、この国で生きることに絶望を抱えている若い人たちに観てもらいたいと思いました。同性婚法制化も実現できない上に、酷い言葉を平気で投げつける大人たちがいる、この日本という国で生きる、クィアな若者たちに。

この映画は、あなたたちの存在そのものが「宇宙」を何よりも美しく尊くしている、と説いています。あなたたちは何かに制限されたりはしない。何にでもなれるし何だってできるのだと。

 

そして、大人たちにもちゃんとメッセージを送っています。このユニバースを彼らが絶望せずに生きる世界にするためには、わたしたちの行動にかかっているのだと。諦めと絶望は片道切符でもあって、崖を転がる石のように些細な一押しで簡単にそちら側へ落ちてしまうことがある。それを止めることが絶対に大事で、そのために必要なことについて語っている映画だと、わたしは思いましたよ。

 

……てかね、これほんとものっすごく変な映画で、何やってんだか全然わけがわからない、カオスな映画なのね。ぶっといディルドが出てきたりケツに何かを率先して突っ込もうとする奴らがいたり鼻で虫を吸い込んだり、バカバカばかしいギャグと下ネタがぶちこまれて、何回か観てるけど、観るたびに「いやまじで何やってんの?」て思う(笑)。


f:id:minmin70:20230303092954j:image『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 © 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

(これなんてめちゃくちゃキメ顔してるけど、実際は指と指の間を紙で切ろうとしてるだけだからね。バカなの?最高)

 

ユニバースを跨ぐにはそういう「逸脱した行動が必要」って設定なんで(これも、視覚的にもテーマ的にもほんとうまいよなぁ)、ま、それももちろん面白くて見所ではあるんだけど、ただ、この映画はそういう画的なカオスさは本質ではなくて、そこにばかりフォーカスされてるのも違うんじゃないかって思って。やっぱり大事なところは言っておかないとなぁと思ったの。

 

「バースジャンプ(他のユニバースの自分とコネクトする)」はある意味でニューロダイバーシティ的な側面もあって(裏設定ではエヴリンはADHDだとされている)、中年女性の危機的なことや、鬱やメンタルヘルスについての話でもあるし、アジア系移民の物語でもある(後述)。そして、親と子、夫婦、家族という極小単位の「宇宙」の物語を、壮大な多元宇宙世界を使って描いてるとも言える。

 

そんな感じでレイヤーが幾重にもわたるので、人によってそれぞれに共感できるところがおそらくあると思うんだけど、今のわたしはとにかく、「この映画はクィアな映画だよ」ってところをまずは強調しておきたいなと思います。

この作品で救われる人がきっといると、わたしは思っているから。

 

 

「宇宙」と「宇宙」の衝突

さらにエヴリンとジョイの場合は、移民1世と2世の確執、という問題も横たわっている。アメリカで生まれ育った娘にとって、親の故郷やその文化に対するシンパシーは希薄なわけで、そうなると、出自にまつわるアイデンティティを親子で共有できない。

もちろんこれも親子の確執ものとしてよくある設定ではあると思うんだけど(最近だと『ミナリ』とか『フェアウェル』とか。全部A24だな。あと、言語の翻訳を子に頼る描写は移民親子の映画でよく見るね……あるあるなんだろうな)、ただ他の作品と決定的に違うなと思ったのは、それらいくつかの要素が複雑に入り交じって展開していくということ。そしてそれを「親の目線」から描いている、というところが特にいいなと思った。理解することを子に押し付けてないんだよね(『私ときどきレッサーパンダ』はそこが危うかった)。

エヴリンはジョイを理解できない。タトゥーも、ゲイであることも、アメリカ人としての生き方も。なぜならそれらはエヴリンの「宇宙」にはないものだから……。そんな親であるエヴリンを主役にすることで、じゃあ、理解できない娘の「宇宙」に親はどう入っていくことができるのか?という話になっていく。

 

そもそも、エヴリンも厳格な父との間に確執を抱えていて、結局そこで生じてる痛みを娘との関係性でも再生産してしまってるんですよね。そのことがまた、地味につらい。

 

そこで夫のウェイモンドの出番。一見すると、全く頼りなさげで(アルファの時はカンフーマスターでめちゃめちゃ強い)、でも最後の章で何よりも最強の武器を持ってることがわかってくる。

最初はなんでこんな夫を選んだんだろう?って思ってたエヴリンも、いろんなユニバースを行き来して、彼のいる人生がかけがえのないものだと気付いていく。

あらゆる人生を肯定し、「わたし」と「わたしたち」を肯定していく……。その過程が本当に感動的で、わたしは自分の人生も肯定された気がして、何度も泣いてしまった。

 

この映画で最終的に行き着くのは、人と人の繋がりの可能性だと思っています。

確執ある親と子の場合だけじゃなくて、どうしてもわかりあえない人同士がいて、衝突してしまった時、どうすればいいんだろう。

戦う?

離れる?

それ以外にも選択肢があるよ、と言っているのが、本作なのです。また泣けてきたな……

 

 

すべての映画は政治的な映画

あとね、ダニエル・クワンがインタビューで「すべての映画は政治的な映画である」と言っていて(A24史上No.1ヒット作『エブエブ』はアジアでどう受け入れられるのか。監督ダニエルズに訊く | ブルータス| BRUTUS.jp)、なんて心強い言葉だろうと思ったの。

 

「社会的」な問題を描きながら「ただのエンタメ」と逃げるような言葉を放つ作り手もいる中で、クワン監督のこの言葉のなんて誠実なこと。アジア系の俳優やクリエイターを集めて、2022年に大きなムーブメントを巻き起こしたことも、とても意義深いことです。それがまた「アメリカの」アカデミー賞で大本命なんて言われるような作品になってるんだよ!……いや、そこは大丈夫?って感じだな!(凄いことです)

 

実際この映画、予算2500万ドルくらいだし、大作!って扱いでは全然ないんだよね。むしろインディーズの、小ぢんまりした映画という印象。ほんと、学園祭で仲間たちとワイワイ作ったみたいなノリと熱量に溢れてる。

(ちなみにわたしが一番本作に近いと思ってる映画は『ナイトシューターズ 処刑遊戯』なんだけど……賛同者がいない)

 

 

 

エヴリンはADHDの設定だったと前述したけど、どうやらクワン監督もこの映画の制作の過程でカウンセリングを受けてADHDだと診断されたそう。そのことで自分の過去を振り返ることもあったらしくて、どことなくセラピー的な要素を感じるのはそれが理由でもあるのかなって思った。

ちなみにクワン監督の方がアイデアマンで、シャイナート監督がそれを現実的に実現できるか予算を調整したりする役割を担ってるらしく、そういう特性を生かした共同製作が、コンビ監督ならではって感じで、なんか素敵だよね。

さらに言えば、コンビであるが故の衝突と和解が実はこの映画のベースにあるんじゃないかっていう気もしてる。そういうのをほんのりと感じられるところも、わたしがコンビで活動する監督が好きな理由でもあるんだよね(Jベンソン&Aムーアヘッドとかさ)。

 

 

それから、さっきのインタビュー記事で「私たちは個人主義に向かうのではなく、どうすれば大きな方法で世界を変えることができるのか、どうすれば小さな積み重ねによって創発的な変化を生み出すことができるのかについて考えなければなりません」(シャイナート)とも語ってて、なんか、すごく感動しちゃった。

 

わたしは最近、毎日のように無力さを痛感していて、つまりそれは、簡単に世界を変えられないってことなんだけど。垂れ流され続ける差別的な言説を止めることもできない。それによって傷つく人たちが大勢いることも知っているのに、ただ流れていくのを眺めているだけ……。

 

でも、そんなことでいいの!?って思った。

わたしの存在は確かにちっぽけだけど、何もできないわけじゃないじゃない。できることからはじめようじゃないか。その小さな積み重ねがきっと、この宇宙を形作る。

この映画を観て、もっと自分の力を信じようと思ったし、もう少し「宇宙」を信じてみようって思った。

 

わたしの味方は、わたし「たち」だからね。

 

(超余談:わたしはハリー・シャムJrさんが大好きなので、ウィンクのシーンで「うひゃ~///」となって心臓が止まりそうになりましてね、……ってもう別に誰も聞いてねーな!!)

 

作品情報
  • 監督 ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
  • 脚本 ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
  • 音楽 サン・ラックス
  • 製作総指揮 ティム・ヘディントン、テリーサ・スティール・ペイジ、トッド・マクラス、ジョシュ・ラドニック、ミシェル・ヨー
  • 製作国 アメリカ
  • 製作年度 2022å¹´
  • 出演 ミシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クァン、ハリー・シャム・Jr、ジェームズ・ホン、ジェイミー・リー・カーティス

 

イニシェリン島の精霊【映画・感想】戦争は男の顔をしている、のかもしれないし違うかもしれない★★★☆(3.5)

イニシェリン島の精霊 (オリジナル・スコア)

あらすじ

アイルランド内戦が激化する1920年代。戦火の被害が及ばない小さな孤島では、気の良い男パードリック(コリン・ファレル)が親友だと思っていた男コルム(ブレンダン・グリーソン)から突如距離を置かれて戸惑っていた。理由を訊ねると「嫌いになった」と言われるが、まったく思い当たることがない。

酔って不用意なことを言ったのか?

気に障ることをしてしまったのか?

悶々としながらも関係修復をはかろうとするが、その行動は思わぬ事態を引き起こす。

 

 

『スリービルボード』のマーティン・マクドナー監督作。賞レースでも話題になっていたので期待していた人も多いのではないでしょうか。

かくいうわたしも楽しみにしていた映画で、前情報をほとんど入れずに観てきましたよ。というわけで最初の感想は……

 

へこんだ~ーー!!!

まじでへこんだ。(後述)

 

前作同様、今回もボタンをかけ違えてしまった人たちの危うい関係性を、独特のユーモアを交えて描いていましたね。

 

戦争や内戦のような大きな衝突を対個人間の「いさかい」という比喩と並列で表現した作品て他にもいろいろあると思うんだけど、これは「いさかい」の発端が戦争とはほとんど関わりがなく、それぞれの陣営も「戦場」とはかけ離れたたところにいる、というのが肝なのかなと思います。

アイルランド内戦を題材にした映画というと、ケン・ローチの『麦の穂をゆらす風』なんかを思い浮かべるんだけど、ただ本作は内戦含めてアイルランドのことに関してはほぼほぼ舞台装置でしかなくて、かなりフワッとしてるなーという印象を持ちました。

 

麦の穂をゆらす風 (字幕版)

麦の穂をゆらす風 (字幕版)

  • キリアン・マーフィ
Amazon

 

どうやらマクドナー監督、ご本人はイギリスでお生まれのようなのですが、ご両親がアイルランドご出身で、過去にもアイルランドの架空の島を舞台にした戯曲を何本か書かれているそうです。特に「アラン諸島三部作」と呼ばれる作品郡は、愛猫を殺されて暴れる主人公が出てきたり、障がい者の青年が登場する作品などがあるようで、本作にも通じるお話みたい。気になる!

 

邦題にある「精霊」は原題では「バンシー(Banshee)」で、もともとはゲール語で「女の妖精」という意味(女の意の"bean”と、妖精の意の”sidhe"がその名の由来)。ケルト神話やスコットランドの伝承に登場し、死人が出る家の前ですすり泣くとか、死ぬ予定の人の衣服を川で洗うとか、いろいろ言い伝えがあるようです。映画では川の近くに暮らす老婆がその役を担っていましたね(アイルランドではバンシーは少女の姿をしているという伝承もある)。

 

ちなみにバンシーはアイルランド妖精の代表格「レプラコーン」と同様、映像作品にもよく登場してて、『スクリームオブバンシー』みたいなB級ホラー作品もあるし、『アメリカンゴッズ』では葬儀屋の前で泣き女(大声で泣いて葬式を盛り上げる?女性のこと)の真似事をしていたり、最近だとNetflixドラマ『インパーフェクト』でメインキャラの一人が声で攻撃する能力を「バンシー」と表現していました。

 

 

 

さてはて、そんな"女の"妖精である「バンシー」をなぜタイトルに持ってきたのか?そこにどんな意味があるのか?ということを考えた時に頭をよぎったのがこの本。

 

 

わたしとしては、そういう話なのかなーと思って観ました。

 

 

 

以下ネタバレありですが、例によって例のごとく、映画の話はあんまりしていません。

 

 

 

 

人を嫌うということ

おそらく、多くの人がそうだと思うのですが、誰かを嫌いになる時って、ある日突然「こいつ嫌い!」ってなるわけじゃないと思うんですよね。もちろん最後の一押し、みたいなものがあったりするとは思うんですけど、ある程度の「なんだかなぁ……」の積み重ねの果てに「はい無理ー!」が来るもんじゃないかなって気がするんです。

 

映画ではコルムの「なんだかなぁ……」が映されることなくいきなり「はい無理ー!」からはじまるのでパードリック同様わけがわからないんですが、徐々にパードリックの行動が見えて、人柄というか性格というか人間性みたいなものがわかってくる。

 

ただそれがイコール嫌いに繋がるかどうかは人それぞれというところもあるんだろうけども、ただわかるのは、少なくともコルムはパードリックとの「違い」をはっきりと認識してるってことなんですよね。

パードリックにはそれがない。

そこにイライラさせられるというのはね、めっちゃわかるなって気がするの。

 

例えば、パードリックの方が幾分か若いし健康だし、一応安定した職があって身の回りの世話をしてくれる妹もいる。内戦にも我関せずで「どっちがどっちかわからない」なんて言えるし(これに関しては映画全体がそんな空気…)、パブでお酒飲んで帰って、妹が作ってくれたご飯食べて妹が洗濯してくれたパジャマ着て妹があつらえてくれたベッドで寝る。

そのありがたみを彼はわかってないし、それが「当然」であるとも思ってる。

 

「お前は退屈だ」「音楽を作る(自分の)時間が欲しい」というコルムの言い分は嘘じゃないけど、わたしはそこは本質ではない気がして、おそらくパードリックのそういうお互いの「違い」みたいなものをまったく意識することなくこちらの領域にまで入ってくるところが嫌だったのかも、だとしたらそれはなんとなくわかるなーって思った。

でもそれを指摘したところで、こういう人は思い至るとか反省するなんてこと多分ないよね。そういうのを、「友だちなら」「家族なら」やって当然、受け入れて当然、って思ってるような人は特にね。

 

もしかしたらコルムはこれまでにもやんわりと「なんだかなぁ」サインを出してたのかもしれない。でも気付いてもらえなかったから言っても無駄だろうって感じて、「はい無理ー!」を発動するしかなかったのかもしれなぁ、とも思う。

いろいろやり過ぎちゃったことは否めないけど、そこを責めることはできないなぁ、なんて思ったり。

 

 

人に嫌われるということ

一方で、わたしはどちらかというとパードリック側だなってこともはっきりと認識してしまったというか。

だからね、めっちゃへこんだの。多分、あたい知らず知らずのうちに、コルムられてたなーって思った(動詞にするな)。

 

正直いうとわたしうわべだけの人間で、自分でもわかってるくらい退屈だし、いろんなことに無自覚だし、自分本意で底意地が悪い。それでいて他人からはよく見られたくて優しい振りしたり、最初はへらへらのらりくらりでなんとなく乗り切れるけど、結局ボロが出て関係は長く続かない。

大人になってから交友が広がらないのも昔からの友人が少ないのも結局は自分に原因があるんだろうなーってことを、この年になってようやく理解してきたような感じです。

でもさ、自分がそういう人間だってわかってても、ずっとそうやって生きてきたから今さらどう変わったらいいのかわからないんですよ。

 

それにね、「退屈な人間」だから何にも考えてないかっていうとそんなことはないわけで。色んなことを隠してへらへら繕ってる人もいるわけですよ。

バリー・コーガン演じるドミニクはその言動のせいで島民からバカにされてるけれど、内情実は父親からの暴力にさらされていて、その結果なのかどうなのか、一番不幸な最後を迎えてしまう。

多分そういうドミニクにとってパードリックは「友だち」だったんだろうと思う。唯一心を許せる人だったんだと思う。うわべだけでも、そういう関係が作れる人っていうのは、「良い人」には違いないと思うんだよね。

 

だからこそ、嫌われるのはつらい。

そう、つらいんですよ。それが自分の価値にも直結するから。

 

コルムは多分、パードリックのそういう性格をわかってるんだよね。だから彼を傷つける分、指を切り落とすことで自分のことも傷つける。それは自分の内面の傷の可視化でもあるんだけど、それと同じくらい相手の傷の可視化でもあるんだと思う。

で、それがパードリックにとってきついことだってことも同時にわかってるんだよね。

 

うわぁん!つらい!

お互いその手前で止めればいいのにって本人もわかってるし端から見てる側も思うんだけど、意地の張り合いというか引き際を見誤ってなのか、最終的にのっぴきならないところまで行ってしまう。

その結果として、お互いに大きなものを失う。残ったのは虚無だ。

 

神父(なんか嫌なやつ)が「神はロバの死なんて気にしない」と言ってたけど、ロバのことを気にしない神様なら、人間の生き死にだって気にかけないとわたしは思うんだ。

 

 

「仲違い」という比喩

アイルランド内戦を背景としていることもあって「かつての仲間同士がいがみ合う」みたいな話として見ることもできますが、ただ、この2人の「仲違い」を戦争の比喩とするのは果たして適切なのかという問題はある気はする。

 

作中ドミニクの父親でもある警官(クズ)が「以前は敵はイギリス人だったからわかりやすかった」と語るセリフがあったけれど、元々はイギリスからの独立を目指していたアイルランド民。でも英愛条約(独立戦争終結とアイルランド自由国の建国が取り決められた)によってアイルランドが事実上イギリスの統治下に置かれるとなったことで、独立強硬派(IRA)と穏健派(自由国)で対立してしまいました。

 

結果的に自由国側が勝利し、北アイルランドは取り残される形でアイルランドは独立します。IRAは90年代の映画でも悪役のテロ組織として度々登場してましたね(ブラピとハリソンフォードの『デビル』とか)。1998年にベルファスト合意がなされ、現在にいたります。

 

そんな経緯があっての「内戦」と「仲違い」を同列な「いさかい」としても良いものなのか?

国と国、思想と思想、宗教と宗教、そういった「違い」から来ると衝突や対立が、男の仲違いと本質的には同じだなんて言ったら、それじゃあまりに他人事みたい。でもこの映画は全体的にそんな感じがするんだよね。

中立やどっちもどっちを装ってどこまで傍観者でいられるか、みたいな。

もしかしたら、物事には「他人事」で済ますべきものもあるよってことなら、それはそう、としか言えないんですが。

 

てかね、同じ島に住んでて「絶交」なんてどだい無理な話でさ、じゃあもう引っ越すとかして物理的に距離を置けばいいじゃないか、と短絡的に思ってしまうんだけども。でもそんなこと多分あの2人は思いいたることもないよね。

あの島にいて、誰も幸せになれないとわかっているのは「考える女」であるパードリックの妹のシボーンだけ。川向こうに立つ老婆=バンシーに自分の将来を見た彼女は島から出る決心ができたけど、コルムもパードリックもそれができない。彼らは互いに重なりあう自分の「領域」から出ようとはしない。それが衝突の原因であっても。

最適解かどうかはさておき、それができていれば多分、パードリックとコルムみたいな「いさかい」は起こらないのかもしれない……(あらゆる「いさかい」がそうであるとは、わたしは思ってはいないけれど)。

 

ラストシーンを観ながら、わたしにはこの映画は「友情の終わり」ではなく、「争いの始まり」の話だと思った。ラストカットは島の俯瞰で終わるけど、それはきっと、「ここからこの島で何が起こるのか?」を暗示しているようで。

あの後きっと島では、どっちの側につくのか島民同士が分かれはじめ、噂話、嫌がらせと暴言の応酬、悪意が広がる。始めた側とは無関係なところで新たな火種が生まれ、また暴力が悲劇を生み出すだろう。

それを「戦争」の比喩ととらえるなら、確かにそうなのかもしれない。

 

ただ、映画の一番良いところは終わりがある、ということ。現実は、そうはいかないからね。

 

 

 

 

作品情報
  • 監督 マーティン・マクドナー
  • 脚本 マーティン・マクドナー
  • 音楽 カーター・バーウェル
  • 製作総指揮 ダニエル・バトセク、オリー・マッデン、ダーモット・マキヨン、ベン・ナイト[製作]
  • 原題 THE BANSHEES OF INISHERIN
  • 上映時間 114分
  • 製作国 イギリス/アメリカ/アイルランド
  • 製作年 2022å¹´
  • 出演 コリン・ファレル、ブレンダン・グリーソン、ケリー・コンドン、バリー・コーガン

 

映画主婦的2022年新作映画ベストテンとかいろいろ振り返り

皆さまいかがお過ごすですか。忘れられたブログの墓場へようこそ(苦笑)。

 

いやー、今年はほんと忙しくて全然書けてない!けど毎年恒例の年間ベストだけはなんとしてもやらないと!!!

というわけでね、弱小ブロガーのわたくしめも皆さんに倣って映画ブロガーらしく年間ベストの発表とかしちゃったりなんかしちゃったりしますよ!

 

これまでの年間ベストはこちら。

 

 

 

 

 

 

ちなみに今年観た新作映画は200本でした。ただ最近は観たそばから忘れていくことが多くて(老化言うな)、できれば来年は150本くらいで抑えておきたいところ。多分そのくらいがわたしの脳のキャパ的にちょうどいいんだよ……。

 

  • 【選定基準】
  • 2022年に日本で一般公開(ビデオスルー・動画配信含む)された映画を対象としています。
  • 邦画洋画アニメ実写ジャンル等は不問です。
  • ブログ記事における★評価は絶対評価、ランキングは相対評価です。★3の映画が★4の映画より上にランクしていることもあります。要はわたしの★なんて気にしてくれるなよ、ってことです。

(今年観た主な新作映画たち)


というわけで、読んでも誰も得しない、映画主婦的年間ベストテン、さっそく~どうぞっっ!!!m9っ`Д´)ビシィッ

 

 

10位 謝ったって許してやるもんか

リベンジ 鮮血の狩人

REVENGE リベンジ 鮮血の狩人 [DVD]

男二人組に襲われた女性が森に逃げ込み本能のままに攻防を繰り広げる捻りのきいたリベンジスリラー。

 

上半期のベストにもしたんですが、この怪作っぷりはなかなか出会えないよね。ほんと好き。

 

わたしの感想はこちら。

 

 

9位 この映画を待っていた人たちへ

そばかす

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アセクシュアル/アロマンティック(他者に性的/恋愛的に惹かれない)の主人公を『ドライブ・マイ・カー』の三浦透子が演じるヒューマンドラマ。

 

今年はこれまでになく、「アセクシュアル/アロマンティック」の表象が充実した一年だったのではないでしょうか。Netflixドラマ「インパーフェクト」「ハートブレイクハイ」や日本のドラマ「恋せぬふたり」などで、メインキャラとして「アセクシュアル/アロマンティック」を自認するあるいは自覚していくキャラクターが登場しました。

 

そんな1年を締めくくるのが本作。

正直なことを言うと完璧とは言い難い作品なのですが、この映画が作られたことの意義は大きいと思います。今後邦画でもさまざまな「アセクシュアル/アロマンティック」のキャラクターが生み出されることを期待しています。

ある映画館さんの紹介ツイートが感動的だったので、のせておきますね。

 

 

8位 おはようと、さよならと

おやすみオポチュニティ

おやすみ オポチュニティ

2004年に宇宙へと旅立った火星探査車「オポチュニティ」と「スピリット」。その偉大な功績と冒険を紐解く。

 

今年はドキュメンタリーが個人的にアツくて、SNSでも話題になった『画家と泥棒』、韓国のデジタル性犯罪の首謀者逮捕までを追った『サイバー地獄』、ある不妊治療医師の闇を暴く『私たちの父親』、タイ洞窟事故のドキュメンタリー『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』と『奇跡の13人』も見ごたえがありました。アニメーションの『FLEE』もドキュメンタリーの分類になるのかな。

 

中でもオポチュニティは突出して大好きでしたね。いやー泣いた泣いた。何がいいって、毎朝(地球時間ではなく火星時間)「目覚ましソング」の選曲が良すぎる!思わずプレイリスト探しちゃったよね。

 

 

7位 (すべての)子どもに責任を持つということ。

カモンカモン

カモン カモン[DVD]

叔父さんと甥っ子のふれあいを通して、「子ども」に対して当事者性を持つことの大切さを描く。

 

これはめちゃくちゃ泣いたし、本当に大好きな映画。伝わってきたメッセージがなんていうか、わたしが目指していることとも重なって、いろんな意味で感激した作品でした。

一番好きなのはホアキン・フェニックス演じる叔父が甥っ子くんとレストランでご飯食べてる時に「アイスの前にブロッコリー食べなさい」ってやるシーン。あそこで「テッテレー!叔父さんは当事者性を獲得した!」ってなったよね(大笑い)。

 

子どもを育てるとか守るとか、彼らのために何ができるのかを考えるっていうのは父性や母性とかを越えた「社会正義」みたいなものだとわたしは思っているのね。子どもを持つ持たないに関わらず、大人が次の世代に責任を持てるような社会が、わたしは健全だと思っています。

そういう大人になりたいなと改めて思える映画でした。

 

 

6位 記録は記憶、時間は思い出

アフター・ヤン

After Yang [Blu-ray]

一緒に暮らしていたロボットが故障したことから始まる、生と死、家族、愛、そして命と記憶の物語。

 

何がいいとかどこが好きなのかとか、そもそもどういう話なのかとかもうまく言えないんだけど、これは、見終わった後、世界が変わって見えるタイプの映画でしたね。まさにアフター「アフターヤン」。

ヤン役のジャスティン・ミンくんも素晴らしかったね。もうすっかりファンよ(チョロい)。

 

 

5位 クズ野郎はどんな時でもクズ野郎

バーバリアン

バーバリアン (字幕版)

民泊のダブルブッキングから見知らぬ男性と一晩同じ屋根の下で過ごすことになってしまった女性。しかし最大の問題は家の方にあったからさあ大変。

 

もうさいこう。先の読めない展開と有無を言わさぬライド感。複数の話が一つに収斂していくストーリーテリングの巧みさも相まって、わけがわからないうちに引き込まれちゃう。舞台がデトロイトの寂れた住宅街っていうところもいろんな想像を掻き立てられますね。同じ場所に盲目のタイエキ軍人がいるかと思うともう気が気じゃないよね(それ違う映画)。

 

あとはもう、ジャスティン・ロングの徹底したクズっぷりね。ジャスティンさんにはわたしから今年の「最高クズ賞」を贈っておきます。

 

 

4位 生も死も、現実。

ナイトハウス

ナイト・ハウス (字幕版)

夫の自殺を目の当たりにした女性がその死の真相を追ううちにこの世ならざるものとの対峙を余儀なくされる。『ザ・リチュアル』のデヴィッド・ブルックナー監督作。

 

この監督さんの死生観というか、あの世とこの世観みたいなものが個人的にはとてもしっくり来て、こういうの好きー!ってなったやつ。静かなホラーなんだけど、壁や家具を使ってトリックアートみたいに人影を浮かび上がらせたり、『透明人間』(2019)以上にユニークな透明演出があったりと、見せ方のアイデアが効いてる。

 

あと、主演のレベッカ・ホールが良すぎたね。夫が目の前で死んで悲しみより怒りが前に出てて、投げやりで危なげででも弱々しくて……っていう複雑なキャラクターをうまいこと演じてました。

今年はティム・ロスと共演した『Resurrection』ってホラー?スリラー?にも主演してるんだけど、この映画のレベッカさんもすごく良かったなぁ。

なんかもうすっかりファンになっちゃったので、来年は彼女の過去の出演作追っていこうと思ってる。そうですわたしはチョロい女ですよ(えっへん)。

 

 

3位 映画を撮る、ということ

NOPE/ノープ

NOPE/ノープ(字幕版)

父親が不可解な死を遂げたことから上空にあるUFOの存在を確信した兄妹は、その撮影を試みる。

 

映画を観て、こんなにワクワクしたのは久しぶりかもしれないって思った。完成度、メッセージ性、映像、その全てにおいて完璧な映画だと思います。それは作り手にとって「映画で何を伝えるか」が明確だから。

ジョーダン・ピール監督は映画を撮ることの特権性に自覚的で、それを使って自分は何ができるのかをを考えてる人だと思います。そういう姿勢が特に色濃く出ているのが本作だと思いますね。「Gジャン」の見た目もとても好き。

 

わたしの感想はこちら。

 

 

2位 あなたたちを抱きしめる

三姉妹

三姉妹 [DVD]

離れて暮らす三姉妹の現在と、彼女たちを未だ苦しめる過去。その繋がりは呪縛であり、連帯であると解く。

 

わたしに姉妹はいないのだけれど、この映画の三姉妹がわたしの姉妹だと思った。彼女たちがもしそばにいたら、抱き合ってその悲しみやつらさを分かち合えるはずだし、そうやって生きていきたいと思う。とても大切な映画です。

 

 

1位 これは、わたし「だけ」の映画

セイント・フランシス

映画パンフレット セイントフランシス

30歳独身女性がナニーとして働き始める。少女とその家族との交流はその人生に希望をもたらしていく。

 

時々「これはわたしの映画だ!」っていうやつ、あるじゃないですか。これはね、「わたしだけの映画だ」と思ったんですよね。そしておそらく、「あなただけの」映画でもあると思います。

見終わった後、「あぁ、わたしはずっとこういう映画を待っていたんだなぁ」と思ったし、きっとこれから先のわたしの人生に寄り添ってくれる作品だと思いました。

円盤が出たら買うつもりです!

 

 

日本未公開映画ベストテン

未公開映画は去年より少し多い42本観ました。今年は大好きな監督の新作や好きな世界観の作品に出会えましたね。

 

1位 The Innocents

 

超能力を持つ少年少女の残酷な日常。

今年の圧倒的1位。観たのは1月の結構最初の方だったと思うんだけど、思い返してもこれ以上「面白い!」と思えた映画も、「なんて映画なんだ!」と心を掻き乱された映画もなかったです。

 

子どもが主体の作品で、とにかくその無邪気な残忍さにフォーカスしてるので、個人的にはそういうのは観たくないんですよ。でも、先が気になって気になって……きつい!つらい!でも観たい!みたいな二律背反的な感情の中で見せられた映画でしたね……ほんと、すごい作品だと思います。

監督のエスキル・ヴォクトさんはトリアー甥の『テルマ』で脚本を手掛けた方ですね。

 

ちなみに、猫が酷い目に合うシーンがあるので苦手な人は要注意です。

 

2位 Everything Everywhere All At Once

3月に公開が予定されていますが、語りたかったからランクインさせちゃった!

経営の苦しいコインランドリーを営む人生どん底のミシェルヨーさんが、マルチバースの自分を行き来しながら確定申告と家族の和解を試みる……というあらすじからして意味不明だけど、ほんとそういう話なのよ!

 

今年観た映画の中で一番カオスな映画なのは間違いなくて、「何じゃこりゃ!」と大笑いしてるうちに気付いたら大泣きしちゃってるというね。心の中もカオスよ。

時々「あの時ああしていたら」とか「わたしの人生ってなんなんだろ?」なんて思ったりするじゃん。で、その先にあるのがマルチバースだ、っていうのがこの作品なんだけど、そのあらゆる可能性の人生を肯定することが、実は世界を救うことでもあるという話にもなっていくんだよね。そこにものすごく感動しちゃった。

絵面は『スイスアーミーマン』のダニエルズ監督らしくほんとバカバカしいんだけど(予想以上に超下らない下ネタがあるから苦手な人は気を付けて!わたしは爆笑したけど)。

 

賞レースでも話題になってる作品なので、おそらく来年の年ベスにいれる人もたくさんいることでしょう。わたしもまた映画館で観るつもりです。IMAXで!

懸念は、我が推しのハリー・シャムJr.さんが出演されているのでスクリーンを直視できるかということ……想像しただけで心臓が止まりそう。今から鍛えておかないと!(は?)

 

3位 Something in the Dirt

 

同じアパートに暮らす2人の男が陰謀論に傾倒していくSFスリラー。

 

大好きなコンビ監督、ジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッドの最新作。パンデミックのロックダウン中に「友だち」と作ったと語ってて、すごくミニマムな作りなんだけど彼ららしい壮大さもある映画になっています。

今年はジェームズワン製作のNetflixドラマシリーズ「アーカイブ81」、マーベルの「ムーンナイト」「ロキ」といった大作にも参加して、コンビにとって飛躍の年だったとも思うんだけど、これからも変わらずにこういう規模の作品を「2人で」作っていって欲しいなと思いました。これからも追い続けていきますよ!

 

どうやらクロックワークスさんが配給権を獲得しているみたいで、時期は未定ですが日本でも公開の予定があるみたいです。

 

できればもう一回観て、ブログも書きたい(予定は未定……)。


4位 Vesper

 

荒廃した地球で生きる少女の未来と希望。

今年の最高世界観大賞。生態系が狂い、奇妙な菌類や動植物が息づいている。こういうのを「バイオパンクSF」というそうですね。

わたしが特に感動したのはラストです。科学技術は何のためにあるのか、その希望を描いてる作品だと思います。

 

こちらもクロックワークスさんが配給権を持っているそう。来年には公開されるのかな?楽しみですね。


5位 Watcher

 

異国の地で夫と暮らすことになった女性。向かいのアパートの住人からストーカーされてるかも?と思い始め夫や警察に訴えるが……。

 

なんだろう。程度の差こそあれ、こういうのってほとんどの女の人が経験してるんじゃないかと思う。「あれ?」って違和感があっても「気のせいかな」「失礼かな」とか思ってモヤモヤしたままやり過ごす、みたいなの。

そういう「嫌な感じ」の表現がめちゃくちゃ巧すぎて、怖すぎて泣いちゃった(震え)。ホラーらしい演出はほとんど最後の方にしかないんだけど、個人的には今年一番怖かった映画です。

 

6位 Piggy

 

体型をからかわれる女の子がひょんなことから殺人鬼と接点を持つ。

 

いろんな意味で刺さった映画でした。

わたしの感想はこちら。


7位 Saloum

 

金塊を奪った傭兵が潜伏先で怪異に襲われる、っていう『フロムダスクティルドーン』や『スガラムルディの魔女』みたいな、ジャンルまたぎの映画なんだけど、セネガル映画っていう珍しさもあって、とても面白かった!

 

一方でアフリカの血生臭い戦争の歴史にも触れられていて、いわゆるエクスプロイテーションな映画ともまた違う雰囲気でした。


8位 She Will

 

かつての映画女優が休息のために訪れた土地の魔女の魂とシンクロしていく、フォーク系魔女ホラー。

 

雰囲気と撮影が抜群。去年観た『レリック 遺物』のような趣きもあって、とても好きな映画でしたね。


9位 Strawberry Mansion

夢の中の税金を徴収する男が、夢の中で恋に落ちる。

 

アナログでキッチュな世界観がかわいいファンタジーSF。すごく好き!

 


10位 Catch the Fair One

 

ネイティブアメリカンの元女性ボクサーが妹を誘拐した人身売買組織に近づいていくスリラー。

 

ネイティブアメリカンの女性が犯罪に巻き込まれるっていうことで『ウィンドリバー』のような雰囲気もありつつ、ノワールアクションな趣き。正直ラストはうーん……って感じなのですが、振り返ってみると良かったよなぁと思い。

主演のカリ・レイスさんはプロボクサーの方だそう。眼光が鋭い。

 

というわけで2022年はこんな感じ。

他には、新しいヒーローの姿を見せてくれた『ザ・バットマン』、12月に配信されて結局3回も観ちゃった『トロール』、ムキムキマッツが大暴れ『ライダーズ・オブ・ジャスティス』、シングルマザーと姪の逃避行『ドライビングバニー』もとても好きでしたね!

 

あと、ドラマも今年は色々観ることができて、記事を2つも書いちゃった「ハートストッパー」は結局何周したかわからないくらいドはまりしました。シーズン2も今月撮影が終了したそうですからね、楽しみです。

 

そして!今年のわたしの一番の大きな出来事と言えば、映画配信番組「めーぶれ」への参加です!!

こちらは、はてなブログで映画ブログ「小羊の悲鳴は止まない」

を運営されていたレクさん(@m_o_v_i_e_)が発起人となり、5月からツイッタースペースにて配信開始した番組になります。

背骨さん(@sebone_returns)、kikukoさん(@001Angela)、みぎさん(@migi_filmovie)という、ツイッター映画アカウントの方々とお送りしております。そうそうたるメンツに肩身が狭い!恐縮!(泣笑)

 

1月8日(日)の配信では、メンバーで年間ベストを決めます!お時間ありましたら、是非聞きに来てくださいませ~。公式のアカウント(@lamb_club_mb)もフォローしてくださると嬉しいです!

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そんなわけで、来年も素敵な映画に出会えますよーに!

ではでは皆さま良いお年を~(*・ω・)ノ