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不測のモテ

Fracas

おれはオタだから不測の事態に備えるための心構えとはいかなるものかを考えるのが大好きだが、実際に不測の事態に陥ったとき役に立つのはそういった心構えなどではなく、身体ひとつぶんの経験というか、そこに依拠する咄嗟の応用力だということも残念に思いながら理解している。平穏に暮らすオタの日常から得られる経験量などわずかなものだ。それを粘土細工のようにこねくりまわして目の前の事態に対して適切な態度を速やかに作り上げないといけない。そううまくいくものではない。それができるようならアーティストなりクリエーターなり名乗ればよい。さっきまでの連続性という安心、枷でもあるが、そういうものを過去に捨て置いて、いきなり異物になれるということだからだ。

なにを書きたかったのか忘れてしまったので思い出して要点だけ書くと、「オタクと恋愛」の話のうえで、オタにとってより対処に困るのは、誰からもモテないことではなく、ある日突然誰かから告白されてしまうことだ。これは、困る。自分がモテないことは予想の範疇というか現在の延長なのだからなんのリスクもなく、ようするに安心だが、自分に好意を向けられてしまうというのはまったく予想にない事態であり、当然材料がなく、ならばアレンジで切り抜けるしかないが、大抵本番に弱かったりアドリブが下手だったりして、なんかもうほんとどうしようもない反応→対処でドツボに陥ってしまう。これは本当に困る。目に浮かぶようだ。浮かぶのに事前にはどうしようもないことなのでタチが悪い。繰り返しになるが、経験は必要だが肝心なのは経験それ自体ではない。どう最適化するかだ。そこが得意なオタは少ない。

…というようなところまでを漠然と考えていて、特に結論はないのだが、web 巡回していたら lu-and-cy 氏が似たような視点始動の日記(展開は全然違うが http://d.hatena.ne.jp/lu-and-cy/20060517#p1)を書いていたので、あーこれは考えるまでもなく読むだけでよかったなと思った。(匿名コミュニティの特徴が妙な方向へ発展した影響で)自アン民は全般的にオタ設定描写の歯切れが良い(例→http://d.hatena.ne.jp/lu-and-cy/20050717#p3)。「オタの前ダッシュのモーションがキモい。」とか、だから何だよ程度の挑発のわりに実効性が高く、額縁にいれて飾っときたい名文だ。最近の例だと、ナトリ氏による長文芸もキレがあっておもしろかった(→http://d.hatena.ne.jp/natori/20060518/p1)。なんかそういう周期なのか。