ふたしか日記

ふざけたままでいてくれよ 文学フリマ東京40

12/9(月)〜12/13(金) 君となら行けそうなんだよ

12/9(月)

 労働。朝ごはんバナナ。「このブラウスかわいい!」と遠方の店舗を指差して、友だちに話してる女性がいる。「この」という距離感でブラウスをかわいいと思ってる。「あの」ではなく。相当かわいいんだろうな。「この」という近接性で見つめてるね。労働の内容は覚えてない。

 

 ジュンク堂のカフェで休んで帰宅。ジュンク堂のカフェ住人たちは貴重品(macbook、財布、スマホ、カバンなど)を平然と置き去りにしたまま、離席しまくる。そして全然戻ってこない。(ジュンク堂を徘徊しているため)私も財布スマホ入ったカバン(チャック完全開放状態)で放置したまま、各フロア徘徊してる。相互信頼がオートマで作動してる空間だ。そして私はどこかで、何もかも盗んでもいいよ〜と思ってる。

 

 

 帰宅後、はらさん(フープフラフープ)のZINE『いつまでも褪めない』を読み終わった。

 映画アフターサンの文章。淡々とした筆致の中に潜んでいる、ほのかで確かなマグマみたいなものを感じる。それぞれが抱えている地獄の中で、できるだけ軽やなステップで、嬉しく踊っていきたいな。久しく聞いてなかった星野源『地獄でなぜ悪い』を流す。

 小説「いつまでもさめないで」を読んでいて、夢と現実がグネグネと反転していく感覚になって、とても怖かった。過去の思い出に、今、恋をしているような物語なんだろうか。夢の定義なんてないな、とZINEを通して思う次第です。はらさんにとっての夢は思い出なのかな。分からないけれど。過去にも夢があるなんて、あまりにも素敵なことだった。とても柔らかな気持ちで読み終えてました。私の中の挿入歌は、adieu 『ナラタージュ』です。

 

正しい夢の終わり方なんて
この世で私 私だけが知ってる
あなたをちゃんと
思い出に出来たよ

 

 続けて、札幌の文学フリマで買っていた、mudaさん(mudaの日記)、硬水さんのZINE『タイムフリーで待ち合わせ』を読む。「ちくわが好きだけど、恥ずかしくて人に言えない」なんて生活の断片がそこかしらに出てきて、あー!カルチャー以外にもそういうところまで言葉にしていただきありがとうございます!という気持ちで溢れる。生活断片コレクターの私にとって、福音のような情報です。普段買ってる惣菜とか使ってる文房具の話とか、もっと聞きたい。そして表紙が可愛すぎる。こちらも勝手に挿入歌をつけて、家主『カメラ』とさせていただきました。往復書簡もカメラなんですね。

 

カメラ 欲しかったんだぜ 
目が覚めたら忘れちまうからさ 
写真撮っとかなくちゃね

 

12/10(火)

 労働。朝ごはんバナナ。

 道端に飲み終わったヤクルトが投げ捨ててあり、あなたみたいな人がヤクルトを飲んで健康になろうだなんて、大変烏滸がましかった。

 昼休み、ドトールでミラノサンド。職場に戻る際、駅構内で嘔吐している女性を見かけたので、救急車呼びますか、大丈夫ですか?と聞いたけど、大丈夫とのこと。大丈夫なわけがない。車椅子の高齢男性が、先に駅員さんを呼びに行っていた。

 他にもう1人見守っていた女性と見守りつつ、駅員さんがきて「もう任せてください!」と言われたので、任せました。こういうとき、大体3人くらい自然と集まることが人間の習性として残存してくれれば、まだ救いはある。私は既に3人集まっていた場合、通り過ぎます。

 

 帰宅したら、ポストに不在票が入っていた。「ご不在」のところに丸印がついていて、「不在にしてんじゃねえぞ」くらいにしてほしかった。申し訳ないです。

 

12/11(水)

 新しくオープンした喫茶店に営業に向かう。店主の方、一緒に過ごしていた猫が最近亡くなったらしい。「心の穴なんて、空いたままでいいですよねー」とお話ししてたら、互いに涙腺が決壊しそうになったので、「もう今日はここまでにしましょう!また!」と言い合って、そのまま会計をして店を出た。もはや、営業でもなんでもなかった。

 

 職場に戻り、デスクで特に意味のない文字をエクセルに入力していたら、背中が攣りそうになる。グーグルで「背中 攣る 原因」と検索したら、要するに疲れてるらしい。

 

 取引先の道すがら、終活相談のイベントが開催されていた。「終活」に差し掛かっているであろうおじいさん社員が、おじいさん2名に説明していた。ただ死んでいくプロセスに「終活」と名付け、軽やかに、かつ端的に魅せていくことは行政や企業にとってとても便利だな。マーケティングがお上手で!きれいな言葉だとは思わない。しょうがない。

 

 駅構内に設置されている、ゆうちょ銀行のATMが誰もいない空間に、機械音声でひたすら喋り続けていた。ディストピアはもう来てる!とこういうときに気づきます。  

 近くの高校生があまりにもどうでもいい会話していたので、盗んでいるつもりはないけど、聞いてしまう。通報して逮捕した方がいいと思う。

 

「座ってたら寝ちゃう〜」

「それはそうと、さみいな。ううう。」

「てかアキラ、なんでジャンパー着てないの?」

 

 誰がアキラか、全く分からなかったけど、多分恋してる。そんなくだらない会話が宝物になることを、知らないよね。私も一切覚えてないから。勝手に記録するから、どうかみんなが安心して。永遠にどうでもいいことを言い続けてほしいと祈っている。

 

 取引先で、初めて案件を受注することができた。ずっと苦しかったけど、ようやく報われた気がした。その旨を、嬉しくて、飛び跳ね気味な気持ちで。上司に報告すると、肥溜めを泳いできたかのようなグロテスクな言葉を手渡してきた。一体どこで、そんな汚物みたいな言葉を覚えたんだろうか。私はそんな言葉を一度も履修していない。

 

 私は1mmも臭くなりたくないので、沈黙で応えた。怒りの感情をそのまま言葉にして、応答してしまって。世界と自分がもっと残酷にならないためのダサい妥協案だった。この世に存在しないものとみなして、無言で退勤。きれいな言葉が必要だった。

 

 Sさん(フレンズ)から、奇跡のようなタイミングで飲みのお誘いがきたので、駆け出します。わたくしの魂のイケメンリスト入りしている方です。

 

 私設図書館(自分で図書館を作る!?)の準備は順調に、難航しているとのことです。月のランニングコストは6万円くらい、収益は0円とのこと。クラファンもなく、棚オーナー制度もない。シンプルに狂っている。でも狂っている人じゃないと照らせない暗渠がある。照らされた暗渠が、いつか誰かの朧げな光につながるから。きっと大丈夫なんだと思う。

 

 ひたすらにどうでもよくて、どうでもよくない会話を繰り広げ、軽やかに離散した。居酒屋に入るまで、汚物に見えていた世界が、煌めいていた。そういう大切な人たちにもたれかかりつつ、ままならない生活を繋いでいる。

 

12/12(木)

カラスが赤信号を無視して、ひょこひょこ歩いてた。人間の作り出したルールなんてどうでもいいことだと、いつも他の動物が教えてくれる。人間は、地球で人間が主人公だと勘違いしてる節があるから。

 

Netflix『あいの里』シーズン2を見終わる。あやかん最後の日記を引用します。

 

完璧な人なんていないんだから
自分も完璧じゃなくて良いんだと思った
大事なのは自分が思う完璧を目指すんじゃなくて
周りの人たちとしっかり対話すること

 

 『あいの里』の素晴らしいところは、メンバーがみんな日記を書いているところだったんだ。恋愛とかどうでもいい。ただその人の言葉と生き様を見せてくれ。

 

12/13(金)

 労働。朝ごはんバナナ。通勤電車内で白髪混じりのおじさんが身体を縮めて、眉間に深い皺を形成しながら、目をギュッと閉じてる。苦しそう。同じだよ。違う苦しさだと知ってるけど。もみあげが直角で、同じバンドが白色のApple Watchをつけてるね。気が合うと思います。

 

 年末ジャンボに大量の老人たちが並んでいる。もうじき死ぬのに「7億円が当たる可能性」が欲しいんだろうか。切実な思いで買ってる人もいるんだろうけれど。(いるのか?)7億円当たったらパレスチナか能登に全額寄付してください。それか私に30万ください。使い道は心配しないでください。

 

 昼休み。ドトールに行く。80代くらいの男性がApple Watch+AirPods Proをつけていて、Apple Watchで支払いをしている。とても旺盛だと思った。Apple Watchで支払いするのって9割方「ポーズ」ですが、本人が楽しい気持ちになるんならいいんだと思う。誰も傷つけてないし。

 

 取引先に向かう途中、信号が赤になりそうで慌てて走ってたら、タクシーが圧をかけてくる。明確で軽薄な殺意だった。普通の人(かどうかは不明だが)にこういう軽薄な殺意を助長させる機械が存在してるの、とてもよろしくない。でも、どうせ車は無くならないから。イーロンマスクさんはTwitterを破壊する前に、さっさと全ての車を自動運転にしてください。

 

 労働(苦役)を終え、ジュンク堂内のカフェで少し休む。苦役列車を思い出しながら。西村賢太さん、まだあなたの作品が読みたいですよ。隣のおじさんがMacBook広げながら、口を盛大に開けて就寝してる。そして、なぜか机上に日本酒がある。お国さんはこの平和な空間を必ず死守してください。

 

 寝る前にYouTubeで『【えびちゅう】安本王決定戦!!【難問】』を見る。私立恵比寿中学というアイドルグループに所属してる安本彩花さん(私の推し)に関するどうでもいいクイズを他メンバーが予想回答して、正解かどうか当てるもの。

 

 安本さんの正解が、ほぼ私だった。正解というか思考の流れが。(努力や才能の質量共に、比較の対象にすらならないけれど)私が「推す」人は大体そういう人です。「推し」は敬意なので。伊藤万理華さんもそういう感情で「推し」てます。私立恵比寿中学『ナチュメロらんでぶー』を聞いて就寝。

 

今まで以上忘れられない
君と僕らしい思い出作ろう
君となら行けそうなんだよ
きっと! たぶん?
出来そう夏だよ レッツゴー

 

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