たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ちゃんと描いてないよね。星里もちる「ちゃんと描いてますからっ!」

最近、お父さんが働かず娘が働くマンガが熱い。
つかそんなの熱くなったらダメな気がしますが、かわいいからいいのです。
具体的に言うとこのへんですね。
私のおウチはHON屋さん(1) (ガンガンコミックスJOKER) 私のおウチはHON屋さん(2) (ガンガンコミックスJOKER)

「私のおウチはHON屋さん」は、エロ本屋で働く小学生の、割と真面目なお話。娘超働きます。一応思春期なので羞恥心あるよ!かわいい!
でもそれを超えて「エロを求める人に応える仕事力」があるから感動するくらい働くよ!かわいい!
夕焼けロケットペンシル 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ) 夕焼けロケットペンシル? (MFコミックス フラッパーシリーズ)
文房具屋さんの世知辛い日々をリアル過ぎる内容で描く「夕焼けロケットペンシル」。こちらもかわいいんですが、可愛いとだけ言ってられない重さ。濃いのなんの。色々複雑な設定があるのですが、とりあえず「小学生が厳しい経営をしている」というのは事実です。

働く小学生が急増中!? ダメおやじと頑張り屋少女(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース
 
さて、そんな「働かない父・働く娘」マンガの金字塔がまた一つ誕生しました。
ひどいジャンルですね。

星里もちる先生じゃないですか!
 
そう、「りびんぐゲーム
」のいずみちゃんのおかげで、色々な性癖が目覚めましてね・・・ロリとかNTRとか・・・。
と思ったら作中のお父さんが描いている(ということになっている)作品が「だびんちゲーム」。ヒロインのなまえは「イズミン」。
WAO!
 
他にもお父さんが描いている(という設定)作品のラインナップはこんなん。
「わずかにアクティブ」→「わずかいっちょまえ」
「ゴーストシスター」→「光速シスター 」
うん。
星里もちるファンならゲラゲラ笑わざるを得ない。
 
だって、これでお父さんが売れっ子でバリバリ描くんならいいけど、お父さんの扱い微妙なんですよ。
こんな会話が見事に証明しています。

「『浦沢直樹』は知ってるだろ?」
「『20世紀少年』だろ。そりゃ有名だもの」
「姉の歩未ちゃんが言ってた。『浦沢直樹』が『明石家さんま』なら、『平原大地』は、えーーーっと……」
「『ビビる大木』」
「そうだ『ビビる大木』だ」

つまり「有名」だけど「超有名」までいかない、という微妙さを平原大地(父)に投影しています。
これ……星里もちる先生本人のもやもやなんだろうなあー。「ビビる大木」ならすごいことだと思いますが、明石家さんまと比べられたら……。
 
まあそれでも、お父さんこと「平原大地」にはファンもいるし、作品が大好きな人もいるのでいいのです。それだけ相手を感動させる物語を作れるんだもん。尊敬に値します。
しかし、ネーム以上のことをしないんだな。
ネームはすごいうまいんです。物語を作る才能すげーあるんです。
でも下書きの途中で逃げるんです。
まじで。ガチ逃げ。本当に原稿放り出して逃げるの。ねーよってくらい。
これだとお金にならないから、娘ふたり、中学生の歩未と、小学生の妹空が仕上げる=掲載されているマンガ自体を描いているのは娘達というとんでもない漫画家になってます。
うん。だめだね!
 
歩未はペン入れ担当。アナログ人間なのでペンとインクで線を引いていきます。その技術はプロ級。平原大地が描いた、とバレないレベルです。
妹の空はPCによるトーンや効果担当。「コミスタ」を使っているあたりなんともリアル。実際「ペン入れまではアナログ、トーンはコミスタ」という作業の人今多いみたいですね。
 

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一巻の時点での父さん、本当にいいとこなしです。
・・・いや、いいとこいっぱいあるんです。
まず物語作りはやっぱりうまい。ネームを打ち合わせで切れちゃうくらいのスピードは驚異的。
作った作品のファンはものすごく多いです。大好きで泣き出すファンがいるシーンはこっちまでじんと来る。
そして実際絵はうまい。サイン会でもスラスラ描きます。娘たち二人はそれを見ているから、描けるんです。
 
しかし、だがしかし。
それを補って余りあるほどマイナス面がでかすぎて。
たしかにね、悪いお父さんじゃないけれど、仕事放棄はあかんでしょ。しかも毎回。
いやー。爽快なまでの逃げ出しっぷり。ちょっと目を離すと本気で何もかも放棄する姿は見事です。
 

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物語の焦点は歩未に当たっています。
まず頭が痛いほどにダメなお父さんに変わってどのくらい頑張れるか、という仕事の面での悩み。
次に、仕事を必死にやらないといけないのに昼は学校でがんばらないといけないという勉強の面での悩み。
そして、好きな男の子が平原大地のファンで、仲良くしたいけどバレたら困るという恋愛の悩み。
すべて悩みの元凶がお父さんなんですが、逆にお父さんが破天荒すぎるからこそ、見事に「思春期の悩み」が全部浮き彫りになるという面白い仕組み。
端的に「悩み」を表現するにはお父さんがダメな方がいいんですよね。いや、よかないけど漫画的には。
最近「ダメお父さんと働く子どもマンガ」が増えているのはその対比のおかげだと思います。
 

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本当なら歩未もお父さんのことぶん殴るのの一つや二つやってもいいと思いますが、やりません。
迷惑千万な中、健気に彼女はお父さんのハンパなマンガを描くんです。
なぜか。
お父さんが、またちゃんと描いてくれる日を信じているからです。

デジタルなんて無理。
あたしはお父さんの真似しているだけだから。
お父さんの下描き
お父さんのペン入れ
お父さんの背中見て育ってきたんだもの。
見てない背中は追えないよ。

お父さん、お父さん。
ちゃんと聞こえてますか?
いい娘さんじゃないですか。
 
お父さんの滅茶苦茶っぷりが許容できるかどうかで好みの分かれる作品だと思いますが、とーにかく「星里もちる先生の描く女の子はちょっと地味で健気でかわいい」と思っている人なら文句なしにオススメ。
まさにちょっと地味で健気でかわいいですから!
今後気になるのは、やはり恋の行方と、お父さんがどうなっていくかです。
このままの生活が続くとも思えないので、ちぃと楽しみです。