「胃カメラのおいしい入れ方」連載第2回目です。前回も記しましたが、この連載はビギナーの先生方を対象としています。達人の先生方には何のお役にも立たないかと思いますので、ご容赦願います。
さて、胃カメラをおいしく入れる目的は何でしょうか。
第1には、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が可能な「超早期癌」を発見することです。「早期胃癌が見つかって良かったですね。でも幽門側胃亜全的術です」では不十分だと私は考えます。
私たち胃腸屋の本分、それは「おいしく食べていただくこと」と「楽に出していただくこと」です。つまり、「快食・快便」だと私は考えています。そのためには、今あるそれぞれの臓器の機能を、可能な限り温存できるようにしなければなりません。
癌検診の目的も、「癌を見つけさえすれば良い」とか「進行癌を見落とさないようにする」という時代では、もはやないはずです。より早期に発見し、より早期に診断し、より早期に治療できる時代のはずです。胃癌検診にも内視鏡検査が導入されつつある時代です。ESDが可能な症例のほとんどは無症状です。そして、ESDが可能な病変を造影検査では見つけづらいです。
「胃カメラは『ゲーッ!』『オエッ!』となるからしたくない」
「検査時間が長くなるのはイヤだ」
「あんなにつらい検査なんか、二度とするもんか!」
こう思われることで、ESDが可能な段階を逸してしまうことは実に残念です。内視鏡検査の恩恵を最大限に引き出せるようにしたいものです。
胃カメラをおいしく入れる第2の目的は、近年浸透し始めてきた機能性ディスペプシアの補助診断に役立たせることです。消化管の機能学は他分野と比べてまだまだ遅れていますが、胃カメラで胃腸の機能を推し量ることもかなり可能です。
機能性ディスペプシアの患者さんの中には、適切な診断と処方がなされなかったために、ドクターショッピングをしている方もちらほらおられます。そんな時に、胃カメラでの所見からその病態をプロファイルでき、適切な診断と治療につなげられれば、どんなに喜んでいただけることでしょうか。
本連載「胃カメラのおいしい入れ方」では、検査時間をできるだけ短くするだけでなく、様々な工夫を凝らすことで「超早期癌」を手際よく発見したり、機能性ディスペプシアの診療に役立たせるための工夫をたくさんご紹介します。
ではいよいよ次ページから本論に入ります。
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著者プロフィール
なかじまつねお氏○1992年に信州大学卒業。2012年から丸子中央病院にて消化器内科医として勤務。日本の医療を守るために2008年に設立された医師による団体「全国医師連盟」の代表理事も2011年から務めている。
連載の紹介
胃カメラのおいしい入れ方
年間3800例以上の上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を実施してきた中島氏が、上部内視鏡検査に苦手意識がある医師を対象に、胃カメラを患者においしく飲ませるコツを解説します。目指すは「苦痛の少ない内視鏡検査」。術者の姿勢から「胃カメラの入れやすい顔」の判断法、声掛けのコツ、胃カメラで上手に癌を見つけ出す方法まで分かりやすく説明します。
この連載が本になりました!
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本連載がこのたび書籍化されました。これまで中島氏が分かりやすく解説してきた、患者さんにおいしく胃カメラを飲んでもらうコツをまとめた「スペシャル動画DVD」が付いています。ぜひ日常診療にご活用ください。(中島恒夫著、日経BP社、5184円税込み)
【スペシャル動画のコンテンツ】
(1)経口内視鏡の入れ方 、(2)経鼻内視鏡の入れ方、(3)検体採取の方法
【書籍目次】
(1)検査を始める前に、(2)咽喉頭を上手に通過する(3)食道を観察する、(4)胃を観察する、(5)十二指腸を観察する、(6)私の裏技、 (7)機能性消化管障害の診療を考える、(8)番外編
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