車中泊旅行歴25年の現役のクルマ旅専門家・稲垣朝則が実践している、車中泊旅行スタイル「Auto-Packer(オートパッカー)」の、”プロモデル”として使われているハイエース・キャンピングカーWizの実使用レポートです。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊入門ガイド
この記事では、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、既に1000泊を超える車中泊旅行を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、四半世紀に及ぶ経験を元に、日本各地を車中泊でめぐるための「know-how」を紹介しています。
~ここから本編が始まります。~
ハイエース・キャンピングカー Wizの魅力
プロローグ
最後に求めたのは、「プロモデル」と呼べるキャンピングカー
プロローグ
最後に求めたのは、「プロモデル」と呼べるキャンピングカー
2012年3月。
1999年以降、休むことなく乗り続けてきた、名車ボンゴフレンディーAFTの”2代目Auto-Packer号”に、いよいよ寿命が近づき、買い替えを検討する時がやってきた。
初代が約14万キロ、中古で購入して初代の装備をすべて載せ替えた2台目も、やはり14万キロを記録したところで、動力系のトラブルが目立つようになり、長期の取材には危なっかしくて使えなくなった(笑)。
買い替えのターゲットはハイエースと決めていたが、当初は8ナンバーのキャンピングカーを想定していたわけではなかった。
ただ”車中泊の旅の取材”という仕事柄、道の駅で泊まる機会が増えていたことから、車内でもう少しデスクワークができる仕様を求めていたのは確かだ。
志と心意気、そして信頼できるクルマがなければ、「いい仕事」はできない。
筆者が車中泊専門誌カーネルでこれまでやってきた仕事は、単なる旅行ライターの取材じゃない。
まずは車中泊クルマ旅に相応しい旅先の選考と、モデルルートのプランニングに始まり、企画が「机上の空論」にならないよう、実際に読者と同じように旅をし、フィールドに泊まる。
普通はそれが「当たり前」と思うだろうが、雑誌やテレビの取材を受けたことがある人ならご承知の通り、実は取材に来て筆者と同じように「車中泊」をする編集者やカメラマンはほとんどいない。
大半は東京から新幹線か飛行機でやってきてホテルに泊まる。昔から、筆者はそのことに強い違和感を覚えてきた。
専門誌の取材者がユーザーと同じ「目線」に立たずして、本当に共感や感動を呼ぶ記事が書けるのだろうか?
加えて…
筆者はライターにスタイリストとカメラマン、さらに時には釣り人や野外料理のシェフを、家内はモデルにアシスタント、そしてフードコーディネイターを兼ねている。
二人でいったい何役なんだ(笑)。
そんなこんなで出来上がる紙面にリアリティーがあるのは、細かなディテイルにまでこだわり、全てが本人による「実写」であるからに他ならない。
その点においては、昭和の名作ドラマ「北の国から」の脚本家、倉本聰氏の思想にまったくもって同感だ。
以下は「北の国から資料館」に展示されていた1枚のパネルの転記になる。
ドラマのスタートは、企画から始まる。プロデューサー、演出家、脚本家が意見を出し合い企画が練られる。
【プロデューサー】
アドベンチャーファミリー、キタキツネ物語がヒットしたので、北海道を舞台にあのようなドラマが作れないか…
【脚本家(倉本聰)】
キタキツネ物語は三年近い年月を使ってキタキツネの生育を追っている。そのような制作体制が今のテレビドラマでできるのか。また、アドベンチャーファミリーは人間社会から隔離された北米の原野が舞台になっている。そのような舞台は北海道にはない。
【プロデューサー】
テレビの主たる視聴者は東京の人間である。北海道にそうしたフィクションの土地を置いても、東京人はそれをかえって面白く思うだろう。
【脚本家(倉本聰)】
その考えは間違っている。
板前のドラマは板前が、刑事のドラマは刑事が見て感動してくれなければ本物とは言えない。北海道を舞台にしたドラマが、北海道人に嘘だと言われたら良い作品などできるわけがない。
しかし… いくら好きなことでも、さすがに夫婦ともども50歳の壁を超えると疲れがたまり、以前のような無理が効かなくなってきた。
また旅先によっては、道の駅に泊まりながら取材を続ける場合もあり、そうなると椅子に座って食事や作業のできないボンゴフレンディーでは限界があると思うようにもなってきた。
そんな時に出会ったのが、その後10年・既に29万キロの走行を重ねた今もなお、筆者の相棒を務めてくれている、アネックス社のWizだ。
ふたり旅を考え尽くした、コンパクトで高性能なバンコン
実使用による感想は「まさにその通り」だった。
キャンピングカー・ショーに出向けば分かるが、大半のハイエースベースのキャンピングカーは4人という数字をどこかに意識している。
たとえシニア層をターゲットにしているモデルでも、いつかは孫と一緒に乗るかもしれない…
そんな思いが、きっとユーザーもビルダーも払拭し切れないでいるのだろう。
だがWizの魅力は、その迷いをみごとに断ち切っているところにある。
内装と装備に触れる前に、Wizのベースであるハイエース・バンDX-GLパッケージの車両サイズは、長さ4695×幅1695×高さ2240(ミリ)。
高さを除けばボンゴフレンディーと全く同じ大きさだ。事実、驚くほど車両感覚は変わらなかった…
にもかわらず、圧迫感どころかゆとりをも感じさせる室内空間は、乗る人間の誰もを驚かせてしまう。
アネックス社が創るハイエースキャンパーの中でも「最上級」を誇るWizは、単なる「ふたり仕様」だけが魅力ではない。
室内の隅々に至るまで綿密・緻密なアイデアが散りばめられ、それが相乗効果となって、広さと使いやすさ、そして上質感を奏でている。
まさにプロモデルとしての資質に満ちた、筆者が望むベースキャンパーなのだ。
このページでは、まずダイジェストでそんなWizの「カラクリ」を紹介していこう。
Wizのカラクリ1
L字型のダイネット
最初にWizの室内を見た人が発する言葉は、「わぁ~、広い」。
L字型のダイネットと大きなテーブルが、頭の中にあったハイエースキャンピングカーの潜在イメージを凌駕する。
ちなみに左のボトルケースは筆者の「お手製」。Wizを初めて見た時、これはちょっとイケてるBarになると閃いた(笑)。
この日のゲストは幼児を連れた若い夫婦。
この大胆なテーブルレイアウトが、大人4人に子供がいても、車内でゆっくり食事ができるだけのスペースを生み出してくれる。
取材はひとりで行うこともある。
そんな時はテーブルレイアウトのまま寝ることが可能。自宅でもここまで効率的には過ごせない(笑)。
まさにフィールド・オフィスそのものだ。
ちなみに、テーブルは下げるとベッドの土台になる。この上にシートの背もたれを並べると、幅1400ミリのセミダブルベッドに早変わり。
さすがにテーブルは自動で下がらないが、油圧式なので上げ下げに力は要らない。
シーツを敷いてこの状態にするまで、慣れれば5分もかからず、これまで面倒と思ったことは一度もない(笑)。
Wizのカラクリ2
理想的な収納機能
ひとことで言うと、Wizは「着痩せ美人」。
見た目はスリムだが、要所はボリューム感に満ちており、スッキリ感と使い勝手を両立している。
特にスライドドア側にレイアウトされたハンモック式の収納スペースは、軽いがかさばるマルチシェードやパークゴルフのクラブ、また夜間に着替えを一時保管するには最適で、筆者のお気に入りのひとつだ。
また冷蔵庫を含めて、調理に必要なほとんどのモノが、外から取り出せる配置になっている点は絶賛に値する。
夜釣りで波止場に来て、こんなことができるのはそのおかげ。
Wizの設計者は、オートキャンプを熟知している達人だ。
Wizのカラクリ3
立って調理や着替えができる「拡張ハイルーフ」
本来8ナンバー車は、キッチン前の車内高が160センチ以上確保されていなければならない。
だがハイエースのハイルーフ車は、そのままだと車内高が少し足らず、多くのモデルは床を掘り下げてその要件を満たしている。
しかしWizは屋根を上げるという驚くべき発想で、その難問をクリアしている。
Wizには開閉式のサンルーフが搭載されており、上背の高いユーザーでも立てる工夫が施されている。
換気にも役立つこのサンルーフは、さらに夏用に網戸まで用意されている。
おかげでサイドのドアと天井から外気が入れられるため、多少は涼しく寝ることができる。
Wizのグレードや価格等の詳細については、アネックス社の公式サイトで確認を。
ただし現行車は、テーブルの仕様が筆者のクルマと異なっている。
さて。
ざっとここまで「ノーマルのままのWiz」を紹介してきた。云ってみれば「買ったままのマンションの室内」を観ていただいたわけだ。
だが、このクルマを筆者がプロモデルと呼ぶからには、それなりの改造プラスアルファが上乗せされている。
次は、筆者が加えたそのユニークなオプションの数々を紹介しよう。
The Auto-Packer
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