海外オヤジの読書ノート

中年おじさんによる半歩遅れた読書感想文です。今年もセカンドライフ等について思索したく。

連続殺人の行く末は。刑事の心の傷と、関係者の心の傷たち。人間の暗部よ。 |『あなたが消えた夜に』中村文則

皆さんこんにちは。

年末に子どもたちとZoomしておりました。すると今春高校三年になる娘が突然「留学したいかも」とつぶやきました。

幸い、付属校に通っており、まあ大学にはそのまま行けるのですが、ただでも高い学費に交換留学でしかも2年! 別途大学のホームページでこの交換留学の制度とその費用を見てみぞおちに息ができない位のパンチを食らったかと。それくらいひりつく値段。

 

ということで、妻の就職活動にも力が入ります。

これはこれで「家にいるばかりだと暇だ、ボケる」とこぼしていた妻の為でしたが、妻にとっても就職に臨むにあたりモチベーションになっている模様。

これで妻の就職がうまくいけば、老後資金と共に子どもたちの学費の確保にもポジティブ。まあしいて言えば、おいしい妻の手作り料理を毎日アツアツで食べられた私のQoLが多少下がるか!? まあでも小さいですね。

やりたいことがある、目を輝かせてやる気になっている娘を見たら、応援したくもなります。

うまくまとまるといいなあ。

 

 

久し振りの中村作品でした。刑事ものですが、なかなか良かったです。

氏の雰囲気も多分にあり、刑事ものという事でシリーズ化しても悪くないかも、と思いました。

 

こんな感じのはなし

連続通り魔殺人事件が発生。目撃情報によると被疑者は「コートの男」。捜査一課が所轄に乗り込み、合同捜査に当たることになり、所轄の中堅刑事の中島と捜査一課の若手女刑事小橋が組み、捜査に当たる。

二人は事件の周辺から次第に中心へと近づくにつれ、思いもよらない真相・人間関係・背景を知ることになる。

 

 

やっぱりノワール

中村氏の作品は総じて主人公が病んでいて、そのノワールさが一種の魅力であると思っています。

今回の主人公は所轄の刑事の中島。小学生時、片親の父親が女を連れ込むのを嫌がり、クラスの嫌われものを焚きつけて家に放火をさせた中島。しかもその友人は当の中島と同様荒れた家庭であり、小学校卒業をまたずに死亡。

その友人の影に苛まれながら事件を追います。

 

因みに、この心の闇を抱える主人公という点では『何もかもが憂鬱な夜に』の刑務官の主人公もそうでした。自死した友人から、その死の直前に手紙を受け取っており、その影響を引きずっていたりして。似ているなあと感じました。

 

何か起こしそうで起こらななかった小橋

本作、文庫で2.5cm以上はあろうかという分厚い作品なのですが、やはり目立ったのは、中島と組む小橋。初っ端からとばしてくる。

中村作品にしばしば出てくる、平気で狂っている(表現おかしくてすみません)ようなキャラで、何かやらかしそうだなあ、と思っていたのですが結果は何もありませんでした。

 

聞き込みの最中に証言する人に注意を払わず、一心不乱にパフェを食したり、所轄の上司の髪型の7:3分けがなぜなのかをしきりと気にしたり、大人気アイドル「枕営業ガールズ」(てかネーミングね)について熱心に語ったり。

 

一瞬、これは小悪魔的な誘惑なのか、とも思いましたが、最後までこのズレっぱなしな感じで終了しました。

 

展開について

一応ぼんやり記しておくと、事件は、当初考えられていたシリアルキラーという線からは外れます。

3部構成で少しずつ物語は進んできますが、そこに大きなツイストはなく、徐々に予想していなかった事実が浮かび上がるという構成。

そして、関連した人たちが少しずつ損なわれていたり、歪んでいたり、というのがいかにも中村作品らしいな、と感じた次第です。

 

おわりに

という事で中村作品でありました。私にとっては6作品目となるものでした。

暗ーい感じ、刑事もの、感情の歪み、みたいなキーワードがぴんと来る方にはおすすめできるかもしれません。

 

評価 ☆☆☆

2025/01/01

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