世界のはて

『はてな非モテ論壇』の一角だった場所

グミ・チョコレート・パイン

読了なう。

傑作としか言いようがない。物語を消費してこれほど胸がいっぱいになったのは、本当に久しぶり。

この小説を読んだすべての少年たちは、自らの「いま」がここに描かれていると感じることだろう。この小説を読んだすべての大人たちは、自らの青春時代の体験を、登場人物たちに重ね合わせずにはいられないだろう。解説で滝本竜彦が言うように、「本作には青春のすべてがギッチリ濃縮されて詰まっている」。

その中でも、パイン編の盛り上がりは凄まじい。特に、すったもんだの末にケンゾーが某マンションで美甘子と再会、対峙するシーン。あのシーンの絶望感といったらない。グミ編、チョコ編で「よかった頃」を見ているぶん、あのシーンは本当に心にズッシリと「来た」。身悶えした。比喩ではなく、本当にベッドの上で「あー!」とか叫びながら転げまわってしまった*1。

そして、ラストシーン。あのラストシーンは、「美甘子」というキャラクターが本当によく表現された、秀逸なラストシーンだと思う。その後に続く滝本竜彦の、あまりに観も蓋もない解説もよかった。

もっと語りたいことはあるような気もするけれど、まだ感動の余韻が覚めやらぬ今、僕の陳腐な言葉で語れば語るほど、この作品から受けた感動が矮小化されていくような気がするので(多くの名作の例に漏れず)、今日はこんなところにしておきます。

追記

いい小説と酒に酔った勢いで、追記。

この小説を読みながら浮かんできたのは、ここ数年ネットを通して出合った友人たちとの記憶。

ケンゾーにとっての名画座は、僕にとってのゲーセンであり、ブログであり、

ケンゾーにとってのカワボン、タクオ、山之上は、僕にとってのそこで出会った仲間たちだった。

非モテで非コミュな思春期を過ごし、青春時代を失敗したという想いを持つ「青春負け組み」の僕にとって、クリルタイ周辺での活動は、第2の青春そのもので。20代後半〜30代前半という、モラトリアムも終わろうというこの時期に、こういう体験ができたということは、凄く幸せなことだよな、と。

本当は、先日のid:republic1963さん送別会のとき、こういうことを言いたかったんだけど、当日機会を逃して言えなかったので、換わりにここで言っときます。

ネットを通して出会ったすべての人へ、ありがとう。

*1:この作品は、チョコ編とパイン編の間に長い間があって、完結までに11年かかってるみたいだけど、まとめて読めて本当によかったと思う。