茨城県近代美術館「没後100年 中村 彝 展―アトリエから世界へ」

没後100年 中村 彝 展―アトリエから世界へ | 茨城県近代美術館 | The Museum of Modern Art, Ibaraki

水戸へ。
茨城県近代美術館の「没後100年 中村 彝 展―アトリエから世界へ」に行って来た。
さすが中村彝の出身地と言える質と規模の展覧会で中村彝の画業、影響を与えた画家や出版物、支援者や交流までカバーした良い展覧会だった。
中村彝と言えば東京国立近代美術館の《エロシェンコ氏の像》、中村屋サロン美術館の《小女》など(どちらも今回の展覧会に展示にあり)で東京で見る機会はあるが、こうして時代順にまとめて見ると当時の日本の西洋画の位置や交流といった背景含めて味わうことができる。特に今まで見る機会がなかった静物画、風景画を見ることができたのは良かった。
当時の西洋絵画の影響は出版物、輸入洋書の影響が強かったこと、収集家が購入した海外の絵画が大きな衝撃となったこと、他の画家や支援者との交流が活動や没後の保存につながったことがよくわかる。
中村彝の絵は印象派の影響が強く、レンブラント、セザンヌ、ルノワール、ゴッホらの影響がかなりはっきりと作品から見て取れるが独自に消化しており、特定の時期に特定の画家の影響があるとは限らないこともあって、様々な表現が見られる。
彝が影響を受けたオーギュスト・ルノワール《泉による女》(大原美術館蔵)のほか、彝によるシスレー《廃屋、フォンテーヌの道》模写もあり、また彝が影響を受けた画集や雑誌記事も多数展示され、彝が何を見たかについての解説も充実していた。
明治末~大正期の日本の西洋絵画の受容と展開という文脈の中で中村彝による人物画・静物画・風景画それぞれの模索や可能性を見る展覧会と言える。
現在、茨城県近代美術館の第2常設展示室では「中村彝の仲間たち―大正時代の画家・彫刻家」として大正期の日本の芸術作品を展示しており、これも同時代の理解を助ける内容となっていた。

茨城県近代美術館には中村彝が晩年過ごした下落合のアトリエを再現した建物がある。
(再現された中村彝のアトリエは新宿区立中村彝アトリエ記念館にもある)
通常は遺品の展示もしているのだが、遺品は現在展覧会で関連する作品と同時に展示されている。
建物内部では中村彝に関する映像上映をしている。


建物の外には中村彝《鳥籠のある庭の一隅》で描かれた庭木と鳥籠が再現されていた。