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JAMA誌から
病院到着前にエピネフリン投与された心停止者は生存率が低い
自発循環再開は生じやすいが…、日本の消防庁データの分析結果

 心肺蘇生時に広く使用されているエピネフリン病院到着前に投与された院外心停止者は、非投与者に比べて病院到着前の自発循環再開が生じやすいが、1カ月時点の生存と、機能が良好な状態での生存の可能性は非投与者よりも有意に低いことが明らかになった。九州大学医学部の萩原明人氏らが、日本の消防庁に登録されたデータを利用して傾向スコア解析を行ったもので、論文は、JAMA誌2012年3月21日号に掲載された。

 救急救命士による病院到着前のエピネフリン投与は既に実施されているが、その有効性は明確になっていない。院外心停止者の患者特性は様々で、心停止時に目撃者がいたかどうか、目撃者が心肺蘇生を行ったかどうかや、救急車到着までに経過した時間、病院到着までに要した時間などの条件も多様であるため、有効性を明らかにするには無作為化試験を行う必要がある。だが、実際には倫理的に難しい。そこで著者らは、消防庁が前向きに登録しているデータを対象にして傾向スコア解析を行い、病院到着前のエピネフリン投与による短期的、長期的利益を調べることにした。

 05年1月から08年12月末までに日本で発生した院外心停止例43万1968人の中から、18歳以上で、救急車の到着前に心停止となっており、救急隊員による処置を受けながら病院に搬送された41万7188人(平均年齢72歳)を分析対象にした。

 日本で救急救命士が医師の指示の下にエピネフリンを投与できるようになったのは06年4月から。05年に病院到着前にエピネフリンを投与されていた患者は190人だったが、08年には8124人に増加していた。

 主要転帰評価指標は、病院到着前の自発循環再開、1カ月時の生存、1カ月時の脳機能カテゴリー(Glasgow-Pittsburgh-CPC)が1または2(良好または中等度の脳障害)での生存、1カ月時の全身機能カテゴリー(Glasgow-Pittsburgh-OPC)が1または2(良好または中等度の神経学的障害)での生存、とした。

 病院到着前の自発循環再開は、エピネフリン投与を受けた1万5030人のうちの2786人(18.5%)、エピネフリン投与がなかった40万2158人中2万3042人(5.7%)に見られた(P<0.001)。

 両群で傾向スコアがマッチする患者を1万3401人ずつ抽出し、それらの人々について比較すると、エピネフリン群の自発循環再開は2446人(18.3%)、非投与群では1400人(10.5%)で、やはり差は有意だった(P<0.001)。

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