マネーフォワードを辞めようと思った日

誤解がないように最初に言っておくが辞めたわけでも、辞めようとしてるわけでもないです。

11月最後の週の金曜に入社当時にメンターをしてくれた業務委託のエンジニアの方の送別会に参加した。

マネーフォワードに入社したのが2020/01なのでもう少しで6年目に突入するわけだけど、いろいろ学ぶところがあったし、井上さんの元でもっと学んでおけばよかったと改めて思う。

最近、社内の人事発令を見ていると「あ、XXXのときにお世話になった人辞めちゃうのか」ということに気づくことが増えた。

ぼくの仕事はいろんな人と関わることが多い、特に多いのがエンジニアだが人事やCS、ときに営業の人ともお話しすることがあるのでよりそう思いやすいのかもしれない。

マネーフォワードに入る前の最長社歴が4年4か月で現在自己最長を更新し続けてるのだけど入社当時はまさかこんなに長い間働くとは思っていなかった。 以前最長を記録したときはマネーフォワードほど入退社する人がいなかったからそう思っこともなかったんだなと書いていて思った。

<追記>以前の最長記録を更新したときに書いた退職エントリが残ってた。書いておくとこういうときに便利だね。ちなみにこのときの退職理由の1つだった病気は現在ほぼ発生しなくなってます。完治はしないらしいんですがここ数年は発生してません。</追記>

luccafort.hatenablog.com

知り合いがやめていくのを見送るのはなかなかつらい。 そう思える程度にはよい関係性を構築できたんだなと思うし、もっと一緒に働きたかったなと言う気持ちもある。 もちろん、新たな門出を祝う気持ちもあるんだけど複雑な心境だなと思うことが増えた。

いつかぼくもマネーフォワードを去るときが来ると思うが、周りの人に「もっと一緒に働きたかった」と思ってもらえるのだろうか?とふと不安になった。 それを目指してるわけではないけど、もっと一緒に働きたいと思ってもらえるというのはなかなか得難いことだと思う。

これまで、マネーフォワードを辞めることを考えたことがないか?と言われると実は2度ほど考えたことがある。

一度目は技術広報になる直前、とあるプロダクトを自分たちの管理するプロダクトに取り込むというミッションを担当したのだけどこれが見事に失敗した。 失敗した理由はいろいろあるがその時心がポッキリ折れかけてしまい、転職の二文字が頭をよぎった。

転職しなかったのはやはり仲間との関係性が良かったからだと思う。 その中にはもちろん先程のメンターをしてくれた ino_dev さんも含まれる。 その後転機があり、技術広報という新しい挑戦の場を得たことでもう一度持ち直していった。

意図したわけではなかったけど、とてもタイミングが良かったように思う。

二度目はちょうど去年の今頃だったと思う。 技術広報としてやらないといけないことがある程度できるようになってきて、その先が見えるようになった。 同僚に achamixx が入ってくれたこともあり、少し余裕が生まれたところで「この仕事は果たして楽しいだろうか?」という疑念が沸き起こった。

誤解してほしくないのだが「楽しくない」と「嫌嫌している」はぼくの中で等価ではない。 どちらかというと「楽しくはないがいまやらなければいけない仕事」がたくさん目の前にあり、それに忙殺されていたという心境が近い。 なにかに集中してるときはそれが楽しいか楽しくないかはぼくの場合、あまり重要ではなかったようだ。

ともあれ、チームとしてある程度の余力が生まれてきて、周りを見渡す余力が生まれたときにふと「この仕事をあと何年もやるのか?」と自分に問うたときに「やることはできるがやりたいことではないかもしれない」と考えた。

恐らく麻疹のようなものでここが技術広報やその他のキャリアを目指す1つの岐路なのだと思う。 良くも悪くもマネーフォワードのアウトプットは増えている。 比率は大きく改善したとは言えないがメンバーが増えているので結果増えている。 また新卒のメンバーやこれまでやったことがない人の比率はぼくが技術広報をやるときに比べて格段に改善した。 そういったある一定の成果が出たことで「自分が技術広報でなくなったあとの世界」を思い描くことができるように組織として強くなったと考えられる。

さて、そうなったときにこれからのキャリアをどうするか?を考えることになった。 まず行ったことは社内外のエンジニアやエンジニアリングマネージャーに話を聞きに行くことだ。 それも普段であればなかなか会話をしないであろう人たちと話すことを優先した。

社内でいえばとある部署の室長のようなポジションの人、現上司のRusty、社内のチャレンジシステム制度を使って社内移動をしたメンバー、いろいろな役職、社歴のメンバーに話を聞きに行くようにした。 彼ら、彼女らには現状を伝え、あなたたちならどうするか?ということを聞くようにした。 中には鋭い質問や意図がつかみにくい質問などもあったが自分からみた視点と他人から見た視点を俯瞰して見ることができた。

社外に関して言えばコミュニティーで知り合った人たちと懇親会などでお悩み相談という形で相談に乗ってもらったり、他社のカジュアル面談などで情報交換がてら相談させてもらったりした。 ぼくはだいたい四半期から半期に一度、転職の意図があるなしに関わらず他社のカジュアル面談を受けるようにしている。

これは似たようなことをpotato4dsさんも以前書いていた。

d.potato4d.me

ぼくの場合はこのブログが書かれるもっと以前の出来事がきっかけになっている。 最長社歴だった会社で働いていたときの部長に勧められて、そこから定期不定期の差はあるが継続して行っている。

部長曰く「市場価値は市場に出ないとわからない。この会社の評価が気に入らないとき自分の市場や周りの市場がどう変化しているか知らなければ上げるためのアクションが取れない。だからブログやイベントに参加するように他社の面談や話しを聞きに行くことはとても大事だ」と言うようなことを何かの折に教えてもらった。

当時はまだカジュアル面談という言葉もなく、転職する気はないが話を聞かせてほしいと言ったら怒られることもあった。 ほとんどの場合はやんわり断られるか、それでもいいので話しをしたいというものだった。

ともあれ、社内の権威勾配やバイアスなどがない、フラットな視点で課題を相談できる機会というのは意外と得難い経験だ。 前提を機密に当たらないように話しているうちに「あぁ、自分はこの部分に違和感を感じてるのだな」とか「ここは思ったよりも不満に思っていないのか」と対話によって自己認識を掘り下げることができた。

また異業種の人たちにも相談をさせてもらった。 エンジニアという職種は現代においてかなり特異な存在だと思う。 言わば企業に対して反旗を翻すことができる強い役職として存在している。 ぼくは技術広報なのでエンジニアともそうでないとも言い難い職種になっている。 そうなったときに他の職種の人の意見を聞いて得るものがあるかもしれないと思ったからだ。

先に結論を言っておくと異業種の方はそこまで多くヒアリングしていないのもあるがあまりピンと来ない意見が多かった。 このことからまだ自分の軸足はエンジニアにあると判明したのでその点は良かったと言えるだろう。 効率という意味で言うなら決して良くはないこれらの行動を通して「マネーフォワードを辞める程ではない」と再認識することができた。

ぼくはマネーフォワードに入社するときに「この条件が満たされたら辞めるリスト」を作成している。 これは会社に対する期待の逆を書いただけなのだが、改めてこのリストを見て驚いたことに入社当時にやりたいと思っていたことのほとんど全てを体験することができたということだ。

RubyやGoを使った開発をしてみたいであったり、海外カンファレンスに参加してみたい(実際には参加ではなく登壇だけど)だったり、自社カンファレンスを開催したいだったり、そういったことが書かれていたし、それらを満たされていた(当時はまだ自社カンファレンスは開催されていなかったが開催する旨自体は聞かされていた)。

そうしたときに自分の今のこの不安定な状態というのは「やりたいこと」が満たされてしまったからではないか?ということに気づいた。 それに気づいてからは「じゃあ自分はマネーフォワードでないとできないこと、やり残してること、やりたいことはないだろうか?」と自問自答することとなった。

結果、なんとなくこういうところはまだできてないのでやってみたいなと思うところが見え始めてきたし、それはマネーフォワードでないとできないことなのか?と思い、他社の話を聞きに行くこともしている。 もしかすると、何かのボタンがかけ違えば転職をするかもしれない。 反面、まだまだやってみたいことが存外マネーフォワードに転がっていることにも気づけた。

ぼくのキャリアの軸のようなものも見え、これまでのキャリアをどのように決めてきたかも朧気ながら見えるところまで自己理解を深めることができた。

自分の強み、自分の強みが発揮できるフィールド、自分の弱みそういったことを自覚できるようになったのは多くの人との関わりや摩擦によって自分自身に問いかける量が増えだからだと思う。

問いかける量が増えると質が高まりやすくなる。 どのフェイズでもそうではないがこれまでその場のノリで転職をしてきたが「転職しないことで得られる強さ」のようなものも見えてきた。

多くの場合、環境を変えるのは大変でそれをするくらいなら自分の置かれる環境を移動させてしまうほうが圧倒的にeasyだ。 だけど、それで評価を上げ続けることができるか?と言われたときにどこかで壁にぶつかるんじゃないかと思う。

何故ならどこの企業、組織でも環境を変えられるゲームチェンジャーを求めているからだ。 変えることが降りた人よりも変えることに挑戦した人のほうが評価される、そういうターニングポイントにもしかすると自分はいま立っているのかもしれないと思うと少しずつ「楽しくない」状態が改善してきた。

環境を変えたいというと傲慢な発言だが環境を変えるために自分にできることを探したり、そのためのスキルアップを計ることは自分にとってどうやらワクワクすることらしい。

そのために職種や役割を変えることは自分にとってあまり重要ではなく、そのラベル(役職名)がなにかもあまり重視していないことがわかった。 何をしたいか、何をしてきたか、何ができないか…そういったことに向き合うときぼくはワクワクするらしい。 いまの技術広報という職種は目標や理想が非常に抽象的で誰も答えがない自分たちの答えを定義する必要がある。 それはとても苦しくて大変だし、やればやるほど事実との乖離に打ちのめされるんだけど少しでも近づけていると思えるなら報われるなとも思っている。

やりがいがあるか?でいうとエンジニアのときのようなやりがいはない。 同じやりがいならエンジニアからジョブチェンジしてないわけで、ないものねだりをしていただけかもしれないと最近思うようになってきた。

最近「社内のXXXをもっと盛り上げたい」や「XXXをやりたいので協力してほしい」という相談が増えてきた。 これまではぼくが主導しないと生まれなかった相談がちゃんとアクションするところまでやりきる人たちが出てきた。 相談だけで終わるケースがこれまでは多かったが思いと行動をセットで実行する人が出始めたのでぼくの技術広報としての卒業は近いのかもしれない。

これまでの活動が花開いたのかもしれないし、ぼくのこれまでの活動が不甲斐ないため生まれたのかもしれない。 きっかけは何でもいいんだけど理想とする組織像に一歩近づいたんじゃないか?と思うと喜ばしい気持ちになる。

誰かのアクションを待つんじゃなくてガンガン行動して予算をもぎ取るような「口だけじゃなく動くものをもってこい」な行動がもっと増えればいいなと思う。 (口だけじゃなく〜の原典はぼくではなく2019年に当時クックパッドでCTOをされていた成田さんの基調講演での発言をお借りしている)

[2024.12.01 21:30 追記]

マネーフォワードを辞めようと思った日 - おうさまのみみはロバのみみ

プレミアム会員でも広告が出るとき・・・って話じゃなかった

2024/12/01 16:43
b.hatena.ne.jp

あれねー。確かにウザいよね。わかるよ。 ぼくは部署が違うので関知してないけど、なんとかならんか?という話題は見かけたことがある。 UserFocus が Values に含まれているのでなんとかならんか?と思ったことはあるし、ビジネス側や開発側にもいろいろな背景があるんだろうとは思う。 人間は通知を見ないとかフリーミアムモデルだとか広告掲載はビジネス的に外せないとか。

でもまあそれはさておきユーザーとしては課金してるのに「広告が表示されてしまう」状態は嬉しくないので変えてほしいなとは思う。

ただまあ、それが理由でやめるか?というと開発の当事者でもないのでそこまでのモチベはないかな。社内で声を上げることはあると思うけど。 [/追記]

[2024.12.01 21:37 追記]

マネーフォワードを辞めようと思った日 - おうさまのみみはロバのみみ

PayPayと連携できないとき・・・って話じゃなかった

2024/12/01 21:33
b.hatena.ne.jp

なんか変なコメントを書いていいとでも思ってるのかどうかわからないけど、そういうことを書く場じゃないよ。 でもPayPayとは連携して欲しいとぼくも思ってる。 でもPayPayと連携してないので辞めます!とか言わんやろ。ぼくは言わない。 というかその話でいうと中の人だからこそ、そこの部分は「俺が頑張ればPayPayと連携できるかもしれん!」と思えるポイントなので辞めるポイントにならないと思う。 君は違うのかもしれないけど。PayPayと連携できない理由が知りたければ弊社マネーフォワードに入社して社内ドキュメントを読んでください。理由が書かれています。

[/追記]

[2024.12.01 22:30 追記]

マネーフォワードを辞めようと思った日 - おうさまのみみはロバのみみ

「入社当時にメンターをしてくれた業務委託のエンジニアの方」・・・先輩社員じゃなくて??

2024/12/01 22:14
b.hatena.ne.jp

先輩社員ではないですね。 当時ぼくは京都拠点が発足して1〜2年目の時期に入社したのでエンジニアの数が少なかったのでそうなっていました。 ぼくもビックリしたけど、それとは別に業務委託だとか契約社員だとかで差別しない社風なんだなと好意的に受け止めていました。 いまはメンバーも増えたので社員がやっていると思います。

[/追記]

[2024.12.02 07:20 追記]

マネーフォワードを辞めようと思った日 - おうさまのみみはロバのみみ

2020年1月に入社して、もうすぐ6年目か。光の速さに近い速度で走ってる人なのかな。

2024/12/02 01:22
b.hatena.ne.jp

バカかよ。2020年1月(入社1ヶ月)が1年目、今現在、入社から4年11ヶ月で5年目なんだから次で6年目だろ。 光の速さで間違ってんのはお前だよ。新卒1年目を新卒0年目とは言わんだろ。

一応書いた後で諸説ある、みたいな事例があるかもしれないと念の為に調べたけど

勤勤続年数とは、原則として、退職手当等の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間(以下「勤続期間」といいます。)の年数(勤続期間に1年に満たない端数があるときは1年に切り上げます。)です。

になってるので今現在4年目11ヶ月なので切り上げて、5年目。 次の1月で5年とn日になるので更に切り上げて、6年目になります。 コメントする前に調べようね。

www.nta.go.jp

[/追記]

[2024.12.03 23:00 追記]

マネーフォワードを辞めようと思った日 - おうさまのみみはロバのみみ

いい話だなと思ってたのにコメ返しで「バカかよ」と乱暴な言葉使っててうわぁとなった。複雑な気持ち。記事内容は良かった。

2024/12/03 13:20
b.hatena.ne.jp

追記をし始めるとキリがないのでやめようと思っていたが最後にこのコメントにだけ返信をする。 まずはいい内容だったと評価してくれてありがとうございます。 そして、乱暴な言葉使いをしたことで読後の感想を汚してしまってすみません。

一応言い訳をすると件のコメントが「2020年1月に入社してもうすぐ6年はおかしいのでは?」という書かれ方だったらあのような言い方はしなかったと思う。 「光の速さに近い速度で走ってる人なのかな。」という一言で自分を上においたマウンティングだと判断したのでそれに対して反論したため、あのような言葉使いになりました。 過去に何度かブログがプチ炎上して、心無いコメントのサンドバックになった過去があり、反論するときはちゃんと反論しようという結論に至りました。 よほどなにか変化がない限りはやめないと思います。ごめんね。 ぼくも人間なので嫌なヤツには言い返したいんだ、許して欲しい。

[/追記]