環境省は3月28日、2012年に青森、山梨、長崎の3県で行った甲状腺検査の追跡調査で、甲状腺癌が1人見つかったと発表した。福島県の検査では、昨年12月末までに0.029%が悪性または悪性疑いと判定されているが、3県検査での判定は0.022%となった。環境省は、「検査の対象者数が異なるため単純比較はできないが、数字を見れば、甲状腺癌の発生が福島でだけ多いとは言えない」とコメントした。
原発事故後、福島県は震災当時18歳以下だった県民を対象に甲状腺超音波検査を実施している。今年度までは、現時点の甲状腺の状況、いわばベースラインの把握を目的とした先行調査が行われた。だが、約40%に結節や嚢胞が認められたため、これらの有所見率を他県と比較する目的で環境省が3県の計4365人を対象に同様の検査を行った(関連記事:環境省が長崎で甲状腺検査を開始、福島の検査の対照に)。
3県の検査では、A2判定(5.0mm以下の結節や20.0mm以下の嚢胞)が56.5%(2468人)となり、福島県の有所見率が他県に比べ高いわけではないことが確認された(関連記事:福島県民の甲状腺有所見率は「他県とほぼ同等」)。B判定(5.1mm以上の結節や20.1mm以上の嚢胞)も1.0%(44人)いた。
その後、福島県でB判定の中から甲状腺癌が見つかったため、3県検査でB判定となった44人を対象に追跡調査を行った。調査は環境省の委託を受け、原子力安全研究協会が実施。B判定とされた44人のうち、同意が得られた31人について、その後の経過観察(被検者が自主的に受けた検査)の結果を聴取した。
調査の結果、31人中20人は、甲状腺超音波検査で5.1mm以上の結節や20.1mm以上の嚢胞が認められた(図)。このうち2人が細胞診を受け、10代後半の女性1人が甲状腺乳頭癌と診断された。残りの11人は、結節や嚢胞が見られなくなったり、あっても5.0mm以下の結節や20.0mm以下の嚢胞だった。
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