ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

ベストテン2024

2024年もあと2日。今年観た映画は51本。ペースはかなり落ちましたが、まだまだ日常に映画はあります。

一応、今年も残しておこうと思い、振り返ってみた年末恒例のベストテンは、

「aftersun/アフターサン」シャーロット・ウェルズ
「CLOSE/クロース」ルーカス・ドン 
「せかいのおきく」阪本順治 
「あしたの少女」チョン・ジュリ
「ちひろさん」今泉力哉 
「愛にイナズマ」石井裕也 
「怪物」是枝裕和 
「市子」戸田彬弘 
「夜明けのすべて」三宅唱 
「BAD LANDS バッド・ランズ」原田眞人 

観た順番で上記の10本です。

いずれの作品も、弱き者、小さき者に寄り添い、人間の尊厳を脅かすものに抗った、やさしい映画ばかりです。

赦すこと、赦されることがどんどん少なくなる一方の世の中で、映画の中にだけは救いがあるように感じました。 

「優しさのない正義はなく、強さもない」とは、アントニオ猪木の言葉です。 

今年も1年間、本当にありがとうございました。
皆さんどうか良い年をお迎え下さい。

「朽ちないサクラ」原廣利

良い映画は答えを用意しない。多くの命を救うために一人を犠牲にしても良いのか。この道徳的なジレンマを含む問題には、人間の尊厳とは何か、正義とは何かという問いが内包されている。どんでん返しのミステリー。芯の通った強さのある杉咲花、すべてを受け止める藤田朋子が際立っていた。

 

朽ちないサクラ

「告白 コンフェッション」山下敦弘

死ぬと思ってした告白がパンドラの箱を開ける。極限状態に陥ったときに突きつけられる自分の本性ほど恐ろしいものはない。社会的、倫理的にも受け入れられない感情や欲望。罪と罰。これはどんな人間の奥底にもある悪をあぶりだしたホラーだ。山下敦弘とヤン・イクチュンの本気に応える生田斗真。74分の壮絶なサバイバルに心底へとへとになった。

 

映画『告白 コンフェッション』公式サイト

「首」北野武

どんな美談に仕立てられようが、結局のところ、殺し、殺され、奪い、奪われるのが戦国の世だ。また、巨大な権力は、暴力と恐怖によって培われ、維持されることは、多くの歴史が物語っている。美しさと醜さ、強さと弱さ、賢さと狡さは表裏一体。構想30年。黒澤明も期待したプロット。めっきを剝がすことで、北野武は、生きることの本質をあぶり出した。

 

https://movies.kadokawa.co.jp/kubi/

 

「僕らの世界が交わるまで」ジェシー・アイゼンバーグ

17才の息子と母。子供ではないけれど大人でもない。そんな微妙な年頃の微妙な距離感。怒りも、寂しさも、やるせなさも、すべてを自分の胸に受け止めて過ごす日々。大好きだけど大嫌いで、大嫌いだけど大好き。それを繰り返すのが家族。結局、最終的に帰る場所、戻る場所が家族だ。さりげないけれど、ジュリアン・ムーアの存在感と演技が秀逸。

 

映画『僕らの世界が交わるまで』公式|2024.1.19(金)公開