4K修行僧
4K/HDR対応。低遅延でゲームも快適なLG製液晶「27UK650-W」
2018年2月7日 11:00
今回は、LGの4K/HDR対応液晶ディスプレイ「27UK650-W」を試してみた。
この製品の特徴は4K(3,840×2,160ドット)表示に加えて、HDR 10準拠のHDRや、AMD FreeSyncにも対応し、低遅延でsRGBカバー率は99%、HDMI 2.0対応と、UHD BDやゲームなど幅広く使える製品となっている。
ということで、実際に我が家のPlayStation 4 Proや、UHD BDプレイヤーなどに接続して検証してみた。
ゲームでの遅延はほぼ皆無
まず、ゲームについて見てみよう。4K/HDRに対応する「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」をプレイしてみた。
筆者宅のTVは東芝のREGZA J10X。この製品もHDMI 2.0/4K/HDR対応なのだが、HDMI 2.0がフルスペックの18Gbpsではなく、10.2Gbps止まりとなっている。そのため、4KではHDRに対応できない。
正確には、HDMI 2.0 10.2Gbpsでも、4K/30fpsまでならHDRに対応できる。だが、PS4 Proは10.2Gbpsでは、4K/SDRかフルHD/HDRしか選択できない仕様になっており、4K/HDR対応ゲームを購入しても、解像度か色のどちらか一方を選ぶしかなかった。
【2月7日23時追記】より正確には、REGZA J10XはHDMI 1/2ポートについては、18Gbpsに対応しますが、HDRには非対応。HDR対応のHDMI 3ポートは、4K/60Hz時はYCbCr4:2:0まで、4K/30Hzでも10bitカラーでは、YCbCr4:2:2までの仕様となっております。
それに対して、27UK650-Wは、フルスペックHDMI 2.0なので、4K/60fpsでもHDR表示に対応できる。実際にPS4 Proにつなぐと、4K/HDR表示が可能と表示された。
ちなみに、現在のモードがHDRなのかどうかは、OSDで設定→画質→ピクチャーモードを選択したときに、HDRであれば、HDRの選択肢しか出ないことでわかる。
55型のREGZA J10Xは、画面からソファまで約210cmの距離に置いている。これだけ離れると、フルHDを4Kにスケーリング表示しても、かなり精細に見えるので、ぱっと見の印象は4Kと遜色ない。
しかし、27UK650-Wの場合は、5~60cm程度の距離で使う。この距離だと、フルHDをスケーリングしたことで映像がぼやけるのがわかるので、4Kネイティブの精細感を確実に感じ取れる。
加えてHDR対応ということで、とくにコントラスト比の高いシーンで、SDRだと白飛びや黒つぶれしてしまうものも、微妙な濃淡を描写してより立体感ある描写がなされる。ただ、今回使用した製品固有かもしれないが、若干右上からバックライトが漏れていた。部屋を暗くして映画を見ていると気になる。
アクションゲームで求められる表示遅延はどうか? 本製品はDAS(Dynamic Action Sync)モードを搭載しており、ゲームモードでは、高画質化などの処理をバイパスすることで、表示遅延を低減できるとしている。
実際、REGZA J10Xの隣に27UK650-Wを設置してストリートファイターVをプレイして確かめてみた。REGZA J10Xはもっとも表示遅延が少ない部類の製品だが、AVアンプから同時出力した27UK650-Wで、目視による遅延はまったく感じられなかった。シャッター速度1/60秒で撮影した写真を何枚か見比べても違いは見受けられない。プレイしてみても、遅延によって目押しコンボを失敗すると言うこともなかった。
筆者の経験上、遅延が4フレーム程度あると、コンボに失敗することが発生するが、そういったことは皆無だったので、27UK650-Wの表示遅延はかなり少ないものと思われる。
ただ、製品情報には「DAS(Dynamic Action Sync)モード」と書かれているが、マニュアルおよびOSDではDASという表記がない。実際遅延は少なかったし、設定→画質→ユーザー設定(ゲーム)にすることで、DASが有効になっているものと思われる。設定→全般→表示情報を見ても、HDRの情報がないなど、ユーザーが気になる設定が有効になっているのかがわかりにくい点は改善を求めたい。
UHD BDの仕様を上回る映像データにも対応可能
映像面については、パナソニックのUHD BDプレイヤー「DMP-UB30」で、「ハドソン川の奇跡」を視聴した。もちろん、4K/HDRで問題なく再生できた。
迫力の点では55型TVの方が勝るが、50cm程度の距離で視聴すると、こちらもより精細さが伝わってくる。ただ、2時間の映画を近距離で集中して見続けると、やや目が疲れるので、もう少し離した方がいいかもしれない。
REGZA J10Xは、24fpsの映画コンテンツについては、4K/HDRに対応できる。しかし、DMP-UB30は、色解像度をYCbCr 4:2:0をYCbCr 4:4:4へと4倍にアップサンプルして伝送する機能を搭載するのだが、10.2GbpsのREGZA J10Xは、YCbCr 4:2:2止まりとなる。
一方、27UK650-Wは、DMP-UB30の機能をもてあますことなくYCbCr 4:4:4で表示できた。
YCbCr 4:2:2とYCbCr 4:4:4でどれほどの差が出るのかについては、DMP-UB30でクロマアップサンプルをオン/オフして見比べてみたが、映像の専門家ではない筆者には、明確な違いは見つけられなかった。とは言え、プレイヤー側の最大性能を引き出せると言うのは、視聴中に「いいディスプレイなら、さらに高画質なのかも」という不安にさいなまされずに済む。
DMP-UB30でUHD BDが視聴できていることからもわかるとおり、27UK650-WはHDCP 2.2対応なので、FireTV利用時は、4K動画も再生できた。
PCでの作業効率を向上
PC接続での4K環境は過去この連載で述べてきたとおりで、なにをやるにしても広大な画面で効率よく操作できる。ノートPCと据え置きのディスプレイでは設置距離がやや異なるが、13.3型フルHDノートをスケーリング100%で利用している人なら、27型の27UK650-Wでも4K解像度でスケーリング100%で文字も問題なく読める。あるいは、文字が小さすぎるという場合は、スケーリングを150%や200%にすれば、情報量は減るものの、文字表示が美しくなる。
今回はフルHDのノート+本製品というデュアルディスプレイ環境の利用例を紹介しよう。
クリエイティブとまでいかなくとも、たとえばWebで情報を調べながら資料を作るといったときでも、デュアルディスプレイだと、1台で情報を参照しつつ、もう1台で資料作成作業をするといったことが楽にできるので、効率が上がる。そういった環境で仕事をしている人も少なくないだろう。
フルHD 2台でも役に立つが、フルHD+4Kという環境はワンランク上の作業環境となる。まずは写真編集。写真編集では、細かい部分を拡大しつつ作業することも多いが、同時に全体のバランスも確認しないといけないので、拡大縮小の繰り返しが発生する。
こういうときにセカンダリとして4Kディスプレイがあると、Photoshopなら、ウインドウ→アレンジ→その画像の新規ウインドウとすることで、同じ写真を2ウインドウ表示できるので、フルHD側では拡大を維持した状態で作業しつつ、4K側では全体を表示(リアルタイムプレビュー)ということができる。4Kなら、超高画素カメラの場合等倍での全体表示までは難しいが、等倍に近い倍率で全体を表示できる。
動画編集でもこの環境は武器になる。動画編集では、タイムラインやライブラリ、エフェクト一覧などでかなりの面積を使うので、動画のプレビューは縮小せざるを得ない。しかし、フルHD+4Kなら、フルHD側に動画のプレビューウインドウ以外を目一杯表示しながら、セカンダリで4K動画でも等倍でプレビューできる。
筆者がたまに趣味でやる音楽編集も、トラックが増えると、トラック上での作業と、ミキサーの調整を、ウインドウを切り替えつつ、かつスクロールして、また戻りということの繰り返しとなるが、フルHD+4Kでは、複数のウインドウを同時表示しながら余裕を持って作業ができる。
27UK650-Wの実売価格は6~7万円程度。フルHDの標準的なディスプレイが1万円前後で買えるのと比べると割高感はある。しかし、本製品を持っておくと、コンテンツを作る場合の作業効率が大幅に向上するし、視聴する場合も、現状、コンシューマ向けでもっともハイスペックなUHD BDをフルスペックで楽しめる。5万円を切ってくれたら手放しでおすすめするが、現状の価格でも決して損はしない。
27UK650-WのKAITEKIDOは3KAITEKIとしたい。