ビートたけしとフライデー事件(5)


■会見


12月17日以降、体調不良を訴え番組収録を取りやめたビートたけしは、22日、事件後初めて正式に会見を開く。
この会見は、たけし自身が、この事件を語った初めてのものであるが、その後語った事件に関するどのインタビューに比べても驚くほど率直で、鋭い視線に立ったものである。
主なコメントは以下の通り。

「片方で言論の自由とか報道の自由ということで、写真雑誌がおれのまわりを撮り続けていたんですけど、ボクとしても、同じ自由ならプライベートを守る自由と言うものがあるわけで、それに対して具体的に行動に出たんですけど、行動した過程について暴力を使ったり、たけし軍団というのを一緒に連れて行ったことに関しては、非常に反省しております。しかし、自分の大切なものを守るというのには、だれにでも権利があるということで、過剰防衛になるといわれたらそれまでですが、もっと暴力以外に具体的に対抗する手段が無いのかと言われたら、お聞かせ願いたい」


「ボクはしばらくの間、謹慎だろうと思っていましたが、局の要請もあったし、事務所サイドでもいろいろあわてふためいていたので、どっちがどういう結果になるかわからないけども、ビデオ撮りくらいはやろうかなと思いましたがね」


「茶の間のアイドルはおれ以外にもいっぱいいる。おれ一人でテレビを切り盛りしているわけではない。さんまでもタモリでもいっぱいいて、そのうちの一人だから、おれ一人で切り盛りしてるとは思っていない。茶の間への影響ということなら、親と子の関係で親は子供や家族を守り、おれの場合でも愛人もいたからね、それを守っただけで、その行為については絶対悪いとはおもっていない。ただ、暴力行為とか集団でもみあったということが、悪いとしたら、それはそれで親が子供に言うべきであって、あれは、たけしが悪いんだといえばいい。おれの今度の行動が子供に悪影響を及ぼしてどうのこうのという以前の問題で、子供のことなんていうのは、おれの事件では、はじめっから次元が違う」


「芸能人だから、仕事をくれれば行く。テレビ局がいらないといえば、いかないだけ。それは使われる立場で、芸人というのは仕事があればいきますからね」


「引退なんてのは、20歳代から考えている。今に始まったことじゃなくて。いつでも面白くなくなる前にやめたいと思っている。ここ一週間、二週間で始まったことじゃない。漫才界はいったときから考えている。視聴率が上がんないのにいつまでもグズグズやっているタレントがいますよね。それはいやだな。
ただ、とりあえず、おれは、まだ視聴率がある。今回の事件の後は、結局は軍団を巻き込んでしまったし、それで引退し逃げてしまったら、あと、どうなんだ。おれはどうなっても、とりあえず、巻き込んだ家族とかいろんなことを処理しないで逃げるわけにはいかんだろう」


「まあ、暴力は悪い、浮気も悪いと言えば悪い。悪いことは悪い。ただやらざるを得ない状況があったわけで、だからこそ、それは警察とか法律にゆだねているわけで、処分はいつでも受けますし、ただ、その処分が長びいているので、いつまでも、逃亡者じゃないですから、動いていられないので、一区切り、中間報告という意味で出てきただけで、それによってどうのこうのということではない」


「(法に訴えず暴力に訴えたことは)もちろん反省してます。こんな状態になるとは思わなかったですね。おれが、やったことっていうのは、シラサギを鉄砲で撃ったと思ったら、特別天然記念物のトキを撃っちゃったみたいな話で、何でこんなことになっちゃったのか分からない」


「(後藤田長官の発言は)一応、官房長官としてはさしさわりない意見じゃないですか。ビートくんっていったのはまずかった。やっぱりたけしだろうと思います」


「袋叩きになるのはしようがないと思っていた。擁護論というのは人がやることで、おれの味方がいっぱいいるからやったわけじゃない。あくまでも、やったのはおれ自身の問題。みんなの代表でやったわけじゃない。おれのプライドを守るために個人でやったことで、いろんなタレントのためにやったのではない。おれは大塩平八郎じゃないからね。よくぞやったというぐらいならテメエがいけばいい。だけどそれはできないだろう。おれみたいにちょっとこれがアッパラパーで、しちゃったけどね」


「(タレントのプライバシーを追っかけることは)限界は限界でありますからね。限界を越えたらおかしい。それ以上はだめだとうところがあるでしょ。われわれだってテレビやってて、ちょっとヤバいなということをやっているが、それ以上はだめですよ」


「(過労は)精神的にはそうでもなかったが、肉体的には警察署を出た時から追っかけまわされたのだから、女房、子供に会えないし、だれにも会えない。都内をずっとうろついているわけでしょ。デビット・ジャンセン(映画「逃亡者」主演男優)みたいだからね。体にこたえた」


「(写真雑誌については)お互い因果な商売だと思った。今回殴られちゃった人は、おれに殴られるわ、家族には、お父さんそんな仕事やってののかといわれるわ、嫌な思いしてるし、そうすると当事者同士が一番ひどい目にあったということだけですよ。それは向こうが悪い、こっちが悪いという話じゃない」


「(殴られた人に対しては)ごめんなさい、ですね。怪我したっていうのは…、だからつかまったんでしょう?」

    
「(一緒に行った軍団には)非常に申し訳なかった。一人で行くのはおっかなかったね」


「新人タレントでもないから早く仕事をしたいとは思わないが、現場に行けば一生懸命やりますよ。ただ父親が死んだって、芸人はこういう状態だろうがなんだろうがやりますよ」


「もともと風当たりが強いのは当たり前なんですけどね、こういう法的に暴力はいけないとなれば。ただやっぱり、社会問題になったからね。世論と言うのは、大きい方へ大きい方へ動くので、マスコミがおれをたたき出せば、ファンもマスコミの方に付くだろうなと思っている。それはそれでしようがない」


「(今後A子との付き合いは)もっと仲良くやります」
「(A子にどんな電話を?)そんなこと大きなお世話だよ」


「(子供達にどう説明したらいいか困っている親に対して)さっきもいったように自分は自分で守らなきゃいけないんだけど、守る方法として、こういう守り方はよくないと…、本人も深く反省してるから、親と子の対話の中でたけしも自分の家族をお父さんとして、男として守ろうとしたんだけど、その守り方を失敗したんだなと言えば。それが分かんないガキだったらバカなんだ」


翌23日、他局に先駆けてフジテレビがたけし出演自粛を決定。
24日、TBS、テレビ朝日もフジに追随。NHKも翌年1月から再放送予定だった「続・たけしくん、ハイ!」の放送延期を発表。
25日、日本テレビ、ニッポン放送もこれに続き、以後半年余り、たけしが公のメディアに出ることが無くなった。
                                     (つづく)


なお、前回のエントリーで表現不足な部分がありましたので一部補足修正しました。

阿部サダヲの「スジナシ」における「破れるに壊す」パンクな演技


グループ魂の新アルバム「TMC」でもパンクなパフォーマンスを聴かせてくれる破壊こと阿部サダヲですが、以前「鶴瓶のスジナシ」に出演した時の彼の演技は、破壊以上に破壊的だった。

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