【噂の新店】百薬 by 徳山鮓

銀座の中心地にオープンした世界一の長寿クリニックを目指すラグジュアリーな施設「THE HUNDRED ロンジェビティハウス」。先端的な再生医療と古来の伝統医学と伝統的な日本の食文化を融合させたこちらの9階に存在するのが、滋賀「徳山鮓」が監修する「百薬 by 徳山鮓」だ。フーディーたちを虜にしたシグネチャーの「鮒鮓」を含むおまかせコースでおいしく体を整えたい!

心地よさを追求した癒しの空間

端正な佇まいのエントランス

銀座という街にふさわしいラグジュアリーな「THE HUNDRED ロンジェビティ ハウス」が10月にオープンした。ここは世界一の長寿クリニックを目指し、先端的な再生医療と古来の伝統医学と伝統的な日本の食文化を融合させた複合施設だ。これだけでも話題に上るのは間違いないが、フーディーをときめかせたのが最上階である9階に存在する「百薬 by 徳山鮓」である。

静寂な和の世界観を感じる店内

店名を聞けばお気づきだろう。こちらは独自で開発した発酵料理をはじめ、地元でとれる山菜や鮎、ジビエなど四季折々の食材で自然を感じさせる料理に国内外のフーディーが殺到する滋賀屈指のオーベルジュ「徳山鮓」の店主、徳山浩明氏が料理監修しているのだ。

手触りの良さにこだわった設え

こちらでは施設のテーマである“百年健康で生きる”ことを目指した「体に良くておいしい日本の発酵料理」をおまかせコースで提供する。「徳山鮓」のシグネチャーである「鮒鮓」「なれ鮓」と、幼少期から天然の食材に触れながら育ち、今では食材ハンターとして全国の生産者を回る佐藤 均料理長が選んだ天然食材の本質と向き合った料理とで構成されるおまかせコースは、口にするごとに全身が浄化されていくかのようだ。

佐藤 均料理長

料理長に就任した佐藤さんは出身地である福島県から18歳で上京、料理の道へ進み、青山「いち太」、西麻布「YAWYE」などで研鑽を積んだ。幼少の頃から両親と山に入って山菜やきのこを採り、川で魚を釣るなど、天然の食材を食べて育った。「その頃はファストフードを口にすることなく、今は本当に感謝しています。あれだけ上質な食材を毎日食べていたから食材を見る目と舌が養われました」と話す。

「香箱蟹」

こちらで提供されるのは10品からなるおまかせコース(35,000円)。本日の先付は解禁になったばかりの「香箱蟹」だ。提供する1時間半前にさばきはじめるのだが、これがアクのまわらないギリギリの時間なのだそう。外子のプチプチシャキシャキした食感、内子のねっとりとしたうまみ、繊細で甘みのある身、芳醇な味噌、蟹のおいしい要素がこの小さな甲羅の器の中にぎっしり詰まっている。

「明石鯛」

「お造り」には淡路から直送された鯛を。数時間ほど締め、しっとりとしながらも弾力を感じるように仕上げている。好みで塩と酢橘か山葵醤油をつけて食すれば、程よい歯応えの後から滲み出るうまみを感じる。

「明石白甘鯛と胡麻豆腐」

吸い地は2日間水出しした「奥井海生堂」の利尻昆布に少量の鰹節で取った出汁、味付けは椀種由来のみ、椀妻には芽葱、吸い口には荏胡麻という「お椀」は、昆布の甘みが際立つ極上の味わい。椀の中の食材だけでこれほどまで深く豊かな味になることに感嘆せざるを得ない。

食材に語りかけてたどり着いた引き算の美学

焼き方はフランス料理仕込み

本日の「焼き」は炭火焼きにした鴨。「夕方の餌を食べる前に獲った鴨が一番おいしいことも仕留めた後の処理の仕方も現地で猟師さんに教わりました。食材は嘘をつきません。適当に処理をした食材は味も適当になります」と、いかに生産者との絆が大切かを語る。

天然のクレソン

付け合わせにはクレソンを。「天然は葉が大きくなると軸が硬くなるので小さいものを選んでいます」と話すクレソンの葉は生き生きとして張りも見事。目の前に出されるといい香りが漂い食指が動く。

「加賀鴨 クレソン」

鴨は水分を失わないように骨付きのままゆっくり時間をかけて焼く。皮はパリッとしているが、皿の上に置くと身は沈むくらいやわらかく瑞々しい。これはかつて味わったことのない食感だ。焼きのテクニックはフランス料理仕込みだが、鴨の骨で取ったジュに八丁味噌を合わせたソースとクレソン独特のピリッとした辛みを添えることで日本料理だと主張し、滋味のある口福の世界へと誘う。おいしいという基準は人それぞれでも、素材と仕込みは嘘をつかないと納得できる一皿だ。

「発酵料理は奥が深く、興味が尽きない」と話す

提供される料理はどれも見た目はシンプル、いわゆる引き算の料理だ。「天然食材を食べることが一番健康的だと考えます。調味料は可能な限り引くけれど、最高においしいという最も難しいことにチャレンジしています」と語る。福井県三方五湖の天然鰻、愛媛の赤雲丹、京都の白子筍……、産地との関係や食材の知識、それを生かす技術がなければなすことのできない佐藤さんのセンスと徳山さんの発酵技術が融合した“新顔日本料理”に注目だ。

※価格は税込

文:高橋綾子 撮影:松園多聞

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