安倍晋三首相が、2月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大抑制の目的で、全国一斉の小中高校の臨時休校を要請(関連記事:首相、新型コロナで小中高の臨時休校を要請)。文部科学省への事前相談なく、官邸の“暴走”との批判もあったが(DIAMOND Onlineの記事)、その要請を受け全国の小中高校がほぼ一斉に3月2日の週から臨時休校となった。
安倍首相による休校宣言の後も、国内の感染者数は増加を続けた(関連記事:一斉休校要請3週間、都の発症者は134人と急増)。
「子どもの自由は奪っておいて、大人が夜の街で感染拡大ってか!!!」(誰かさんの心の叫び)
その結果、4月7日、7都府県で緊急事態宣言、4月16日には、全国一律の緊急事態宣言となった。7都道府県では、ようやく新学期が始まると喜んだ矢先の緊急事態宣言。その他の都道府県では、様々な準備をした上でようやく学校を始めたのに、また休校か! という状態だろう。2カ月間、日本中のほとんどの小中高生が、感染症への恐怖を抱え、学校にも行けず、友だちにも会えず、家で勉強しなさいと強要され続けている。
知人の子どもが通うインターナショナルスクールでは、Zoomを用いた遠隔授業が行われているというが、私の子どもの通う公立学校ではそんな気の利いたものは期待できず、宿題のプリントを渡されただけ。視聴を推奨される動画も全て一方通行で、そんな動画よりユーチューブで好きな動画を観たくなるのはうちの子どもだけではあるまいに……。
3月の休校宣言直後は、病院の一部を開放するなどしてスタッフの子どもを預かっていた医療機関もあったと聞いているが、感染が拡大する中、感染リスクの高い医療機関に子どもたちを連れていくことははばかられるだろう。診療へのさらなる悪影響も危惧される(関連記事:休校要請、6割強の医師が診療への悪影響を危惧)。
緊急事態宣言前に行われた突然の全国一斉の休校宣言にどれほどのメリットがあったのか? そして、そのメリットのためにどれほどの犠牲を強いられたのか……とつらつら考え続けたこの1カ月半だった。とはいえ、感染拡大の予防効果があるのであれば、受け入れざるを得ない。海外でも多くの国が休校に踏み切っているのだからさぞかし予防効果もあるのだろう……と信じたかった。が、実はそうではないらしい。
4月6日にLancet Child Adolesc Health誌に掲載された、COVID-19を含むコロナウイルスのアウトブレイク時に学校閉鎖が有効かを考察するシステマティックレビューを読んで、無力感にさいなまれ、さらに大きなため息をついてしまった( Lancet Child Adolesc Health. 2020 Apr 6. doi: 10.1016/S2352-4642(20)30095-X )。
同論文によると、全世界で3月18日までに休校が行われたのは107カ国。しかし、急ぎ行われた15論文の精査で、休校による感染拡大の予防効果が示されていたのは、英国で行われたモデル研究1本のみで、その論文で示された死亡者減少効果も2~4%と限定的。感染者の隔離などの他の対策と比して、その効果はとても低いとの結論だったという。
そもそも、なぜ休校が全世界で行われているかというと、インフルエンザの感染拡大を予防する効果が示されているため。ただし、休校が最も有効なのは、感染の再生産指数(R)が2未満で、大人よりも子どもの感染が多い場合。一方、COVID-19のRは2.5以上で、大人と子どもの感染率に差はないといわれているが、子どもの方が不顕性感染や軽症者が多く、大人に比べて、咳やくしゃみによるウイルスの拡散が少ないようだ。
すなわち、休校による感染拡大の予防効果はインフルエンザとCOVID-19では異なる可能性が高い。後者ではソーシャルディスタンスによる感染予防対策の方が有効性が高そうだ。しかも、SARSアウトブレイク時に休校は何ら感染予防の効果を示さなかったことは過去に検証済みでもあるのだという。
さらに同論文は、保護者の職務継続が困難になること(はーい! 私もです)、また、その経済的な損出が莫大であることも指摘する。過去に米国で行われた研究では、8週間の休校により、GDPの3%相当の損出があると指摘されていた。加えて、休校中の子どもの面倒を見る高齢者への感染リスクが増す危険性もある。
日本小児科学会などは、休校中に子どもの健康が損なわれること、特に精神的な悪影響や虐待リスクの増加を危惧している。
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