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今週の電脳コイルが大変おもしろかった

今週の電脳コイルが大変おもしろかった、一話完結エピソードの出来としても、オタ文化パロディものとしても、また自主制作アニメ作品的なその内容にしても。人間の皮膚の上に、皮膜のようにバージョン違いの電脳空間を生じさせて繁殖し、ヒゲのように観測される群体イリーガルが、独自の文明を形成し、やがて核戦争を行うまでに発展するというそのアイディアは、それ単体で非常に自主制作 CG アニメ作品的だし(具体的にいえば以前に DoGA CGA コンテスト上映会で見た Ondaonirica「Little Numba」(http://doga.jp/contest/con15/html/15_33m.htm)を連想した)、またもっといえば、当初ほとんど悲劇的な反応を示していた主人公たちが、そこにアクセスする手段を得て以降彼らの文化ウォッチに没入していくさまはゲーム「Civilization」にはまりすぎで未帰還者(≒廃人)になってゆく PC ゲーオタを見るようであるし、一方でこれが、たとえば Sid Meier 氏のような巨人によってデザインされたゲームパッケージでなく、イリーガルという「人間の手でパッケージングされたわけではないかもしれないもの」であることを考えれば、半分あるいは全部が人間以外によってジェネレートされた、非ゲームあるいは仮想コミュニティ的ななにかに対して人間が没入してゆくという、ある種の SF 的な状況でもあるようにみえて興味深かった。目的の喪われた手段、あるいはその枝葉が暴走し生み出したようななにかが、それらのフレーム外から再発見されることによって、何らかの意味として観測・干渉され、再び去ってゆくという、つまり、なんだかよくわからんものだ。

NHK でいえば「カスミン」という大変すばらしいアニメをやっていたことを踏まえ、「電脳コイル」のイリーガルもそこから大して外れた存在ではなかろうと推定すれば、たぶんイリーガルというのはヘナモンに近いなにかなんだろうと思えるわけだが、どうもこれまでに見たかぎり、イリーガルにはヘナモンほどの主体性、あるいはゴースト的ななにかまでは備わっていないのだろうと思える。ようするに、イリーガルはいまだプログラムの域であり、妖怪ではないのだ。主体性がないけど幽霊的な場所にたどり着き、そこで育ってしまった、というあたりか。いずれ主体性を備えたイリーガルが登場するのか、はたまた。「電子ペットに魂は存在するか」問題とかベタすぎてなかなか直球が飛んでくるとは思えないんだけど、アプローチを間違わなければ意外な答えが出てくるのかもしれないしなー。