ヤマネコ目線

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物価高は「アベノミクスのせい」なのか

 村上総務相が物価高をアベノミクスによるものと主張してプチ炎上していた。本当にそうなのだろうか。

jp.reuters.com

(記事題:物価高の最初の原因、アベノミクスによる円安進行=村上総務相)

アベノミクスの功罪

 円安誘導によって為替レートから物価高を誘発させ、同時に政府が率先して賃上げを奨励することで国民をデフレマインドから脱却させる、というのは確かにアベノミクスの一環としてあったように思う。その点では何を今さら言っているのかという感じ。

 一方で安倍元総理が、というよりは誰も織り込んでいなかったのが新型コロナパンデミックとロシアによるウクライナ侵攻の影響だろう。本来もっと緩やかに進行させるべきコストプッシュ・インフレが想定以上の速度で進んだ。

 円安の要因は複合的であり一概に言えないが、以下の資料によれば主要因は日米の金利差である。ただし、これだけでは日本円がユーロやスターリング・ポンドその他あらゆる通貨に対しても安くなっている理由がよく分からない。日本の国際競争力低下やドル円に引っ張られて落ちていると見るべきか。

公益財団法人 国際通貨研究所資料

https://www.iima.or.jp/docs/webinar/2025/Hashimoto_250324.pdf

 何にせよ物価高(とスタグフレーション)を「アベノミクスが悪い」と一言で片付けるのは乱暴だろう。アベノミクスを言い訳にして政府として無為無策を貫くつもりか。本当に無能で恥ずかしい連中だと思う。

 一方でアベノミクスには悪い点があったことも否定できない。日本政府はアベノミクスをずっと片手落ちにしている。確かに物価高に誘導すればデフレ脱却に向かっていけるとは思うものの、そこで日本政府は賃上げと同時に増税と社会保険料の引き上げを繰り返し、同時にあるべき賃上げの効果を殺し続けて来た。ふるさと納税や定額減税、インボイス制度といった複雑で場当たり的な税制を敷き、こども家庭庁のような意味のない少子化対策やどこの馬の骨とも分からないNPOに垂れ流すために社会保険料を引き上げている。賃上げが物価上昇に追いついていない。

 加えてコロナ禍やウクライナ戦争といったイレギュラーな要因による物価高騰を受けても減税や社会保険料の引き下げといった国民負担を減らす政策を一向に取らず、結果として今はスタグフレーションに陥っている。「インフレの最中に減税するとさらなるインフレを招く」という意見もあるが、それはただ教科書的な回答であって現実に即した回答になっていない。

 また、アベノミクス当初に盛んに語られた「トリクルダウン」は真っ赤な嘘だった。そんなことは起き得ない。特に今の日本の経営者やコンサルタントなどを見ていればよく分かる。上に立つ者ですら自分の金儲けのことしか考えていない。シャンパンタワーがあったら横からパイプを差し入れて自分のプールに引き込むような連中ばかり。経済界の連中の言うことなど聞いていたら国が滅ぶ。

円安をこのまま進行させて良いのか

 マスコミは「日経平均が最高値」だのご祝儀相場だのとおめでたいことだが、単純に円が安いから買われているだけなのでは。日経平均がいくら上がっても庶民の暮らしは変わらない。むしろ円安による物価高に追いつく見込みはなくますます生活は苦しくなっている。もう少し円高傾向に振れさせて減税・社会保険料の引き下げといった負担軽減策が必要では。

 同時に円安は外国人労働者の獲得にも前々から影を落としている。ベトナムの通貨ドンに対してすら日本円は安くなっており、外国人から見れば今の日本は労働環境が悪名高い上に言語の壁が高く、他国とくらべてただでさえ低い賃金がさらに目減りしている。このままでは外国人労働者の獲得すら怪しくなるだろう。というか実際にもうベトナムからまともな人材を受け入れるのは厳しい。だからこそ最近のJICA、アフリカ・ホームタウン騒動はある意味で説得力があるのだが。東南アジアからも相手にされなくなったら今度はアフリカからでも連れてくるしかない。

移民政策の末路

 「円安で外国人労働者が来なくなるならそれで結構」という人もそれなりにいそうだが、経済界やそれに後押しされた日本政府はそうはいかない。インド人やアフリカ人を労働力として日本に入れ続けるだろう。そうして入って来た実質的な移民は国内で徒党を組み、いずれ欧州のように治安悪化の原因となる。

 昨日のクレイジージャーニーで取り上げられたフィンランドの現状は酷いものだった。日本と同じく安い労働者として受け入れられた移民は2代、3代と貧しいまま。言語の壁から社会に溶け込むことも出来ずにコミュニティを作り、違法薬物と福祉支援を吸って生きている。

 フィンランドの中ではα-PVPという麻薬が蔓延しており、公衆トイレや歩道脇には注射器のポイ捨てを防ぐために使用済み注射器を捨てる専用の箱が設置されている。薬物によって亡くなる人の数は世界第10位(1位はアメリカ。日本は177位)。

 薬物があれば当然売人もいる訳で、当初はバイカーギャングと呼ばれるフィンランド人の組織が仕切っていた。バイカーギャングは巨大化し過ぎてフィンランド政府に目をつけられ解散させられたが、今度はそれによって空いた麻薬市場に移民グループが参入し、以前より状態が悪化したという。

 リベラルが「進んだ国」としてもてはやす国は確かにある意味で良い国なのだろう。生活保護を受けながら麻薬でゾンビのように自堕落に生きる人間や、彼らにクスリを捌いて儲け、警察を銃撃したり手榴弾を投げたりするギャングにとっては。

 なお、言語の習得難易度で言えば(番組内の表を見るに)フィンランド語は難しい方で必要とされる学習時間が長い。日本語、中国語、韓国語の難易度はそのさらに上。技能実習生なんかは入国前と入国後に日本語研修があるし、入国してからも自主的に日本語検定を受けたりはしているが、近年は人材の質の低下とともに日本語の学習意欲低下が見られる。

余談:JICAアフリカ・ホームタウン騒動が「ロシアによる工作」とされている件

www.nikkei.com

(記事題:ロシア「国際協力」で日本に情報操作 途上国支援、SNSで批判あおる)

 この記事を見て「JICA批判してる奴らは全員ロシアの工作員だ」と言い出す奴らはバカだと思う。単純過ぎる。政府調査とやらでこれが「判明」したらしいが、「そういうことにしておきたい」だけにしか見えない。

 では相手国とのコミュニケーション不足や「ホームタウン」という用語の選定、関連自治体の住民に対する説明の無さは何だったのか。「ロシアによるSNS工作でした」だ「デマ」だ「誤解」だと言えば何でもチャラに出来ると思うなよ。そもロシアがアフリカにおける日本の影響力を削ごうとする意味はあるのか。中国の工作のせいにしたり忙しいことで。

 前々から書いているがここまでの騒ぎになった理由は日本政府の信用の無さに尽きる。そこで日本政府から「あれはロシアによる工作だったから」などという話が出て来ても何の信憑性もない。これからも火種はくすぶり続けるだろう。

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