ガラパゴスからの船出

時代の潮流から随分外れた島に浮かぶ音楽ブログです。お気に入りの曲(2000年代後半が多め)の感想や好きな部分をひたすら垂れ流します。

Hayley Westenra/Prayer

Celtic Womanのメンバー、Hayley Westenraの「Prayer」という曲がある。「Odyssey」というアルバムに収録されているのだが、ARIKAと任天堂が作った「FOREVER BLUE」というゲームのBGMで、この曲が使われているのだ。

 

「FOREVER BLUE」というのはWiiで発売されたゲームであり、海上駐在員の主人公が架空の島「マナウライ島」の周辺の海をダイビングで探索し、魚を見つけたり、ダイビングスポットを発見したり、ダイビングガイドをしたり、イルカと戯れたりできる。一応ホワイトマザーという伝説の巨大白クジラを探すストーリーはあるのだが、比較的自由度が高いので気の向くまま冒険をすることもできる。倒すべき敵もいなければ、何かに追われてミッションをこなす必要もなく、お金のようなものすら存在しない。魅力的なキャラクターは人間より動物のほうが多く、そもそも主人公は船と海をいったりきたりする生活を送るだけである。

そしてここまでの文章でお察しの通り、私はこの「FOREVER BLUE」というゲームが大好きなのだ。というわけで今回はHayleyの曲の話だけではなく、「FOREVER BLUE」の話を書き連ねたいと思う。

 

パワプロやWii FitをやるためにWiiを買った私は、次に遊ぶべきゲームを探していた。ネットで色々なレビューを見て回っていた時に見つけたのがこのゲーム。まずジャンルが「海中散策」という全く聞いたことのないもので、Wiiリモコンでゆったりと泳ぐという謎のゲームに興味を惹かれ、購入した。そんな意味のわからないゲームがWiiでしか遊べないなら、そりゃ買うしかないだろう。

 

早速始めてみて、いきなりOPで流れてきたのがHayleyの「Prayer」。

なんて神秘的なアカペラだろうか。かつでここまで厳かで優しい気持ちになれるゲームのOPがあっただろうか?Wiiリモコンを握ったまま、私はしばらくこの曲をボーっと聴いていた。ゲームを始める前に私のハートはもう海の底へ沈んでしまったのだ。

 

そして始まる海の生活。ハッキリとした目的がないため、人によっては魅力がわからないだろうし、事実自分の友人にやらせてみたところ「これは何が面白いの?」と言われる始末だった。しかし個人的には大当たりだった。なんと楽しいゲームなんだろう!何が楽しいかって、オープンワールドよろしく、雄大な海を箱庭のように貸し切ってしまえて、その世界に埋没することができる点である。「この綺麗な魚はなんていうんだろう?」「あの洞窟の中には何がある…?」「次はどこへ行こうか…!」というワクワクがひっきりなしに押し寄せてくるため、退屈どころか非常にエキサイティングなゲームであった。

水中大鍾乳洞の奥地である動物と出会った際は、その場所の美しさと神秘的なBGMも相俟って鳥肌が立ったし、「奈落」と呼ばれる深海に潜った際は、上下感覚が無くなるほどの暗い海を震えながら泳ぎ、そこでこちらをギョロリと見つめるマッコウクジラに度肝を抜かれたものだ。ホワイトマザーのシナリオは感動的だったし、シナリオクリア後の幽霊船や海底遺跡も楽しませてもらった。

 

言いたいことはこれでもかなり絞ったつもりだが、このように「FOREVER BLUE」を私に語らせると愛が溢れ出て仕方ない。人によっては退屈と思われるこのゲームを100時間近くプレイしたのだから…。

 

そこから二年の月日が経っただろうか、なんとこのゲームに続編が出たのだ。「FOREVER BLUE 海の呼び声」というタイトルなのだが、なんと無印を遥かに超える名作に仕上げてきたのだ。そのゲームに対する愛を書き連ねると、今作以上の熱量に従って字数がとんでもないことになるので、またいずれ別の記事で吐き出したいと思う。

 

いずれにせよ私はここからHayleyやCeltic Womanの音源を漁るようになったし、ゲーム的にも音楽的にも人生のターニングポイントだったといえる。2018年に任天堂がこのゲームの商標登録を行っていたので、続編を期待したのだが、そこから3年半の間なんの音沙汰もない。しかしそれでも私はこのゲームの“Player”として永遠に待つだろう。そしてもう一度あの青い海にダイブするべく、今日も“Prayer”として祈り続けるのだ。