たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ナードコアと電波ソングとボカロ第三世代と。

SOUND VOLTEX(以下「ボルテ」)が面白いのです。今更。
何が面白いって、選曲。
 
beatmaniaIIDXシリーズは、オリジナルのハードコアやテクノがメインなのは昔のビーマニから同じ。
ポップンミュージックは、音楽ジャンルありきでパロディ化した曲が多くて、そこから名曲が産まれるという逆転現象が起きていて楽しい。多分いちばんなんでもあり感強い。
ギタドラは最近はライセンス曲多めですが、今のJ-POP「っぽい」曲や洋楽「っぽい」曲を作るのがうまい。かと思えばゲーム用のプログレッシブ大作もあるから侮れない。
jubeaやREFLEC BEATは、基本ライセンス曲。
 
で、ボルテですよ。
収録されているのは大きくわけて3つ。
・東方のアレンジソング
・ボカロ曲
・オリジナル曲
これがすごい混沌としてるのね。
 
ボカロ曲なんですが、セガの『初音ミクProjectDIVA』に入ってそうな曲が入ってない。
ようは「初音ミク」を始めとしたキャラクター性のある曲が無い。

懐かしい曲が無いわけじゃないんです。「曽根崎心中」とか入ってますし。でも「メルト」や「悪ノ娘」は入ってない。
むしろメインはGUMI。メグッポイドの高速曲多め。「セツナトリップ」とかボルテだけじゃなくてポップンやギタドラにも入ってます。
 
はー、やっぱり時代はGUMIかーとしみじみ。
確かにキャラ推しじゃない分、ボルテの無機質な画面(動画がない)とあっている。
でもそれだけじゃなくて、明らかにプレイする年齢層に合わせている気はします。
 
飯田一史は、「カゲロウプロジェクト」を中心とした、10年代に入ってからの「ボカロキャラ不在」ボーカロイド曲や、GUMI中心の高速ボカロックについて触れていました。
オタク第五世代とボカロ専門誌「COMIC@LOID」(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース
オタク第3世代の俺がボカロ小説についてひとこと言っておくか:Book News
学校読書調査とロキノン脳でボカロ小説を切る…はずだった:Book News
 
『COMIC@LOID』がそうなんだけど、10代女子向けになると初音ミクの存在消えちゃう。
以前ショッピングモールでうろうろしていたら、中学生男子達は初音ミクがどーのこーのとキャラクターの話をしているんですよ。
ところが中学生女子達は、GUMIの曲の話をしている。
偶然両方に出くわすとかどういうことだ、とか思いましたが、この差はなんかわかる。
 
と、そんな話をコミケの打ち上げでしていたら、20代半ば以上の面々は「え?でもミクまだまだブームじゃん、千本桜ヒット中じゃん」と切り返し。
そう、ミクはブームなの間違いない。
北海道みやげ買ったら初音ミクの袋に入れられるからね。
新千歳空港のガチャガチャ、雪ミクだからね。
ただ、その「初音ミクブーム」は、世代が違う。客層が違う。
かつてからのボーカロイドの成長を見てきた人や、キャラクターとしてボーカロイドを見ている人には圧倒的に初音ミクは今も強い。
 
単純に曲として、高速でクラブミュージック型のマイナーコード歌わせて映えるかどうかで考えると、GUMIの声質の方が向いている。
そして、元々デザインしたゆうきまさみではなく、たまの描くGUMIの10代受けが半端じゃなくよい。
かわいいんだけど、「萌え」じゃないんだ、なんだろ、クラスメイトに近い。
初音ミクやリンちゃんがアイドルなら、GUMIはアイドルを目指しているみたいな感じ。
いやいや、それどころかキャラが消滅している曲も多いからなあ。
「緑髪は流行らない」の法則なんてなかったんだ。

ショートカット派としてはGUMIはすごい萌えるのですが、なんというか……ぼくがそこに踏み込むのは躊躇われるというか。OBになっちゃった感があるというか。
ボルテの場合はGUMIでコンテストもやっているからなおのこと多くなっています。それをプレイして、GUMIに慣れ親しんで……という新ループができている。
 
この「ボーカロイド」の世代観を意図的にぶった切って突っ込んでるボルテ。
その一方で、オリジナル曲がたくさん入っていて、これもテクノハードコアブリブリです。
中でも目を(耳を?)引くのが電波ソング系で、「ませまてぃっく ま+ま=まじっく」だったり「ヤサイマシ☆ニンニクアブラオオメ」だったり。
明らかに「楽しいでーす!面白いです!ヒャッハー」な作りです。「電波ソング」であることを最初から分かって作られているからすごい安心出来る。
 
ところがその中にある「つぶやき魔法少女りむる」がヤバい。

BEMANIシリーズ歌詞wiki - つぶやき魔法少女りむる
 
DJ SHARPNELなんですよ!!!!!!
このすごさ伝わるだろうか。伝わる人握手。

SHARPNELSOUND Official web
 
シャープネル、またはガヴァンゲリオンは、90年代ナードコア文化を支えた立役者。今も変わらずアニメをごちゃまぜにして高速回転させてます。
ナードコアは電波ソングという言葉よりも先というか、電波ソングって言葉はあったかもしれないけど立ち位置が全然違う。

電波ソングが「楽しいー、頭破裂しそうだぜー」という麻薬だとしたら、ナードコアはサブカルチャーやオタクカルチャーを噛み砕いて消化した上でぐつぐつに煮込んだ出汁汁。どろっとした感じがとにかく強い。むしろ、電波ソングをサンプリングして、ネタにしちゃうくらい。

マイナーカルチャーへの愛もありつつ、それを前向きに捉えないで高速のガバに乗せて笑い飛ばす。自虐的・後ろめたさ満載のネガティブ思考強めの、精液みたいな音楽でした。苦くて飲み込めないよう。
褒め言葉ですよ。CD-Rで買い集めていた頃が懐かしい。
今でこそ音質いいですが、そんな売り方なので音質もチープで、サイトも雑多で、それがまたいい。
 
歌詞をみていただければわかりますが、これTwitterをネタにしたブラックジョークソング。
同じようにDJ SHARPNELは昔、『ICQ』という、これまたICQをネタにしたブラックジョークソングを大昔に作っています。
 
ここなんですよ。
ICQ知らない世代の方が絶対多かろう、GUMI大好き十代が、DJ SHARPNELの曲を「電波ソングの一種」としてプレイしている。
なんなんだこの箱は。おかしいだろ。
似たラインとして弐寺でDJ テクノウチやm1dyが参加しているのもありますから、繋がり的にはハーコーの輪がうまく切り込んできているなあというのはわかる。わかるけど、DJ SHARPNELのナードコアソングは一歩踏み間違えると劇薬なわけですよ、初期から聞いていた身としては。
大丈夫なのかと。左手オナニーなわけですよ。
いや大丈夫なんだけどさ。
 
それをうまくつないでいるのが、東方ソングの数々だろうなあという気はします。
結構古いものから新しいものまで入っているので、ニコニコ層には大変受け入れやすい。
また、イオシスの曲が入っているのもなるほどなと。ナードコア(言い換えればマイナーに向かい続ける曲)と電波ソング(言い換えればメジャーソング)の架け橋になるような存在なので、うまい緩衝材になっている。
イオシスも、ナードコアではないけど、CD-Rにパロディソングを入れたり、コントを詰めあわせた「イオシスョ」を焼いたりして、手売りしていた時期がありました。札幌のおでかけライブに、イオシス目当てに買いに行ったなあ、あれ90年代か。
彼らがプロとして活動もするようになったのが、ある意味ナードコアの社会化そのもののような気がします。
ようはナードコアがなくなったんじゃなくて、やっていた面々が商業で働くようになっている。
あるいは、クラブで電波ソングハードコアにこっそりナードコアの刃を潜ませている。
 
MADテープ(サンプリングしたアニメや特撮の音声を切り貼りしてネタにしたテープ)の流れから、草の根BBS(個人が立ち上げたPCに電話回線でつないだネット。当然電話代がかかる)で伝搬し、今と違う「萌える」ことの気恥ずかしさを爆発させていた。
今のインターネット時代の感覚とあまりにも違うけど、最終的にやってることは同じなんだよなあ。ただ、後ろめたさがあるかどうかはわからない。
 
ナードコアって言葉がわかりづらいし、今存在しないし、電波ソングとぼくは線引をしているんだけど、まあ「なんかに偏ってる爆死」という感覚です。なんかオナニーしながら意図的に自分に引っかき傷つけているから、ハッピーラッキーな電波ソングと違うのですよ。
ナードコアとは (ナードコアとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
ナードコア周辺言説についてひとこと言っておくか | ysanolog
- 初期ナードコアと現MAD文化の邂逅 -
レオパルドンとか猛毒とか、なっつかしいなあ。
もうつまるとかつまらないとかじゃなくて「そういうもん」だったのがナードコアだったなあ。と思ってる。
 
DJ SHARPNELは、歌こそ女性が歌っているけど、ナードコア魂はガッチリ持っているようでど安心でした。
絵もかわいいのがついてますが、相当ドエロいもので。これを選ぶときの「気恥ずかしさ」がナードコアだなーと。
それとピッチピチの10代疾走ソングが並んでいるSOUND VOLTEX、気が狂ってる。
いいぞもっとやれ。
 
なんにしても「つぶやき魔法少女りむる」は本当に懐かしい香りのするよい曲なので、「ICQ」とカップリングで発売してくれないものか。